【完結】TS転生大魔導士は落ちこぼれと呼ばれる   作:O.T.I

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第三話

 

 

 さて、実技の授業はメイシアが嘆いていたように、これまでは基礎の魔力制御をひたすら訓練するというものだった。

 

 だが、どうやら今日の授業では魔法を実践する事になるらしい。

 これには多くの生徒が喜びをあらわにした。

 

 

 実技を行うのは広大な敷地を持つ校庭。

 

 

 上級魔法を使っても問題ないくらいの広さを持ち、周囲には魔法の暴発で被害が出ないように結界が張られている。

 一年生が扱うのは初級魔法なので場所的には何の心配も無いだろう。

 

 

 

 

 今日の実技を担当するのはフェルマン教諭。

 教師になる前は王国魔法師団に所属し、魔物討伐などで多くの実戦経験を持つ。

 細かい理論や技術などよりも、訓練と経験を重視する体育会系(?)の教師である。

 

 

 

「よし!!これから初級攻性魔法の実技訓練を始めるぞ!」

 

 

 そして授業が始まった。

 

 前半はこれまで通り魔力制御の訓練だ。

 体内を巡る魔力の流れを感じ取り、体外に放出させて身体の表面に纏って維持する。

 言葉にすればそれだけなのだが……基礎とは言え、これが中々難しい。

 なるべく多くの量の魔力を放出し、できるだけ長時間安定させることで魔力の制御を磨くのだ。

 

 

 生徒たちはそれぞれ意識を集中して魔力の制御を始める。

 

 フィオナも魔力を放出して身体に纏うが……他の生徒と比べて薄っすらと表面を覆う程度だった。

 なので、殆どの生徒はフィオナはあまりにも魔力量が少ない……と思っていた。

 彼女が『落ちこぼれ』などと言われる理由の一つだ。

 

 だが、見るものが見ればそうではないことが分かるだろう。

 レフィーナはその一人であった。

 

 

(……やっぱり、いつ見ても精密で美しい魔力制御。惚れ惚れしてしまいますわ。……これで何で『落ちこぼれ』などと言われるのか理解に苦しみますわね)

 

 

 フィオナは極力目立たないようにと、彼女の内にある莫大な魔力を最小限に抑えて放出しているのだが……それが却って神業とも言える制御能力を際立たせている。

 

 しかし大多数の生徒は、目に見える魔力量の少なさに注目して侮る。

 それはフィオナの思惑通りだ。

 

 だが、レフィーナや教師であるフェルマンなどは、彼女が実力を隠してるであろうことには気が付いているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!そこまでだ!魔力制御訓練はそのくらいで良いだろう。さて、今日は実際に魔法を使ってみようと思うが……」

 

 教師のその言葉に色めき立つ生徒たち。

 

 やはり若者たちが地道な訓練より派手な実践を好むのは、致し方ないところだろう。

 

 

「おう、どうやらやる気満々のようだな。折角だから実戦形式にしようか。無論…初級限定だし、俺が結界魔法をかけるから心配するな」

 

 初級魔法と言えども直撃すれば大怪我する事もあるし、下手をすれば命を落とす可能性も無くはない。

 だから魔法実技の授業では十分な安全対策が必要だ。

 

 安全対策の一つは生徒達が着る魔法のローブ。

 これは入学時に支給される制服なのだが、攻撃魔法に対する耐性に優れた防具でもある。

 初級魔法であればこれ一つで殆どの防ぐことは可能だが、万が一もあってはならないので更にフェルマン教諭が結界魔法を施して万全を期す。

 

 

「全員結界は張られたか?……大丈夫そうだな。では、二人一組になって対戦していこう」

 

 対戦の組み合わせはフェルマンが指名する形だ。

 どうやらこれまでの授業である程度は生徒たちの実力を測っていたらしく、実力の近い者同士を割り当てているようだ。

 

 そして、周囲から『落ちこぼれ』などと言われているフィオナの対戦相手といえば……

 

 

 

「嘘だろ?レフィーナ様とフィオナが対戦するのかよ?」

 

「クラス一……いや、学年一の実力者が、なんで落ちこぼれのフィオナなんかと……」

 

 意外な組み合わせに生徒からどよめきが起きるが、当のレフィーナと言えば……

 

 

(流石は……かつて魔法師団で猛者として名を馳せたフェルマン先生ですわ。しっかりフィオナさんの実力を見抜いてらっしゃるのね。……ふふ、皆さんに彼女の本当の実力を知らしめる良い機会ですわね)

 

 フィオナの実力を微塵も疑っていない彼女は、嬉々として対戦を待ちわびる。

 因みに……レフィーナはフィオナの実践的な実力は疑ってないが、座学についても実力を隠してるとは思い至ってはおらず、先日声をかけた通り純粋に心配してたりする。

 

 

 さて、対するフィオナだが……

 

(う~ん……どうしよっかな~?あまり一方的にやられて補習とかになっても面倒くさいしなぁ……適当にさばいて時間稼ぎしてから負けるか)

 

