小人族転生!不遇な扱いを受けるけど諦めないのは間違ってない   作:小人の英雄

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06 祭り

 

 「サハラ君、サハラ君!どうしよ、ベル君がぁ······。くそうロキめぇ、次あったらタダじゃ済まないからなぁ!······ベル君どこにいるんだよぉ!」

 

 「ちゃんと帰って来るから。【恩恵】消えてないんでしょ?なら大丈夫······大丈夫、だよな···?」

 

 「不安にならないでくれよぉ!?」

 

 【豊穣の女主人】から帰宅した。帰宅してしまった。ヘスティアの顔を見て思い出したのだ。ベルのことを。原作同様ダンジョンに行ってるのだろうが······。

 

 「観てみるか」

 

 「出たよ謎スキル」

 

 スキル【転生者】を発動し、三人称視点に変更する。ベルの居場所は───地上の大通り。ベートにおぶられてる。無事のようだ。

 

 え?

 

 『チッ、トマト野郎のせいで完全に白けちまったぜ。······クソが』

 

 『んぅ···?······お父、さん···?』

 

 『誰がお父さんだ!!だ・れ・が!!クソッ、本当にクソが。なんで俺が子守りなんかしてるんだぁ······』

 

 三人称から一人称に戻る。衝撃的な展開に呆けてしまうが、ヘスティアの声で。

 

 「······ど、どうだった?」

 

 「───お持ち帰りされてる」

 

 「ぬぁんだってぇーーー!?」

 

 本当になんで?

 

 

 

 

 

 

 祭り。友達なら楽しく遊んで仲を深め、男女二人きりなら甘酸っぱい時を過ごせる素晴らしいイベント。また旦那に嫁、息子娘さんなどの家族連れでも楽しめ思い出として残る。

 オラリオも例外ではなく、【怪物祭】などという祭りが開催された。規模は大きい。なんたって、この街は世界の中心だからだ。この祭りの説明は省く。みんな知ってるでしょ?人の多さは異常で、絶賛俺も目を回している。

 

 「そして迷子になるのが俺クオリティ」

 

 目を回してる間にベルとはぐれてしまった!人混みにあれよあれよと流され、ポツリと立ちすくんでる。小人族の体小さすぎだろ!

 ベルと言えば、なにやら最近早起きしてソロで潜っている。ベートにお持ち帰りされたあと何かあったのだろうか?ヒロイン交代はやめてね?原作ヤバくなるから。······冗談はさておき、三人称で覗いた結果、驚くことにベートから訓練を受けているようだ。アイズではなくベートから。これはこれで強くなれそうだが、アイズとの訓練イベントも大事なんだけどなぁ······。この先の展開にどう響くのか考えたら恐怖でしかない。てか、三人称ヤバない?覗きし放題じゃん。やらんけど。

 今日がソロじゃない理由は、祭りの日だかららしい。だから一緒にいたのだ。絶賛迷子中だけどなガハハ!

 

 「っと、合流することが最優先だな。スキルを」

 

 「モンスターだああああ!!」

 

 「使おー···て、ええ···?」

 

 モンスターが脱走したらしい。檻の中に入ってるはずなのに、なんでだろうねぇ(すっとぼけ)

 モーセみたく人混みが左右に別れ、俺だけ取り残される。訂正。俺とモンスターが、だ。

 

 「ブルルル······!」   

 

 「鋭い角を持つ鹿······たしかソードスタッグだっけ。えと、ソード、スタッグ······ソードスタッグぅ!?なんでだよ!?」

 

 中層のモンスターで、討伐推奨レベルが2以上。Lv.1の俺が勝てる相手じゃない。

 ちなみに今のステータスは魔力を除いてオールS。夢の中で鍛練を積んでいるが、ヘスティアが留守なので更新できてない。相手はもちろんミノタウロス。一体を余裕で勝ててるようになってきたから、ベルみたくSSに行ってるかもしれない。

