というか来るわけがない。
羂索と九相図たちの生得領域が混ざり合った領域。
彼らはそこで存分に呪い合っていた。
「(クソ、厄介だね!)」
羂索は苛立っていた。
九相図たちにとって羂索は不倶戴天の怨敵だが、羂索にはわざわざ九相図と戯れる理由はない。
呪霊操術で適当な呪霊をけしかけ、自分は武玄司を持ち帰りたい。
だが、ソレは出来ない。
【術式:呪霊操術】
【術式:呪隷操術】
相手も似た術式を持っているから。
その上、司のソレは上位互換と言って良い術式。相性は最悪だ。
大鯰。恐竜の呪隷、うるティが相手する。
術式を発動する度に跳んで回避し、隆起する地面を尻尾で破壊。凄まじい頭突きを大鯰にぶちかました。
疱瘡婆。妖刀の呪隷、光月日和が相手する。
死の呪いが込められた櫃を妖刀で斬り、天然痘のウイルスを妖刀の光で無効化させ、呪いの斬撃を繰り出した。
黒沐死。蜘蛛の呪隷、ブラックマリが相手する。
ゴキブリの大群に同じ量の蜘蛛で対抗。滑空或いは疾走する黒沐死の動きを蜘蛛の糸で制限し、絡め捕る。
悪路王。犬神の呪隷、ヤマトが相手する。
鬼の怪力、雷や雷雲による電撃、その他神通力など。その全てに対抗。犬神が呪霊化した呪隷である彼女は、鬼神と互角の性能を発揮した。
トイレの花子さん。幽霊の呪隷、ペローナが相手する。
どちらも幽霊或いは怪談がモチーフの呪霊。呪いと霊魂による攻撃がぶつかり合い、戦闘が激化していく。
「(あのクラスの特級をポンポン出せるなんて羨ましいよ。こっちは何百年もかけて作り出してきたっていうのに)」
次々と現れる特級呪隷たち。
特級勝負では相手にならないなら、呪霊の数ではどうだ。
今までコツコツと溜めて来たのだから量では勝っている。
如何に特級とはいえ、宿儺や五条悟などの例外を除けば、たとえ等級が下でも数で圧倒されると潰される筈だ。
そう考えていたのだが、あっけなく否定されてしまった。
司の呪隷たちは数も多い。
多対一に優れている呪隷も十分存在していた。
かつては竜の姿でありながら美少女の姿を獲得し、自身の牙にあたる剣を振るう。
その度に獄炎が巻き起こり敵を焼き尽くしていった。
かつては典型的な悪魔のような姿でありながら美女の姿を獲得し、自身の象徴である滅びの光を放つ。
防御不可能の破滅の呪い。ソレを浴びた物は例外なく破壊された。
かつては典型的な怪物の姿姿でありながら美女の姿を獲得し、自身の象徴である獄炎で敵を焼き尽くす。
防御ごと燃える炎。ソレを浴びた物は例外なく燃やされた。
かつては持つだけで呪われる魔剣だったが美女の姿を獲得し、魔剣の効果を発揮する。
様々な能力を持つ魔剣で敵をせん滅していった。
「(本当に何でもありだね。数十年しか生きてない君がどうやってそれほどの数の特級呪を集めたんだい?)」
明らかに不自然。
特級は特別だからこそ特級。
こんなにポンポン出てくるなら特別とは言わない。
いや、もしかしたら武玄司にとって特級とは特別たり得ないのかもしれない。
考えれば考える程仮説は出てくるが、今はそんなことを考える暇も意味もない。
この男さえ確保してしまえばいくらでも研究出来るのだから。
もう少しで奥の手が完成する。
この領域を破壊し、自身の領域に引き込めば・・・。
「無駄だ。お前の“閉じない領域”は意味を為さない」
「ッ!!? 気づいていたのかい?」
一瞬だけ驚愕のあまり動きを止める羂索。
しかしほんの一瞬だけ。すぐさま立ち直る。
落ち着け、あんなのはハッタリだ。よく使う手じゃないか。
呪術師というのは嘘つきだ。自分がそうなのだからよく分かっている。
「お前は閉じない領域で外からこの領域を破壊する算段なのだろうが、ソレは無理だ。領域外にも予め配置した俺の呪隷がお前の領域を相殺している」
「全てお見通しだと? しかしソレにしては私の領域を侵食した感触がないね」
羂索は司の呪隷に対処しながら外から閉じない領域を操り、九相図の領域をこじ開けようとしていた。
司と呪隷たちに気づかれないよう、こっそりと。領域を通して結界術を使い、領域を破壊しようとしていたのだ。
感触はある。外の領域は生きている。ならばこの言葉はハッタリだ。聞く意味はない。………通常ならば。
「ああ、お前の言う通りだ。普通ならそんな真似すればお前は気づく。だが、普通じゃない呪隷ならソレが可能なんだよ」
言葉の意味が理解出来なかった。
そもそも呪隷自体が普通ではない。
ならそれ以上に普通ではないとは何か。
特級すら普通の範疇であろう司にとっての普通では無いとは。
「キッショ。死体が話してるじゃん」
領域から呪隷が侵入する。
この場にいる呪霊や呪隷とは比べ物にならない大物。
