【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第七幕 45 『決着』

 

 ドォンッ!!

 

 ズガァーンッ!!

 

 ドゴォッ!!

 

 

 …およそ常人が発するものではない轟音が何度も会場に響き渡る。

 人外とも言える闘いに観客は声を上げるのも忘れ、ただただ呆然と成り行きを眺めている。

 そのため、これまでの喧騒が嘘のように静まり返っているものだから、より一層轟音が引き立つのである。

 

 

 まるで音を置き去りにするかのようなスピードで、衝撃波すらともなって突進して斬撃を放つ父様。

 その踏み込みの音も轟音の発生源の一つ。

 

 迫りくる剛剣は、もはや生半可な技などでは止められない。

 一切合切を飲み込む濁流、全てを吹き飛ばす嵐の如く。

 

 故に、まともに受け止めることはせず、文字通りの紙一重で回避するのだが、即座に追撃の一撃が襲い来るので反撃の隙を見い出せないでいた。

 

 間合が離れると、衝撃波による遠隔攻撃。

 それが観客席の壁を破壊するのが、轟音のもう一つの発生源だ。

 …そんなに壊して大丈夫なの?

 

 

 既に、あのゾーンとも言える境地に至って闘っているのだが、それでも一方的に攻め立てられる状況。

 

 私の(シギル)による身体強化よりも[鬼神降臨]によるそれの方が若干上回っているのだろう。

 それでも何とか凌ぐことは出来ているので、このまま[鬼神降臨]の効果が終われば、その反動で父様はまともに闘うことができなくなるはず。

 

 だけど今でもギリギリだし、このまま終わるとも思えない。

 それに、そんな決着は望んでいない。

 

 どこかで必ず勝負に出るタイミングが訪れるはず。

 …お互いに。

 

 

 

 縦横無尽、疾風怒濤の父様の攻撃の手は緩むことなく、しかし私も既のところでそれらを躱す。

 何とか割って入って反撃したいところだが…

 

 

「うおぉーーーーっ!!!」

 

 父様が裂帛の気合を発すると、紅い闘気の輝きと勢いが一気に増大する!!

 

 来たっ!

 

 恐らくは決着を付けるための最後の攻撃だ。

 

 私もここが勝負どころと判断して、ディザール様の(シギル)を発動する!

 

 常駐常態で薄っすらと纏っていた青い燐光がより鮮烈なものとなり、私の目の前に剣と盾を象ったような印が現れる。

 その青い輝きは、私が手にした剣に収束して純粋な破壊エネルギーとなって眩いばかりの光を放つ。

 

 

 私が(シギル)を発動させた次の瞬間、父様が舞台を蹴って一足跳びに迫り来る!!

 

 父様の全身全霊を込めた渾身の一撃、私はそれを真っ向から受けとめた!

 

 バァーーーンッッ!!

 

 およそ剣と剣がぶつかったものとは思えない破壊音が、会場に響き渡る!

 

 力と力が拮抗し、紅と青の輝きが衝突することで電光にも似たスパークが迸る!

 

 

「ウォーーーーーッッ!!」

 

「ハァーーーーーッッ!!」

 

 ここまでくれば後には退けない!

 押し切らなければ力の奔流が押し寄せて飲み込まれる!

 

 だが、純粋なパワーは父様の方が上のようで、少しづつ押し込まれる。

 何とか受け流したいが、少しでも力を抜くと一気にやられてしまいそうでそれもままならない。

 

 ビキッ!

 

 と、二人分の強大な膂力を受け止めきれなくなったのか、私の持つ剣にヒビが入る!

 

 くっ!?

 マズい…折れる!!

 

 

 バキィンッ!!

 

 

 大きな音を立てて二人の剣が折れる!!

 

 そしてその瞬間…拮抗していた紅と青の破壊エネルギーが爆発した!!

 

 

 ドゴォーーンッッ!!!

 

 

 

 

 その衝撃をまともに浴びた私の意識は、そこでぷっつりと途絶えてしまうのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …

 ……

 ………はっ!?

 

 ここは…?

 

 

「目を覚ましたか、カティア」

 

 と、父様に声をかけられる。

 あたりを見回すと、そこは闘技場…舞台の外だった。

 

 え〜と…確か……

 

 父様との闘いの最後、お互いに最後の力を振り絞って…剣が折れて…それから…?

 

「え〜と、あの後どうなったのですか?」

 

「俺もお前も剣が折れて…衝突して溜まりに溜まった力が暴走して二人とも巻き込まれたんだ。…まぁ、引き分けだな」

 

「引き分け…」

 

「そうだ。…強かったぞ、カティア。ここまでの力があろうとは…驚いたぞ」

 

 と、頭をポムポムしながら言う。

 

 何だか子供扱いだけど…悪い気はしなかった。

 

「えへへ…父様も凄く強かったです。英雄王と全力で闘えて嬉しかったです」

 

「うむ、俺も楽しかった。どれ、観客に応えてやらねばなるまい。…立てるか」

 

「はい、大丈夫です」

 

 父様が差し伸べてくれた手を掴んで立ち上がり、再び舞台に上がった。

 

 これまで闘いに集中するあまり聞こえていなかった大歓声に手を振って応える。

 

 

 

 

 

『最後の闘いは劇的な幕切れです!!双方全くの互角、凄まじい力と力のぶつかり合いは相打ちでの決着となりました!!』

 

『ぷはぁ!!…息するのをわすれてたぜっ!』

 

『…会場が酷いことになってるな』

 

『陛下の懐が心配だな』

 

『…え〜、王妃様から陛下に……修繕費の概算見積り速報値が届いてるので目を通しておくようにとの事です…』

 

 

 母様……シビアだね。

 父様は顔を手で覆って天を仰いでいる。

 

「……まけてくれ」

 

 が、がんばれっ!!

 

 

 

 

 

 

 こうして、武神杯大闘技会で私は優勝者となった。

 真の王者決定戦は惜しくも引き分けとなったが、十分過ぎる結果だろう。

 

 何よりも、この大会を通じて格段に成長できたのが嬉しい。

 また来年も参加して、今度こそは父様に勝利したいと言う新たな目標もできた。

 

 

 

 

 この後はベスト4以上の上位入賞者の表彰式が行われ、武神杯は閉幕となる。

 

 

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