【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第七幕 28 『武神杯〜本戦第一回戦第一試合』

 

『さて、本戦最初の試合ですが…ダードレイさんはどうご覧になりますか?』

 

『そうだな…順当に考えれば、オッズが示すとおりラウル…選手が優勢だとは思うが…』

 

『ふむふむ』

 

『だが、イリーナ選手に勝機が無いわけではない。俺が予選の戦いを見て思ったのは…彼女の持ち味はやはり軽快な身のこなしと、『機を見る』ことが優れてる点にあると思う』

 

『ほうほう』

 

『つまりだな、あ〜…とにかくまともに打ち合うとかはしねえで、ヒットアンドアウェイ。これを徹底できればあるいは…だが、ラウルのやつもそんなに甘かねえからな。相当厳しいことには違いねえだろ』

 

 父さん、だんだん言葉遣いが適当になってきてるよ。

 

『なるほどなるほど。果たしてイリーナ選手が予想を覆すのか、はたまたラウル選手が下馬評通りの実力を見せるのか?さあ、いよいよ試合開始となります!』

 

 どうやらお姉さんは今回は司会に専念するようで、舞台側にいる男性が審判を務めるらしい。

 と言っても、殆ど何でもありの大会だから開始と終了の宣言くらいしかやることがないだろうけど。

 

 

 

 

『両者、準備はいいですね。では、第一回戦第一試合…はじめっ!!』

 

 ついに、本戦最初の戦いの火蓋が切られた!

 

 

 開始の合図とともに飛び出し、速攻を仕掛けるのはラウルさん。

 拳で戦うのは予選と同じだが、今回は素手ではなく両手に手甲をはめている。

 対するイリーナさんはショートソードを構えて迎撃の姿勢だ。

 ギリギリまで引きつけてから回避、カウンター狙いだろうか。

 

『さあ、開始とともにラウル選手が仕掛けました!』

 

 

 瞬く間に距離を詰めたラウルさんが拳を繰り出す!

 スピード、パワーともに申し分ない攻撃だが、真正面からのそれをイリーナさんはギリギリまで引きつけて僅かに身体を捻って躱し…

 と、ラウルさんはそこで急制動をかけて拳を引き、回転しながらもう片方の腕を振るって裏拳を放つ!

 

 イリーナさんは、カウンター狙いで振りおろそうとしていた剣を防御に回して直撃を防ぎつつ、跳躍して衝撃を吸収しながら距離をとった。

 

 

『おっと!一瞬のうちに攻防が行われたようですが…ダードレイさん?』

 

『ラウルの初撃をイリーナほギリギリで躱してからのカウンター狙い。だが、それはフェイントで本命は裏拳だったんだが、何とか防御が間に合って、ついでに攻撃に逆らわずに利用して距離を引き離した…ってところだ』

 

『おお!あの一瞬でそのような攻防が…これは初戦からハイレベルな戦いになりそうです!』

 

『思ったよりイリーナ選手は近接戦闘のレベルが高いな』

 

 そうだね。

 もっと距離をとって戦うタイプかと思いきや、接近戦のスペシャリストであるラウルさんの攻撃をあそこまで引きつけるとは。

 

 

『あっと!今度はイリーナ選手から仕掛けます!』

 

 イリーナさんが飛び出してラウルさんが迎撃の構え。

 さっきとは逆の構図だ。

 

 上段から振り下ろした剣をラウルさんが手甲で受け止め…と、インパクトと同時にイリーナさんがラウルさんの頭上をくるりと回転しながら跳び越えて背後に回り込み足元からすくい上げるように切り上げる!

 

 ラウルさんはそれを躱しながら後ろ回し蹴りを放つが、イリーナさんは攻撃直後、既に後方へと跳び退っていたのでこの攻撃は空を切った。

 

 回し蹴りからそのまま向きを変えたラウルさんはイリーナさんを猛追、イリーナさんは後退から反転してカウンターで突きを放つ!

 

 すると…!

 

 ラウルさんは白刃取り…ではなく、掌を交差させるように白刃に打ち付けようとする。

 武器破壊か!

