【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

132 / 664
第六幕 17 『小さな実力者』

 

「ごめんなさい、揉め事を起こしてしまいまして」

 

 突っかかってきたのは向こうだけど、私も煽ってしまった手前、受付のお姉さんに謝っておく。

 

「いえ、あの方は普段から素行が悪くてギルドとしても厄介者の扱いでした。今回は丁度いい薬になったのではないでしょうか。随分と手加減されたようですし、喧嘩にすらなってなかったので特に問題ありません」

 

 ま、お咎めがなくて良かったよ。

 ギルド員同士の喧嘩なんかは基本的に当事者同士の責任ではあるが、流石に職員の目の前で行なわれれば仲裁にも入るし、怪我人なんか出たら処罰の対象になる。

 以前のように訓練という形にしてやり合って決着を付る、なんて抜け道もあるけどね。

 

 まあ、今回みたいに実力をハッキリと示してやればそれ以上絡まれることもない。

 私はまだここに来て日が浅いから、丁度良かったとも言える。

 

 

「それで…話が途中でしたが指名依頼でしたね。確認いたしますので少々お待ちくださいませ」

 

 と言ってお姉さんは奥の書棚の方に行っていくつかファイルをパラパラとめくる。

 何度かそのように確認してから、別の書棚から資料を取り出してこちらに戻ってきた。

 

 

「確かに、カティア様宛に指名依頼が入っているようですね」

 

 そう言いながら持ってきた資料をカウンターの上に置いて、説明をしてくれる。

 

「依頼元はモーリス商会となっています」

 

「え?モーリス商会って確か…」

 

「あ〜、レティシア様の商会ですね」

 

「そうだよね。レティ、昨日話した時は何も言ってなかったけど…」

 

「モーリス商会も今やすっかり大商会ですし、いちいちレティシア様も細かいとこは見てないんじゃないですか?単に名のある冒険者への依頼ってことでしょう」

 

「あ〜、それもそうか。それで…どんな依頼なんです?」

 

「はい、依頼書によれば…王都郊外にある鉄鉱山の魔物駆除とあります。最近モーリス商会が休止中の鉱山を購入したのですが、しばらく放置されていたためか内部に魔物が巣食っているので、それを駆除したいということらしいです」

 

「ふむ…でも、何でわざわざ指名依頼にしてるんだろ?何の変哲もない討伐依頼だと思うんですけど」

 

「ギルドが査定すると恐らくD〜Cランク推奨くらいになるかと思われますが…迅速かつ確実に対応してもらいたいと言うことではないでしょうか。指名依頼にする理由としてはよくある事ですから」

 

「なるほど。そうすると結構急ぎなんですか?」

 

「そうですね…期限は一週間以内となってますので、そこそこ急ぎのようではありますね」

 

 レティの商会で鉄鉱山と言ったら、鉄道関連で必要ってことだよね。

 出来れば受けてあげたいけど…一週間か。

 その鉱山の場所や規模、出現する可能性のある魔物なんかの情報を聞かないと判断できないかな。

 

 という事でそのあたりの情報を聞いてみることに。

 

 

 

 

 結論として受ける事にした。

 

 鉱山の場所は王都から結構近くて日帰りも問題ないくらい。

 鉱山内部もそれほど複雑な構造ではなく半日あれば網羅できるくらいの規模。

 出現する魔物は平均してCランク程度との予想。

 

 ソロでも実働3日くらいで対応できそうだし、それくらいなら…何よりレティの夢の手伝いをしたいと思って決めた。

 

 

「はい、手続き完了しました。一週間以内に報告をお願いします」

 

「分かりました。…あ、そうだ。一つ確認したいのですが…」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「え〜と、ギルドに登録可能な年齢っていくつからでしたっけ?」

 

「年齢制限は特に設けられてませんよ。登録は出来ても余りに幼ければ依頼自体受けられなかったりしますが…」

 

 こちらの質問の意図を察したのだろう、チラッとミーティアを見ながらお姉さんは答えてくれる。

 

「じゃあ、この子の登録をお願い出来ますか?」

 

「それは構いませんが…」

 

「おいおい、そいつは流石に感心しないぞ?」

 

 ああ、もう…またなの?