彼女たちの主である司と同等以上の力を持っていた筈の男であった呪隷…。
「まさか………五条悟!?」
五条悟。
歴代最強の呪術師。
彼だった彼女が、呪隷として甦った。
羂索が最も警戒し、今世最も恐れた男だった筈の術師が、最悪の形で現れたのだ。
【領域展開:無量空処】
上塗りされる領域。
一瞬で拡がる宇宙のような光景。
通常なら押し合いが発生するが、領域の半分は味方の呪隷が形成している。
彼女達が後押しする事で領域は羂索の領域を瞬く間に浸蝕。
むしろいつも以上に早く正確に領域が完成された。
羂索が何か行動する前に潰す。
彼女の領域にはそんな意図が目に見えていた。
【術式合体:闘血操術 血閃】
九相図全員*1が術式を合わせて発動。
繰り出された六つの斬撃によって羂索は祓われた。
やっと排除出来た。
邪魔でどうしようもなかった奴が。
最大の障害である羂索を遂に撃破した。
羂索。
原作において全ての元凶ともいえる存在。
千年もの間、呪術界で暗躍し続けた物語においての黒幕。
彼(彼女かもしれない)の目的は呪力の最適化。
人類を天元と融合させ、術師の壁を越えたその先を見たいというものだった。
まあ、そこはどうでもいい。問題はコイツが俺の正体を知ったら絶対にそっとしてくれないという点だ。
正直に言って、俺の存在はかなり異端だ。
前世の記憶を持って漫画の世界に転生。神か何か知らないが、転生特典みたいな感じで天与呪縛を受け取った。
魂は怨霊でありながら呪肉体ではなく自前の肉体を持ち、人間に近い生物として成立している。
呪霊としての術式と身体の術式が統合された結果、呪隷操術という術式に目覚めた。
反転術式を覚えた結果、呪隷から転生することで事実上の不老不死を獲得。
呪隷たちにも肉体を与える事で人間に近い存在に変えることが出来る。
コレって、羂索が見たかった人類の進化先じゃね?
流石に天元ほどブッ飛んだ存在ではないが、その中間点には十分いるだろう。
もし仮に知ったら絶対にそっとしてくれない。
現に、俺の異端さを説明したら他の奴らは悍ましそうにしてたのに、アイツは目を輝かせていた。
だから先手を打たせてもらった。
奇襲に近い形で優位なフィールドに引きずり込み、一気に畳みかける。
逃がしたら次はない。どんな手でリベンジするか分かったものでは無い。
千年の暗躍によって呪術会を乗っ取った羂索。
搦め手と呪術の造詣において、奴を超える者はこの世界にいない。
もしここで仕留められなかったら、想像も出来ないような罠や手段で俺がやられていたであろう。
「(いや~、本当に都合よく新しい拡張術式生えてくれてよかったぜ。あのまま死んだと思ってからな)」
このやり方は偶然の産物だ。
最初から計画したわけじゃない。
五条悟と相打ちになったのは事実だし、あの時は呪隷から転生出来るとは思ってなかった。
だから驚いた。俺はマジで死んだと、もう無理だと思っていた。
けど、こうして再び生を得た。思わぬ術式反転の拡張術式によって。
俺はこの幸運を存分に利用することにした。
世間体では死んだままにして、渋谷事変に乗り込む。
死体があったおかげで見事に羂索も騙されてくれた。まあ実際にあの時死んだけど。
作戦は大成功。
何も知らない羂索に奇襲をかけ、一気に制圧。
これで邪魔者は死んだ。この世界で俺の脅威はもうない…。
「………いや、一つあったな」
異様な呪力を感知した。
暴力的なまでに強大且つ邪悪な呪力。
会った事はない。しかしずっと前から知っている呪力だ。
「呪いの王に俺の呪いは通じるのかな?」
宿儺。
呪いの王の異名を持つ原作最強のキャラ。
終始完全復活することはなく、彼の強さは最後まで分からなかった。
前世の俺は宿儺に憧れていた。
常に己の我を通し、何ものにも縛られない生き方。
俺もそんな風に生きたいと思い、今世ではそうしてきた。
だから邪魔なんだよ。
俺の世界において人間は俺一人だけでいい。
「行くか」
俺はゆっくり歩いて行った。
呪いの王が座する元へと。
・呪隷操術の呪霊を取り込むルール
①術者は祓った呪霊を必ず取り込まなくてはいけない
②司の呪力によって殺された術者は呪霊と化して取り込まれる
③取り込んだ呪霊は調伏させて呪隷にするか呪力の塊として取り込むか、それとも呪隷の強化に使うか選べる
④術式がオーバーヒートする等して使えない際は生得領域に自動的に保存され、術式が回復した際に調伏するか否か選べる
五条悟の呪隷としての姿は渋でTSしたイラストを参考にしてます。
或いはちょと前まで問題になってた海外のジャンプキャラTSソシャゲ
皆さんもお好みの姿を想像してください。