小人族転生!不遇な扱いを受けるけど諦めないのは間違ってない 作:小人の英雄
・殺気立った男達が武器を構える。
・花のようなモンスターが群生している。
・赤髪の女、白髪の男が会話している。
『アリアは──』
『何?それは──』
ひとしきり観た後、三人称から一人称視点へと変わった。
「敵の数と配置は、ざっとこんな感じかな。蛇のような、花のような見たことないモンスターが多数いる。襲われてないのをみるに、相手にテイマーがいるかも」
【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインと冒険者依頼を受けた俺は、同じく依頼を受けた【ヘルメス・ファミリア】一同と共に、援軍という形で行動していた。Lv.6のアイズさんはともかく、Lv.1の、しかも小人族が援軍だということに何しに来たんだ?という表情を浮かべられたが、モンスターの襲撃とか、こういう状況での索敵をしていたら信じられないという目で見られた。
まあ、足手まといなのはしゃーない。事実やし。
「コイツが出鱈目言ってる、って線は?」
「恐らくそれは無いでしょう。モンスターの襲撃も我々より先に気付きました。···何より具体的過ぎる」
「私も、嘘じゃないと思います。赤髪の女性に、心当たりがありますから···」
「その女ならあたしも知ってる!······そんなことも分かっちまうのか。やベーな、お前······」
キークスという男の言葉に団長であり【万能者】という二つ名を持つアスフィ・アル・アンドロメダとアイズさんが否定で返す。さらにはルルネ・ルーイが同意したことで、信憑性が増した。
引かれた。周囲の人ももれなくドン引きである。泣きそうになった。
アスフィはメリルという小人の魔導士に、【食料庫】へ続く道を塞いでいる肉壁をぶち抜くよう指示を出した。メリルは【魔導】を発現した小人族。未来を嘱望される才能がある、と小人の三兄妹の一人、ポックは言った。その後も皮肉混じりにアイズさんに絡む。妹と違って自分達は才がないと悪態を吐く。
だから言ってやる。
「俺も小人族だよ」
「だからなんだよ。······お前も持ってる側だろーが。俺の気持ちが分かるって、慰めの言葉を言いたいのか?」
この同族に。
「俺もお前も、“やればできる”ことを知ってる」
「!」
抱えてしまった想いを、諦めきれない夢を見る同族に言ってやるのだ。
「器の昇華。これを経験しているってことは、他の同族や他の冒険者と違って何もしてこなかったわけじゃない」
ランクアップには神々が認める偉業を成す必要がある。別に個人に拘らず、集団でもいいのだが困難を極めるのは代わりない。種族問わず、オラリオの過半数がLv.1だと言えば分かるだろう。ポックはLv.2の上級冒険者。つまり成した。
「なら次も、その次もできるだろ?次を繰り返してさらに上を目指し続けることくらい」
俺はそれだけ言って前を歩く。ドォォン!!という衝撃音が鳴り響き、肉壁に穴が開いた。
「行きます。全員陣形を崩さないように」
一行は癖内へと突入した。広がるは作為的に作られた肉の道。この奥にあるのは人の悪意そのもの。どこまで通じるか分からないが、やれることをしよう。俺は覚悟を固めた。
「······勝手なことを簡単に言いやがって」
後ろを歩くポックの呟きは、誰にも聞こえなかった。
「君も、強くなりたいの···?」
「ん?」
「さっきあの人に、言ってた言葉。自分のことも言ってるように聞こえたから······」
アイズさんが話しかける。さっきまでルルネとお喋りしてなかった?
「まあ、そうですね」
「なんで?」
「なんで、ってそれは·····」
「それは?」
なんかすっげぇ聞いてくるな、この人。それにしても俺が強くなる理由、か。それは原作通りの結末にするため──あれ?別に今の今まで原作通りなんだから、俺が強くならなくても、そもそも冒険者にならなくてもよかったくね?ん~?でも子供の時は違った気がする。なんだっけ?なんで俺は──あ。
「あ、そうか」
「?」
「俺は、冒険がしたかったんだ」
前世でダンまちを読んで、ベル・クラネルの物語に心を湧かされて焦がれた。一緒に冒険したら楽しいだろうなー、とか。このシーンに介入したら面白いだろうなー、とか。
そして、実際に転生してしまった。まさしく“夢”が“現実”に、だ。最初はベルと冒険をしよう。次が鍛練を積めるスキルが使えたからって理由だった。今はただ──
「冒険がしたい。誰よりも強くなりたい。バッドエンドを、自分が満足するハッピーエンドに変えたい。そのために俺は、強くなる」
大層な夢を持つわけではなく、特別な想いがあるわけでもない。とても単純なこと。とても大事なもの。俺の──サハラ・ジーニという冒険者の生き様。それを守りたい。俺自身、改めて知って決意できたのはよかったな。マジ感謝。
「そっか」
「うん、そうだよ」
アイズさんはどこか納得したように微笑んだ。お気に召したようで何より。
「根拠はないけど······。君ならできると思う···」
「うっす、それはどうも」
照れるな。あれ?これは自分でもかなりクサイこと言ったのでは?
「っし、なら俺達も一丁やってやるか!まずは目先の冒険を、な?」
「!?」
「そうですねー。私もLv.3ですけど、まだまだ強くなりたいですし?」
「!!?」
「格好つけやがって。同族の後輩が足掻いちまったら情けねぇ姿を見せれねぇだろーが。······ハッピーエンドにできるか知らんが、バッドエンドは回避できるだろ?」
「!!!?」
おいおいおいおいおい!なんでくっそ、蒸し返しやがる!前を歩くアスフィさんは、振り向き様に呆れて口を開く。そうだ、彼らに集中するよう叱責するんだ、アスフィ団長さんよぉ!
「行きますよ。
───しっかり決意を固めて、ね?」
「もう止めて!?とっても恥ずかしから!」
それは言ってないよね!?心を読んだのか、この人!?
「よしよし」
アイズさんや、慰めないで···。泣きたくなる。
次回戦闘。主人公がいるからだいぶ変わります。魔法の御披露目回も含めます。