【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第七幕 34 『武神杯〜本戦 休息』

 武神杯本戦初日を終えて、私(と護衛二人)はとある食堂兼酒場にやって来た。

 

 闘技場を出る前に、貴賓席の方に行って父様たちには伝えている。

 その時に四強進出についての祝福の言葉を貰ったのだが…

 クラーナが「おねえさま!おめでとうございます!すごくかっこよかったです!」と、興奮して目をキラキラさせながら言ってくれたのがとても嬉しかった。

 お姉ちゃん、次も頑張るよ!

 

 

 なお、闘技場の舞台から降りたら再び魔法薬の効果が現れて黒髪になったので、こうして街をぶらついてもすぐに正体を悟られる事は無い…はず。

 

 普段は別に変装もせずに街を歩いたりしてるけど、流石に今は話題になってるだろうし、極力目立たないようにしたほうが良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 比較的広い店内は、ちょうど夕食の時間帯ということもあって多くの客で席は殆どが埋まっており、食事や酒を楽しむ賑やかな声で満たされている。

 

「いらっしゃいませ〜!!3名様?席は…」

 

「あ、人を探してます。え〜と…あぁ、いたいた」

 

 

 店内を見回して探してみると、目的の人達はすぐに見つかったのでそちらに向かう。

 

「みんな!」

 

「ん?ああ、こっち来たのか。お疲れさま」

 

「あ、ママ〜!すごかったの!」

 

 私が声をかけると、カイトとミーティアが振り向いて私を見ると労いの言葉をかけてくれた。

 

「うん。父様には言ってきたよ」

 

「随分と身軽な姫サマだよな、お前」

 

「ふふ、おかげさまで」

 

 一緒の席に座っていた父さんが苦笑して言うのにも笑って答える。

 

 ちょうど三人分は座れそうだったので席に着く。

 真面目なオズマはちょっと複雑そうな表情だったけど、普通のお店で直立不動でいるのも変だと言うことは分かってるので結局は何も言わず、だが躊躇いがちに席についた。

 

 もともとケイトリンの事は皆知ってるし、オズマも私の専属護衛になってから何度か顔を合わせてるので、ウチの団員とは面識はある。

 

 

 その場にいるのは他に、ティダ兄とロウエンさん、更には…

 

「ラウルさんも来てたんですね」

 

「おう、姫さんお疲れ!ほれ、先ずは駆け付け一杯どうだ?」

 

「あ、頂き…」

 

「「「ダメだ(ッス)」」」

 

 ラウルさんの誘いに応じて一杯頂こうとすると、皆まで言わせず即座に却下される。

 

「うう…勝利の美酒に酔うこともできないのね…」

 

「なんだ、下戸かい?」

 

「カティアちゃんに酒を飲ませると酷いことになるッス。…まあカイトがいれば犠牲者は本人とカイトだけになるッスけど」

 

「勘弁してください…」

 

 犠牲者って。

 でもまぁ、黒歴史をこれ以上積み上げたくないし、姉さんがいなければ[解毒]も出来ないから無理に飲むつもりも無いんだけど…

 

 

「もうカイトったら…婚約者(仮)なんだから良いじゃない」

 

「いや、そういう問題ではないだろ…」

 

「うふふ、恥ずかしがっちゃって!」

 

「…お前ぇ、吹っ切れすぎだろ。そう言うのは二人きりのときにやってくれ」

 

「は〜い」

 

 まあ冗談はそのくらいにして、仕方なくジュースを頼もうとすると、ミーティアが袖を引っ張って聞いてきた。

 

「ねえ、ママ?お酒っておいしいの?」

 

「へ?…う〜ん、美味しいというか…楽しくなれるというか…」

 

「何だミーティア、酒に興味があるのか?」

 

「ん〜…?みんなおいしそうにのんでるから」

 

「そうか。だがもっと大きくなってからな?」

 

「うん!」

 

 この子、見た目も精神も子供だけど、身体スペックはそうじゃないからなぁ…私よりお酒に強かったりして。

 まあ、だからといって飲ませるわけにはいかないけど。

 

 

 

 

 

 

「しかし、その嬢ちゃん…そんなナリなのにどう言うわけか相当な力を感じるんだが…」

 

