呪隷操術~呪霊を支配してハーレムを~   作:大枝豆もやし

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一端

 

 ◯月✕日

 入学して一週間で不登校になった。

 別にいじめとかはない。あったとしても今世の俺なら全員病院どころかあの世行きだ。

 不登校の理由は学校に行く意味なんて無いから。

 前世の俺は大学まで行った社会人。なのに小学生からやり直すなんて冗談じゃない。

 ただでさえ俺は学校が嫌いなんだ。もう二度と行きたくない。

 

 前世の俺にとって学校は刑務所みたいなものだった。

 社会(シャバ)に馴染むため型に嵌められ、合わない人間は淘汰される。

 落ちこぼれ、劣等生、不適合者。そんなレッテルを張られる。

 

 誰があんな牢獄に入るか。

 ただでさえ家という牢屋に入れられてるんだ。これ以上増やされてたまるか。

 

 だから今日も俺は学校に行かず一人で呪力訓練を行う。

 呪霊と戦って技を練って磨き、経験を重ねる。

 この力だけあればそれでいい。

 

 

 △月●日

 術式っぽいのが出来た。

 呪力を破壊エネルギーとして飛ばしたり、呪力を込めた物の軌道を操ったりと、ただの呪力操作では出来ないことが出来た。

 ハンターハンターの念能力系統を参考に冗談半分でやったのだが本当にできてしまったのだ。

 特質系だけは出来なかったが、逆を言えば全部の系統が使えるということになる。

 一体俺の術式はなんだ? 何故術式らしき力を複数持っている?

 まだ良くわからないがこれだけはハッキリしている。

 これが俺の術式ではないと。

 

 術式は時が来れば無意識に理解するという。

 だから分かるのだ、このどれもが俺の術式ではなく、術式の一端だと。

 では、本来の力は何なのか。ソレはまだわからない。

 けど時が経てはきっとわかる筈。その為に今は強くならなければ。

 

 ×月△日

 今回祓った呪霊はけっこう強かった。

 雲に関する術式を使って来る呪霊。

 雷だったり、泡だったりと。まるでワンピースの天候棒みたいな奴だ。

 けど俺には通じない。呪力で身体を強化し、接近して黒閃をぶち込む。

 距離を取られても呪力弾を飛ばしたり呪力剣で対応。今の俺に穴はない。

 まあ、結局俺の黒閃一発でダウンしたが。

 問題はその後。呪霊を倒す事で呪力が回復……正確に言えば、更に俺の呪力が強化された。

 

 今思えば、俺の呪力は恐ろしいレベルで上がっている。

 最初は誤差の範囲内なので気が付かなかったが、一度認識したら心当たりはいくらでもあった。

 そこで俺はやっと気づいた。俺は倒した呪霊の呪力を取り込んでいると。

 呪力量は術式同様に生まれた時から決まっており、特定の条件下で一時的に強化されたり、制御を学んでより効率的に使える事はあっても、成長して増えるなんて描写は無かったはずだ。

 いや、最後まで読んでないから断言はできないが、少なくとも成長して増えるなんて場面は無かったはずだ。

 けど、俺が呪霊を取り込んで成長しているなら辻褄が合う。

 では俺の術式は倒した呪霊の呪力を吸収することか?……いや、それも違う。

 それでは複数の術式らしき力が説明出来ない。術式も吸収できると思ったが、倒した覚えのない術式もある。

 もし仮に俺の術式が呪力と術式を奪うものでも、無いものは奪えないだろう。

 

 まだ俺の術式が目覚めていない。

 もう七歳になるというのに、一体いつ覚醒するんだ?

 

 □月▽日

 閉め出された。

 正確に言えば俺が外にいることに気づかずに母親が戸締りして忘れやがった。

 まあいい。いつ家を出てもいいようにサバイバルの知識は叩き込んでるからな。

 狩りや釣りのやり方、食える野草や茸の知識、罠の仕掛け方やその為の知識、DIYのやり方やその道具の知識等等。一人で生きる為の知識と技術はちゃんと学んでいる。

 実践も呪力訓練と呪霊狩りがてらにやっており、ちゃんと身についている。問題はない。

 しかし、俺のことを忘れるなんて何にハマったんだ?

 

 □月☆日

 俺の住んでる町だけ呪霊が多い。

 隣町には一切いないのに、俺の行動範囲内だけ遭遇する確率が異様に高い。

 何か悪さする前に俺が倒しているので今のところ問題はないが、一体なぜ俺の町だけ呪霊が集まるんだ?

 そういえば、俺が強くなる度に呪霊の質も量も上がってきたな。

 何か関係あるのか?

