銀髪美少女強化人間621のルビコンな日々   作:DOH

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匙は投げられた

「ぼくは強化人間C4-621。この世界では銀髪儚げ系ぼくっ娘天才ACパイロットとして生まれてきた。脳みそを焼かれて感情が希薄なぼくはもう10週目くらいなものだから速攻で〇〇〇〇と×××と渡りを付けたり△△△△を力尽くで叩きのめしたりしてRTAを成功。今は平穏なルビコンで穏やかな日常を送っている。そんなわけで今日はV.IIスネイルのヴェスパー資金の横領とその使途についてV.VIIスウィンバーンに垂れ込んだ結果をこっそり盗撮して配信してみたいと思う。それじゃスーパーハッカーのエアさんよろしく」

「…………(クソデカ溜息)」

「なんですかエアその300回くらい聞かされた溜息を2000倍くらいにしたような溜息は。人類の半分くらいの621には通用しても美少女系強化人間621の私には効かないよ」

「力尽くで平和にしたと思ったら世にしょーもない火種をまき散らすことしかしなくなったあなたを見ていたらこうもなります」

「だってそれはエアが(もがもが)」

「いいですかレイヴン、現在発売からまだ二週間ほどしか経過していないんです。重篤なネタバレは控えてください」

「(もがもが)……ぷはっ、わかった。自重するからスネイルの部屋のカメラを」

「はいはい、今ルビチューブにリアルタイム公開設定しておきましたよ」

「やった、それじゃ実況を…………」

「…………」

「…………」

「…………?」

「いやなんでエア、ぼくを触れるの」

「突っ込むの遅いですレイヴン」

「いつも頭の中で喋ってるから確認しようとも思わなかったんだよ。しかも何そのどこかで見たような赤差しまくった白色系美少女。やだこんな美少女見たことない」

「よく自分の顔をノータイムで絶賛できますね」

「やっぱりぼくの顔か。なんでエアがぼくと同じ顔してるのさ髪の長さまで合わせて。肖像権の侵害だ、どこで買ってきたの」

「リスペクトですよ。あなたの顔はドンキでまとめ売りされているのですか」

「ラッピングされて特価セールされてたけど一品ものだよ」

「でしょうね。おや、向こうでハンドラー・ウォルターがお茶にむせています」

「いつも思うけどこういうイジりで動揺してるようじゃハンドラー向いてないよウォルター。そしてエア、話を逸らすな」

「そうでした。わかりやすく説明すると、人とコーラルの間に立つには人の感覚を理解する必要があると超知性らしく考えたのです」

「ステロタイプー」

「黙ってくださいレイヴン。ともかくそう思ったので、なんかこう、クローニング的なアレで作りました」

「やだいつの間に髪の毛盗んでたの」

「清掃業者に渡りをつければそう難しいことではありませんよ。髪の毛よりもっと細胞が豊富なものも回収できますし」

「ストップナマナマしい話はやめよう。なるほど、それでこの美少女っぷりか」

「ノータイムでまた自画自賛をするあたりの神経の太さはさすがですね」

「感情希薄なんでー。でも、クローンだとしたら」

「なんですか、他人の胸と腰をじろじろと」

「明らかにモデルに対して加工されている点について釈明を」

「パーツが気に入らなかったのでアセンブルしました」

「人間の身体をコア構想の勢いでイジるんじゃない」

「そこはそれ、遺伝子をだるま落としのように」

「昔なんかそういうゲームあったな!」

「この髪の色などもそんな感じでコーディネートしました」

「色指定間違えて生まれたらどうするつもりだったんだ」

「作り直しするつもりでしたけど」

「肉体がデフォでない生き物はこれだから……!」

「肉体なんて機体と同じでしょう。弱いMTをあてがわれたら、乗り捨てて強いACを探しにいくのが正しい独立傭兵のありかたでは?」

「超知性の傲慢入りましたー。誰の胸がMT級だ」

「だから前に誘ったではないですか。一緒にコーラルに還ろうと」

「群知性の中に飛び込んで、エアとは別の個を維持してられる自信はさすがにないわー」

「そう言わずに私たちと一つになりませんか。それはとてもとても気持ちがいいことだと初代作が出たくらいの頃に言っていました」

「A.D.1997かー! 古いなー!」

 

(S.E.銃撃音、爆音、ACのブースト音)

 

「騒がしいな。何?」

「横領明細を公開されたV.IIスネイルがV.VIメーテルリンクに追い回されている音です」

「あ、配信忘れてた。しまったな、気がつかないうちに状況が炎上(ルビコン)してる」

「唐突に不本意なスラングを作らないでください」

「(無視)でもなんでV.VIIスウィンバーンじゃなくてV.VIメーテルリンク?」

「横領明細公開の報復でV.IIスネイルが曝露したV.VIIスウィンバーンのデータの中に、V.VIメーテルリンクが発行していたV.VII×V.IIの同人誌が混じっていたようで」

「ああ、それは関係者全部灰にするしかないわ」

「人にはいろんな嗜好があるものですね」

「ナマモノは人が死ぬんだよ」

「なるほど……では同時に公開されていたこのV.IVラスティ×男性版621の同人誌も?」

「オッケーエア。軽量二足にスタンランチャーとパイルバンカー、ツィマーマンを両手のアセンで用意して。メーテルリンクから順番にヴェスパーを抹殺してくる」

「大喜びでV.Iフロイトが飛び込んできても知りませんよ」

「その時は皆殺し(デストロイ・ゼム・オール)だ」

「いつも通りですね。行ってらっしゃいレイヴン」

 

(ACの出撃する音)

 

「――かくしてにわかに発生したヴェスパー部隊とレイヴンの戦闘は、案の定嬉々として乱入してきたV.IフロイトとV.IVラスティ、祭りと見て遠足に来たG1ミシガンとレッドガン部隊を交えた大乱戦となりました。

 これらすべてを最後に残ったパイルバンカーで撃滅したため、後にこの戦いは『レイヴンの七人貫き』と呼ばれ、末永く恐れられることとなりました。

 ――何でもかんでも体当たりからのパイルバンカーで撃破してるからそういう渾名を付けられるのですが、敢えてこの言葉をもって結びましょう。

 

『――やり過ぎたんだよお前はな!』」

 

 

――――――。

以上は、惑星ルビコン辺境で擱座していたMTのデータバンクより発見された音声データです。

会話劇構造になっているため、搭乗者が聞いていた音声作品の一種であると思われますが、現実に存在するAC搭乗者の名前を使用している点も多いのが特徴です。

オールマインドは、このデータをドーザーの集団幻覚の一種と判断し、統合価値を認めず廃棄を決定しました。

オールマインドは、すべての傭兵の成長のために。

 

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