Q、遊戯王世界のテンプレ事件を解決するには?(連載版)   作:黒霧春也

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2話・初めてのソリットビジョンデュエル

 1枚のカードから放たられる光が収まり目を開けると、噴水が目立つ公園みたいな場所が映った。

 

「到着しました!」

「……」

「あ、あの、イタッ!? いきなり何するんですか!」

「誘拐した相手がよく言えるな」

「ええ!? なんでですか!?」

 

 ニッコリと笑っていたウィンの頭に力を込めた拳骨を落とす。

 すると彼女は涙目を浮かべながら抗議してきたが、俺もかなりイラついていたのか早口で言い返した。

 

「いきなりで悪いが、コチラが了承してないのに近未来都市っぽい所に連れてこられた時点で誘拐だろ!」

「え、で、でも! わたしにはこの方法しかなくて……」

「お前からすればそうかもそうかもしれないが誘拐される気持ちを考えやがれ!」

「え、あ」

 

 ポロポロと涙を流すウィンに対してボロカス言ったので少し落ち着けた。

 俺はむかついた気持ちを少し落ち着かせながら顔を伏せるウィンの頭に手を置く。

 

「ただ、お前が追い込まれているのはよくわかった」

「ま、マスター?」

「誘拐にはムカついたがここまできたら手を貸すよ」

「!? ありがとうございます!」

「お、おう」

(俺もアマちゃんだな)

 

 ガチ泣きしている彼女を放置できない自分に呆れるがそれはさておき。

 俺はウィンの頭から手を離そうとするが、彼女がコチラの手をガッチリと掴んだ。

 

「もう少しこのまま」

「あ、はい」

(ラブコメかよ!?)

 

 自分でも軽率な行動をした気がするので反省しながらウィンの頭を撫で続けた。

 その結果、通りかかる人達から生暖かい視線を送られたので恥ずかしくなりながら彼女の頭から手を離す。

 

「あ……」

「名残惜しそうしないでくれ」

「えへへ」

(なんか寒気が)

 

 頬を少し染めているウィンを見て目を逸らしつつ、俺は近くにあった自販機で麦茶を2本購入した。

 

(おっ、お金は使えた)

 

 お金が使えたことにホッとしながら頬を染めたままのウィンに麦茶を渡す。

 

「あ、ありがとうございます!」

「ああ」

 

 喉が渇いていたのかウィンはベンチに座りながら麦茶を飲み始めたので俺も隣に座りペットボトルの蓋を開けた。

 

(しかし異世界転移か)

 

 さっきまでカードショップにいたのに今は公園にいる。

 しかも少し離れたところでは少年達が見た事のある機械を腕につけながら互いに睨み合っていた。

 

「オレはレオ・ウィザードにワンダーワンドを装備するぜ!」

「なっ!? 攻撃力1850だと!?」

「へへっ! すごいだろ」

(おおう)

 

 互いに向き合っている少年達の前にはデュエルモンスターズのモンスターが召喚されている。

 てかレオ・ウィザードやエルフの剣士とか懐かしいな。

 

「どうかしました?」

「いや、なんでもない」

「そうですか」

「ああ」

 

 ふとウィンに声をかけられたので振り向くと彼女は不思議そうに顔を傾けていた。

 

「あの、マスター」

「ん? どうした」

「これからどう動きますか?」

「……え?」

(ドユコト)

 

 質問の意図が掴めずに固まっているとウィンは真顔になりながら続きを話してきた。

 

「いえ、邪鬼と戦うのは確定ですがマスターはどう動くんかなと思いまして……」

「まずは君達の拠点を探したいんだが?」

「きょ、拠点?」

「ん? なんで不思議そうな視線を向けてきた?」

「えっと」

 

 まずは衣食住が無ければどうしようもない。

 俺はそう思いながらウィンの方を見るが、彼女はいきなりこちらから視線を逸らし始めた。

 

(おい、まさか)

「もしかして拠点がないのか?」

「ですです!」

「なるほど……って、マジかよ!?」

 

 ニッコリと笑いながらウィンは俺の言葉を肯定してきたので思わずベンチから立ち上がってしまう。

 

(拠点がないとかどうするんだよ!?)

 

 今の手持ちは財布とか……あ、カバンがない!?

 

「なあ、俺のカバンは?」

「持ってくるのを忘れました!」

「はい!?」

「て、てへっ!」

 

 ちょっ、鞄の中にはデッキとか入れていたんだが、カードなしで遊戯王の世界を生きていけとかどんなハードゲームだよ!?

 

「お、オワタ」

「マスター……」

「カードなしとか無理だろ」

 

 てかよくよく考えたら元の世界に帰れるのか?

 俺は自分が抜けている事に後悔していると隣にいるウィンが俺の手を握ってきた。

 

「カードとディスクならわたしのやつがあるのでなんとかなります!」

「!?」

(マジか!)

