アドバイス、指摘、感想などがありましたら遠慮なくお願いします
2年F組 比企谷八幡
青春とは嘘であり、悪である。
青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺く。
自らを取り巻く環境のすべてを肯定的に捉える。
何か致命的な失敗をしても、それすら青春の証とし、思い出の1ページに刻むのだ。
例を挙げよう。
去年の秋ごろ、とある中学生と高校生のグループが廃病院へ侵入し、肝試しを行った。土地の持ち主に許可もなく、だ。
世間一般的に言えばただの不法侵入であるが、彼らはこれを「若気の至り」と呼び、青春として忘れ去る。
彼らは青春の二文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会概念も、さらには法律すらも捻じ曲げて見せる。
彼らにかかれば嘘も秘密も、罪科も失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。
そして彼らはその悪に、その特別性を見出だす。
自分達の失敗は遍く青春の一部分であり、他者の失敗は青春ではなくただの失敗にして敗北であると断じる。
仮に失敗することが青春の証であるのなら、友達作りに失敗した人間も、また青春を謳歌するもの言って過言はないだろう。
しかし、彼らはそれを認めないだろう。何のことはない。すべては彼らのご都合主義でしかない。
なら、それは欺瞞だろう。
嘘も欺瞞も秘密も詐術も緋弾されるべきものだ。
彼らは悪だ。ということは、逆説的に青春を謳歌していない者のほうが正しく真の正義である。
結論を言おう。
青春を謳歌する猿どもよ。
砕け散れ
「砕け散るべきは君の馬鹿げた思想だろう…なんだこの作文は?ふざけてるのか?それとも舐めてるのか?」
国語担当の平塚先生はこめかみを揉みながら俺の作文をペシペシと叩いている。どうやら酷くご立腹らしい。
深夜テンションで小難しいこと書いとけばマシに見えるんじゃね?という浅はかな考えは通用しなかったようだ。
「……なぁ比企谷。私が授業で出した課題はなんだったかな?」
「はぁ……確か『高校生活を振り返って』でしたね。」
「ならなんでこんなものになった?君は犯罪者にでもあこがれているのかね?」
「………俺の憧れは正義の味方です。いつか二丁拳銃だってトレースできるようになりますよ」
「削ぎ落としてどうする?その先は地獄だぞ……鉄の心はやめておきたまえ、腐って堕ちるぞ」
そんなことはわかっている。でもかっこいいから仕方がない……俺の場合、心より目が先に腐ったけど
「こら、聞いているのか?全く君は死んだ魚のような目をしよって」
「そんなDHA豊富そうな目をしてますか。賢そうっすね」
ギロッッ!!!
「ヒェ。俺はただ高校生活を振り返って思ったことを書いただけでしゅよ、今時の高校生ってこんなものではないでひょうか!?」
こっわっ?!なんだ今の目。キレた時の七海さんくらい怖い。眼力で呪霊払えそうなんだけどこの人。
「はぁ…小僧、屁理屈を言うな」
「小僧って、確かに先生の年齢に比べたら俺は小僧かもですけど」
風が吹いた
グーが来た。当たったら絶対痛い。怖い。なんだよこの迫力。黒閃?それとも天与呪縛?結婚できないんじゃ
「次は当てる。」
目がガチだ。
「すみませんでした。二度と言いません」
この人といい硝子さんといい、俺の周りの大人の女性って服装からキレ方まで似ているのか?
生き別れの双子だったりしない?
「君は部活をしてなかったな。」
「?団体行動が苦手なので。」
突然なんだ?なんか嫌な予感がする。
「友達は……いたのか?」
過去形にしちゃったよこの人。
「前の学校に数人くらいは。」
「!驚いた、いたのか…!」
いないと思ってたのかよ!?
まぁ俺自身ですら友達と呼べる存在ができるなんて思っていなかったし仕方ないか…仕方なくないんだよなぁ
ロボットと、貧乏剣士、魔女っ子に糸目の先輩、あとは他校だとパンダに呪霊が恋人のやつとか、あとパチンカス
まともなのいねぇな。
「じゃあ、その…恋人とかはいるのか?」
とかってなんだよ、とかって。俺が彼氏がいますって言ったらどうすんだよ、いないけど。
「今は、まだいないです。」
「そうか……。」
やめて!そんな生暖かい目でみないで、余計に悲しくなる!これからできるかもしれないから…希望を持つのは大切だから!
