【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第七幕 14 『武神祭〜三日目のはじまり』

 武神祭は早くも三日目、今日はレティやルシェーラと街中を見て回る予定だ。

 

 気兼ねなく街をぶらつくために…例の魔法薬で髪の色を変えている。

 護衛の二人も騎士装束ではなく王都民として一般的な服装をしてもらってる。

 いわゆる『お忍び』ってやつだね。

 今回は気を遣ってくれるのか、私からやや離れてついてきてくれるらしい。

 

 

 

 

 待ち合わせ場所の王城前広場に向うと既に二人が待っていた。

 

「あ、ゴメン、待たせちゃったかな?」

 

「ううん、今来たとこだよ」

 

「私もですわ」

 

 と定番のやり取りをする。

 今日は3人とも動きやすい町娘の格好だ。

 だけど二人とも一般市民にはとても見えない。

 どう見ても貴族のご令嬢のお忍びであると丸わかりだ。

 というようなことを言ったら…

 

「何言ってるの、それを言ったらカティアが一番そう見えるでしょ」

 

「え?そんなわけ無いでしょ。今までバリバリの一般市民やってたんだから」

 

 言っとくけど、二人と違って年季が違うからね!

 

「…いえ、以前からそう言うオーラはありましたし、王城で暮らすようになってからは益々磨きがかかってると思いますわよ」

 

「…そうかな〜?」

 

「まあまあ、いいじゃない。お忍びに見えるなら気付かれても相手の方が気付かないフリしてくれると思うしさ」

 

「気にしないで楽しむのが一番ですわ」

 

「それもそうだね」

 

 

 そして早速街を散策することにしたのだが、特に明確な目的は決めていない。

 気の向くままに街を見て回るだけだ。

 取り敢えずはここ…王城前広場を散策しながらどこに行こうかと相談することにした。

 

 

「ところでさ、今更だけど…カイトさんとのデートじゃなくて良かったの?」

 

「ん?カイトとは明日一緒に見て回ろうかなって。ミーティアもいるからデートってわけじゃないけど…あとは出来ればクラーナも連れて行ってやろうかな、と」

 

「ふむふむ、将来のお義兄さんをクラーナちゃんに紹介するんだね」

 

「…その意図はなかったけど」

 

 でも、確かにそういう事になるのか…

 今から仲良くしておくのは大事かも。

 

「今日もね、ホントはステラを誘いたかったんだけど…流石に他国のお姫様だからね。警備とか諸々の都合がつかなくて残念ながら見送りに。私なんかは護衛はついても割と自由なんだけどね〜」

 

 この間のパーティーでかなり打ち解けることができたし、学園入学前にもっと仲良くなろうと思ったのだけど。

 

「ステラか〜。あの子もカティア並みに目立ちそうだよね〜」

 

「あなたも人のこと言えないでしょ……さて、どこ行にこうか?」

 

 ここ王城前広場にもそこそこ出店が出ていたりして普段よりも賑やかだが、あまり祭という雰囲気でもない。

 

「ん〜、やっぱりお祭りの雰囲気を楽しむならもっと賑やかな第一城壁内が良いよね〜」

 

「そうですわね。でも、第一城壁内と言っても広いですわ。何か見たい催し物があれば…」

 

「あ、じゃあさ、最終目的地は西大広場にしない?」

 

 と、レティが提案してきた。

 

「西大広場?何をやってるの?」

 

「へへ〜、それは行ってみてのお楽しみって事で!」

 

「じゃあ楽しみにしておくよ。ルシェーラもそれで良い?」

 

「ええ、大丈夫ですわ」

 

 という事で、西大広場を最終目的地としてその道中いろいろ見て回ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王城前広場から外周部を目指して歩き始めると徐々に賑わいが増していき、お祭りならではの雰囲気がより一層感じられるようになる。

 沿道には様々な露店が立ち並び、あちこちから美味しそうなものが匂いが漂ってきた。

 

「ん〜…いい匂いがするね。みんな朝ごはんは食べてる?」

 

「私はまだだよ。露店で買食いしようって思ってたから。祭の醍醐味でしょ」

 

 レティは貴族令嬢っぽくないことを言うが、その辺は前世の感覚があるんだろうね。

 まあ、私も同意見だ。

 

「私は少し食べてきましたが、露店には興味がありますわ」

 

 ルシェーラも割と自由に街歩きするような娘だからね。

 二人とも生粋のお嬢様のはずだけど、露店で買食いとかも別に抵抗はないだろう。

 

「私はまだ何も食べてないから何か買うことにするよ。…ん〜、何にしようかなぁ?」

 

 この間露店で買ったハンバーガーはすごく美味しかったけど、あれと同じレベルのものがあると良いな…

 

「お、アレなんかどお?」

 

「あら、何だか可愛らしいお店ですわね」

 

 と、レティとルシェーラが見つけたお店は…

 

「おお、クレープかぁ…確かに朝食には丁度いい量かも」

 