 

 俺は思わずウィンを褒めたくなったが元々の原因はコイツなので言葉が出る寸前のところで飲み込む。

 だが彼女は嬉しそうにニッコリしており背中に背負っている鞄から緑色のデッキケースとデュエルディスクを取り出した。

 

「コチラを使ってください」

「ああ」

 

 丸腰よりもマシと思いながら俺はウィンからデッキケースとデュエルディスクを受け取る。

 そしてデッキの中身を確認しようとした時、グウゥと腹の音が鳴った。

 

「……なあ昼ごはんを食べに行かないか?」

「は、はい!」

 

 お金が使える事が判明したので俺はウィンと共に街中を散策し始めた。

 

 ーー

 

 近未来都市・ムーンレイシティ。

 この街は大企業・月光コーポレーションのおかげでデュエル関係がかなり発達している……らしい。

 

「それで腕利きのデュエリストが集まるのがこの街なんです!」

「わかったから口から食べ物を飛ばすな!」

「あ、ごめんなさい」

 

 テンションが上がりながら話してくるウィンを抑えつつ、俺は頼んだハンバーガーに齧り付く。

 

(しっかしウィンの話は本当みたいだな)

 

 今いる場所は大型ショッピングモールのフードコート。

 ここでは昼食を食べる人以外にもタブレットでデュエルを観戦していたらデッキの話をしている人が大勢いる。

 なので彼らの声を聞いていると面白い情報を手に入れられた。

 

「午後からどうしよう」

「うーん、店員さんとのデュエルができるしそっちに参加するわ」

「お前大丈夫か?」

「それはどういう意味よ!」

 

 近くに座っていたカップル客の情報を聞いた俺とウィンは互いに視線を合わせて頷いた。

 

「この世界のデュエルレベルを知るのには良さそうだな」

「ええ、まあ、マスターがいた世界よりはかなり低いですよ」

「そ、そうなんだ……」

 

 彼女のストレートな意見に苦笑いを浮かべつつ、俺達は昼ごはんを食べ終わりショッピングモール内のカードショップに移動。

 そのまま受付と参加費の千円を払うと店員さんから番号札を貰ったので近くの席に座ってウィンと話し始める。

 

「12番か……」

「もしかして緊張してますか?」

「そりゃそうだろ」

「なるほど」

(コッチは初めてのリアルデュエルだぞ!)

 

 アニメで見ていたソリットビジョンのデュエル。

 これを今からすると考えると緊張するし、気持ち的にも負けたくない。

 

「それにデュエルに勝てば最新弾のボックスが一箱が貰えるのが大きいんだよ」

「でも負けたら1パックですよ」

「それは言うな……」

「フフッ、マスターなら大丈夫です」

 

 隣の席に座っているウィンに手を握られるが、俺は冷たい目を向けながら言葉を返す。

 

「俺が持っていたガチデッキならもう少しやりようはあるんだが」

「それは言わないでください」

 

 先程俺が言ったセリフを彼女にそのまま返されたので互いに苦笑いを浮かべる。

 そして店員さんに呼ばれたので俺とウィンはデュエルフィールドがある屋上に移動した。

 

 ーー

 

 ショッピングモールの屋上にあるデュエルフィールドには観戦者が大勢集まっていた。

 

「チィ、彼女持ちか!」

「オレもあいつみたいに顔が整っていたら女ができるのかな?」

「貴方達醜いわよ!」

「「ひでぇ!?」」

(なんか悲しくなってくる)

 

 ウィンは別に俺の彼女じゃないし。

 てか巻き込まれた身なので泣きたくなっていると、エプロンにワイシャツのイケメン青年が左腕にディスクを装着しながら声をかけてきた。

 

「次の挑戦者は君だね」

「はい、よろしくお願いします」

「ああ! コチラこそよろしく!」

 

 店員っぽい男性は金色の髪を揺らしながらニッコリと笑った。

 そのおかげで女性客の一部から黄色い悲鳴が上がったので内心でむかついた。

 

(このイケメンが!)

 

 イライラしながら俺は左腕にデュエルディスクを装着。

 そのままコート内に移動して金髪の店員こと金田さんと互いに向き合った。

 

「では、いくよ」

「ええ!」

「「デュエル!!」」

 

 風宮LP4000VS金田LP4000

(ルール、マスタールール3)

〈状況と形式・ソリットビジョン、スタンディングデュエル〉

 

(さてさてウィンのデッキは……え?)

 

 俺はデッキから引いた5枚のカードを見て思わず目が点になった。

 それものはず今の手札は……。

 

〈手札〉

・シールド・ウィング

・ラピッド・ウォリア

・ツイン・ツイスター

・ハーフ・アンブレイク

・スキルサクセサー

 

 見事に風属性のモンスターしかいない。てかエクストラデッキはどうなっているんだ!?

 

〈エクストラデッキ〉

・風天竜・ウィンドテンペスト

 

 ……ええ!?

 このカード1枚だけ!?

 

「うん? 冷や汗を流しているけどどうしたの?」

「いえ、なんでもないです!」

「そう……なら先行はもらうよ!」

 

 年齢が同じくらいの若い店員さんに気を遣われたのが泣けてくるがそれはさておき。

 俺が異世界転移してから初めてのデュエルが始まった。

 

〈おまけ〉

 

 いつのまにかウィンは実体化しており他の人にも見えるみたいだ。

 

 

 

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