燃え残った男は澄み渡る青空の下で何を成す   作:マスターBT

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ルビコンの解放者で、咽び泣いた男の幻覚です。
まさか、フロムゲーで涙のせいで画面が見えなくなるとは思わなかったよ……


お前に意味を与えてやる……仕事の時間だ

『使命を……友人達の遺志……を……』

 

 グチャグチャになった思考に混ざる企業の思惑を退け、俺本来の使命を必死に手繰り寄せながらここまで共に戦ってきた俺の猟犬に、コーラルの宿った銃口を向け、引き金に指をかける。

 621……アイツは避ける素振りを見せていないから、この引き金を引けば恐らく、計画を乱した不穏因子……違う、俺の手元から離れたアイツを殺して、ここまで俺が使い潰してきてしまった者達へのせめてもの手向けと、友人達の遺志を成し遂げる事が……

 

『終わったか戦友……こちらも……どうにか片づい……』

 

『レイヴン!!』

 

 ──それがお前の選択の理由か。

 

『そうか……621……お前にも……友人ができた……』

 

 感情の起伏に乏しく、強化人間となった事でまともな人生を送れなくなったお前に、自分の意志で選ぶに足る友人が出来たんだな621……あぁ……それならあとはもうお前の好きにすると良い。

 引き金から指を離し、銃を下ろし、煩わしい考えが浮かばなくなった清々しい頭でこの意識が、消えていくまで俺の手を離れて人になったアイツを少しでも長く、見つめ……伝わるか分からないが、隣に立っている友人にアイツを託し、俺の意識は完全に消えた。

 

 

 

 その筈だった。

 機体に搭載されたコーラルの暴走か、強化人間として改造された結果なのか分からないが俺はコーラルの赤い奔流に飲み込まれ──

 

『貴方を縛るものはもう何一つない。貴方に意味を貰った様に、今度は貴方が自分だけの意味を持てる様に』

 

 ──アイツの声を聞いた次の瞬間、俺はルビコンの灼けた空ではなく、どんよりとそれでいてルビコンよりも美しい空をした場所に生身で立っていた。

 

「これは……」

 

 ACに乗っていた筈なのに、着慣れた黒いスーツとコート、そして歳のせいで動き辛くなった足を支える杖は、俺が地に足をつけて動く必需品達で、手に馴染む感覚からして俺が愛用していた物だとすぐに理解した。

 

「……」

 

 だが、どうやら色々と考えている余裕は今の俺には無いらしい事が、此処へ向かってくる複数の重い足音で理解した。

 明らかに武装した人間が出す重く、それでいて機敏のある音である事から相手は、軍人或いはそれに匹敵する者達だろう……この足で逃げ切れる様な連中では無い。

 ……まぁいい、即座に撃たれる様であれば俺の運命はそこまでだったというだけの話だ。

 

「……なんだ、これは」

 

 私を取り囲む者達は、何処からどう見ても女性のしかも子供達ばかりだ。

 少年兵というもの知らない無垢ではないが、戦争という場において次代を紡ぐのに欠かせない女を立たせるなど、一体なんの意味があるのかと考えを巡らそうとするが、そんな俺の思考は兵士達の向こうから現れた異形のこれまた女によって中断させられることとなった。

 

「貴様は……人間か?」

 

「開口一番無礼ねご老人。この状況で私の機嫌を損ねる意味が分かって?」

 

「……そうだな。すまない、お前達の姿が私の常識から離れていた為に驚いてしまった。気分を害したのなら謝ろう」

 

 周囲の子供達の頭上に輝くあの天使の様なリングはなんだ?

 それにこの女も、変なスーツを着る趣味ではないのなら明らかに人ではない赤い肌と、頭部の無数の目……此処は天国と地獄一体、どちらだ?

 

「なんですって?……ご老人、ヘイロー、キヴォトス、これらの単語に聞き覚えは?」

 

 俺の疑問がよほど、理解不能だったのか大凡、通常の人間からはかけ離れた容姿にはっきりと疑問の色を浮かべる女。

 俺も伊達に長くは生きていない、その言葉が何を意味しているのか知ってはいるが、女の態度とこの状況はその知識と全くと言っていいほど合っておらず、俺は女の無数の瞳の一つを見つめながら答える。

 

「知らないな」

 

「そう……ご老人、このまま死にたくなければ大人しく私に着いてきなさい。貴方に興味が湧きました」

 

「分かった。俺もこのまま何も分からずに死ぬつもりはない」

 

 ……この女の雰囲気はよく知っている。

 ヴェスパーの二番手、スネイルとかいったか?あの男のように目的のためなら他者を使い潰せる悪人の気配だ。

 だが、それは俺も同じ、今更、気にする事ではないと、杖を突きながら無数の銃に取り囲まれゆっくりと女の背に続いていくと、古びた学校の様な場所にたどり着き、そこにいる強化人間の様に無機質な目をした子供達に見送られ女の自室に辿り着く。

 

「……誰も彼も殺気立っているな。此処は戦場か?」

 