 それでもさぁ。

 

 「! おい、逃げろ小人族ぅ!」

 

 誰かが叫ぶけど、駄目だ。完全にターゲットにされてる。俺は腰の短剣を正面に構えるが、

 

 「クソが───!!」

 

 「ブルゥアアアア!!」

 

 「ゴッフォッ!!」

 

 ゴシャ!という嫌な音と共に、俺は吹き飛ばされ地面を転がった。

 

 

 

 

 

 「ここは······?」

 

 果てしなく広がる真っ白い空間に、俺は立っていた。周りの景色に見覚えがある。

 ここは、

 

 「【夢幻世界】か」

 

 自分の都合がよい世界を作り出す夢幻の空間。俺はそこにいた。でも眠らないと発動しないはずなのだが······。

 

 「あ。そうか、ソードスッグに吹き飛ばされて意識を失ったのか」

 

 無意識で発動したのか。まあ、なんにせよ。

 

 「肉片にしてやる···!」

 

 俺は口角を吊り上げた。

 

 

 

 

 「リベンジマッチだ鹿野郎!」

 

 「!! 目が覚めたのか!け、怪我は大丈夫なのか!?血がめっちゃ出てるけどよ···」

 

 「平気平気。完っ全に回復したからなッ!それより鹿は?」

 

 周りには大勢の冒険者が取り囲んでいた。おびただしい血が頭と路面に流れてるが、今は無視しよ。あと、そこにいたら危ないよ。

 冒険者らしき男が示す方を見ると、

 

 「よっし、かかって───え?」

 

 「あのモンスターなら、短剣が喉に深々と刺って死んだぞ。お前が刺したんだろ。すげぇな」

 

 喉から大量の血を流し、死体になったソードスタッグを見て唖然とする。俺がやった?いつ?衝突の瞬間に?え、嘘。

 

 「とりあえず治療院に行こうぜ。キツイんなら連れてくが·····」

 

 「あ、大丈夫。怪我は治ったから」 

 

 「え、ああそうか。それならいいんだ······ええ···?」

 

 周りの冒険者全員、ドン引きしてら。短剣を回収し、【怪物祭】のイベントを改めて思い出した俺は、行くところができた。

 

 

 

 

 「こんにちは」

 

 「あら、こんにち──オッタル、ありったけのエリクサー持ってきなさい。急いで。アレンは何してるのかしら···」

 

 「はっ。······ついでにアレンを折檻してきます」

 

 「待て待て待て待て」

 

 首謀者が慌てるなよ。突然の理不尽に襲われるアレンが可哀想だわ。同情はしないけど。つーか見てたんじゃねーの?それにしても綺麗だな。

 

 「あの子を見てたから······。それに怪我をしてもアレンに治させるよう頼んだのに···」

 

 「あの子······ベルか。頼む相手間違えてない?人選ミスじゃないですか?」

 

 【女神の戦車】が親切心を働くとは思えないんだけど。ああいや、今はそれどころじゃない。

 

 「っと、女神様にお願いが」   

 

 「!」  

 

 「? ······ああ、なるほど。私相手に交渉をするつもりかしら?」

 

 多分だけど、お願いを言ったら負い目から叶えてくれる。でも交渉の場を設ける。今後のためにも、無意味かもしれないが、強気に出る必要があると考えたからだ。  

 フレイヤもそれに気付いて──視線はベルだけど──意識を俺に傾ける。オッタルは俺の方を向いている。淡々と喋りだすのは女神。

 

 「私が何をしようと、どんな行動をしても許される。何故だか分かる?私が」

 

 「──女神フレイヤだから、ですよね?」

 

 あまりにも身勝手な発言だが、それを可能とする力がこの女神にはある。今の今までバベルの神室から見下ろし、オラリオの最大派閥として君臨してきたのがいい証拠だ。  

 

 「···!分かってるじゃない。それでも交渉するの?」

 

 「もちろん」

 

 知ってる。知ってるうえで言わしてもらう。

 

 「では言わせてもらいますが、

 

 

 ───不公平だと思います」

 

 「「!!」」

 

 意識だけじゃなく、視線がこちらに向く。俺は畳み掛ける!