 そうして私達はクレープ屋さんの前までやって来てメニューを眺める。

 

「いらっしゃいませ〜」

 

 どう言うわけかメイド服を着た店員さんが出迎えてくれる。

 お祭りということで色んな格好をしている人…それこそ仮装パーティーみたいな人もいるけど、クレープ屋さんとメイドの繋がりはよく分からない…

 

 

 

 

 

 

 

 注文を聞いたメイド店員さんは、熱の通った鉄板に生地を流し込んでヘラで丸く薄く引き伸ばし、生地が焼けたら具材を載せて手早く包み込むように折りたたんでいく。

 

 鮮やかな手際でそれを繰り返してあっという間に3人分出来上がる。

 

「お待たせいたしました、どうぞ〜」

 

「うわ〜、美味しそうだね〜」

 

 それぞれ受け取って、早速かぶりつく。

 ここではマナーとか作法なんか関係ない。

 レティとルシェーラも躊躇うことなく歩きながら食べている。

 

 

「う〜ん、美味しいね。生地がモチモチでクリームの甘さとフルーツの酸味がバランスよくて…」

 

「ほんと。…でも、久しぶりに食べたなあ〜」

 

「私は初めて食べましたわ。ブレゼンタムでは見ませんでしたし。イスパルナにもあるんですの?」

 

「え?あ、いや〜イスパルナじゃなくて…どこで食べたんだったかな〜、あははは…」

 

 …なるほど、前世の話なんだね。

 さっき呟いた時も、懐かしさだけじゃなくて少し悲しげな表情をしていたし。

 

 私も前世以来だね。

 何だか今の方が美味しく感じるのは男女の味覚が変わったからなのか、それとも友達と一緒だからなのか…その両方かもしれない。

 

 

「美味しかったけど、もうちょっと食べたいかな」

 

「そうだね。でも折角なんだから少しずつ色んな種類を食べた方が良いんじゃない?」

 

「じゃあ他の露店も見て回ろうか」

 

 という事でもう少し食べ物の露店を見ることに。

 

 

 

 

 

 

 そうしてあちこち露店を見回って、時々買食いしながら目的地に向ってゆっくりと進んでいくと…後方から悲鳴が上がった!

 

「スリよっ!!誰か捕まえてー!!」

 

 声のする方を振り返って見ると、男が走って来るのが見えた。

 どうやらスリを失敗して見つかったみたいだが…このままだと私の方に向かってきそうだ。

 念の為身構えておく。

 

「どけえーーっ!!」

 

 もう目前まで迫った男は怒鳴りながらも勢いを緩めずに突っ込んでくる!

 

「はい、そこまで〜」

 

私を吹き飛ばそうとタックルの体勢になったところで、私から少し離れたところにいたケイトリンがスッとタイミングよく足を出して男の足を引っ掛けた。

 

「どわぁっ!!?」

 

 ガッ!ステン!ズシャーー!!と、ソイツは派手にすっ転び、勢い余って顔面を地面に打ちつけたままシャチホコみたいになって滑っていった。

 

「う〜ん…なんて見事な顔面スライディング。百点をあげよう!」

 

 …レティ、それは何の点数なの?

 確かに漫画みたいに見事な顔スラだったけど。

 

 ともかく、先ずはケイトリンにお礼を言わないと。

 

「ケイトリンありがとう」

 

「いえいえ、私が手を出すまでも無かったと思いますけど、お仕事はしないとですからね〜」

 

 まあね、あの程度はなんとでもなる。

 でもあまり目立ちたくはないから助かるよ。

 

 転んだ男はオズマが取り押さえた。

 

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

 スられた女の人が追いついてケイトリンにお礼を言う。

 

「どういたしまして。王都は治安が良いとはいえ、祭の間はこういう輩も増えますからね、注意してください」

 

「は、はい!」

 

 

 

 治安が良いとはいえ、王都ほどの大都市ともなればどうしたって後ろ暗い人種が集まる暗部があるものだ。

 祭で人が多く集まる状況というのは彼らにとっては稼ぎ時だろう。

 こう言った盗みなどの犯罪や喧嘩を取り締まるために騎士団は総出で警備に駆り出されている。

 

「今はこう言うのが多いだろうねぇ…私達も気をつけなきゃ」

 

「そうだね。でも…根絶は難しいかもしれないけど、少しでも治安を良くしてかないとね」

 

 万人を救うのは無理だとしても、より多くの人が幸せに過ごせるようにするのが国の役目だ。

 父様の治世は多くの人に支持されているけど、きっとゴールなんて無いのだろう。

 

「…カティアさんは、本当に王族になったのですわね」

 

「ううん…私なんてまだ何もしてないし、これからも上手く出来るかなんて分からないよ」

 

「だいじょ〜ぶだよ、その気持ちがあるのなら」

 

「そうですわ、私達も力になりますし」

 

「…うん、ありがとう!」

 

 

 

 

 

 やがて、駆けつけた衛兵にスリの男を引き渡し私達は散策を再開するのだった。

 

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