呪隷操術~呪霊を支配してハーレムを~   作:大枝豆もやし

27 / 31
復活

 

「で、結局ソイツら死んだってこと?」

 

 2018年10月31日、ハロウィン。

 真人達は無人の渋谷駅で“夏油”に司の話を聞いていた。

 

「そういう事になるね。武玄司は首から太ももが、五条悟は上半身全てが吹っ飛んでいた。首のあった武玄司の方が死ぬのに意識があった筈だから、武玄司の勝利と言って良いかもね。その後死んだけど」

「ふ~ん」

 

 特に興味なさげに真人は空返事した。

 

『けどその司という男の術式、正体は何だったのです?』

 

 全員の脳内に直接声が届く。

 花御。彼女の言葉は何を言っているが理解できないが、意味そのものは認識に干渉して直接届いてしまう。

 そのせいで仲間からも気持ち悪いと言われてしまう。

 

「分からない。結局、彼の術式を調べてもただの呪霊操術だった。呪力も並み。身体はただの呪霊操術の術者だったよ」

「何?ソレって身体じゃなくて魂に何かあるって事?」

 

 身体は、というワードに真人が反応する。

 

「おそらくね。彼の魂は間違いなく怨霊のソレだった。だから秘密は彼の魂にあると考えるのが妥当だろうね」

 

 反転術式で一新された体には、魂の呪力による残穢が存在しない。

 よって遺体からは魂の特性などは検知出来なかった。

 

「ふ~ん、そんな奴がいるんだ。生きてる間に会いたかったね」

 

 真人が少しだけ興味を示した。

 異質な魂とソレによる強大な力を持つと予想される司。

 魂を扱う呪霊であり、人の魂を玩具にする彼にとって、その話はとても大きなものだった。

 しかも、聞く話によると、司は呪霊の姿を変える事も出来る。

 ソレはつまり、自分が人の魂の形を変えるように。呪霊の魂の形を変えているのではないか。

 気になる。どっちが上が比べてみたい。

 遊び心と好奇心たっぷりな彼がそう思うのは自然のことだった。

 

「フン、儂は気に入らんなその男。呪霊を奴隷に変えてこき使う?万死に値するわ」

「そういう術式だから仕方ないだろ?ソレに、呪霊なら自然と跪くかもしれない」

「はぁ?」

 

 夏油の言葉に漏瑚は不機嫌さを隠さない。

 

「彼の呪力は呪霊に好かれやすいタイプだ。現に彼は引き寄せ体質でよく呪霊が集まっていたらしい。確か一か月近く同じ場所にいただけで呪霊の発生率が爆上がりしたって話だったな」

「………ソイツ本当に人間か?呪物の類いではないだろうな?」

「否定できないね」

 

 たはーと笑う夏油。

 

「もし仮に彼が生きていたら、呪霊の次のステージへの手掛かりになっていたのにね」

 

 

 

「へえ~、面白い話をしているじゃないか」

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 その声を聴いた途端、夏油と呪霊たちは身構えた。

 心地よい呪力の籠った声。

 このまま声の主に身を預けたくなるような安心感。

 ソレが逆に気持ち悪さを覚えた。

 

「この時を待っていた。お前らをまとめて潰す時をな」

 

 コツリ、コツリと。ゆっくりと靴音を立て少しずつ姿を現す。

 

 比例して大きくなる存在感。

 心臓を直接掴まれているような威圧感。

 しかし何処となく覚えてしまう安心感。

 初めての妙な感覚に呪霊達は困惑した。

 

「………嘘だろ?」

 

 この中で唯一人間*1の夏油はその正体にいち早く気づいた。

 

 見覚えのある姿。

 最後に見た時と全く変わりない。

 黒い髪も、赤い目も、白い肌も、その整った外見が。

 

「何故お前が生きている、武玄司!?」

 

 武玄司。

 死んだ筈の男が目の前にいた。

 

「―――ッ!」

 

 困惑(フリーズ)から立ち直った呪霊と術師は一斉に動き出す。

 陀艮は激流で弾幕を張り、花御は香りで妨害。

 続いて真人が改造人間をストックから、漏湖が火礫蟲をけしかける。

 術師の方は逃亡。呪霊を数体ほど出して自分は足の速い呪霊に乗って逃げ出した。

 

