少なくとも僕が国籍変更するのは決定事項な件   作:筵針

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ニュージーランドではシェアハウスは割と一般的らしいです。
理由は家賃がクッソ高いから。




4話 大衆の女王 過去編②

 

 

 

 ウマが合う。という言葉がある。

 

 僕とフォークインは、まさにその言葉がピッタリな関係だった。

 

 彼女はレース大会での勝利で自信も手に入れ、その後も僕の指導でメキメキ実力を伸ばしていった。

 

 現地のキッズレース大会では全戦全勝。少し離れた街の大会も総ナメにして、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いといった感じだった。

 

 だいぶ後の話だが、まだまだ本格化の兆しなんてない子供のフォークインが、ハンデ有りだったけど現役の競走ウマ娘に勝った事があった。

 

 間近で見てた僕ですら信じられない結果を叩き出したフォークインに、改めてとんでもないウマ娘だと思ったものだった。

 

 

 

『アタシ達二人でなら、どんなレースだって勝てるわ』

 

 花が咲くような満面の笑顔。

 それは彼女の口癖のようなものだった。

 

 彼女も自分の力が日に日に伸びていくのが嬉しかったのだろう。

 すっかり疑いなく僕の指導も受け入れてくれるようになった。

 それ自体は良かった事なんだけれども……。

 

 問題は、僕とシェアハウスで同居してるからか、僕との距離がどんどん近くなっていった事だった。

 

 ……というか、明らかに近くなりすぎた。

  

 いつも僕とベッタリ一緒にいるし。

 外では僕とずっと手を繋いでいたがるし。

 夜は毎日僕のベッドに潜り込んできて添い寝しにくるし。

 

 さすがに、一緒に入るわよ! と顔を真っ赤にしたフォークインが家の狭いシャワーに突撃してきた時は必死に断ったけど。

 

 そこはさすがに譲れない一線だった。というか恥ずかしいならやめておけばいいのに。

 

 

 そんなこんなで、出会った当初からは考えられないくらい、僕はフォークインにすっかり懐かれてしまっていた。

 

 それこそ、一生このままベッタリなんじゃないか? と思うくらいだった。

 

 嬉しいことではあるんだけど……正直僕の身が持たないよ……。

 

 

――――――――――――――――――――

  

 

 そんなある日、ネイピアの街を手を繋いで二人で並んで歩いていた時。

 

『ねえタクヤ。ジャパンカップって知ってる? 日本のレースらしいんだけど』

 

 フォークインがそんな事を聞いてきた。

 

 彼女が他国の、それもアジアのレースに興味を示すなんて珍しいな。と思ったが、僕はその時ふと思い出した事があった。

 

 ジャパンカップの制覇はニュージーランドの悲願。というスローガンだ。

 

 ニュージーランドは世界でも有数のウマ娘レースの振興国だ。

 国全体を挙げてレースを盛り上げる取り組みを多く施策しており、国中いたる所の街でレース大会が開催もされている。

 

 実際に競走ウマ娘のレベルも高く、ニュージーランドの海を挟んだ隣国であるオーストラリアで開催されているG1レースでも活躍しているウマ娘は多い。

 

 しかし、南半球ではレベルが高くとも、北半球では話は別だった。

 

 少人数ではあるが、オセアニアを飛び出して世界に旅立ったニュージーランドの競走ウマ娘達がいた。

 彼女達は、そこで格の違いを思い知らされた。

 

 レースの本場欧州を始め、アメリカやドバイ、香港など各地のレースで惨敗を喫してきたのだ。

 

 ―――我々は井の中の蛙だった。まだ世界は遠い―――

 

 そんな無念さを胸に、世界に向けて雌伏の時を強いられるニュージーランドだったが、ある時から日本のとあるレースが注目されるようになった。

 

 それがジャパンカップ。日本の国際招待G1レースだ。

 

 ジャパンカップは世界的に見ても賞金額の高いレースで、毎年世界各国からトップレベルの競走ウマ娘が集まってくる。

 近年ではフランスの凱旋門賞ウマ娘や、イギリスの年度代表ウマ娘なんかも参加をする時があるくらいだ。

 

 ニュージーランドはここに着目した。

 

 世界中から強者が集まるこのレースで勝てたならば、ニュージーランドの名を世界に轟かせられるだろう。

 

 そしてその時こそ、ニュージーランドが再び世界に羽ばたく時なのだと。

 

 それがあのスローガンに繋がってくる訳だ。

 

 僕はフォークインに、ジャパンカップの事をニュージーランドとの因縁も含めて説明した。

 

 

『ふーん……悲願ねぇ……』

 

 僕の話を聞き終えたフォークインは、顎に手をやりながらうんうんと思考に埋没していった。

 

 多分、彼女はどこかでこの話の断片を聞き拾ってきたのだろう。

 そうでなければ、今まで他国にあまり興味を示さなかった彼女からこんな話が出る訳がないだろうからだ。

 

 しばらくして彼女が思考から浮上して、僕の目を見つめながら口を開いた。

 

『……ねえタクヤ、将来アタシがジャパンカップに出たら勝てると思う?』

 

 僕は彼女のその言葉に少し驚いた。

 まさか彼女が日本のレースに意欲を見せるとは。

 

 ……あのレース大会からさらに大きな自信と確かな実力を付けた彼女は強い。

 レースの才能だって申し分ない。

 これから先、成長して本格化も始まれば他の追随を許さないレベルに到達する可能性もある。

 それこそ、英雄や女王と呼ばれるレベルにだ。

 

 そんなフォークインが、もしジャパンカップに出たら……。

 

 もしかしたら、世界すら変えられるかもしれない。

 

 僕は可能性の未来を想像して、興奮を覚えて知らずに武者震いをしていた。

 

『……ふふっ、そうね。考えたら皮肉が効いてて面白いかも』

 

 僕の震えをどういう解釈をしたのかはわからないが、フォークインが愉快げに笑みを浮かべた。

 

 皮肉とはどう言う意味だろうか?

 

『だって、ニュージーランドの悲願は日本のレースに勝つ事なんでしょ? で、それを叶えるのが日本人のトレーナーに育てられたニュージーランドのウマ娘になるのよ。こんなあべこべでモヤっとする話があるかしら?』

 

 僕は彼女の言葉にポカンと呆気に取られた。

 

 そしてしばらくフォークインと顔を見合わせた後、二人してぷっと吹き出し、笑い合った。

 

 

 

『いつか必ず、アタシと一緒に日本に行きましょうね。My trainer(タクヤ)♪』

 

 

 

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