 

 それを既のところで察知したイリーナさんは剣の軌道をずらして破壊されるのを免れるが、攻撃は外れてしまった。

 

 ラウルさんは武器破壊が失敗に終わったと悟った瞬間には蹴りを放っていたが、イリーナさんもその時にはもう回避体勢に入っており、相手の蹴りをを受け止めながらその勢いを利用して離脱した。

 

 そこでまた、一旦距離を取る形に。

 

 

『またもや激しい攻防が一瞬のうちに行われましたが…ダードレイさん、ラウル選手の最後の動きは何でしょうか?』

 

『あれは武器破壊を狙ったものだな。イリーナ選手はよく防いだもんだ。それに、上手いことイン・アウトを切り替えてるな。だが…』

 

 父さんの言う通り、あれはよく躱したね。

 

 それにしても…良い勝負だ。

 今のところは互角に見える。

 

 だが…ラウルさんの方はやはりまだまだ余力をのこしてるだろう。

 一方のイリーナさんはと言うと、こちらはギリギリらしくて既に肩で息をするような状態だ。

 やはり実力差があるのだろう。

 

 

「なかなかやる。だが…これからギアを上げてくぜ!ついてこれるか!?」

 

「…くっ!」

 

 ラウルさんは宣言通り、これまでよりも更にスピードを上げて猛然と襲いかかる!

 

『ラウル選手、またも仕掛けますが…早い!!』

 

『ギアを上げたな』

 

 

 イリーナさんは今度は迎撃ではなく回避優先の判断をしたようだ。

 その判断は正しいとは思うが…

 

 大きく距離を取って相手の攻撃の隙を何とか突こうとしているようだが、ギアを上げたラウルさんにピッタリ追随され、その猛攻を躱すだけで精一杯のようだ。

 

 

 そうしてしばらくは一方的な攻防が繰り広げられていたが…

 

 ガッッ!!!

 

「ぐっ!」

 

 ついにラウルさんの拳がイリーナさんの左肩に突き刺さった!!

 

 

 だが…!!

 

 

「ハアーーーッッ!!」

 

 イリーナさんが渾身の斬撃を繰り出す!!

 

 どうやら、わざと攻撃を受けて反撃する作戦だったようだ。

 まさに、肉を斬らせて骨を断つ一撃だ。

 

 しかし…!

 

 

 ガンッ!!

 

 

 その決死の攻撃すらもラウルさんは読んでいたようで、もう片方の手甲で弾き飛ばしてしまった。

 そして、ラウルさんの蹴りが完全に無防備となってしまったイリーナさんの鳩尾に入った!

 

「うぐっ!!?」

 

 

 そこで勝負あり。

 イリーナさんが崩れ落ち…倒れ臥す前に舞台外に弾き出されてしまった。

 

 

『そこまで!!勝者、ラウル!!』

 

 ウオーーーーッッ!!!

 

 審判が勝者を宣言すると、観客からは勝者を称える歓声と拍手が巻き起こる。

 

「「ラウルーーっ!良くやった!!」」

 

「「イリーナ!!強かったぞーーっ!!」」

 

 

 

『第一回戦第一試合の勝者が決まりました!!ダードレイさん、素晴らしい試合だったと思うのですが、いかがでしたでしょうか?』

 

『そうだな、実力差はあったが、イリーナ選手は持ち味を活かして健闘したと思う。彼女はまだ若いし、まだまだ伸び代があるだろうからな。将来が楽しみな逸材だろう。』

 

『そうですか、今後が楽しみな選手ですね!一方のラウル選手はどうでしたか?』

 

『ラウル…選手はイリーナ選手の果敢な攻めに対して余力を残しながら終始自分のペースを崩さず、攻め時にはギアを上げて一気に試合を決めるなど流石の安定感だったな』

 

『そうですね、Aランク冒険者の実力を遺憾なく発揮されていたのではないでしょうか。…では皆さん、素晴らしい戦いを披露してくれましたお二人に、今一度盛大な拍手を!!』

 

 ワァーーーーッッ!!

 

 パチパチパチパチッ!

 

 万雷の拍手が会場を満たし、ラウルさんは高々と手を上げてそれに応える。

 

 

 こうして、第一回戦第一試合はラウルさんの勝利で幕を閉じた。

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