【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第六幕 エピローグ 『歌姫王女のデビュー』

 

『お〜っほっほっほっ!!我が剣をその身に刻みなさい!!』

 

 ロゼッタさんの高笑いが劇場いっぱいに鳴り響く。

 いや〜、今日も絶好調だねぇ…

 

 本日の演目は、かつてのイスパルの英雄、リディア姫の冒険物語だ。

 結末は切ない悲恋ではあるが、やはり魔王を討ち果した英雄達の物語は根強い人気があり、王都での初公演に相応しい演目として選ばれた。

 壮大な物語を構成する幾つものエピソードの中から、今回はリディア姫の旅立ちからテオフィール王子との出会いまでの謂わば物語の導入部を本日の演目としている。

 

 

 主人公は…ロゼッタさんだ。

 いや〜、夢で見たリディア姫とのイメージのギャップが大きいねぇ…

 少なくとも高笑いはしないと思うよ?

 

 まあ、他の人は実物のリディア姫なんて知りようもないし、物語では色々脚色されたりいろんな解釈があるから別に良いとは思うんだけど。

 

 だけど、リディアの生まれ変わり(かも知れない)の私としてはちょっと複雑…

 それこそ私が適役なんじゃないかな!?

 ある意味本人なんだから。

 

 …ええ、ええ、分かってますとも。

 何せ私の演技力はミジンコですからね!

 主役なんて夢のまた夢…

 

 でも、ロゼッタさんは流石の演技だし観客もすっかり引き込まれているように見えるからハマってはいるのだろう。

 若干年齢設定がアレ(ゾクッ)…毎度ながらこれ以上はやめておこう。

 

 

『姫様!ご無理をなさらないでください!』

 

『そうよ〜、あなたはいつも何も考えずに突っ込むんだから〜』

 

 ハンナちゃんは今回は脇役でリディア姫の侍女、アネッサ姉さんはリディア姫の最初の旅の仲間である女魔道士(多分夢に出てきたリシィって人)の役だ。

 侍女は旅について行ってないと思うけど、まあそこはフィクションだ。

 

 そして、テオフィール役は…何とカイトだ。

 まあ、最後の最後に出てきてセリフも少ないので、初出演としては妥当なのかも知れない。

 あと、イケメンだからね!(そこ重要!)

 因みにウィッグを付けて念の為変装してたりする。

 

 そしてそして、今回はリィナとミーティアも出演している!

 重要ではないちょい役ではあるけど、ついに初出演を果たしたわけだ。

 これからが舞台女優としての第一歩だね。

 

 しかし芸歴十年の私が次から次へと後輩たちに先を越される……

 べ、別に悔しくないもん!

 

 …嘘です、悔しいです。

 シクスティンさん、何卒…!

 ミュージカルの検討も!

 

 

 

 打倒魔王を掲げて旅立ったリディア姫は、幾多の困難を乗り越え、仲間と出会い…そして、(シギル)の覚醒シーンでは大いに盛り上がる。

 やがて、志を同じくするアルマ王国の王子であるテオフィールと出会い…共に強大な敵を倒す。

 そして最後は、仄かな恋心と冒険の予感をさせて余韻を残しつつ終幕となるのであった。

 

 

 

 万雷の拍手と歓声が劇場に響き渡る。

 満員の観客の反応は上々だ。

 ちょっと不安もあったけど、王都の人々にも好評を持って迎えられ、大成功と言っても良いだろう。

 

 

 

 さて、ここからが私の…いや、私達の出番だ。

 流石に緊張して来るが、それを飼い馴らす術も知っている。

 

 再び幕が上がり、きらびやかな衣装を身に纏った私は照明の明かりと大きな拍手を浴びながら、舞台袖からステージに出ていく。

 反対の袖からは、先の劇の衣装のままリュートを持ったカイトと…そしてミーティアがステージに進み出る。

 

 私とミーティアは手を繋いで前に、カイトは少し後ろに控えた。

 

 そして、私達を迎えてくれた拍手が鳴り止むのを待ってから…

 じゃらん、とカイトがリュートを奏で始める。

 リュートの調べに合わせて、私とミーティアも歌声を紡ぎ出す。

 親子3人の初舞台が始まった。

 

 

 神に捧げる歌。

 恋の歌、愛の歌。

 楽しい歌、悲しい歌。

 

 三人の息はピッタリだ。

 何と言ってもミーティアは私の魂を分けた娘なのだ。

 可愛らしくも美しいコーラスが私の歌声に完璧に合わせてくれる。

 そうして、リュートの調べと二つの歌声がハーモニーを奏で観客を魅了していく。

 

 そしてあっという間に楽しい時間は過ぎ去って、全ての歌を歌い終えた私達は、幕が降りる間は笑顔で手を降って観客の歓声と拍手に応えるのであった。

 

