【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第一幕 12 『報告』

 領軍詰所を後にしてギルドに向かう途中、私達が泊まっている宿の前でリィナに会った。

 

「あっ!?お父さん!お母さん!おかえりなさい!もうお仕事おわったの?」

 

「リィナ、ただいま~」

 

「ああ、これからギルドに報告に行って、それで終わりだな。リィナは女将さんの手伝いか?」

 

「うん!いまねぇ、お買い物から帰ってきたところ!」

 

 そう言って大きな買い物かごを持ち上げて見せてくれる。

 

「そっか~、ちゃんとお手伝いできてえらいわね~」

 

「えへへ…あ!お姉ちゃんも、おかえりなさい!」

 

「うん、リィナ、ただいま。そのかご随分大きいけど大丈夫?」

 

「大丈夫だよ!そんなに重くないし。あれ、そっちのお兄さんは?」

 

「ああ、依頼で一緒になったカイトさん。カイトさん、この子はティダ兄とアネッサ姉さんの娘でリィナって言うの」

 

「カイトお兄さん、始めまして!」

 

「ああ、始めまして」

 

 カイトさんは屈んでリィナと目線を合わせて優しそうな笑顔で挨拶する。

 

「カイトさん達のパーティーが居なかったらまだ帰ってこれなかったんだよ」

 

「そうなんだ~!カイトお兄さん、お父さんたちを助けてくれてありがとう!」

 

「はは、俺たちもきみのお父さん達には助けられたからね。『お互い様』ってやつだ。な?」

 

「(ドキッ)え、ええ、そうですね」

 

 リィナに見せていた優しい笑顔のまま、こっちを向いて同意を求めるカイトさんをみて不意にドキッとさせられる。

 

 …むぅ。素敵な笑顔じゃないか。

 

 ふん、この人ホントは女たらしなんじゃないの?

 【私】も気をつけなきゃいかんぞ!

 そして姉さんの方は見ないぞ!

 

「じゃ、じゃあリィナ、私達まだギルドに報告があるから、もうちょっとお留守番お願いね」

 

「?は~い、まってるね~!」

 

 リィナに一旦の別れを告げてギルドに向かった。

 

 

 今は夕暮れ時。

 昨日と同じくギルドの中は多くの冒険者たちで賑わいを見せていた。

 

 私達が中に入ってすぐに声をかけてくる大男が一人…

 

「おぅっ!お前ぇら、帰ってきたか!カイトも無事で何よりだ」

 

「閣下?」

 

「何だ?侯爵サマ。随分タイミングがいいじゃないか?」

 

「ああ、門兵から連絡が来たんでな。公務をサボっ…切り上げてすっ飛んで来たよ」

 

「…相変わらずフットワークが軽いな」

 

 サボっ…と言うのは聞かなかったことにする。

 

 門をくぐってからそんなに経ってないのに、本当に腰が軽いというか…こっちは手間が省けて助かるけど。

 

「まあな。ギルド長にもナシつけてっから、報告は別室で聞こう」

 

「根回しもよいことで」

 

「おうよ。スーリャ、案内頼む」

 

「はい。皆さま、こちらへどうぞ」

 

 いつの間にか閣下の横に控えていたスーリャさんに案内され、冒険者が列を成しているのを横目にカウンターの裏に周って、奥の階段から二階の部屋の一つに通される。

 と言うか大貴族の領主様がいちギルド職員の名前を知ってるって、どんだけ入り浸ってるんだか。

 

「失礼します。侯爵閣下と冒険者の皆さまがお見えになりました」

 

 中に入ると、長机が『コ』の字に配置された会議室のような部屋で、一番奥に座っていた貫禄のある初老の男性が立ち上がって挨拶をする。

 

「閣下、このような場所にご足労頂き恐縮です。皆もご苦労だったな」

 

 ギルド長のガルガさんだ。

 

 私はこの街でCランクからBランクへの昇格試験を受けているが、その際にお会いしている。

 父さんたちはAランク冒険者として直接ギルド長から依頼されたりするので、こちらも面識がある。

 カイトさんも同じだろう。

 

 入室しながら銘々に挨拶する。

 

「おし、挨拶はそんくらいにして、まあ適当に座れや」

 

 侯爵様が促してそれぞれ席につく。

 しかし、侯爵様は勝手知ったる…て感じだね。

 

 そして侯爵様はまず、カイトさんに声をかける。

 

「あ~、まずはカイト。無事で何よりだぜ。お前ぇに何かあったら親父さんに申し訳が立たねぇ」

 

「ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。また、早急なご支援に感謝いたします。…それと、父の話はここでは…」

 

 カイトさんのお父さんが何なんだろ?