「間違ってはいないでしょう。さてと、色々と話をする前に自己紹介の一つぐらいはしておきましょうか。私は、ベアトリーチェ、このアリウス分校を支配する者です」

 

 つまり、此処にいる子供達は皆、この女の道具というわけか……ハウンズ達と同じ様な……感傷に浸るべきではないな。

 

「俺の名はハンドラー・ウォルター……ただの燃え滓だ」

 

 今の俺にはもう何もない。

 友人達から託された使命も、ハウンズや621も此処には居ない……そんな俺はコーラルによって、焼け残った残り滓でしかないだろう。

 

調教師(ハンドラー)とはまた奇遇な……本題なのだけれど、貴方はこの世界の者ではない。違うかしら?」

 

「さぁな。互いの持っている知識にどれだけの相違があるのか分からなければ、結論を導き出す事も出来ないだろう」

 

「なら、先ずは先に私がこの世界の事を教えましょう。代わりに貴方の世界のことも教えて貰うけれど」

 

「……構わない」

 

 俺とベアトリーチェは互いに無駄な話をするタイプではなく、流れる様に互いの情報を教え合った。

 結果、この世界は俺の知る世界ではないと判明した。

 ルビコンでは、争いが日常ではあったがそれはコーラルという資源を巡ってのものであり、この世界の様にただの喧嘩で銃を持ち出し、撃ち合うなどはあまりにも非効率で、非経済的だ。

 そもそも、俺達の世界の常識では、生身の人間が何も対策をせずに銃弾の一発でも受ければ致命傷になるというのに、この世界では痛いだけで済むなど色々と人間の定義すらあやふやで、思わず頭痛を感じる程だったが、ベアトリーチェからの情報は今の俺にとってとても有意義なものであることに変わりはない。

 

「AC……アーマード・コアというものは一先ず置いておいて、半世紀以上供給がなくても動ける燃料、コーラル……なるほど、それが貴方が現れた地点で観測出来た膨大なエネルギーの正体ですか」

 

「……なんだと?コーラルがこの世界にもあるのか!?」

 

「それは分かりません。あの地点で発生した膨大なエネルギーは一瞬の事で、すぐに消えてしまいましたから」

 

 コーラルには自己増殖する性質がある……もしも、俺と共にコーラルがこの世界に流れ着いていたとすればいずれ、致命的な破綻を起こし『アイビスの火』を再現するかもしれない。

 ……何処までも俺という男の人生に、コーラルは付いて回る様だな。

 

「ベアトリーチェ。不躾な願いなのだが、俺を此処に置いてはくれないだろうか?コーラルが関わっているとなると、俺が隠居をする訳にはいかない。その代わりに俺が出来る事であれば、なんでも引き受けよう」

 

 杖を突くほどの不自由な身体の男が、この世界で何が出来るのかは俺ですら分からないが、それでもコーラルを前にしてただ何もしないなどという選択を今更、俺が選ぶ事は出来ない。

 

「……貴方の来歴から一つ、お願いしたい事がありますわ。その調教師(ハンドラー)の名に相応しい役割が」

 

 そう言うとベアトリーチェは、俺の返事を聞くより早く扉の外で待機していたのであろう子供に声をかけると、暫くして俺の目の前に中学生に届くか届かないかといったぐらいの子供達が四人ほど、並べられる……みな、目が死んでいるな。

 

「彼女達は私が手塩をかけて育てている生徒達なのですが、リーダーであるサオリを筆頭に中々、言う事を聞かない時がありましてね。ハンドラー、貴方の手で優秀かつ従順で、命を賭ける事に何も疑問を思わない『猟犬』に育て上げて欲しいの」

 

 ふっ、此処でも『猟犬』か、いっそ笑えてくるほど俺という男は変わらないな。

 ベアトリーチェの言葉を聞き、杖を突きながら彼女達に近づき、上から見下ろす。

 

「顔を上げろ。下を向いている者に何かを掴む事は出来ない」

 

 なるほど、躾を受けているのは確からしい。

 俺の言葉の意味は分からなくとも、顔を上げろという命令に従い、四人は顔を上げ、希望も何もない瞳で俺を見る……まるで、出会ったばかりのお前達の様だな。ハウンズ、621……。

 

「お前に意味を与えてやる」

 

 一人一人の目を見ながら、言い慣れた言葉を告げる……俺の目的の為にお前達を利用する、だが、今度こそ俺は上手くやろう。

 この仕事の終わりに、この子供達が兵士でも、猟犬でもなく、普通の人生を送れる様に。

 

「仕事の時間だ」

 

 621……お前がどんな目的で俺をこの世界に送ったのかは分からないが、俺は俺の自由意志で選択する。

 今度こそ、この手から何も失われない様に。




誰か続き書いて♡

途中の過程とか全然見えてないけど、ハンドラー・ウォルターが、最終的にベアトリーチェを打倒して、アリウス分校を一つの学園として認めさせ、サオリを生徒会長に先生してるEDだけ見たい。
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