「うにゅ?」

 

 ラウルさんが不思議そうに言う。

 どう見ても子供にしか見えないので、自分の感覚に戸惑っているようだ。

 

「おう、流石だな。ミーティアはこう見えてもBランク上位くらいの実力はあるぞ?」

 

 父さんがその疑問に答える。

 

「マジっすか…いや、ダードの大将が言うんだから間違いないんだろうけど。それに、そっちのアンタ」

 

 と、今度はカイトの方に向き直る。

 

「アンタも相当な実力者だろ?大将やティダのアニキと変わらないくらいの強さを感じるぜ」

 

「ダードさんやティダさん程とは思いませんが…」

 

「ははっ!謙遜するなカイト。お前は既に俺やティダともそう変わらない力を持ってるだろ」

 

「だよなぁ…できればアンタとも戦ってみたかったな」

 

 アレだね。

 バトルジャンキーってやつだ。

 まあ強い人と戦ってみたいというのは分かるよ。

 それに、この二人の戦いは見応えあるだろうね。

 

「俺は余り目立つのが得意ではないので…」

 

「そうか、そいつは残念だ」

 

 

 

 

「ラウルさんは昔、ダードレイ傭兵団にいたんですよね?」

 

「ああ、大分昔のことだけどな。それにまだ若造だったし…それほど傭兵として活躍したわけでもねえしな」

 

「オイラと同い年ッスよ」

 

 ロウエンさんと同じということはギリギリ20代…傭兵団にいたのは14、5歳の時ってことだ。

 

 

「ふっ、今でもそうだが負けん気が強くてな。おまけに無鉄砲だったんだが…多少はマシになったか?」

 

「いや〜、昔の事は勘弁してくださいよ。これでも今はカカロニアで知らぬ者なしのAランク冒険者ですぜ!」

 

「普段はカカロニアで活動されてるんですよね?今回は武神杯に出場するために?」

 

 隣国とは言え、わざわざ出場するためだけに来るものかな?と思って聞いてみた。

 もちろんそういう人も沢山いるとは思うけど。

 

「ああいや、ここに来たのはアクサレナ行きの護衛依頼を受けたからだ。大会のことは以前から知ってはいたんだが…今回ちょうど良い機会だからってんで参加したんだ」

 

「ああ、なるほど…」

 

「へへっ、俺はこれでもAランクだからな。かなり大物の護衛だったんだぞ」

 

「へえ〜、誰なんです?って、それ機密だったりしないんですか?」

 

「いや、別に秘密じゃねえよ。向こう出るときも大々的に告知されてたしな。カカロニアのイスファハン王子だ」

 

 おお、そこでその名前がでますか。

 

「夜会でお会いしましたよ」

 

「…ああ、そうだった。本当に姫サマだったんだな」

 

「ふふ、そう見えませんか?」

 

「いや。ただ、こんなところでこうして話をしてる相手が…と思うと不思議な感じはするな」

 

 そりゃそうだね。

 でも、王都の人達は普段から私が街をぶらついてるのにもだんだん慣れてきてると思うけど。

 

 

「でな、まだ依頼は残っててな。武神祭が終わったら、今度はイスパルナに向かうらしい」

 

「イスパルナ?」

 

「ああ。なんでも新しい技術の視察だって聞いたがな」

 

「ああ…なるほど」

 

 鉄道を見に行くのか。

 私のお披露目パーティーの出席、武神祭、視察と…色々纏めて済ましてしまおうってことだね。

 そうすると他の国賓の方も同じかもしれない。

 今度レティに聞いてみよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、私はそろそろ帰りますね」

 

 その後もいろいろな話で盛り上がりながら食事をとり…そろそろ夜も遅くなってきたので帰城することに。

 ミーティアはうつらうつらとしていたが、今日は私と一緒に帰ることにしたみたい。

 

「ティダ兄もラウルさんも、明日は試合なんだからお酒は程々にね」

 

「ああ。俺もここらでやめておく」

 

「おう。明日は負けねえからな!」

 

「こちらこそ」

 

 最後にラウルさんと握手を交わしてから店を出たのだった。

 

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