順転と反転を合わせられるならどの術式にもありそうな気がします。
だから今回はソレを出しました。
無下限術式には、極ノ番がない。
悟は幼少の頃から疑問に思っていた。
何故取説があるのに極ノ番は記されてないのかと。
奥義である虚式「茈」でさえ極ノ番として扱われていない。
失伝したのか、ソレとも今まで誰も編み出せなかったのか。
とまあ、色々彼は考えたが答えは決まっていた。
ないのなら自分で作ればいいと。
彼は取り組んだ。
鍛錬と並行して極ノ番を編み出そうとする。
しかし、茈以上の術を作り出す事は出来なかった。
拡張術式や応用技は出来たものの、どれも小細工の範疇。
一線を画すような必殺技、極ノ番に届くことは無かった。
しかしこの日、やっと彼は到達した。
術式の極み。
無下限を極限にまで達し、解き放つ。
辺り一帯を己色に染める、領域とはまた違う世界を塗り潰す力。
無。
白い光によって敵に“無”を刻む。
物体、呪力、術式、全てにおいて。
この白い光の中では、あらゆるものが無と化す。
ソレは、武玄司とその呪隷も例外では無かった。
「(負ける…のか? この、俺が………?)」
白い光の中、無に還ろうとする司の身体と魂。
既に呪隷たちは消え、両者の領域も破壊された。
こんな状態でも自我を保てるのは流石というべきか。
「(………あんま怖くねえな。一度経験したせいか?)」
死のインスピレーション。
呪いを次の段階へ移行する為の大きな手掛かり。
劇中では真人や五条悟が該当する。
コレのおかげで真人は領域展開を、五条悟は反転術式を覚えた。
もしかしたら自分も。司はそう思っていたが、どうやら彼にも当てはまるらしい。
怨霊となって転生した彼は、死を経験している。
絶対である死が覆った以上、彼にとって死がインスピレーションには成り得ない。
そう彼は思っていた。
思っていた筈だった。
「(………嫌だ)」
死との直面。
経験した筈が忘れたもの。
ソレを回収し自覚してこそ、彼は次のステージに行ける。
「(嫌だ!)」
大した代償ではない。
少なくとも本人にとっては。
なにせ彼は一度死んで経験しているのだから。
だが拒絶した以上、後は呪いが全てやってくれる。
【術式反転:呪隷纏い】
やはり彼は、呪いに愛されている。
白い光が止み、元の世界に戻る。
領域は悟の極ノ番に耐えきれず崩壊した。
今は削れた無人島と大海原が広がっている。
「よお、やっぱ生きてたか」
「ああ、おかげさまでな」
悟が司の姿を捉える。
相変わらずキレイな顔と身体。
しかしその呪力は更に禍々しく変化している。
六眼はソレを正確に読み取り、悟も理解していた。
「今度は呪霊を取り込みやがったか。吸収して力を奪うとかやってることマジで呪霊じゃん。お前、本当に人間か?」
「さあな。俺も最近疑問に思ってる。特に今は完全に融合しきって肉体を持つ呪霊みたいなものだし」
司が生き延びた理由。
ソレは反転術式だけではない。
呪隷を吸収、融合する事で自身の肉体そのものを変えたのだ。
「しっかし酷い男だなお前。あんなキレイな女の子たちを食って生き延びたんだろ? 散々貢がせてタダ働きさせておいて、最後は文字通り食いモンにしてるじゃねえか。この女の敵め」
「いいんだよ。どうせ別の呪隷を孕ませたらソレを通して復活させることが出来る」
「………キッショ」
本気で引く悟。
普通の感性や常識からすればそうなるだろう。
「じゃ、やろうか」
「ああ、そうだな」
反転術式で無理やり脳を直す。
二人とも焼き切れた術式を脳髄ごと急造で修復させた。
恐るべきは司の呪力操作。
六眼もないというのに、この力技を初の実践で一発成功させた。
しかし負担両者共に大きい。
このような無茶はそう何度も出来ない。
だから、短期決戦で挑む。
「領域展開──」
「無量空処」
「大欲天呪界」
再び領域が展開された。
今回も押し合いは互角。
司が術式反転を会得しても変わらなかった。
だがソレで問題ない…。
「九綱 偏光 烏と声明 表裏の間」
「信仰 暗影 獣と咆哮 隷属の先」
両者共に呪詞を詠唱。
滾る呪力により空間が満たされる。
「虚式 茈」
「極番 渦巻」
ぶつかり合う最大出力の秘儀と奥義。
膨大な力の奔流が発生し、領域中を蹂躙。
両者の領域を形成する結界が悲鳴をあげ、激しく揺れる。
「極ノ番―――」
「虚式―――」
次の攻撃に入る両者。
正真正銘、最後の一撃………。
「無」
「
純白の光球と、ドス黒い光線が激突。
空間が更に軋み、亀裂が入り、揺れが大きくなる。
パリィィィィィィィィィィィィン!!!!!