 

【術式:呪隷操術】

 

 

 司はその全てを封殺。

 呪霊たちは呪隷たちが自主的に対処。

 夏油は司直々に追いかけ、呪隷操術で捕獲する。

 

 

 紙の呪隷、小南。

 彼女の使役する紙の式神によって夏油の呪霊たちを足止めした。

 

 水の呪霊、照美メイ。

 彼女の繰り出す激流によって周囲の呪霊を一掃した。

 

 眼の呪隷、ヒナタ。

 彼女の千里眼によって夏油の呪霊による隠匿を看破した。

 

 幻影の呪隷、夕日紅。

 彼女の幻影操作によって夏油の呪霊が起こした幻影を突破した。

 

 封印の呪隷、みたらしアンコ。

 彼女の封印術によって夏油は完全に足止めさせた。

 

 憑依の呪隷、山中いの。

 彼女は夏油に憑依する事で術式を全てキャンセルさせた。

 

 

「厄介な!」

 

 仮想呪霊ガネーシャ。

 夏油はソレを召喚して取り憑いている山中いのを取り除く。

 ソレが致命的な隙となり、司の次の手を許してしまう。

 

「「領域展開」」

 

 両者は同時に領域を展開。

 司は夏油を捕獲する為、夏油は領域に対抗する為。

 ほぼ同時に展開された領域は二人を包み、閉じた世界を形成した。

 

「やっと捕まえたぞ、羂索」

「………やはり知っていたか、私の正体を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 漏湖vs鮫の呪隷―――ティア・ハリベル。

 火山と溶岩が、大海原が混ざり合ったかのような光景

 そんな矛盾した景色の世界で二人は互いの術式をぶつけあっていた。

 

「ソレほどの力がありながら術師に支配されるとは哀れな! そのような姿に変えられる前はさぞ強い呪霊であったであろう! 貴様を下劣な支配者から解き放ってやる!」

「………は?」

 

 噴火の如き勢いで炎と岩を噴出させる。

 ハリベルはソレを先程よりも強めの激流で押し流した。

 

「貴様、我が主を侮辱するか?ただの呪霊の分際で!」

「………何?貴様、話せたのか!?」

 

 怒気を見せつつも会話をする理性を見せるハリベル。

 漏湖は困惑した。目の前の呪霊は…否、呪隷は意識がある状態で従っていることに。

 通常、呪霊操術に支配された呪霊は、もっと機械的に動く。

 漏湖は以前、夏油に使役されている呪霊を見たことがある。

 その呪霊は意識も自我も存在せず、操り人形のように従っていた。

 命令された通りに動き、ソレ以外はなにもしない。

 口を動かすことも、心を動かした様子も、まして自分からは動きすらしない。

 術者に操作されるだけの道具。ソレが呪霊操術に使役された呪霊だ。

 

 この呪霊は違う。

 口を動かせる知能がある。

 怒りを見せる感情がある。

 自分で考えて判断した上で行動する自我がある。

 だからこそ漏湖は余計にこの呪霊が理解出来なかった…。

 

 

 

『理解に苦しみますね。貴方は知能だけでなく感情や自我を持っている。なのに何故率先してあの男に従うのですか?』

 

 花御vs灰の特級呪隷―――乱菊。

 青空に鮮やかな花畑と、灰塵が舞う荒野と曇り空が混ざり合ったかのような光景。

 そんな矛盾した景色の世界で二人は互いの術式をぶつけあっていた。

 

『報酬を得られるわけでも脅迫されている様子もない。ならばあの男に何故従うのですか?』

「決まってるじゃない。私たちがあの人を愛し、仕えることこそ至上の悦びだからよ!」

 

 乱菊は刀を振るって灰塵の竜巻を繰り出す。

 樹木を生やして防ぎながら花御は彼女を観察した。

 

「私たち呪隷は呪霊だった時と違う。ご主人様の愛によって奴隷になった私たちは、あの方に使っていただくことこそ存在理由なの」

『成程、そういう術式なのですね』

 