 

 

 

 

 こうして、全ての演目が好評のうちに終わったのだが、今回は王都初公演の初日ということもあり、舞台挨拶の他にも、来賓…つまり国王陛下(とうさま)の有り難いお言葉を頂くと言う訳だ。

 

 なお、その様子については魔道具によって劇場外の広場に映像と音声が投影されるらしい。

 それは事前に告知もされていて、既に広場には多くの人が押し寄せているとのこと。

 

 

 父様母様の国王夫妻、エーデルワイス歌劇団の団長である父さん、そして何故か私がステージに上がる。

 

 ざわめきに包まれていた劇場内は、父様がさっ、と手を上げると静寂が降りる。

 

『さて、先ずは此度のエーデルワイス歌劇団の活況ぶりを嬉しく思う。招致に尽力してくれたものもさぞかし鼻が高いことだろう』

 

 そこで再び歓声と拍手が巻き起こる。

 

『余も観覧させてもらったが、噂に聞くダードレイ一座…改めエーデルワイス歌劇団の演目の数々、真に見事なものであった。まさにこれからの国立劇場の顔となるのに相応しい』

 

 そこでさらに歓声が大きくなる!

 

『さて、もしかしたら知ってる者もいるやもしれんが…このエーデルワイス歌劇団はかつての大戦で多大な貢献を果した傭兵団のメンバーが中核を担っている。大戦の終結の折には叙爵も含めた報奨の授与が検討されていたのだが、彼らはこれを固辞したという経緯がある。戦働きで栄達は願わない、と。まこと見上げた心意気ではないか!』

 

 オオーーッ!!

 盛り上がりは最高潮に達する!

 …父様、持ち上げ過ぎじゃない?

 

『その後も、戦乱に傷付いた民の心をその素晴らしい芸で癒やした事は、戦働きにも劣らぬ功績であろう。然るに!このような貢献を果たした者たちに国家として何も報いないのは信賞必罰の理念にも反する!』

 

 ワァーーッ!!

 

 さっ!

 ビタッ!

 

 王都民も訓練されてるなぁ〜。

 

 

『よって、その功績に対して…エーデルワイス歌劇団には法人爵を授与するものである。ダードレイどの、こちらへ』

 

『…はっ!』

 

 父さんが父様に(ややこしい)近づいて跪く。

 

『イスパル王国が国王ユリウスの名において、この儀を以てエーデルワイス歌劇団に法第二爵位を授ける』

 

 父様は錫杖のようなものを跪いた父さんの肩に当てて厳かに告げる。

 

『…有難き幸せ。謹んでお受けいたします』

 

『ここに叙爵の儀は相成った。皆のもの、祝福を!』

 

 どぉっ!とこれまでで最も大きな歓声が劇場を満たす。

 晴れて、我が歌劇団は爵位を賜ることになったのだった。

 

 

 

『さて、今回は叙爵の他にもう一つある。カティアよ、こちらへ』

 

『はい』

 

 私は父様の隣に歩み寄る。

 観客はこれから何が行われるのか?と不思議そうにしている。

 まさか先程劇団の一員として歌を披露していた私が王女だなんて想像できる人はいないよね。

 

 そう、これから私がイスパル王国の王女であることがこの場で告知されるのだ。

 事前に聞かされたときは驚いたものだが…民衆の好感度が上がるのも期待して初回公演のついでにやってしまおう、なんて打算的な理由だったり。

 

 ミディット婆ちゃんは、宣伝効果が凄いことになるよ!って喜んでた。

 さすがに逞しいね…

 私としても貢献できるのであれば吝かではない、と了承したわけだが。

 

 

『皆は我が妻カーシャの姉…15年前に行方の分からなくなったカリーネの事は知っていよう。当時、彼女は余の婚約者でもあった…』

 

 突然出てきたその名前にざわめきが起き、戸惑う雰囲気が伝わってきた。

 だが、敏い者はそれだけで何となく話の流れが読めたようで、驚きの表情で私を見てる人が何人かいた。

 

『…残念なことではあるが、長らく行方が分からなかった彼女の死が正式に確認された』

 

 その場のざわめきがより一層大きくなる。

 

『…彼女の無念がいかばかりのものであったか。それを想像すると、何故側にいてやれなかったのか…救えなかったのかと、余は慚愧の念に堪えないのだ』

 

 場内のざわめきは収まり、瞑目して祈りを捧げる者…年配の人の中には涙を拭う者もいた。

 15年も前の話なのに、母のことを覚えてくれているんだね。

 それが少し嬉しくもあった。

 

 

『だが、カリーネは自らの命を賭して守り抜いた…自分の娘を』

 

 父様のその言葉で再び場内がざわつく。

 その話で合点がいったのか、多くの人が私に注目する。

 