「よし!こうしよう!!課題は書き直せ。」
「はい」
そりゃそうだ
「そして君は私の心を深く、深〜く傷つけた。よって君には奉仕活動を命じる!」
「え?」
奉仕活動……?もう既に無償で呪いを払ってるし、もうこれ以上働きたくないんだが
「なんだその嫌そうな顔は…女性に年齢の話をするなと教わっているはずだろう。だから罰だ。」
すごいやだ。この人のこの様子からしてよからぬことしか考えてないだろ…いや、まさか?
確かに先生の見た目はカッコいい大人の女性って感じでスタイルもいい。何より性格も俺があった中の女性の中で1番まともだ。あれ?もし奉仕活動が僅かに期待したものであるなら断る理由が無いぞ?
でもなんか嫌な予感がするんだよなぁ…やっぱ逃げたいなぁ
「君には拒否権はもちろん、異論、反論、質問、口答え一切を認めん。詳しくはこれから会う人に聞くといい。」
俺が葛藤している間に話は進んでいき、どこかに連れて行かれてしまった。
ついたのは特別棟。総武高校は独特の形をしており、カタカナのロ、漢字の口に真ん中を廊下で繋いでいる。
空から見たから間違いない。
「着いたぞ、ここだ……雪ノ下入るぞ。」
───その名前が聞こえた瞬間、駆け出した。
体感、投射呪法並の初速で。
一年前の8月15日、偶然会った少女の名を聞いて逃げ出さない訳には行かなかった、会いたくなかった。
別れ方のせいで、彼女からすれば俺は死んだ人間と思われているはずだ。
絶対面倒なことになる。
俺のモットーに引いてダメなら諦めろというものがある。つまりそういうことだ。
……ああ、何も関係ねぇな。
先生に襟を引かれあっさりと俺は捕まった。おかしいな俺。これでも元一級術師で京都校だと上位の速さのはずなんだけど……
「コラ、逃げるな……惜しいな。その運動神経ならどの部活でもやって……君のコミュニケーションだは無理か。」
「グエッ……先生っギブ……!」
「何を廊下で騒いでいるんですか、カエルでも潰しましたか?あと返事をする前にノックをといつも言っているでしょう」
「ノックをしても君は返事をしたことがないだろ?」
さりげなく人をカエル呼びしやがったなあいつ。
「それは先生が返事をする前に‥‥…ぇ?……」
目が合うと、彼女はフリーズして動かなくなってしまった。相変わらず見惚れてしまうほどのその容姿に、初めて会った時のような窶れた様子もない…
「ああ、彼は入部希望者だ。ほら挨拶。」
「…は………ハジメマシテ。2年F組の比企谷八幡で、一応人間っす……入部希望って何すか?」
「君にはここで部活動をしてもらう。あとは先ほどの通りだ。」
「つまり、拒否権ないんすね…ハァ。」
「あからさまなため息を…まぁいい。あとは頼んだぞ雪ノ下。」
「えっ……わ、わかりました。彼のことは任せてください。」
「?ああ。よろしく頼んだぞ。」
それじゃ、と先生はクールに去っていった……まって?!行かないで!二人きりにしないで殺されちゃう!!