 どうも侯爵様とは前からのお知り合いみたいだね。

 

「あっと、そうだったな、すまねぇ。他の連中も怪我は無ぇんだよな?」

 

「ええ、野営地で一泊してから戻ってくる予定です。私だけ報告のため彼らに同行させてもらいました」

 

「そうか、そいつぁ良かった。じゃあ、早速だが報告を頼まァ。野営地からの早鳥の報告で『鳶』の連中が生存してた事と、原因の排除に成功した事くれぇは抑えてんだがよ」

 

 そうして、先ずはカイトさんから報告を始める。

 概ね森の中で聞いた話と同じだ。

 あのオーガもどきに遭遇し、今回の異変の原因であると断定。

 情報を持ち帰るべく撤退するも、結界に阻まれて帰還することが叶わず。

 その後は出来るだけ情報を収集すべく、数度に渡り接敵を敢行。

 それが、その後の合同パーティーによる魔物撃破に大きく貢献する事になった。

 

 うちと合流してからの話は、私達も報告に加わって、オキュパロス様の助力や私の【(シギル)】についても余さず報告することになった。

 

 最後まで聞き終わった侯爵様はしばし無言で頭を抱え…

 

「…なんつーか、話が大きすぎて理解が追いつかねぇ…俄には信じらんねぇ事ばっかだな…」

 

「気持ちは分かるが、事実だ」

 

「別に疑っちゃぁいねぇよ。どっからいくか…先ずはオキュパロス様に会ったってぇ事だが、それはカティアの嬢ちゃんだけなんだよな?」

 

「え、ええ。証明は出来ませんけど…」

 

「あら~、あの結界魔法はどう見ても人間が扱えるものではなかったわよ~」

 

「ああ、さっきも言ったが別に疑ってんじゃねぇ。ただなぁ?神代より後、神様に直接会ったってぇ人間は聞いたことがねぇ。時折神託が降りることはあってもな。もし神殿の連中に知られるとめんどくせぇ事になるんじゃねぇか?」

 

 実はエメリール様にも直接会ってるんだけど…

 

「…面倒なことと言うと?」

 

 何となく想像がついたけど…

 

「あァ、囲いこまれて崇められて一生飼殺しか…」

 

「…か?」

 

「神の名を騙る不届きものとして弾劾されるかだな」

 

 ひぇ~~っ!?

 両極端すぎるっ!?

 

「まあ、後者はエメリール様の(シギル)を持ってんなら大丈夫だろ」

 

 いや、飼殺しもやだよ。

 

「随分神殿のイメージが悪いんだな?」

 

「あ~、どの神殿も行き過ぎた信仰心を持ってるやつが一定数いっからなぁ。上層部ほどそんなのが多いんだよ。領主として話す機会もそれなりにあるんだがな、まあ疲れることよ」

 

 狂信者って事だよね。

 そんな人たちには知られたくないなぁ…

 

「…(シギル)の件も含めてここだけの話にしてください…」

 

「まあ、それがいいだろ。ギルド長も頼まぁ」

 

「ええ、もとより業務で知り得たことには守秘義務がありますから。誓って口外することはありません。有能なギルド員をみすみす失いたくもありませんし」

 

「あぁ、頼んだぞ。だがなぁカティアの嬢ちゃんよ、俺の立場からすっと、(シギル)の件も含めて陛下の耳には入れとかんとならねぇんだ。それは承知しておいてくれ」

 

「国王陛下…ですか?」

 

