【完結】TS転生大魔導士は落ちこぼれと呼ばれる   作:O.T.I

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第八話

 

「この辺りのはずだけど……どこに?」

 

 魔法で探知した付近へとやって来たフィオナ。

 周辺は疎らに灌木が生えるだけの荒れ地と言った風情で、一見して隠れるような場所があるように思えない。

 

(確かに反応はこの辺りだったはずなんだけど……)

 

 

 周囲一帯は魔物で犇めき合っている。

 キョロキョロと要救助者を探しながら襲いかかってくる魔物を片手間に退けているフィオナ。

 

 その様子をウィルソン王子たちが見ていたのならば、改めて驚愕することだろう。

 明らかに自分たちが相手したのよりも多い魔物たちを、事もなげに撃退しているのだから。

 それも、攻撃魔法だけでなく身体強化した状態で殴り飛ばしたりして……

 

 

「……ん?あぁ、なるほど。そう言う事か。なかなか上手い手を考えたね」

 

 何かに気が付いたフィオナは称賛の言葉を口にする。

 

 彼女が見つけたのは、荒れ地の中にあって一際大きな木の根本あたりに盛り上がった土の山。

 あれはおそらく土魔法で塹壕を掘った残土なのだろう。

 

 早速そこに近づいたフィオナは、掘られた穴を覗き込む。

 木の根の下に掘られた穴は思いの外大きく、数人が隠れるには十分そうだった。

 

「誰かいますか~?」

 

 誰かいるのは事前の探知で分かってるが、こちらの存在を知らせるために声をかける。

 

「!!救助が来たのか!?」

 

 そう言いながら顔を出したのは、魔法学院の上級生と思われる男子生徒だった。

 彼はフィオナの顔を見ると怪訝そうな顔をする。

 

「あんたは……確かウィルソン王子の婚約者の……」

 

「婚約者じゃねぇ!」

 

 まさか当人が居ないのにツッコミを入れることになろうとは。

 

「あ、済まない。……あんただけか?」

 

「ええ、そうですよ。心配はいりません。この辺りの魔物なら一掃しましたから。だけど、早く逃げないとまた囲まれてしまいます」

 

「一掃した……?一人でか?いや、それよりも…脱出したいのは山々なんだが、怪我人がいるんだ」

 

「診せてください」

 

 怪我人と言う言葉を聞いて間髪入れずにフィオナは言う。

 

 そして穴の中に入ったフィオナが見たのは、倒れ伏す3人の男子生徒と、必死に手当をしているらしい女生徒が二人。

 穴の中は照明の魔法に照らされ、倒れた3人が酷い怪我を負っている事も一目で分かった。

 

 

「診せてください!」

 

「は、はい!!」

 

 先程の会話が聞こえていたと言うのもあるが、フィオナの迫力にも飲まれてその場を譲る女生徒たち。

 

 そして3人の容態を確認するフィオナ。

 

(……出血は結構あるけど、そこまで深くは無い。良かった、これなら大丈夫だ)

 

「……回生光(ヒール・ライト)

 

 フィオナが魔法を発動すると、彼女の掌から淡い光が放たれて負傷者の身体に吸い込まれる。

 それを3回繰り返す。

 

 

「治癒魔法……」

 

 女生徒が呆然と呟いた。

 治癒の魔法は失伝魔法ではないが、かなり高度な魔法に分類される。

 当然ながら普通の学生が使えるようなものではない。

 

 

「うっ……」

 

「ここは……?」

 

 程なく3人は意識を取り戻して身体を起す。

 傷口はすっかり塞がっていた。

 

「お前たち、大丈夫なのか!?」

 

「そうか……確か、魔物にやられて……。あんたが治してくれたのか?」

 

「ええ、流石は騎士候補生ですね。もう起き上がれるとは。本来ならまだ安静に……と言いたいところなんですが、もうひと頑張り出来ますか?」

 

 そう問われた3人は直ぐに状況を理解して、力強く頷いた。

 

「魔物に囲まれる前に脱出しないと、だろう?それが出来なければ終わりなんだ。死ぬ気で動くさ」

 

「折角助けたんだから死ぬのはダメです。では、脱出しますよ」

 

 

 そして、先ずはフィオナが穴から飛び出して周囲を伺う。

 

 ここに来るまでにかなりの魔物を屠ったはずだったが、再び相当数の魔物が集結しつつあった。

 

「……もうこんなに集まってきたのか」

 

「これじゃあ脱出は無理だ……」

 

 フィオナに続いて穴から這い出してきた男子生徒は、絶望の表情を浮かべて言う。

 

 

「大丈夫、何とかしますよ」

 

 何でもない風に言いながら、フィオナは即座に魔力を練り上げて右手に集中させる。

 そして徐ろにその手を地面に叩きつけ……

 

地精隆峰(べフィスライザ)!」

 

 魔法を発動した!