「………ほんとうに、比企谷君…なの?」
絞り出すように、震えた声が聞こえてきた。
「…はい……」
「……生きて…いたのね?」
「……はい」
「──そう」
ふぇぇぇ…気まずいよぉ
……我ながら気持ち悪いな……帰って小町に泣きつきたい。
「……座って、話しましょう?聞きたいこと、言いたいこと、話したいこと……沢山あるから」
「…あ、ああ」
こうして……気まずさと静寂の中、彼女との…雪ノ下雪乃と再開した。
去年の8月15日。昼の廃病院で彼女と出会った。
当初、彼女は呪われていた。当時、千葉の実家に顔を見せに来ていた俺が偶然彼女に出会い、彼女の家に取り憑いてきた呪いとのいざこざに巻き込まれたのだ。
雪ノ下雪乃は才色兼備、文武両道、そして彼女の傲慢振りはまるで女王。自分で美少女というくらいには自信に満ちているように思えていた。
しかしその本質は、ただのか弱い女の子だ。
自分には見えてて、他者には見えない怪物が襲ってくる。
……そんな中を15年間一人で耐え続け、過ごして来た彼女に俺は同情した…同情し、憐んでしまった。
その結果、俺まで取り憑いていた呪霊に襲われて、死にかけたりもした。
今思えば、一個人に特級相当の呪いが付いてるっておかしいと思う。
訂正、ただの少女と言ったが、やっぱ異常だわ、こいつ。
「それで、誰と誰がはじめましてなのかしら?比企谷君、教えてくれると嬉しいのだけれど。まさか友達をこうもあっさありと忘れるほどの薄情者だったかしら貴方は。いえ、薄情者だったわね……一度氷像にでもなってみたらいいんじゃないかしら。そうすればあなたのその舐め腐った目もシャキッとすると思うわよ?比企谷八幡くん?」
「……悪かったよ」
気まずさから目を逸らすと、氷の眼差しでこちらを睨みつけてくる。怖い。すごく怖い。
部屋の気温がどんどん下がってきてる…おかしいな、もうすぐ初夏だよ?白い息出てるって。
「……それだけ?」
総武高校の学生なら誰もが知ってるであろう美少女、雪ノ下雪乃。
テストでは常に学年一位で、運動神経も良く、欠点は性格と体力の少なさくらいであろう。
……ここに通っていることは知っていたから会わないようにしてたんだけどなぁ。
「……いつからこっちの高校に?」
「……冬休み明けてから…だな。行くこと決まったのもそれくらい。」
「そう…念のため確認するけど、私とあなたが会ったのはいつだったかしら?」
「去年の夏だな」
「私たち、それから何度あったかしら?」
「……クリスマスまでだな。」
「入学したのを伝えたのは?」
「……今日、ですね……」
「「…………」」
「挽回は?」
「無いですごめんなさい。報、連、相を次回から意識して行えるように尽力していきたい所存です!」
怖すぎて、変な口調になっちゃたよ…だが、俺にも言い分がある
「…悪かった、雪ノ下」
「…もういいわ、貴方には助けて貰った恩と、一年前の事故で迷惑かけたものね。お互い様ということにしましょう。」
「…わかった…話変わるが…やっぱなるの諦めてないのか?呪術師?」
「術式が目覚めたならいずれ面倒な奴らに目をつけられる……だから隠せってあなたは言っていたけれど……」
「……私天才で負けず嫌いだから、貴方はついでだけれども、家族を守るためなら死ぬ気で戦うつもりよ。私は自分の意思でそう決めたの。」
そういうと雪ノ下は手のひらに氷の猫を作って見せた。
「術式だってかなり使いこなせてきたのだから」
「そうか」
……雪ノ下の術式は氷凝呪法…と呼ばれる冷気を操る術式。
某有名漫画の氷結系最強の斬魄刀とほぼ同じことができるシンプルかつ強力な術式だ。
「貴方が来たということは、任務?また、すぐにいなくなるの?」
そんな悲しそうな眼をされても、
「高専をやめたんだよ、俺は。」
クリスマスに起きた大規模な呪術テロ、その首謀者であり、俺の恩師でもある夏油傑の死、ある任務で出会った特級との戦闘で
本当は引退するつもりだったが、1級術師が辞めるな…と上層部からお叱りを受け、五条先生に泣きつくことで無期限の活動休止という処分で落ち着いた。
「…それで、千葉に戻ってきて普通に過ごそうとしたら、貴方は課題で間抜けを晒し、ここに送られてきたということね。」