「ああ、オキュパロス様に会ったってぇのはともかく、(シギル)ってなぁ神の力の一端だ。ヘタに扱えば国家間のパワーバランスが崩れかねん。なんで国としては常に情報を押さえておく必要がある」

 

「…常に押さえておくって…」

 

「ああ、別に監視が付くとかって話じゃねぇ。ただ、今どの街に滞在してる、とかが把握されるくらいだろう。陛下は民を蔑ろにするような方ではないからな、悪いようにはなさらんさ」

 

う~ん、それくらいならまぁ…

 

「…分かりました」

 

「カイトんところも秘密にするよう言っておいてくれや」

 

「ええ、既に口外しないことを約束しております。…なんなら[宣誓]で縛ったほうが良いですかね?」

 

「ええっ!?そんな、良いですよ!カイトさんたちは信頼できますから!」

 

「何だ、短え間に随分と信頼関係を築いたみてぇだな?」

 

「そうですね~、特にカティアちゃんとカイトくんはね~うふふ~」

 

「ん?あぁ、そういうことか。カイト、お前ぇもずいぶんと手が早えな?」

 

「「違います!」」

 

「息ぴったりね~」

 

 姉さんうっさい!

 

「もうっ!閣下!話を戻してください!」

 

「お、おぅ(怖えな)、じゃあ後は…『異界の魂』だったか。ギルド長、知ってるか?」

 

「…魂を喰らう、と言うことであれば高位アンデッドの中にもそのような魔物は存在しますが、聞いた話から思うに何百年かの周期で現れると言われている『ソウルイーター』と言う魔物が恐らくそれだったのではないかと。黒い靄、魂を食らった相手の身体を支配する、と言った特徴が一致します。直近では約三百年前の記録が残ってますね」

 

「三百年前ってぇと…」

 

「暗黒時代ですな。一説によれば、そのソウルイーターと言われる魔物が当時のグラナ皇帝を依り代にする事で自我と強大な力を得て魔王となり、大陸中の全ての国家に宣戦した、と言われてます」

 

「あぁ、その話なら知ってんな。魔物云々てなぁただのお伽噺かと思ってたが…今回の話を聞くと事実だったのかもな。その大戦の最中にエメリール様の(シギル)を受け継ぐ血筋が途絶えちまった…はずだったが、今回カティアの嬢ちゃんがそれを顕現させた事で否定された、と。はぁ~、すげぇ話だなぁ、オイ」

 

「自分ではピンとこないですけど…」

 

 その時代の伝説には多くのエピソードがあって、劇にもなっている。

確か、うちの一座でも演じたことがあったと思う。

 

「ともかく、今回の件でそいつぁ滅びたんだ、もう心配は無ぇかな?」

 

「それはどうですかね…三百年前は魔王となったもの以外にも何体も確認されていて、その時はまだエメリール様の(シギル)を持つ当時のアルマ王国の王子が生き残っていたので、彼が滅していったとされています。その王子も結局、魔王と相打ちとなってしまったため、血筋が途絶えてしまったと思われてたのですが」

 

「…今回も、他にもいるかもしれん、てぇ事か」

 

「少なくとも、記録や伝承によれば、九百年前、六百年前、三百年前、と言うように三百年周期で訪れるある特定の時期、数年間に渡って出現する事が確認されているのです。今後、他にも現れると考えたほうがよろしいでしょうな」

 

 三百年毎に異界の魂が迷い込みやすくなる、何らかの要因があるという事なのだろうか?

 

「そうだな…それも陛下に報告だ。しかし対抗できるのがカティアだけってぇのがな…」

 

「あ、一応、退魔系の魔法は効くらしいですよ?あと、神聖武器も有効みたいなので、たぶんアンデッド対策は有効なんじゃないですかね?」

 

「なに?本当か?なら、対抗手段はあるな」

 

「ただ、[日輪華]でも十数発必要みたいですけど…」

 

「…マジか。いや、それでも人数揃えられりゃ何とかなるってこった。手段が無ぇよりはマシだ。各神殿も巻き込まんとな。各国にも共有しとかねぇとだし…ああ、こりゃ陛下には直接話したほうが良いかな…丸投げしてぇ…」

