【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第七幕 10 『武神祭前日』

 

「襲撃された!?」

 

「ああ。お前んとこもだってな?」

 

 お披露目パーティーの翌日、ケイトリンとともに劇団の邸に戻ったら父さんからそんな話を聞かされた。

 昨日は休演日ではあったものの、劇場では稽古が行われていたのだが…そこを黒ずくめの襲撃者に襲われたらしい。

 

「…大丈夫だったの?」

 

 父さんの落ち着いた様子からは、多分被害はなかったと察せられるが、それでも心配は心配なので確認する。

 

「ああ、問題ねぇ。人数はそれなりだったが、それほど手練と言う程の奴らでもなかったからな」

 

 まあ、ウチの連中を何とかできるような相手がそうそういるものではないと思うけど。

 

「そう…良かった。でも、非戦闘員を守りながらだと大変だったでしょう?」

 

「…実は今回はその『非戦闘員』が殆どやっつけちまったんだがな」

 

 …は?

 

「どゆこと?ああ…ばあちゃん?それともミーティアかな?」

 

 二人とももはや非戦闘員とは言い難いけど…

 

「うんにゃ、ロゼッタの奴だ」

 

「はぁっ!?……ロゼおば(ゾクッ!?)、お姉さまってそんなに強かったの?」

 

 そんな話は聞いたことないんだけど…

 

 と、そこに丁度やって来たシクスティン(だんな)さんが説明してくれる。

 なお、私達が話をしているのは邸の談話室だ。

 

「彼女の固有スキルですよ。[演者の極み]といって、役になりきるスキルなんですが…ほら、今回彼女はリディア王女の役じゃないですか。おかげで、まさしく姫騎士にふさわしい剣腕を発揮しましてね…」

 

「そんなスキルがあるんだ…」

 

「わけが分からなかったぜ。いつもの高笑いをしながら、次から次へと襲撃者を伸しちまうんだから。一種の自己暗示の類だと思うんだが…凄まじいもんだ」

 

「…私もそのスキル欲しい」

 

「切実ですね」

 

 超えなければならない(シクスティン)があるからね。

 

 

 

「で、そいつらはどうしたの?」

 

「今朝がた騎士団に引き渡しといたぞ」

 

「ええ、私も今朝聞きました。今頃王城で捕らえたやつと合わせて聴取が行われてると思いますよ」

 

「…変容したヤツはいなかった?」

 

「いや、こっちに来たやつは大丈夫だったな。どいつもこいつも普通の人間だ。城の方は大変だったみてえだな?」

 

「うん、エメリール様の(シギル)が効かなかったから焦ったよ」

 

「一部始終は聞いたが……印象としては、やはり実験とやらだったんじゃねえか?」

 

「あ、やっぱり父さんもそう思う?」

 

「ああ。勘だけどな」

 

 でも、父さんの勘は鋭いし、私も同じ印象をもってるし…可能性は高いんじゃないかな。

 

 

「それで、狙われたのは…」

 

「…ミーティアだな」

 

「やっぱり…」

 

 (シギル)持ちが狙われてるのだとすれば、彼女も標的になるだろう。

 だが、そうすると…

 

「あの時のアイツ…倒せてなかったんだね」

 

「そういう事だろうな」

 

 ミーティアが(シギル)を発動できることは、私以上に知る者が限られてくる。

 リッフェル領の事件のときに暗躍していたアイツが生きていると考えるのが自然だろう。

 もちろん、国の上層部に敵が紛れ込んでいる可能性も否定はできないが。

 

「はぁ…あの子も狙われるなんて…」

 

「まぁ、今後は常にお前かカイトか劇団の誰かが付いているようにしねぇとだな。とにかく一人にはしないことだ」

 

 今はカイトと一緒に今日の公演の準備をしているはず。

 あの子はまだ小さいし、大抵は誰かと一緒にいるけど、今後は注意しないとね…

 

 

 劇場は幸いにも被害がなかったので、公演開催には特に支障はないとのこと。

 

 一抹の不安を残しながらも、私達も公演の準備に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の公演も大盛況だった。

 初回公演以来ここまでずっと満員御礼だ。

 噂は王都中を駆け巡り、もはや知らぬ者はないとまで言われている…らしい。

 

 私の事も宣伝に一役買ってるが、やはり地力がなければこうはいかない。

 姉さんやロゼッタさん、ハンナちゃんなんかはもう大スターそのもので、街を歩いていると声援があがったり、握手やサインを求めてくる人もいるそうだ。

 王女(わたし)に声かけるよりはハードルは低いだろうしね…

 でも、あまり騒がれすぎるとリスクがあるとかで、最近はなるべく一人にならないように…と注意されてるとか。

 

 ともかく、襲撃事件を別にすれば、劇団の運営はすっかり軌道に乗って順風満帆と言う事だ。

 

 

 

 そしてその後は特に事件も起きずに日が進み…

 明日から武神祭が開催される。

 

 武神祭とは、その名の通り武神ディザール様を称え感謝を捧げる祭りである。

 イスパル王国では武神祭は年に二回行われる。

 王都で行われる夏の大祭と、年明けにイスパルナで行われる本大祭だ。

 どちらも多くの観光客が押し寄せ、普段から活気のある街が祭りの間は更に多くの人でごった返す事になる。

 当然、観光客をターゲットに多くの露店が出たり、催し物が行われたりもする。

 

 そして、人が多くなれば事件も多くなる…という事で、リュシアンさん以下騎士団の面々は今からピリピリしているらしい。

 ケイトリンは私の護衛で良かった…なんて言ってたりする。

 

 騎士団がピリピリしているのは他にも理由があって…祭りで警備が大変な状況を狙って再び襲撃が行われるのではないかと最大限に警戒を高めている。

 

 そんなわけで、私に付く護衛はケイトリンだけでなく…

 

「オズマさん!良かった…騎士団に復帰したんですね!」

 

「はい、カティア様にも口添え頂いたとのことで…本当に感謝してもしきれません」

 

「私だけじゃないですよ。ケイトリンもフォローしてくれましたし…」

 

「そうだよ、海よりも深く感謝するように!」

 

「ああ、もちろんお前にも感謝している。ありがとう」

 

「えぅ!?す、素直じゃないの。いい心がけね!」

 

 オズマさんの飾らない感謝の言葉を受けて、珍しく照れているケイトリン。

 ふ〜ん…なるほどねぇ…

 

 

「そうだ、オズマさん。妹さんはお元気ですか?」

 

「カティア様、私に敬語は不要ですよ。どうかケイトリンと同じように接して下さい」

 

「あ、そう?じゃあ、そうするよ」

 

「はい、是非。で、妹ですが…実は王城に住込みでメイドとして雇って頂けることになりまして」

 

「そうなんだ!良かったね!」

 

 彼女が人質に取られて彼は悪漢の言うことを聞かざるを得なかったから…多分、もうそうならないようにと色々と便宜を図ってくれたんだろうね。

 父様やリュシアンさんの事だからそれほど心配してたわけじゃないけど、安心したよ。

 

「はい、ありがとうございます。まだ見習いですが、何れはカティア様のお世話をさせて頂くこともあるかも知れません。その時はよろしくお願いします」

 

「うんうん、こちらこそ!」

 

 

 

 いよいよ明日から武神祭。

 私も王女として開催の儀に出席することになっている。

 会議の出席とかを別にすれば、これが初めての公務になるのかな?

 ある意味王族としての第一歩だ、頑張ろう!

 

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