 

 地面を這い伝った衝撃を伴う魔力が魔物の群れに向かって行き……

 

 

 ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!

 

 

 と、幾度も破裂音をさせながら地面が鋭い錐状に隆起して、そこにいた多くの魔物を刺し貫く!

 

 

「な、な……」

 

「さあ、今のうちに離脱を!!」

 

「あ、ああ……だが君は?」

 

「私はもう少し間引いてから引き上げますよ」

 

「……分かった!!無理はしないようにな!!」

 

 救出された学生たちは、フィオナが自分たちとは隔絶した力を持っている事を理解し、彼女の言葉に従うことにした。

 

 彼らが撤退する間、フィオナは魔物を引き付けつつ怒涛の勢いで魔法を放って殲滅していく。

 

 そして、学生たちの姿が完全に見えなくなると……

 

 

 

 

 

「さて……折角これまで目立たないように努力してたのに……よくも台無しにしてくれたね。報いは受けてもらうよっ!!」

 

 人はそれを八つ当たりと言う。

 

 そしてフィオナの雰囲気が一変する。

 先程までの魔法が可愛いものだと思える程に攻撃魔法の苛烈さが増す。

 

 

「久し振りに大暴れしてやるっ!!」

 

 やはり八つ当たりのようだ……

 

 フィオナが魔法を放つたびに魔物の死体が数十数百と積み上がる。

 

 そこまでの事態になってようやく魔物の大群も怖気付いたのか、フィオナから逃げようとする先頭集団と後から続々と押し寄せる集団がぶつかり合って混乱に拍車をかける。

 そこに無慈悲な極大魔法が撃ち込まれ、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。

 

 もはや、たった一人の少女の前に魔物の軍勢は成すすべもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……これで打ち止めかな?」

 

 少し間引きしてから……などと言ってたにも関わらず、フィオナは遂に魔物の軍勢を全滅させてしまった。

 周囲は魔法による破壊の跡と、大量の魔物の死骸で酷い有様だった。

 

「まだ他にも魔物の群れがいるエリアはあったけど、ここが一番多そうだったからね。これだけ倒しておけば国軍も楽になるでしょ」

 

 なるほど、彼女にとってはやはり間引きと言う認識だったようだ。

 

 一息ついたフィオナが野営地に戻ろうか……と思った時。

 

 

 お~い!…………

 

 

 フィオナ~!…………

 

 

 

 と、遠くから彼女を呼ぶ声がした。

 

 

「ありゃ、誰か来るね……どうしよ、コレ。流石にドン引きするよね…………!!?」

 

 誰かが来る前にどうにかして証拠隠滅したい、と考えようとした矢先、突如として強烈な魔物の気配を感じてフィオナは身を固くした。

 

 

「マズい……!これまでの魔物の群れなんか比じゃないヤツが来る!?」

 

 

 と、ちょうどそのタイミングで何者かが姿を現した。

 

 

「フィオナ!!無事か!!?」

 

「フィオナさん!!」

 

 やってきたのはフェルマンやルード等の引率者の何人か、そしてウィルソン王子にレフィーナ、ジョシュア王子もいる。

 

 

(くっ!?最悪のタイミングで……!!)

 

 

「フィオナ……これを君が?凄いじゃないか……」

 

 魔物が尽く打倒されている状況を見て、ウィルソン王子が驚きと称賛の声をかけようとフィオナに近づこうとするが……

 

 

「みんな!!逃げてっ!!早くっ!!!」

 

「「「え?」」」

 

 

 しかし、時すでに遅し。

 

 

 

 強大なプレッシャーを放つ存在が、突如として上空より急襲する!!

 

 

「いきなりブレスっ!!させるかっ!!!!」

 

 攻撃の気配を察知したフィオナは、大量の魔力を一気に両手に掻き集めて、それを天にかざして結界を張る!!

 

 刹那のあと、莫大な熱量を持った眩い光が結界に衝突した!!!

 

 

 バチバチバチッッ!!!

 

 

 結界と破壊光線が拮抗する凄まじい衝撃音が鳴り響く。

 まるで太陽を直視したかのように視界が白く染まり、結界を隔ててもなお火傷を負いそうなほどの高熱が押し寄せてくる。

 

「熱っ!!?」

 

「レフィーナ!!冷気魔法!!」

 

「は、はいっ!!冷却(コールド)っ!!」

 

 

 フィオナの指示に、即座にレフィーナが反応して冷気の魔法を行使すると、何とか耐えられるくらいの温度まで和らげることが出来た。

 

 結界は軋むような音を立てながらも何とか攻撃を防いでいる。

 

 

 

 

 そして永久に続くかと思われたそれは……ようやく終わりを告げる。

 だが、それは絶望的な戦いの始まりに過ぎなかった。

 

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