「はぁ…はぁ…はぁ…」
あれから十分後、司は全ての敵の殺害に成功した。
確かに敵の大半は非術師。一部の呪詛師もその多くは術式を持たない者ばかりであった。
しかし、非術師といっても、銃や刃物で武装し、中には呪具を持つ者もいた。
総勢百人余りの大人たち。たとえ強力な呪力と術式を持つ子供とて、五条悟でもない限り敵わない筈である。
しかし、ここに例外がいた。
強大な呪力、複数の術式もどき、そして様々な呪霊と戦ってきた術師としての経験。
それらが組み合わさった結果、大人の術師にも負けない程の実力を発揮する。
おそらく、今の彼なら一級術師にも届くであろう。
「く…はぁ……」
だが、そんな彼でも武装した大人と呪詛師の相手は厳しかった。
どれだけ強くても今の彼は七歳児。体力の問題は大人よりも大きい。
呪力も体力も底を付いている。早く体を休めなければ。
しかし今の彼にはゆっくり休憩している暇などなかった。
「(取り合えず、この場から離れないと!)
疲労で悲鳴をあげる身体に鞭を打って立ち上がる。
戦いの余波でボロボロになった町。
司は出来るだけ町に被害が出ないように戦ったが相手は違う。
野次馬が集まっている中、いきなり爆発の術式を使ってくるような奴だ。
人を巻き込まないようにするどころか、むしろ盾に使って司を妨害するぐらいまである。
結果、司も町に被害が出るような戦いをせざるを得なかった。
呪力弾や呪爆などの余波で破壊された道や建物。
敵の流れ弾に巻き込まれた人々の死体。
呪爆や爆弾の余波で燃え盛る炎。
凄惨な有様である。
「(帳は……まだ解除されてないか)」
空を見上げる。
相変わらず真っ暗な空。
これだけ暴れたというのに、外界からの干渉が一切出ていない。
帳は健在。
まだ終わってないという事である。
「(これ以上ここにいるわけにはかねえ。敵が来る前にどこかに逃げて……!!?)」
突然、司は背後を振り返る。
司の目に映ったのは、異様な存在感を放つ黒い卵。
ピキピキと殻の割れる音と共に、亀裂が大きく広がっていく。
「(あれは……もしかして呪胎か!?)」
呪胎。
文字通り呪霊の胎児。
今まさに呪霊が生まれようとしているのである。
「クソ!」
呪胎目掛けて走り出す司。
何故いきなり呪霊が生まれるようとしているのか、そもそも何でそれほどの呪力が集中しているのか。そんなことはどうでもいい。
大事なことは一つ。今の司は連戦出来るような状態ではないという事。
故に、彼は即座に手を打った。
何かされる前に潰す。
先手必勝。しかも相手はまだ生まれてすらいない。
しかし、今回ばかりは悪手であった。
【術式 呪爆】
「!?」
司は咄嗟に呪力でガードを固める。
途端に広がる大爆発。
爆風で辺りが覆われ、視界が奪われた。
「(この術式、もしかして……!?)」
ここで、司はあることを思い出した。
術師は呪力以外で殺されると、呪霊に転じる。
原作でも言及された事であり、現にとあるキャラが呪霊として復活した。
では、今回はどうだ?ちゃんと呪力でトドメを刺したであろうか。……断言は出来ない。
敵との戦いは混戦状態であった。
いちいちどうやって殺したかなんて覚えている筈が無い。
余波や流れ弾などの副次的な要因で死んだ可能性は十分あるし、中には呪力節約の為に敵から奪った銃や刃物で普通に殺した相手もいた。
ちゃんと呪力でトドメを刺していたかはかなり怪しい。
更に、この場は呪力で満ちている。
これを取り込むことでより呪霊が生まれやすく、より強い呪霊となりやすい。
そしてもう一つ呪霊が生まれる要因がある。
司の縛りによる体質である。
普段は生き餌として利用していた己の体質。
本来ならリスクとなるものであり、これのせいで彼は呪術の世界に足を踏み入れることになった。
うまく利用していたはずの
「SHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
「(!? 今はそれどころじゃねえか!)」
誕生した呪霊が呪力の爆弾を撃ち出す。
司は呪力を固めることでソレを防ごうとした。
一度は体験し対処した術式。その上で防げると判断した。
だが、ソレが間違いであることを、彼は後に知ることになる。
「!?」
防いだはずの爆弾。
しかし、爆発を直に食らってしまった。
爆破のダメージによって宙を舞う司の小さな体。
空中で一瞬意識を失うも、すぐに目覚めて状況の分析を開始する。
「(爆弾は防いだ!呪力の鎧越しに感触があった! なのに何で!?)」
呪力の弾丸は呪力の鎧によって完全に防いだ。
防いだ感触もしっかりあることから、鎧を透き通ったということもない。