「散々な言われようだな、まぁ否定できないけど。」
こいつの罵倒はいつも通り絶好調である。むしろ、はじめましてよりかなり優しい物言いになっている。
「ここって、何の部活なんだ?何も聞いてないから知らないんだけど。」
「…そう。ならゲームをしましょう?クイズよ。ここは何の部活でしょう」
…知らないから聞いたんだが…まぁいいか。
…この教室には、椅子と机が積まれているだけであり、他に目立ったものはない。そして雪ノ下の手元には本が一冊。つまり、
「文芸部だろ」
「ふっ」
あ、ちげーなこれ…めちゃくちゃ勝ち誇った顔してるし
「残念、ハズレ。貴方、先生から聞いてないの?」
「ここに来る前、奉仕活動とだけしか言われてない。で、正解は?」
答えを聞くと、雪ノ下はゆっくり立ち上がりこちらに歩み寄ってくる。
「この部活動の理念は、持つものが持たざる者に慈悲を与える。捻くれ者で異性の友達が少ない貴方には私との会話を…魚が欲しい人には魚の取り方を…ここはそういう部活よ。名前は奉仕部」
気づくと雪ノ下は立ち上がり、俺に右手を差し出してきた。
「ようこそ、比企谷八幡君。貴方を歓迎するわ。」
濡れ髪色の髪が微風によって僅かにたなびく。見惚れてしまうほどにその姿は美しく、彼女の浮かべる微笑は、今の俺にはあまりにも眩しかった。
「あ〜……と…よろしく、雪ノ下。」
そんな顔されたら、何返せばわかんなくなる。握手とか久しぶりにしたな。
なんだよ……俺も青春してるじゃねぇか。
『君も、それ食べるのかい?』
懐かしい夢を見た。
俺がまだ小学生入りたての頃、長髪のボンタンを着た耳にピアスを付けた高校生に出会った。
この瞬間から、俺の人生は転機を迎えた。
『隠さなくていいよ、私も同じだからさ。でも、子供にはこれはキツイだろう?なにせ、ひどい味だ。』
俺しか知らない味と思ってた。母ちゃんと親父、小町にも見えてなくて、俺しか何とか出来ないと思ってて、3人は俺が守らないとって思って…ずっと我慢していたから。
『私は夏油傑。君は?』
『…比企谷八幡…』
まだ純粋だった俺はこの人に良く懐いたのを覚えてる。
この人の紹介で、銀髪のチャラそうな人にも会った。五条悟。世界最強の呪術師。長髪の、夏油傑の親友。
そして、家入硝子という反転術式を持った女医…この3人が俺には羨ましくて仕方がなかった。
軽口を言い合いながらも楽しそうに、喧嘩をしても、言い争っても……この3人は最後に必ず笑い合っていた。
……羨ましいと思ってしまった。欲しいと思ってしまった。
俺も、本物が欲しかった。
彼らのもので色々と教えてもらった。
俺が食っていたものは、呪霊という呪いであること…俺はそれを祓う力を持っていること。術式とはどんなものか、呪術とは何か。
俺の恩人、夏油傑と同じ術式であることもこの時教えてもらった。
そしてこの人が語った呪術師は非術師を守るためにある……五条先生は鼻で嗤ったが、俺はかっこいいと思った。
そこから、夏油傑を目指すようになっていた。
呪霊操術。取り込んだ呪いを使役し操作する事ができる力。自分より階級が二つ下のものを無条件で取り込むことができる。
まぁ当時の俺は弱かったから3級以下の雑魚が限界で…苦労した。
こんなふうに教えてもらって、助けられたのは、初めてだった。それが嬉しくて毎日3人の元に通っていた。
けど、いつのまにか夏油さんは来なくなった。五条さんはいくら聞いても教えてくれなくて、夜蛾先生も硝子さんも何も言わなかった。
唯一の理解者が居なくなった後も、俺は呪霊を祓い、取り込み続け、あの人の意思を全うしようと頑張って、頑張って……気がつくと俺の瞳は腐っていた。
吐瀉物を処理した後の雑巾を飲み込むこの感覚は何年経っても慣れない。
成長するにつれ、夏油さんは呪詛師になったことを知った。
非術師を猿と呼び、呪術師だけの世界を作ると。
あの人を止めるために、強くなろうと鍛え続けた。
俺があの人の信念の正しさを示せば、帰ってきてくれると…
それが、決して叶わないと知らずに。
いつしか思い出は呪いとなって、俺の心を腐らせた。
かなり書き直ししました。
モチベが湧き次第ちょくちょく他の巻も書き直していくつもりです。
昔の自分の駄文を読むと、胸が苦しくなるのが辛いところですね