 

 

 

 真夜中の山奥。

 廃屋が木々に隠れるかのようにポツンと佇んでいる。

 司が普段使っている秘密基地。

 この場を知っているものは地元でもあまりおらず、知っていても不気味がって近づかない。

 内部は比較的綺麗で家具も使える。流石に電気や水道は使えないが、気温が良好なら最低限の寝泊まりは出来る程だ。

 秘密基地には絶好な場。ただ一つだけ問題を挙げるとするなら……。

 

『子供ぉ? 何でこんなとこにぃ?』

 

 その周辺には呪霊が出る。

 別に曰く付きとかではない。

 確かに不気味だが事件などの話題は一切無い。

 しかし、何故かこうも司は力の強い呪霊を見掛けるのだ。

 

『かわいいねぇ。オニャマエ、なんてぇ言うのぉ?』

「何だお前?話せるのか?」

 

 舌足らずの様子で話しかける髑髏の顔をした呪霊。

 黒い和服に髑髏の仮面をした橙色の髪の長い人型呪霊。

 呪霊に性別があるか疑問だが、体形からして女だろう。

 彼女の周囲には盾のようなものが飛んでおり、ソレが術式だと伺える。

 

『うん、話せるのぉ。だから…オトモダチになろぉ?』

 

 そう言いつつも呪霊は盾を司に飛ばしてきた。

 先端が鋭く尖っている無数の凶器。それらを跳んで回避する。

 司のいた地点に盾が幾つも突き刺さり、派手な音を立てて周囲を破壊する。

 

「(あ~あ、折角の良い秘密基地だったのに。反転術式使えたら直せるかな?)」

 

 壁が破壊される廃屋を空中で眺めながらため息を付く司。

 こういった状況には慣れている。特に驚くことはない。

 

『オハナシしましょぉ~~~!』

「クソ、話す気ねえだろ」

 

 Uターンして飛んでくる盾。

 司はソレをノールックで再び跳んで避けながら愚痴を吐いた。

 まあ、こんなことになるのは彼も最初から気づいており、警戒していたからこうして不意を突かれることなく避けられているのだが。

 

 司はこれまで話せる呪霊と何度か遭遇したのだが、話し合いで解決したことがないのだ。

 言葉が理解できるからと言って話が通じるとは限らない。

 

 そもそも呪霊と人間とでは価値観は勿論、存在そのものが違う。

 人を呪うから呪霊なのだ。人が息をして飯を食うように、呪霊は本能的に誰かを呪う。呪霊とはそういう存在である。

 話し合いなど無駄。呪うか呪われるか。ソレが呪霊と関わる事である。

 

『ナンで避けるのぉ?』

 

 司の着地地点目掛けて盾が飛び交う。

 空中で方向転換が出来ない。しかし彼は焦るどころか余裕の笑みを浮かべていた。

 

【黒閃】

 

 司の蹴りが盾に炸裂した。

 同時に迸る黒い閃光。

 勢いで空気が震え、衝撃音が森に響き渡る。

 子供が……いや、人間の力ではありえない膂力。

 しかし、ソレを以てしても盾は破壊されなかった。

 

「(ッチ、堅いな。ソレに呪力の破壊効果も薄い。これが奴の術式か?)」

 

 蹴りの反動で再び跳び上がりながら考察する司。

 堅いだけではない。あの盾には何か術が施されている。

 妙な違和感。呪力の練りを無理やり断絶されたような感覚。

 少なくとも力ずくで破壊するのは得策ではない。よってやり方を変えた。

 

「なら、これならどうだ?」

 

【術式 念動力】

 

 迫り来る盾に向けて手を翳す。

 瞬間、盾は空中で急停止。重力を思い出したかのように落下した。

 

「成程、術式を乱す効果があるのは刃の部分だけか」

『すごいねぇキミィ。なにしたのぉ?』

「誰が自分の術式教えるかよ」

 

 否、コレは司の生得術式ではない。

 正確に言えばその一端。

 自身の呪力を込めた物を自在に操る操作系の技である。

 

『けどまあいいわぁ。オトモダチは他にもいるんだから』

 

 呪霊が髪からヘアピンを外し、司目掛けて投げる。

 牝鹿、牝ライオン、大蛇。動物の髑髏の飾りがついた三つのヘアピン。

 ソレは空中で呪霊となり司に襲い掛かってきた。

 

【術式 念動力】

 

 一匹目、牝ライオンの骨格のような呪霊。

 先程止めた呪霊の盾を操って迎撃。

 イメージは念力。腕を振るって叩きつける要領で盾を操り、先端の尖った部位で破壊する。

 盾の呪霊の術式と司の呪力、そして牝ライオン型呪霊の突進の威力が合わさったカウンター。

 骨のみの身体はぶつけられた盾と共に砕け、塵へと還っていった。

 

【術式 呪気力弾】

 

 二匹目、牝鹿の骨格のような呪霊。

 呪力の弾丸を飛ばして迎撃。

 盾を操っている逆の手を翳し、マシンガンのように呪力を圧縮した弾丸を連射する。

 圧倒的な連射速度と破壊力により骨のみの身体は削られ、怨念の塵となって消えた。

 

【術式 呪力剣】

 

