燃え残った男は澄み渡る青空の下で何を成す   作:マスターBT

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もうなんか凄い評価と感想をありがとうございます!!!!!(語彙消失)
元々、幻覚による一発ネタだったので、これからもコーラルの加護がネタを落とした時に、更新していきますので、不定期ですが楽しんで頂けると嬉しいです。

今回はヒヨリ回ですが、ちょっと彼女らしくないかも?


舞い散る木の葉に火が宿る

「……反応はない。やはり、あり合わせで作った急造品では精度などアテに出来んな」

 

 アリウスに積まれているまだ生きた機械をミサキに集めて来て貰い、使えそうなパーツを抜き取って簡易的なコーラル探知装置を作ってはみたが、これでは精々が、俺の足でも見て回れる範囲しか分からん。

 

「カーラならもっと上手く作れるのだろうが、無いもの強請りをしても始まらん」

 

 アイツならこのオンボロを見て笑うのだろうが、生憎俺にそんな余裕はない。

 コーラルはルビコンにしかない危険物だが、ベアトリーチェの奴が言っていた様に俺と共にキヴォトスにコーラルが持ち込まれてしまったとすれば、俺が原因でキヴォトスを燃やす事になってしまう……それは到底、受け入れられない結末だ。

 

「何より……アイツとアイツの友人が望んだ結末ではない筈だ」

 

 621が俺に何を願ったのかは分からない……だが、少なくともあの時、ザイレムを落とす選択をしたアイツが、HALの爆発と共に燃え尽きる筈だった俺をこの世界に運んだアイツが、コーラルによって再びアイビスの火が起きる事を望んでいるとは思えん。

 

「……俺に今更、何が出来るのかは分からないが、全てが燃え尽きる結末だけは阻止してみせる」

 

 カランッ!!

 

 甲高い金属音が、作業部屋に鳴り響く。

 俺の手元から工具は失われておらず、またこの部屋には窓がない為、強風で何かが落ちたという事もないだろう。であれば導き出される答えは一つだけだった。

 

「……そこで何をしている槌永」

 

「アハハ……えっと、寝心地の良さそうな場所を見つけて、ちょっとだけ横になろうって思ったらですね、その、つい、寝てしまって……えへへ、やっぱり怒りますよね?拳骨とか落ちるんでしょうか?」

 

 寝心地……あぁ、仮眠用に敷いてあるマットか。

 もしもこの場所が襲撃されても良い様に物陰に置いていたから、槌永に気づけなかったのか。睡眠中はヘイローも消えている。

 

「疲れて寝てしまったのなら怒りはしない。だが、次からは自室か運動場にある仮眠室を使え、此処は機械が多く危険だ」

 

「へ?危険?」

 

「お前が今落としたスパナの様に、工具や機械が多い。睡眠でヘイローが消えている状態では、怪我にも繋がるだろう。それに、所詮は仮眠用のマットだ、長時間の睡眠には適していない」

 

「えへへ……まさか、怒るどころか心配されるなんて……明日は槍でも降るんでしょうか?」

 

 ……キヴォトスならあり得ると少し思えてしまうのが、この世界の危険なところだな。

 

「分かったら戻れ。明日も訓練はあるぞ」

 

 そう言って槌永に背を向け機械弄りを再開したのだが、俺の背中に刺さる視線が消えることはなく、何か槌永が俺に伝えたい事があるのは明白だった。

 

「……はぁ、槌永。その椅子に座っていろ、コーヒーを淹れてくる」

 

「え?あ、そんな私なんかの為に!?」

 

「お前の視線が気になってこのままじゃ作業にならん。何か言いたい事があるなら、こちらの方がスムーズに言えるだろう」

 

 ガスは……まだあるな。コーヒー豆もこの前、錠前が買って来た物があるはずだ。

 お茶菓子になりそうなものは俺が買って来たかりんとうだけか、硬いとか文句を言われそうだが何もないよりはマシだろう。

 俺にはブラックで、槌永には甘めにカフェオレを作り持っていくと、大人しく槌永は座っていた。

 

「俺に何かあるのか?」

 

「い、いきなり本題ですね……その、えっと……盗み聞きするつもりはなかったんですが、全てが燃え尽きる結末って一体なんなんでしょうか?」

 

「……」

 

 独り言はあまり、多くするものではないな……しかし、よりにもよって彼女達の中でもっとも心配性で、面の皮が厚い槌永に聞かれるとはな。恐らく納得するまで下がるつもりはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んんむ」

 

 も、もしかして聞いていても聞こえてないフリをして忘れた方が良い話だったんでしょうか!?ウォルターさんが、難しそうな顔をして唸ってしまっています……で、でも、燃え尽きるなんて怖い話を無視するなんて私には無理でしたし……うぅ、世界は残酷ですね。

 で、でもせっかく、私も皆さんも笑顔が増えたのに何もかも燃えちゃうなんて、辛く苦しい結末は嫌だなって思ったんですウォルターさん。

 