領域から白と黒の光が“外”に飛び出す。
膨大な黒い光線と巨大な白い光球。
檻を破壊して現実世界に溢れ出たソレらは、昼と夜が同時に落ちたと見違える程。
二つの光は激突し、打ち消し溶け合いながら消滅。
その爆心地から司と悟が姿を顕す。
「悟うううううううううううううううううう!!!!!」
「司ああああああああああああああああああ!!!!!」
二人の掌には各々の呪力。
どれも最小限且つ初歩なもの。
もうその程度の術しか使えないのだ。
両者共に消耗しきった。
大技の連発と領域の展開で術式も焼け切れた。
反転術式さえままならない。
生命維持に最低限な部分だけ回復させ、敵の首を取りに前進する。
【【呪力弾】】
同時に炸裂。
司は腹部に、悟は胸部に互いの攻撃を喰らった。
弾けた呪力が互いの身体を喰い破り、血と臓物をばら撒く。
「「………」」
転がる二人の死体。
司の首と四肢、悟の下半身は力なく倒れた。
「たはー、参った参った。まさかあんな化け物が同世代に二人も現れるなんて」
少し離れた無人島。
岩礁地帯から縫い目のある女がスコープで二人の激戦を見ていた。
五条悟。
六眼と無下限呪術の抱き合わせ。
そして、呪術の極致に至った男。
拡張術式、術の応用、反転術式、術式反転、領域、そして極ノ番。
特に極ノ番は歴代で誰も成し得なかった偉業だ。
千年暗躍しながら呪術を極めたが、たった数十年の若者に超えられたような気分。
しかし悪くない。こうも予想がつかないから呪いの世界は楽しいのだ。
だがそれよりも気になる事がある。
「アレ何?」
武玄司。
女の興味は彼に集中していた。
コイツが本当に理解出来ない。
扱う術式も、無尽蔵の呪力も、纏う呪力の質も、美女美少女の姿をした呪霊たちも。
どれもこれも見たことが無い。一体何なんだこの男は。
呪霊操術?
嘘に決まっている。
質も量も術式も特級の呪霊たち。
あんなのを高が呪霊操術ごときで揃えられるわけがない。
アレはそんな生易しい術式ではなく、もっと恐ろしく禍々しい呪術だ。
彼自身の呪力もそうだ。
アレは明らかに人間の呪力ではない。
むしろ呪霊側。怨霊が受肉したと言った方が自然だ。
しかしそれはあり得ない。今まで試してみたが、ソレが成功したことは一度もないのだから。
だがもし仮に、もし彼がそういった存在なら…。
「呪いに祝福された新人類―――呪いの
震える。
未知への好奇心と探求心に。
知りたい、彼の事について。
だが、残念なことにソレは二度と叶わない。
「アレ、どう見たって死んでるよね?」
二人の呪力が喪失した。
原型を留めない島の上には、司の首と四肢、そして悟の下半身。
アレはもう流石に生きてない。というか生きてたらキショい。
そもそも、あの爆心地の中心にいて原型を留めていたことが奇跡なのだ。
「取り合えず、遺体回収するか」
死体さえあれば武玄の正体について分かるかもしれない。
分からなくてもソレはそれで仕方ない。
厄介な相手相打ちになってくれたのだら一石二鳥。文字通りの漁夫の利だ。
けど仮に、もし万が一、彼が自分の考える存在だとしたら…。
「計画を数段階飛ばして進めるかもしれない………!」
女―――羂索は満面の笑みを浮かべた。
・反転術式 呪隷纏い
文字通り呪隷を取り込み己の力に変える術式。
取り込んだ呪隷の呪力術式だけでなく、経験や技術も司の物として使える。
司は呪隷を通して術式を使えるのでそこまで重要ではない。
重要なのは、彼が反転術式を覚えた上、虚式を覚えた事である。
・虚式 零閃(ゼロ)
反転で取り込んだ呪隷と、順転でうずまきにした呪隷を掛け合わせた技。
二つの術が合わさり呪隷をどす黒い光線にしてて撃ち出される。
威力はうずまきとはけた違いに増幅され、浴びたものは何モノであろうと呪われる。
物質、霊魂、術式、概念、全てを呪い殺す。
元ネタは勿論虚閃。
司の祝詞は適当に考えました。