 

「なんかスミマセン」

 

 何だかずいぶん大きな話になっちゃったな。

 私のせいじゃないけど、上の人は大変そうだね。

 

「あ~、別にお前ぇのせぇじゃねぇだろ。むしろ早めに情報と対抗策も入手できたんだ。ありがてぇってもんだ。ああ、そうだ、ギルドの方でも情報共有しておいてくれ。今回の状況や魔物の特徴を伝えて、似たような事例があったら迂闊に手ぇ出さねぇで国に報告、てな。ああ、カティアの名前は伏せとけよ」

 

「はい、心得てますよ。この後すぐにでも取り掛かりましょう」

 

「頼んだ。…よし!報告の件はこんくれぇでいいか?あとは報酬の話だが」

 

「よしきた。正直小難しい話は飽きてたところだ」

 

「お前ぇなぁ…」

 

 あくびかいてたよね、父さんは。

 

「今回の『鳶』の連中の報酬だが…期日までに帰還できなかったとはいえ不可抗力だったってぇのは今回の報告でよく分かった。だから俺としちゃあ成功扱いで構わねえと思うんだが…ギルド長、それでいいよな?」

 

「ええ、もちろんです。彼らの果たした役割は大きいでしょう」

 

「ってぇ事だ。カイト、それで良いか?」

 

「ご配慮痛み入ります。ありがとうございます」

 

 う~ん、私としてはちょっと納得できないとこがあるかな?

 

 正直、『鳶』の貢献度はかなりのものだと思う。

 追加報酬があっても良いくらいだ。

 

 ちょいちょい。

 

「ねぇ、父さん」

 

「ん?何だ?」

 

「今回の私達の報酬って『鳶』の報酬よりもかなり高額よね?」

 

「そうだったな。あ~、納得がいかんのか」

 

「うん。正直今回の件って貢献度は『鳶』も私達も同じくらいでしょう?だったら全部の報酬合わせて折半した方が平等じゃない?人数も一緒だし」

 

「まあ、今回一番の功労者のお前がそう言うんだったら、俺ぁ構わねぇが。お前らはどうだ?」

 

「カティアの言う通りだ。異論は無い」

 

「同じく~(愛よね~)」

 

「オイラも問題ないッス」

 

 何か姉さんから聞こえた気がするが…キニシナイ。

 

「ありがとう、皆!」

 

「って事で侯爵サマよ、そういうふうに取り計らってくれ」

 

「待ってくれダードレイさん、気持ちは有り難いが満額成功扱いになるだけでもこっちは望外のことなんだ。それに助けられた身としては…」

 

「カイトさん、『お互い様』ですよ!」

 

「!」

 

 ニッコリ笑って辞退しようとするのを遮って言うと、彼は驚いて呆気にとられたような顔をした。

 

「はっはっは!いいじゃねえか!好意は素直に受け取っときな!お前らの力が無けりゃ早期解決もなかったんだ。自分たちの成した仕事をもっと誇っとけ」

 

 そうそう、侯爵様はいい事を言うね。

 プロにはその仕事に相応しい報酬が必要だよ。

 

「しかし、カティアの嬢ちゃんは男を立てることを知ってるイイ女じゃねえか。なぁ、ダードよ」

 

「ああ、少しは女らしいとこがあって安心したぞ」

 

 はっ!?にゃんですと!?

 ち、違うよ!

 これは【俺】のこと無かれ主義の賜物であって、決してそのような…

 そ、それに、そう言う考えは古いと思いますよ!

 

「カティア」

 

「はひっ!」

 

「ありがとう」

 

「い、いえ!」

 

「ふふ…お前はいい女だよ」

 

「!?きゅう…」

 

 ばたんっ。オヤスミナサイ。

 

「お、おい!?」

 

「あら~恥ずかしさで限界のところに~止めを刺されたわね~」

 

 

 

「若えってなぁ羨ましぃねぇ…」

 

「全くですな」

 

「オイラも嫁さんが欲しいッス」

 


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