 まったく…少しは放っといてくれないかなぁ…

 

 

「あれ?誰かと思ったら…あんた、オズマじゃない」

 

「ん?ああ、ケイトリンじゃないか。奇遇だな」

 

 どうもケイトリンの知り合いだったらしい。

 茶髪黒目と目立った容姿ではないが、ワイルド系のなかなかのイケメンだ。

 無論、カイトには劣るけどね!

 

「ケイトリン、お知り合い?」

 

「ええ、コイツはオズマって言って、元騎士団員なんですよ。だけど、突然騎士団を辞めたと思ったら…冒険者なんてやってたんだ?」

 

「ん…まあな。どうも堅苦しいのに馴染めなくてな。そう言うお前こそ、未だに騎士団にいるのが俺からすりゃあ意外なんだが。規則とか堅苦しいのが一番似合ってねえってのにな」

 

「ふふん、わたしは優秀だからね!皆が期待するから辞めさせてもらえないのよ」

 

「…そうかもしれんな」

 

「で、何?ウチのカティア様にイチャモンつけんの?表に出る?」

 

「いや、イチャモンじゃなくて、さすがにこんな子供を登録だなんて…いくら見た目で侮るなったって限度があるだろ。みすみす危険に晒そうとするのは看過できんと思ってな」

 

 ふ〜ん…さっきのおバカ達とは違って純粋に心配してくれてるんだ。

 いい人みたいだね。

 

「ふう…あんたもまだまだだね。ミーティアちゃんの実力が見抜けないなんて」

 

「にゅ?」

 

「いやいや、それは流石に無理があると思うよ。正直この子は特殊過ぎるよ。オズマさんは心配してくれたんだし…。でも、信じられないかもしれないですけど、この子の実力はC〜Bランクくらいの実力はありますよ?」

 

「…俄には信じがたいな」

 

「別にアンタに信じてもらう必要はないけど…何だか癪だわ。カティア様、訓練場でミーティアちゃんの実力を見せつけてやりましょーよ!」

 

「え…別に「ママ!やる!(ふんすっ!)」…やる気ね…」

 

「と言う訳で勝負よ!」

 

「え?い、いや、俺は…」

 

「何?あそこまで言っておいて逃げる気?ヘタレのチキンやろー、ってある事ない事言いふらすわよ?」

 

「…はあ、分かったよ。やりゃあいいんだろ(余計なお節介をしちまったな…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで場所は変わってギルドの訓練場へ。

 ブレゼンタムのものより一回りくらい大きいかな?

 

 二人とも準備は既に終わっていて、あとはケイトリンの開始の合図を待つのみだ。

 

 ミーティアは小振りの木剣を両手に、いつもの片逆手二刀流。

 

 一方のオズマさんは片手長剣に中型のラウンドシールドと言う組み合わせ。

 冒険者で盾を使う人は珍しいかも。

 だが、いかにも元騎士という感じだ。

 

 聞けば彼のランクはBとのこと。

 ミーティアも多分それくらいだと思うので、結構良い勝負になるんじゃないかな?

 

 

「じゃあ、お互い寸止めという事で」

 

「うん!」

 

「…分かった」

 

「そんじゃ〜、始め!」

 

 

 開始の合図とともにミーティアが初っ端から飛び出して相手に肉薄する!

 

「…!速いっ!」

 

 ガキィッ!!

 

 オズマさんは目を見開いて驚きをあらわにするものの、冷静に構えてミーティアの初撃を盾で防ぐ。

 

 間髪入れずミーティアの左手、逆手に持った木剣が振るわれようとするが、初撃を防いだ盾をそのまま叩きつけるようにしてミーティアの攻撃体勢を崩そうとする。

 いわゆるシールドバッシュと言うやつだ。

 

 それを受けてミーティアも無理に攻撃をせずに、相手の力を利用して一旦間合いを取る…

 と、オズマさんはそのまま盾を前面に押し出しながらミーティアに突進し、長剣を振り下ろす!

