気が付くと、俺は肉に包まれていた。
男好きそうな体で誘惑する美女美少女たち。
どれも風船のような胸にむっちりとした臀部をしている。
供物のように用意された彼女たちに俺は手を伸ばした。
差し出された肉に噛り付く。
たわわで瑞々しい肉の果実。
絞るかのように揉みしだき、貪るかのように口に含んだ。
一度口から離し、もう一度噛んで歯形を付ける。
これは俺の物だ。俺以外の男に触れさせない。
次から次へと俺は肉共に印を付けた。
我ながら身勝手な考えである。
人は誰の物でもない。当人だけの物である。
だというのに、一度寝ただけで自分の物だと思っている。
だが、俺なら許されるのだ。
自分でも馬鹿らしくなる程に傲慢な思想。
しかし、今の俺なら出来ると、謎の確信があった。
【術式展開 ●●●術】
俺は彼女たちに奴隷の証を刻み込んだ。
「なんだそりゃ」
冬の森、真夜中で野宿。
焚火で暖を取って寝ていた俺は、ゆっくりと起き上がった。
ここは俺のキャンプ場。
母親の浮気がバレて修羅場の家に帰りたくない俺はここで暮らしている。
衣食住は揃ってない。服はボロボロだし、食事はその辺で捕ってきた獣を捌いている。家もないから空き家だったり野宿している。
我ながら最悪な暮らしだ。原始人の方がまだマシな生活している。これでもし呪力なかったら俺はとっくに飢え死にしていただろう。
「(栄養バランスとか全然考えてねえしな。全部呪力任せだ)」
食物を呪力で必要な栄養に変換出来る代わりに量が増える。そういう縛りで栄養バランスの問題を無理やり解決した。
我ながら力技にも程があるのだが、これしか方法が無かったんだ。
いや、今はそんな事はどうでもいい。何で俺はあんな淫夢を見たかだ。
「(俺、溜ってるのか?……いや、精通すらねえのに)」
七歳児である俺に性欲なんてある筈が無い。
だというのに何故あんな夢を見たんだ?
まさか、俺もあの父親の子という事か?
焚火の燃料代わりにしている新聞紙に手を伸ばす。その見出しには俺の父親が三股していることについての話題が掲載されていた。
三股していた女性の中に俺の母親はいない。だというのに、あの男は母親の浮気についてブチ切れている。
本当に勝手な男だ。結婚もしてないのにあの女を自分の物にしたと勘違いしている。だから浮気されるんだ。
バカバカしい。こんな事に関わりたくない。というわけでしばらく俺は家出している。
けどそれも終わり。そろそろ洗濯物も溜ってきたし調味料も底をついた。一度帰宅して補給しなくては。
焚火を蹴りの風圧で消して一度帰路に就く。
今は真夜中。こっそり入ったらバレずにいけるだろう。そう考えたんだが……。
我が家は事件現場となっていた。
「………は?」
思わず呆然とした。
うるさいぐらいに鳴っているサイレンに、家にはキープアウトの黄色いテープ。周囲には野次馬が集まっており、何やらガヤガヤ話している。
ナニコレ?俺がいない間にどうなってるんだ?
その場でしばらく唖然としていると、野次馬の会話が耳に入っていった。
「あの売女、ご主人に浮気がバレたんですって」
「ご主人? あそこ母子家庭じゃないの?」
「ソレが愛人だっていうのよ?どこかのお金持ちのね」
「子供作っておいて籍入れないなんて碌な男じゃないわ。ソレに引っかかる女もそうだけど」
そんなことはとっくに知っている。もっと有用な情報はないのか。
「ソレで浮気した女を殺したのかよ。勝手な男だな」
………ああ、やっぱそういうことか。
なんとなくこうなることは予想していた。
孤独に耐えきれなくなった母が他の男に目移りした時点で、こうなる未来はうっすらと見えていた。
釣った魚に餌をやらないくせにプライドは高い父親。
メンヘラだが自身の美しさに絶対の自信を持つ母親。
二人の間に地雷があるのは目に見えていた。
浮気は火種に過ぎない。爆弾は最初から埋まっていたんだ。
けど俺は何もしなかった。
知っていながら放置していた。
俺を殴る父親は単なるATM。
俺で遊ぶ母親は家事代行機。
俺にとって両親とは道具だった。
我ながら冷たい人間だ。
虐待されたからといっても、父親は金をちゃんと入れてくれた。
愛する男の代用品だとしても、母親はちゃんと愛を見せてくれた。
なのに、俺は一切悲しむどころか、二人を道具扱い。ちゃんと人間の心あるのか?
俺は悲しんじゃいない。
むしろ、縛っているものが無くなって生き生きしている。
そう、俺は自由になったんだ……。
途端、空気が重くなった。
「!!?」
慌てて空を見上げる。
夜中だが満月のおかげで明るかった空が暗闇に包まれている。
この現象には覚えはない。だが知っている現象だ。
「………帳?」
帳。
呪術廻戦で術を秘匿するために使う結界術。
誰かがこの町を帳で覆っているのだ。
けど、何の為に?
俺はその場を黙って走る。
何故だか分からないが嫌な悪寒する。
理由は知らんが、この場にいてはいけない。
兎に角、一刻も早く離れないと……。
瞬間、俺の親の家が爆発した。