 三匹目、大蛇の骨格のような呪霊。

 呪力の剣を創り出して迎撃。

 ビームサーベル状に圧縮された呪力が大蛇の身体を豆腐でも切るかのようにあっさりと切り裂く。

 凄まじい切れ味によって骨のみの肉体は細切れになり、地面へ零れ落ちた。

 

 これらに掛かった時間、約十秒。

 彼は二級相当の呪霊を平均して三秒程で倒してみせた。

 

「次はお前だ」

『すごいすご~い! 術式いっぱい使えるんだ!』

 

 

『けど、もう終わりよ』

 

 突然、津波が起きた。

 司の背後から突如現れた骨だけの魚型呪霊。

 予め用意されたヘアピンから元の姿に戻ると同時、術式を行使したのだ。

 

「ッチ!」

 

 舌打ちしながらも対処しようと動き出す司。

 子供など簡単に飲み込めるほどの奔流。

 荒れ狂う津波から逃れようとその場から跳び立つが、あまりにも巨大過ぎた。

 彼の努力を嘲笑うように、司の小さな体を飲み込む激流。その光景を見て、呪霊は己の勝利と司の死を確信した。

 

【術式 爆呪波】

 

 しかし次の瞬間、水の牢獄は突き破られた。

 司の呪力から生み出された巨大な爆発。

 ソレが水を蒸発させたのだ。

 

 

『………え?』

 

 呪霊は飛び散る水飛沫を浴びながら、ソレを呆然と眺めていた。

 時間にして約数秒。しかし戦いにおいては大きな隙となる。

 

「よくもやってくれたな」

 

 司と呪霊たちの目が合う。

 黒い筈の瞳が赤く光る。ソレに呼応するかのように彼の周囲を赤い呪力(オーラ)が溢れ、両手の間には呪力が圧縮され、赤黒く輝いていた。

 

【術式 真波砲】

 

【術式 波防堤】

 

 赤黒い光がレーザーとなって撃ち出された。

 咄嗟に水の防壁を張る鮫型呪霊。しかしレーザーは呪霊ごと容易く突破。

 そのまま鮫型呪霊は焼き尽くされた。

 

『~~~! 行って最後のオトモダ…「させるかよ」 !?』

 

 呪霊が最後のヘアピンを使って新たな呪霊を召喚しようとする前に、司は呪霊に急接近した。

 赤いオーラを滾らせることで全身の細胞一つ一つを強化し、身体機能そのものを底上げ。

 更に体外へ漏れる呪力が外付け筋肉となって相乗的に身体能力を強化している。

 今の彼なら10m20mなど一足でたどり着ける距離でしかない。

 

【黒閃】

 

 司の拳が呪霊を捉える。

 呪力によって相乗的に引き上げられた拳の威力。

 拳のみ赤いオーラが黒へと変貌し、更に相乗され、凄まじい威力となった。

 黒閃が発動したのだ。

 

『ガハ…!?』

 

 一撃必殺。

 相手は少なく見積もっても準一級。

 二級相当の呪霊を従え、術式を防ぐ盾を使う呪霊。

 ソレをたった一撃で倒したのだ。

 

 こうしてこの場の呪霊は全て倒した……筈だった。

 

「おっと」

 

 背後から奇襲が仕掛けられる。

 しかし、司は並外れた感覚でソレを察知。

 高く跳び上がって奇襲を避け、空中で敵を観察する。

 そこにいたのは人間と馬の骨が合わさったかのようなケンタウロスの骨格標本みたいな呪霊だった。

 

「(あれは……ああ、そういやさっきの呪霊最後に何か出そうとしてたな。ソレか)」

 

 敵の正体が分かってもやる事は変わらない。

 呪力を滾らせて赤いオーラを纏い、それに呼応するかのように瞳が赤く光る。

 

【黒閃】

 

 そして、黒い閃光と共に打撃がぶち込まれた。

 呪霊の脳天目掛けて回転踵落とし。

 盾の呪霊を倒した時以上の威力。

 しかし、ソレだけではケンタウロス型の呪霊は祓えなかった。

 

【黒閃】

 

 再び黒閃をぶち込む。

 空中回転蹴り。

 踵落としの勢いを利用して、空中で身体を回転させながら顔面を蹴る。

 先程よりも威力は落ちるが、確かに黒閃は発動した。

 しかし、ソレでもケンタウロス型の呪霊は祓えなかった。

 

【黒閃】

 

 再度黒閃をぶち込む。

 ストレートパンチ二連発。

 胸部を撃ち貫く二つの黒い光によって呪霊は倒れた。

 しかし、これだけやってもケンタウロス型の呪霊は祓えなかった。

 

【黒閃】

 

 最後の黒閃をぶち込む。

 着地したと同時に再び跳び上がり、全力で蹴り飛ばす。

 赤く滾る呪力を血流のように循環させて身体を強化。

 外に漏れ出たオーラを纏うことで更に強化。

 呪力を足に込めて撃ち出す。

 

『!!?』

 

 悲鳴をあげることもなく最後の呪霊も消えて行った。

 

 

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