 

 ミーティアは双剣を交差させてその一撃を防ぐが、やはりパワーは相手のほうが上なのか、更に後退を余儀なくされる。

 

 一気呵成に畳み掛けようとオズマさんはもう一歩踏込もうとするが、今度はミーティアが身体を反転させながら立ち位置を入れ換えつつ、バックハンドでしなるように後頭部に向かって斬りつける!

 

 それをオズマさんは前方に転がりながらかろうじて躱し、そのままゴロゴロと転がって距離をとってから跳ね起き、仕切り直しとなる。

 

 

 ここまで、僅か一瞬の出来事だ。

 私の見立て通り今までの攻防を見る限りでは剣の腕は互角かな?

 スピードとキレのある攻撃のミーティアと、攻守のバランスに優れたオズマさん。

 なかなかの好勝負だ。

 

 

「…驚いた。確かに、相当な腕前だ。侮っていた事は詫びよう」

 

「何をえっらそ〜に。ギリギリだったじゃないの。それに何本気出してんのよ、大人気ない!」

 

「…理不尽な」

 

 そだね。

 じゃあ、もう少し理不尽に付き合ってもらいますか。

 

「ミーティア、初級程度なら魔法も混ぜていいよ」

 

「うん![ひょうだん]!」

 

「なっ!?」

 

 ガガガッ!!

 

 ミーティアの魔法によって氷の弾丸がオズマさんを襲う。

 突然のことに面食らったようだが、これは難なく盾で防がれる。

 

 だが、これはミーティアなりの挨拶みたいなものだろう。

 魔法も使えるよ、って言う。

 

 

「[せんぷう]!」

 

 ビュオーッ!と室内にもかかわらず猛烈な旋風が巻き起こり、小型の竜巻がオズマさんに向かって行く。

 直接的な攻撃力は無いものの、吹き飛ばされまいとして踏ん張るため動きが封じられてしまう。

 

「ぐっ…!」

 

 その隙を突いて再びミーティアが突貫するが、流石はBランクと言うだけあり、旋風に晒されながらも辛うじてミーティアの突撃を防ぎ、続く連撃もなんとか長剣と盾で弾いている。

 

 だが…

 そこからミーティアのスピードが更に増した!

 

 突然、ギアの上がったミーティアのスピードに対処しきれずに、ついに彼女の剣がオズマさんを捉えた!

 

 ピタッ、と首筋に当てられた剣を見て、オズマさんは降参の声を上げる。

 

「…参った。俺の負けだ」

 

「わ〜いっ!やった〜!ママ、勝ったよ!」

 

「うんうん、凄かったよ、ミーティア!」

 

 以前カイトと戦ったときは最初から最後まで常に全力で、フェイントなどは全く考えていなかったのだが…

 今回の彼女は最初は敢えてスピードを抑え気味にして、ここぞという場面でギアを上げるという戦略を見せてくれた。

 

 ちゃんと経験に基づいて考えてるんだねぇ…ママは嬉しいよ。

 

 

 

 

 

「や〜い、負けてやんの!ぷ〜くすくす…ねぇ、今どんな気持ち?どんな気持ち?」

 

「(うぜぇ…)あ〜、侮って悪かったよ。お嬢ちゃん、強いな」

 

 と優しそうな表情でミーティアをナデナデしながら褒めてくれる。

 やっぱりいい人みたい。

 

「うん!いっぱいがんばったから!」

 

「ほらほらケイトリンも、いつまでも嫌味を言わないの。オズマさんは好意で忠告してくれたんだよ?」

 

「まあ、余計なお世話だったみたいだがな」

 

「その通り!」

 

「ケイトリン!…そんなこと無いですよ。この子はいくら強くても、まだ子供…大人が護ってあげないといけないんです。だから…ご忠告ありがとうございます(ニコッ)」

 

「あ、ああ…いや…」

 

「な〜に赤くなってんのよ。…はは〜ん?」

 

「…何だよ」

 

「?」

 

 

 

 まあ、とにかく…これでミーティアの実力も分かってくれただろうし、取り敢えず登録はしておきますか。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。