 

 「貴方はベルが欲しい。でも俺は、俺達はあげる気がない。だからいずれ敵対する運命にある」

 

 「そうね。貴方の魂を見たら分かるわ。貴方は決められたレールを進むタイプ。一見つまらないけど、どんなことがあっても、例え私の干渉があったとしても道に逸れないよう力強く進んでいく、そんな気概を感じるわ」

 

 うんまあ、そうとしか。だって原作通りに行ってもらわないと詰むし。いや結末知らないけどさ。

 俺は言う。

 

 「貴方はこれからもベルを見るんでしょ?それはズルくないですか?」

 

 「ズ、ズルい?」

 

 「そうズル。貴方が見るのは魂の輝き。魂は戦いの時に輝くのでしょう」

 

 だから試練を寄越す。今も。これからも。

 

 「貴方達と戦う時には、こちらの魔法やスキル、戦略までもが暴かれてる状態だ。なのに、俺らは貴方達のことを知らない。これはズルだ」

 

 「なるほど、一理」

 

 「オッタル」

 

 「すみません」

 

 本当にズルいよなぁ。対策なんかいくらでも立てられるじゃん。不利だ、不利。ブーブー!

 

 「······ハァ、不覚にも納得してしまったわ」

 

 「じゃあ」

 

 「でも、それが?貴方も知っての通り、私はフレイヤよ?意見を聞かず、ここで魅了を使って屈服させることだって──」

 

 「どうぞ」

 

 「! 分かってるの?美神の魅了は、冒険者が放つ状態異常の魔法より強力なのよ?」

 

 「ええ、どうぞ」

 

 フレイヤは一瞬躊躇うが、発動させた。眼が怪しく光る。俺は魅了を浴びて──

 

 一人称から三人称に移る。

 

 ・フレイヤが魅了を放つ!

 ・オッタルは女神から視線を逸らす。

 ・正面に立つサハラは──

 

 魅了を喰らった瞬間、スキル【転生者】が発動して一人称から三人称に強制的に変わった。それには理由がある。

 

 「······嘘」

 

 「ね?大丈夫だったでしょ?」

 

 魅了は魂を掌握して屈服させるもの。喰らった瞬間に三人称になったのは、【転生者】のもう一つの効果である“魂の補強”が始まったから。三人称に変わったのは、補強の邪魔になるからと考えたからかな?まあなんにせよ、魅了に耐性を得たことになる。恐るべしだ。

 フレイヤは俯いて肩を震わせ、

 

 「フ、フフ、フフフハハハハハハ!!」

 

 笑いだした。横にいるオッタルは困惑する。魅了に耐えたのと、フレイヤが笑いだしたことに。

 

 「ふふふ、あ~、本当に面白いわね貴方!私に交渉を持ち掛ける子はいたけど、魅了に抗ったのは貴方が初めてよ!」

 

 「恐悦至極にございまする」

 

 ここまでご機嫌になることある?まあ、作戦成功なのは変わりない。

 

 「いいわ。聞いてあげる。何が望み?」

 

 「俺の望みは──」

  

 今一番欲しいもの。それは、

 

 「【魔導書】が欲しいんですけど」

 

 「アハハハハ!!聞いたオッタル!この子ったら【魔導書】が欲しいんだって!ていうか、いつまで血塗れなのよンフフwww」

 

 笑い過ぎだろ。血塗れなのはほっとけ。

 




 
 死んでなければ超回復。ヤバいね。
 訓練のお陰で超反応。ヤバいね。
 魂が補強させるから魅了を無効化する。ヤバいね!
 
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