 灰塵が舞う中、恍惚とした表情で自分の身体を抱きしめる乱菊。

 豊満な胸が柔らかく形を変え、和服から見える谷間が自己主張する。

 ソレを見た花御は司の術式と呪隷という存在にアタリをつけた。

 目の前の呪霊は元の呪霊ではない。全く別の存在だと。

 

『不快な術式ですね。呪霊を縛るだけでなく心も変えるとは。下劣極まりない』

「そう思うのはアンタが無知だからよ。この素晴らしさを知れば自ずと屈服するわ」

 

 

 

「キッモ!お前の魂、呪霊に似てるけど全くの別物じゃん!」

 

 真人vs拒絶の呪隷―――織姫。

 人間の腕が格子のように二人を囲み、中央は学校や校庭がある奇妙な光景。

 そんな領域内で二人は互いに呪い合っていた。

 

「お前、呪霊じゃないだろ?何?」

「呪隷よ。呪霊と違って霊が奴隷の隷だけど。つまり愛の奴隷ってことね」

「キッショ。頭お花畑のホス狂い貢ぎ女かよ」

 

 魂に干渉するという特性のおかげか、真人は呪隷が呪霊でないことを直ぐに理解した。

 魂の形も質も呪霊と違う。おそらく術式によって変えられたのだろうと。

 洗脳というより存在そのものを変えるかのような術式。

 成程、確かにコレは呪霊操術より強力な術式だ。

 

「お前はもう呪霊でも何でもない。あの男の奴隷。道具だ。なら心置きなく壊せる」

「ソレがいいのよ。分かってないわね。ソレに、貴方も奴隷になるのよ」

「へぇ。つまり呪隷が倒した呪霊も奴隷に出来るのか。便利すぎるだろ」

 

 呪隷が倒した呪霊も調伏出来る。

 コレもまた呪霊操術にはない強みだ。

 

「けど、お前に俺が倒せる!?さっきから防戦一方じゃん!」

 

 改造人間や自身の魂を変えて多彩な攻撃を仕掛ける真人。

 しかしそのどれもが当たらない。

 彼女の周囲を飛び交う六つの盾。

 これらによって形成される結界に全て阻まれた。

 

「攻撃が効いてないのは貴方も一緒でしょ?私は防御と回復担当なの。問題ないわ。むしろ術式が一切効いてないあなたの方が問題じゃない?」

「(………ムカつく女だな。効いてりゃとっくに綺麗な顔と身体を醜い姿にしてやったのに)」

 

 内心イラつきながらも表情に出さないよう努める真人。

 織姫には無為転変が効かない。

 魂の形を変えるのは勿論、触れることすら出来なかった。

 織姫の術式、拒絶。彼女はコレで魂に触れる真人の手を拒んで無力化していた。

 改造人間や真人自身の攻撃も同様。拒絶の結界で全てを防ぎ、無効化していく。

 

「けど、お前が防戦一方なのは変わりないじゃん!どうやって俺に勝つつもり!?」

「あら、私が攻撃する必要なんて最初からないのよ?」

「は?」

 

 

 

 陀艮vs雷雲の呪霊、キャンディス・キャットニップ

 半分は南国のような穏やかな海と、もう半分は暗雲が立ち込み嵐が起こる海。

 そんな相反する景色の世界で陀艮は倒れていた。

 陀艮が相手するのはキャンディスだけではない。

 バンビエッタ、リルトット、ミニ―ニャ、そしてジゼル*2

 呪詛師だった頃の仲間と共に陀艮をリンチしていた。

 

「悪かったな、アタシたち呪隷は領域内なら術式の共有も出来るんだよ」

 

 キャンディスの領域を通して、全員が雷の呪術を混ぜた己の術式を使用。

 必中効果は消えたが、こういった使い方が出来る。

 これも呪隷の強みの一つだ。

 

「「「ご主人様に対峙した時点でお前ら(貴方たち)は終わったんだよ(のよ)」」」

 

 異口同音。

 違う領域で呪隷が放った言葉が揃った。

 

*1
千年生きる脳みそを人間といえるかは疑問だが

*2
呪隷なので女です




はい、司くん生きてました。
ネタは次回でばらします。
まあ、無事だったというわけではないのですが…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。