【術式順転:蒼】
【術式:呪力砲】
二つの呪力がぶつかり合った。
片や青い引力の光、片や赤黒い呪力の光線。
両者はぶつかり合って大爆発を引き起こす。
地震が起きないずの島が揺れ、轟音が鳴る。
大気が震え、ソニックブームが巻起こった。
「よう、お楽しみ中…って、ソイツ呪霊じゃん。何?お前呪霊とヤるの?キッモ」
ソニックブームが晴れ、空から悟が見下ろす。
彼の目前の先には辺り一帯が更地と化した司の元別荘。
しかし司が手の届く範囲のみはキレイなまま。その中に司の呪隷であるシオンは何が起こったか分からないといった顔でいた。
「ああそうだ。そういう術式だからな」
「………ああ、なるほど。確かに“性”に関する術式もあるっちゃあるからな」
悟の眼は司の術式を正確に読み取った。
以前のように隠しているわけではない。
しかし読み取りにくく、分かりづらい。
難解というか、複雑というか、妙な術式。
これも気持ち悪さの一因かと悟は考えた。
「これが俺の真の術式、呪隷操術、調伏した呪霊は自動的に美女美少女となり、俺の奴隷となる。絶対服従のな」
「キッモ。なんだそりゃ。オタクの考える妄想丸出しじゃねえか」
「まあな」
【術式順転:蒼】
【呪力放出:呪弾】
再び呪力同士がぶつかり合う。
また起こる大爆発。その中で両者はすぐさま次の手に移った。
【呪力放出:呪砲・榴散】
【術式:無下限】
降り注ぐ呪いの弾丸の雨。
クラスター弾による絨毯爆撃のような呪力弾。
辺り一帯が吹き飛び、砂塵と礫が巻き起こる。
悟はソレを無下限のバリアによって全て防御。
呪力の雨も衝撃波も砂塵も。全て無効化した。
【虚式:茈】
【呪力放出:刃】
今度は悟が攻撃する番。
無下限術式の奥義、茈。
司のクラスター弾に耐えている間に準備を整えていた。
人体一個を破壊するにはあまりにも巨大かつ過剰な破壊の塊。
司はソレを呪力によって形成した巨大な剣で真っ二つに切断。
制御を失った赤色の光は破壊エネルギーとなって拡散。
暴走しながら辺り一帯を破壊した。
【術式:念動力】
【術式反転:赫】
再び悟が攻勢に入る。
巨大な赤い光球、赫によって敵を破壊しようとする。
対する司は念動力によってソレを防御。赫を放り投げて海に落とした。
海に渦潮のような穴が開き、押しのけられた海水が巨大な波となって押し寄せる。
ここが無人島で本当に良かった。
もし仮に都市部であったら、最初の一撃で崩壊していたであろう。
個人が持つにはあまりにも巨大すぎる力。
コレが特級というものである。
しかも、本人にとってはまだお遊びの段階。
本当に特級とは末恐ろしい。
「相変わらず規格外だな、司」
「そっちも無茶苦茶だな、悟」
ここまではお遊び。
本番はここからだ。
【術式:呪爆】
司が呪隷を使ってきた。
白い軍服を着た呪隷、バンビエッタ。
呪爆の術式を持つ司のお気に入りの一つ。
彼女がクラスター弾のように呪力弾をばら撒いた。
都市一つを滅ぼしてお釣りが返ってくるほどの威力。
悟は彼女に構わず司へ向かって行く。
俺の無限なら耐えられる。ソレより司を足止めして術を叩き込む…。
瞬間、悟の脳内に警告音が鳴り響く。
booooon!!!