『そう、このカティアこそ…余とカリーネの娘だったのだ。死の縁にあったカリーネからダードレイ殿に託され…そして今、この地に戻ってきてくれた』

 

 そこで、父様の言葉を母様が引き継ぐ。

 正当な王家の血筋を引く母様が儀式を行う為だ。

 

『我が姉カリーネの死は悲しいことです。しかし、その娘が生きて帰ってきてくれた…こんな喜ばしいことはありません。…カティア、こちらへ』

 

 母様の前に進み出て跪き頭を垂れる。

 母様が手にした黄金のティアラが私の頭に戴せられた。

 そして私は立ち上がって観客の方に向き直る。

 

『姉の娘は私の娘も同然。私イスパルの裔たるカーシャ=イスパルは、このカティアを我らが娘として迎え…イスパルの王族として正式に認めることをここに宣言いたします』

 

 ワァーーーーッ!!

 一際大きな歓声が上がった。

 

 私は歓声に応えて手を振りながらステージ前方に進み出る。

 歓声が落ち着いた頃合いを見計らって、語りかけるように話し始めた。

 

『皆さん…突然こんな話を聞いて戸惑っている事でしょう。私自身、自分が王家の血を引いていると聞いたときは驚き戸惑いました…私はこれまで一座の歌姫として市井の中で過ごし、色々な地域を訪れ多くの人と出会いました。そんな私が王族であったことの意味は何なのか考えたとき…きっと皆と同じ目線に立って皆の暮らしを守る事…それが私の責務だと思いました』

 

 そこで私はひと呼吸置いて、観客席を見渡す。

 観客は皆黙って私の話に耳を傾けてくれている。

 

『だから、私はこれからもエーデルワイス歌劇団の歌姫を続け…民と近い位置に立ち続けた上で、王族の責務を果たすことを皆さんに誓います』

 

 ワァーーーーッ!!

 カティアさまーーっ!!

 イスパル王国、ばんざーーいっ!!

 

 この日一番の歓声が劇場内を満たす。

 きっと劇場前広場も同じような状況だろう。

 

 良かった、受け入れてくれたみたいで…

 

 

 

 

 

ーーーー 貴賓席 ーーーー

 

 

「はぁ〜、カッコイイねぇ…」

 

「本当に。流石はカティアさん、ご立派ですわ」

 

 本日の王都初公演に招待されているレティシアとルシェーラは、カティアの演説を聞いて感心している。

 

 貴賓席には彼女たちの他にも、彼女たちの親であるモーリス公爵夫妻やブレーゼン侯爵、宰相などの一部の国家重鎮など、錚々たる顔ぶれだ。

 

 

「初めてお会いしたときから、不思議なカリスマがある方だと思っておりましたが…やはり王族になるべくして生まれた方なんですわね」

 

「ほんとにね〜。観客も凄い熱気だよ。完全にアイドルだね」

 

「…何だか遠い方になってしまったようでちょっと寂しい気も」

 

「ははは!そんなことないでしょ。あの子の本質は何も変わってないし。気さくで、優しくて、でもちょっと抜けたとこもあって…」

 

「そうですわね。それに、私達は親友ですものね」

 

「そうだよ!それにカティアも言ってたじゃない。民の目線に立って…って。私達貴族ってさ、そう心掛けはしようとしても中々実践できないじゃない?あの子はそれが自然で本質なんだし、これからも変わるものじゃないでしょ」

 

「ええ。もしカティアさんがこの国の女王になったら…何だかワクワクしますわね」

 

「そうだね。カティアはまだそんな事考えてないだろうけど…きっと時代がかわる。そんな気がするよ」

 

(…きっと、レティシアさんも時代の変革者になる方だと思いますわよ)

 

 そう、ルシェーラは思い、眩しそうにレティシアを見るのだった。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 観客の興奮はまだ収まらず、私はそれに応えて笑顔で手を振り続けている。

 

 

 

 ついに私はこの国の王女として正式にお披露目がされた。

 

 とうに王族として生きる覚悟は出来ていたが、今ここに王女として民に対して誓いを立てた。

 改めて身が引き締まる思いだ。

 

 歌姫としても王女としてもこれが王都での第一歩。

 皆に認められるかどうかはこれから次第。

 

 

 でも、きっと大丈夫だ。

 私には私を支えてくれる仲間がいる。

 私一人の力で成せないことも、力を合わせれば大きなことを成し遂げることができる。

 

 

 不穏な事件があり、心配事も尽きることはないが…

 きっと乗り越えていける。

 

 

 輝かしい未来への希望を胸に抱き、多くの人の祝福の声に包まれながら、舞台の幕は降りるのだった。

 

 

ーー 第六幕 転生歌姫の王都デビュー 閉幕 ーー

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