だというのに鎧は爆散し、司は大きなダメージを負った。
おかしい。あり得ない。何か種がある筈だ。
これを攻略しない限り、コイツには勝てない。
「shaaa!!」
「!?」
爆音と共に、呪霊が凄まじい速度で急接近してきた。
自身の背後を爆発させ、発生した爆風に乗って急加速。そのまま司へ突っ込んでいく。
【術式 呪力剣】
咄嗟の
司は突進の勢いを利用して、呪力剣で呪霊を突き刺した。
自身の爆風による威力と、呪力剣による刺突。結果、呪霊は自分から突き刺さりに行く形になってしまった。
ここまで好条件が揃えば勝ったも同然。一級呪霊でも耐えることは不可能……の、筈だった。
「がああああああ!!?」
大ダメージを負ったのは司の方であった。
突然、呪力剣を持つ腕が爆発。
右腕が吹っ飛ばされ、噴水のように夥しい量の血が噴出した。
「っ!!?」
無くなったはずの右腕から、焼かれるような痛みが走った
遅れて押し寄せる激しい痛み。処理できない程の痛みの情報が脳に叩き込まれ、軽くショートする。
咄嗟に右腕があった個所を押さえるが、血飛沫は止まる様子を見せなかった。
「な、何が……!?」
激しい痛みと予想外のアクシデントに司は混乱。
何とか踏ん張ろうとするが、力が入らない。せめてもの抵抗として、膝を付くに留まった。
しかし、そんな中でも彼の脳は無意識に何が起こったのか分析を行っていた。
呪霊に攻撃した後、呪力剣が爆発したのだ。
爆発の術式を食らったのではない。司の呪力である剣そのものが爆発したのだ。
そこから導き出される答えは一つ。
「(コイツ、呪力で触れた物を爆弾にすることが出来るのか!? だったら……!)」
敵の能力に気が付いた司。
そこから更に、彼は敵の術式の対抗策を思いついた。
おそらく敵は自身の呪力を爆弾にするか、呪力に触れた物体を爆弾にすることが
出来る。なら、触れなければいい、或いは触れても爆発の起動をされる前に倒せばいい。
触れずに攻撃や防御を行う方法はある。
弾幕を張ればいい。
幾つもの呪力弾を連射すれば、数の暴力で潰せる。
何も銃口は手の平だけではないのだ。
呪力が通るなら全身どの方向からでも出せる。
爆破される前にダメージを与えることも可能。
現に先程は敵の術式を食らう前に体を袈裟切りにしてみせた。
もっとも、すぐさま剣を捨てなかったせいで爆破を食らってしまったが。
勝てる。
確かに強力かつ厄介な術式だが、司なら地力の差で踏み潰せる。
しかし、ソレが逆転の一手になることはなかった。
「(~~~! クソ…力が、呪力が練れ無ぇ……!)」
時間切れ。
呪力は健在だが体力は底を付いている。
片腕を爆破され、激しい出血により生命力をゴリゴリ削られている。
既に司は満身創痍。反転術式が使えない以上、七歳児の彼では戦闘など不可能である。
繰り返し言うが、今の彼はまだ七歳児。
いくら高い呪力と複数の術式を持つといっても、本来ならこうして戦うのがおかしいのである。
某ゴリラ廻戦では大量出血しようが、手足が無くなろうが戦っていたが、人間の身体で、しかもまだ出来上がっていない子供では不可能だ。
「(く…ソ………)」
全身から力が抜け、ばたりと倒れた。
あっけない。
実にあっけない最期である。
才能に溢れ、あんなに強かった司が、たった一回のミスとも言えないような不運でこのザマである。
しかし、ソレが呪術界というもの。
ほんの少しのミスで、ほんの僅かな不幸で、術師はあっさりと死ぬのだ。
強い奴も弱い奴も関係ない。死は万人において平等である。
身体に力が入らない。
意識が朦朧とする。
もう、戦えない。
このまま俺は死ぬのか?
何も出来ず、何も成せないまま、ただ無為に死ぬのか?
嫌だ
俺はまだ何者にも成ってない。
もっと鍛え、もっと戦って、もっと勝つんだ。
俺はまだまだ強くなる。
強くなって、俺を縛ろうとするもの全部壊して、あっち側に立つ。
二度と虐げられない、二度と支配されない、二度と惨めな思いをしないあっち側に。
俺は……僕は……!
『そうです主様。貴方様はこんなところで死んでよい方ではありません』
『君は特別なの。だから私たちが守ってみせるわ』
ああ、そうだな。
ここからはお前たちの番だ。
【術式展開 呪隷操術】
はい、主人公腕が捥げて死にかけています。
今まで派手に暴れてましたけどまだ七歳児ですからね。腕欠損なんて重体に成ったら普通は死にます。
というか原作がゴリラすぎるんですよ。
大の大人でも手足欠損したら多量出血とかで死にますからね。
万が一助かったとしても、後遺症もひどいでしょう。
それぐらいの大けがなのにポンポン出てくるのがおかしいんです。