悟はより強く、より大きく無限を展開した。
バンビエッタの呪力弾が触れる直前、神懸かった直感と六眼でその異常性を看破。
凄まじい爆音と共に無限に呪力の爆弾が命中する。
無間が爆弾に変えられている。
「(……この光、まさか相手の術式も爆弾に変えられるのかよ!?)」
これこそ成長したバンビエッタの術式。
相手の呪力を乗っ取り自身の術式に変える術式。
司に出会った当初からこの力の鱗片はあった。これによって司の腕を吹っ飛ばしたのだから。
しかしあの頃は純粋な呪力のみでしか使えず、無間のような呪力が変化したものは効かなかった。
だが今は違う。当たれば概念的なものであろうと爆弾に変えられるように、司によって成長した。
無論、今まで通り自身の呪力を爆弾として使える上、その爆弾に触れた呪力も爆弾に変えられる。
「(あっぶね!?)」
少し冷や汗をかく五条。
いつも通りの出力の無限だったら間違いなく突破されていたであろう。
しかしかつて伏黒パパが使っていた天逆鉾のように術式を無条件で突破してくる訳ではない。
あれは術式の無効化だったが、こちらは術式の乗っ取り。
彼女の術式に変える為には同等以上の呪力量でなくてはならない。
ならば乗っ取られないように無間を制御しつつ、呪力を押し退ければいい。
彼女の呪力や乗っ取られた術式を見分け無限で効率よく弾き飛ばす。
瞬時に発生させた蒼で残った呪力弾も吸い込み無力化させた。
通常なら出来ない芸当。
バンビエッタは悟が今まで見てきた呪霊の中でも多い呪力であり、その術式も厄介極まる。
しかし彼の眼なら、六眼なら対処可能である。
「こっちの番だ!」
宣言すると同時、司の周りに無数の蒼が生成される。
本来、蒼も赫も。術者の手やその周囲に発生させ、相手に飛ばすもの。
だが、悟は蒼を極める事で。視線や指先を向ける事で、点座標で生み出す事に成功した。
呪術を極めることは引き算を極めること。
今は蒼しか出来ないが、そのうち赫も似たようなことを出来るようになるであろう。
司の周囲にいくつも発生する青い光の渦。
暴力的なまでの破壊力を持つソレらは、まるで空中で出来た渦潮のよう。
司はそれらをまた新たな呪隷を出す事で防いだ。
胸元が大胆に露出した奇抜なドレスを着用している呪隷、織姫。
彼女もまた司のお気に入りの一つであり、古参メンバーだった。
【術式:拒絶】
展開される術式の結界。
空間から隔絶させたソレは、蒼の影響を完全に遮断。
蒼が周辺を破壊し蹂躙する中、一切の効果を司の周囲から守った。
その間に司は次の呪隷を召喚。
彼の判断は正しい。思考や行動を止めたものからこの遊びは負けるのだから。
「九網 偏光 烏と声明 表裏の間」
紡がれる破壊の呪詛。
空間が軋むような圧は呪力からか、ソレとも生み出されるものが発する破壊のオーラなのか。
【虚式:茈】
瞬間、特大の茈が司の眼前に現れた。
圧縮された破壊の仮想質量とエネルギー。
大気を引き潰し、弾き飛ばして。
大地に破壊の跡を刻みながら行進していく。
極限まで練られたソレは、都市どころか小国を滅ぼしかねない。
人一人を呑み込むにはあまりにも過剰。
直撃しても当たったかどうか分かったものではない
現に、彼のいた地点は最早原型を留めていない程破壊され尽くしたのだから。
【術式:
「―――そこか」
悟が目を向ける。
そこには、まるで瞬間移動したかのように司が現れていた。
瞬間、悟は急加速した。
無下限の応用を連続使用した超スピード。
一瞬で音速に達したソレは空気を押し退け、凄まじいソニックブームをまき散らす。
通常なら肉体が崩壊する。
おそらく最速の男である禅院直毘人でもこのスピードは出せない。
しかし五条悟なら出来る。
空気抵抗も肉体の負担も。無限によって全く考慮しなくて良い。
そんな悟の出すスピードは最早速いという言葉に収まるものではない。
速さはエネルギー。
ソレは破壊力へと変換する。
そのまま突っ込むだけで隕石の如き威力を発揮できるであろう。
迎え撃つ司の呪隷。
身の丈程のランスを持つケンタウロス型の美女。
緑色の髪を靡かせながら地面を蹄で踏みしめる。
地鳴りが鳴り響き、彼女の怪力を知らしめた。
ネリエル。
司のお気に入り呪隷の一体でありながら術式を持たない呪隷。
術式を捨てる縛りとして天与呪縛並のパワーを手にした。
古参メンバーである事から、司の呪力を長年与えられ続けている。
彼女自身の呪力と司の呪力で強化されたソレは、山をも破壊する怪力となる。
激突。
隕石の如き勢いの悟と、聳える山の如く堅いネリエル。
しかし無下限術式の前では彼女のパワーも届かない…。
【術式:纏雷】
止まっている悟に別の呪隷が突撃。
雷を身に纏って雷速で悟に急接近した。
文字通りの雷疾風迅雷。あまりの速さに悟でさえ反応が遅れる。
【領域展延】
領域展延による爪撃を一閃。
突破こそされてないが、無下限に罅が入る。
僅かに開いた罅を拡大させるため、他の呪隷も領域展延を仕掛けようとした瞬間…。
「領域展開―――」
五条悟が印を結ぶ。
呪術の極致、領域展開。
世界を己の心象世界へと塗り潰す御業。
だが、武玄司はソレを許さない。
彼は呪いに愛され祝福された者。
僅かな遅れを構築速度で補い、同時に持ち込んだ。
「領域展開──」
司も掌印を組む。
右手で天を、左手で地を刀印で指す。
天地統べてが俺のもの。そうとでも言いたげに。
ぶつかり合う領域。
展開される両者の支配領域。
領域と領域が侵食し合う。
ここに、両者の領域展開が発動…。
「無量空処」
「大欲天呪界」
各々の心象世界を再現した光景が拡がった。
急展開で申し訳ございません。
しかしこれ以上に悟と司を戦わせる理由が思い当たりませんでした。