小人族転生!不遇な扱いを受けるけど諦めないのは間違ってない 作:小人の英雄
「ごめんなさい。こちらの不手際でミノタウロスを······」
「その短剣あげるわ。他にできることがあれば遠慮せず言って」
「私はアナキティ・オータムよ。アキって呼んで」
力:B→S901
耐久:A→A856
敏捷:B→S912
器用:A→S935
魔力:I0
上がりすぎじゃないっすかねー。ランクアップは保留。魔法が欲しいぃーーー!!
「雑魚にアイズ・ヴァレンシュタインは相応しくねぇ!!」
「! ベルさん!?」
狼人が浴びせる激しい罵声に、その狼人と同じ仲間の嘲笑に、とうとう堪えきれなくなったベルは店を飛び出した。店員であるシルが呼び止めるも、意味をなさなかった。
その光景を、
「······やっぱ、そうなるよなぁ···」
トイレから俯瞰する。
【転生者】による三人称視点。離れた場所すら見透せると最近知った。それか、アビリティの上昇によって効果範囲が広がったのかも知れない。どっちでもいいか。【豊穣の女主人】で起こるイベントを離れた場所で観ていたのだ。
「っし、行くか!」
仲間の罵倒を静観していた身だが、このまま離脱するほど腐ってはない。ガツン、と一発噛ましてやる!
「······」
「! サハラさん、ベルさんが···」
「知ってる。トイレまで聞こえてたよ」
戻ると、客と店員の視線を一身に浴びる。そりゃそうだ。客の中にトマト野郎がいて、その仲間が同じ店にいたのだ。俺もそうする。
仲間だと分かり、嘲笑を止めて顔を青くする者が極一部。依然同じ態度を一貫する者、申し訳なさそうにする者、相手の出方を伺う者、そして狼人の青年──ベート・ローガは理由を持って罵声をする者だ。
「はっ、トマト野郎だけじゃなく、そのお仲間もいたとはなぁ!それも小人族ときた!それならてめえも雑魚で、トマト野郎にはお似合いの連れだぜ!」
ゲラゲラと囀ずるが、ベートを制止する者がいた。エルフの中でも王族として慕われる、【ロキ・ファミリア】副団長のリヴェリア・リヨス・アールヴである。
てか、そちらの団長も小人族だろーが。死んだなあいつ。
「いい加減に──」
「その子は雑魚じゃないわ」
「アキさんじゃん、昨日ぶりっすね」
と、リヴェリアの声を遮って弁護する【貴猫】アナキティ・オータム。Lv.4の実力者で仲間から慕われ、時には(派閥内で)中立的立場を取れるほど人望が厚い。そんな彼女が声を挙げたことで、仲間達は目を見開いた。
原作にはない展開。俺のターンはまだまだ先のようだ。······出番あるよね?
「あぁ?どういうことだ」
「そのまんまの意味よ。その子は雑魚じゃないって言ってるの」
「ハッ、どういうつもりか知らねぇが、トマト野郎がミノタウロスに襲われたとき、コイツはその場にいなかったんだぜ?どうせ小人族らしく、トマト野郎を見捨てて我先にと」
「違う」
「あ?」
言葉を遮り、次の発言でベートと、店の中全員が驚愕の表情に変わる。
「───その子は単独でミノタウロスを倒したわ」
「「「「「······はぁ!?」」」」」
「う、嘘やない······てことはホンマなんかぁ!?」
神は嘘を見抜く。アキさんの発言に嘘はない。しかし信じられない事実を目の当たりにし、神の能力を疑ってしまうほどに驚いた。
俺?ドヤ顔。
「貴方にできるかしら?ミノタウロスの単独討伐を、もちろんLv.1でね」
「っ······!」
ベートは言葉が出ない。常識的に考えて、倒せるわけがないからだ。それは他の人達も同じだった。だから黙るしかない。
「私にはできないわ。できないから嗤えない」
アキさんは言葉を紡ぐ。嗤った彼らを諫めるように。
「冒険者がなんだと言ってたけど······失態を犯し被害者を中傷した私達は冒険者を名乗る資格なんかない。尻拭いしてくれた彼と、生き残った子のほうがよっぽど冒険者だと思うわ」
自分達が仕出かしたのは、明らかに最低最悪、蛮族の所業。それに比べて彼は······。アキの言葉は団員の心に刻まれた。
「っ、クソが······!」
ベートは席から立ち上がり、店を出た。一瞬、目が合った気がした。
最初に口を開いたのは、ロキ。続いてフィン。彼らの、アキの主神と団長である。
「······すまんなぁ、少年。アキの言う通り、こちらの失態を棚上げしてしまった」
「僕からも謝る。団長として止める立場だったのに······責任から目を逸らさず謝罪する立場だったのにも関わらず、放置してしまった」
「ホンマにすまん!」
「すまなかった」
最大派閥が、それも代表二人が一冒険者に頭を下げて謝罪する。その行為を、重みを分からない俺じゃない。周りもチラッと見れば、頭を下げていた。うん。
「許します。言いたいことは全部、アキさんが言ってくれましたし」
穏便に済ませるしかないよなぁ。くそっ、俺も二次創作のオリ主よろしくズバッと論破したかったなー!頭の中で思い浮かべた策が全部パアや。
「じゃあ、自分はこれで」
「何かあったら言ってくれ。勇敢な同胞に誓って、できる限りのことをしよう」
それアキさんにも言われたっす。
俺は店を出た。
6階層。
息も絶え絶え、血だらけでボロボロになった白髪の少年の周りにはモンスターの集団が。
「ハァ、ハァ······。アイズ・ヴァレンシュタインに!サハラに追い付くにはっ!ここで諦めるわけには、いかないんだああああ!!」
「······クソが」
ダンジョンに来たベートは、適正階層を超えた場所で吠える兎を見て、悪態を吐いた。
ムズいよぉ、流してくれぇ。
分かりやすく解説。
リヴェリア→アキさんが注意する。ベートが反論する前に正論を叩き込まれる。憂さ晴らしにダンジョンへ。嗤った奴らは全員反省(嗤わなかったアイズも反省)。オリ主何もできず空気に。なんでさ。
ベートが兎を見付けたよ!この出会いに意味があるのか!?