「……槌永は、決して尽きる事のないほぼ無尽蔵とも呼べるエネルギー資源があると言って信じるか?」

 

「ほぼ無尽蔵ですか?」

 

「そうだ。アリウスではあまり見られないが、車や戦車などの動力源として使用すれば、一度の補給で半世紀は補給無しで動かせる代物だ」

 

「そ、それは凄いですね。財政難で苦しんでる学園があると聞きますし、もしもそんな夢の様なエネルギーがあれば、苦しみから解放されます!」

 

 夢の様なエネルギーがもしもアリウスにあれば、きっとお腹いっぱいにご飯食べる事も出来ますよね……えへへ、そうすればパサパサで硬いパンをめぐって、喧嘩する事も無くなりますし……でも、良い事ばかりじゃないんですよね、だってずっとこの人は暗い顔をしてます。

 

「だが……この夢の様な物質はやがて自己増殖を繰り返し、まるで生物の様に集まり、密度が増せば指数関数的に増え続け……やがて、致命的な破綻を起こし燃え盛る。これでもお前は欲しいと思うか?」

 

「いらない、です。だって、いずれは燃えてしまうんですよね?ど、どんなに便利でも何もかも燃やし尽くしてしまうのなら、そんな辛くて苦しい結末を迎えるくらいなら、いらないです」

 

 ウォルターさんが必死な顔をしている理由が分かりました。

 この人はとても優しい人ですから、きっと燃え尽きるなんて未来を望んでいないんですね、それを阻止する為にあのよく分からない機械を弄っていた、そういう事なのでしょう!

 

「……そうだ。だから、俺はやらなければならない。今はまだ微量である筈のコーラルを見つけ出し、全てが手遅れになる前に今度こそ、俺自身の手で火をつけなければ……例え、死ぬ事になろうとも」

 

「そ、それはダメです!!」

 

 ガタッと勢い立ち上がった私を、ウォルターさんは少しだけ驚いた表情で見上げる……あ、飲んでいたカフェオレ溢れちゃいました、美味しかったのに……

 って、そうじゃありませんでした!

 

「みんな、最近は笑顔が増えて来たんです。ずっと、下ばかり向いて笑ってこなかった私達が、ウォルターさんの訓練をしている間だけは、笑えているんです……ずっと、辛くて苦しいだけの人生が続くと思っていました。で、でも、違ったんです、違うと思えたんです」

 

「……槌永」

 

「コンビニでたくさん色んなものを買って食べたのも、柔らかなベッドで寝れたのも、気絶以外でしっかり休めたのも、全部全部、ウォルターさんのお陰です……幸せを知ってからまた辛く苦しい残酷な世界に戻るのは嫌です……私に手伝える事ならなんでもしますから、ウォルターさん」

 

 この世界は辛くて、苦しくて、残酷で全てが虚しいのだから、何にも期待を抱かずただ皆んなと一緒に居れればそれで良いと思っていた私ですが、初めてもっと楽しい世界があるんじゃないかって、小さな欲を抱けたんです。ウォルターさんが来てから。

 

「……これは俺の罪だ。俺が背負わなければならないものだ、お前達まで背負う必要は」

 

「わ、私も全部、燃えてしまう結末は嫌です……それは、ウォルターさんだけが燃えてしまうのも同じで。だ、だから、ミサキさんと同じ様に私にも命じてください。私なんかに何が出来るかは分かんないですけど……えへへ」

 

 ウォルターさんが背負っているものが何かは分からない、この人は多分、私から質問しても全ては教えてくれないだろうから。

 それでも、私はウォルターさんの力になりたいと思った。

 放っておけば、何処かで一人、何も言わずに勝手に満足そうに燃えて消えてしまいそうな彼を、少しでも繋ぎ止めたいと思ったのかもしれない……この私と同じで自罰的な人の手を掴んでいたいと。

 

「……ヒヨリ。俺の仕事は辛く苦しいものだ、決して逃げる事の出来ないものになるだろう、それでも良いと覚悟を決めたのなら──」

 

 ポケットから取り出した、右手にリードが無数に巻き付いているワッペンを私に差し出すウォルターさんの顔は、今までよりもずっと覇気があって、いつもなら怖いと感じる筈なのに、優しいと感じられる不思議なものでした。

 

「──これを受け取れ。俺が必ず、普通の人生を送れる様にする」

 

 辛い仕事の先にある報酬……聞き慣れない内容でしたが、私は迷う事なく差し出されたワッペンを手に取り、被っている帽子に合わせてみる。

 

「えへへ……似合ってますかね?」

 

「……あぁ、よく似合っている」

 

 眩しいものを見る様に目を細めるウォルターさんを見て、私はなんだか恥ずかしい気持ちになってこの場から立ち去ってしまいました……うぅ、反則ですウォルターさん。




ミサキとウォルターが、互いにリードを引っ張り合うのなら、ヒヨリはウォルターの右手の指をチョンっと掴んで離さないイメージです。
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