 早くもやる気のない考え。

 どうやって、ある程度の評価は維持しつつ目立たないようにするか……彼女の頭にあるのはそれだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、次!!フィオナ対レフィーナ!!二人とも位置につけ!!」

 

「はいっ!!」

 

「は~い……」

 

 フェルマンに呼ばれた二人……レフィーナは気合の入った、フィオナは気の抜けた返事をする。

 そして数十メートル程の距離を取って二人は対峙した。

 

 

「フィオナ!!がんばって!!」

 

「レフィーナ様!!身の程を教えてあげてください!!」

 

 

 ある意味では注目の対戦。

 それぞれに対する応援の声が飛ぶ。

 

 フィオナは『落ちこぼれ』と馬鹿にされてはいても、殊更嫌われてる訳では無い(寧ろ男子生徒には密かに人気はある)。

 友人であるメイシアはもちろん、彼女を応援する声はそこそこある。

 実力差を憐れんで弱者を応援すると言う心理もあるのだろう。

 

 

 そして、二人が位置についたのを見計らって、フェルマンが、試合開始の合図をする。

 

「では、始め!!」

 

 

 

 

 最初に動いたのはレフィーナ。

 

 瞬時に魔力を制御して練り上げ、次の瞬間には凝集された炎の弾をフィオナに向けて撃ち出していた!

 

 

 ドンッ!!!

 

 

「詠唱破棄!?」

 

「速えぇっ!!」

 

 初級魔法とは言え、全く詠唱せずに即時発動させたその技量の凄まじさに生徒達から驚きの声が上がった。

 

 その威力も……限界まで一点に集中したそれは、もはや初級魔法の範疇には収まらず中級に匹敵するほどの威力を秘めていた。

 他の相手ならば手加減していただろうが、レフィーナはフィオナを実力者だと確信しているので完全に本気の一撃だ。

 

 

 炎の弾丸は猛スピードで一直線にフィオナに向かっていく!

 

 

(へぇ……なかなかやるじゃないの)

 

 フィオナは内心で感心する。

 魔力制御、発動速度、威力……どれをとっても非の打ち所がない。

 ただ一発の魔法を見ただけで稀有な才能の持ち主であることが見て取れた。

 

 だが……

 

 フィオナは口を動かしてブツブツと呟く。

 ……本当に『ブツブツ』と言ってるだけだ。

 魔法の詠唱などではない。

 詠唱破棄など目立つから適当に呟いて誤魔化す算段だ。

 

 そして炎の弾丸が自身に着弾する寸前に魔法を発動させる!

 

 パァンッ!!

 

 その瞬間……!

 なんと炎の弾丸が破裂音と共に弾け飛び、霧散してしまったではないか!

 

 

 生徒たちは何が起きたのか理解できない。

 

 しかし、対戦相手のレフィーナは正確に理解していた。

 

 

(絶妙のタイミングで『風針』の魔法を当てたのですわ……。初級魔法でも最も威力の低い魔法……本来であれば『炎弾』を相殺するほどの威力は無いはず。私の炎弾以上に一点に集中、衝突の瞬間に破裂させて……何と言う神業!!)

 

 そもそもが迫りくる小さな弾に魔法を当てること自体が不可能に近い。

 それは正に神業と呼ぶに相応しいものであった。

 

 

 

「ならば……これはどうですっ!!」

 

 初撃が防がれたと知るやいなや、レフィーナは次の魔法を発動させる。

 

 彼女が次に選択したのは雷撃の魔法。

 初級では一時的に相手を痺れさせる程度の威力ではあるが、実体のない雷撃は回避も防御も非常に困難である。

 

 先程と同じようにフィオナに向かって雷撃が飛ぶ!

 

 そして、やはり先程と同じようにフィオナはブツブツと呟いてから魔法を行使した。

 

 現れたのは人の頭ほどの大きさの水球。

 雷撃を尽く飲み込んで、バシャッと飛沫を上げて砕け落ち……バチバチっと音を立てながら地面に吸い込まれて消えた。

 

 

 今度は観客たちも何が起きたのかは分かった。

 であれば、初撃も何らかの方法でフィオナが防いだのだと理解する。

 

 

 誰からも一目置かれるレフィーナのたて続けの攻撃を、誰からも蔑まれるフィオナがまるで苦も無く防いでしまった。

 その事実に、誰もが茫然自失となって押し黙る。

 

 

 フィオナだけが理解していなかった。

 彼女にとっては、極々当たり前の対抗魔法を使って防いだに過ぎない。

 今も自分は目立っていないと思っているあたり、感覚がズレまくっていると言わざるを得ないだろう。

 

 

 

 そして、その後もレフィーナの攻撃をフィオナが防ぐと言う構図が続き……

 

 

「そこまで!!時間切れだ。二人とも、なかなか良いものを見せてもらったぞ。お前たちも参考になっただろう?」

 

 フェルマンがそのように締め括ったが、生徒たちは未だ呆然とするばかりだった。

 

 

(参考って……別にこれくらい皆できるでしょ。……あぁ、レフィーナさんの事かな?)

 

 

 そして、あくまでフィオナは分かっていないのであった。

 

 

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