【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第一幕 17 『ブレゼンタムの休日 デート?』

 訓練を終えてギルドを出た私とカイトさんは一緒に昼食を取ることにした。

 ギルド併設の食堂でも良かったのだが、カイトさんが気を利かせて外で食べようと誘ってくれた。

 

 訓練で少し汗をかいたが、更衣室にシャワールームもあったので軽く汗を流してから着替えたので問題ない。

 …訓練中に匂いが、とか言い出すから気になっちゃったんだよ。

 

 やってきたのは東の大通り沿いにあるオープンカフェのようなお店。

 通りに面したところがテラスになっていて、なかなかオシャレな雰囲気だ。

 

 昼時と言うこともあって混雑していたが、タイミング良く席が空いたのですぐに入店できた。

 

「カイトさんはこのお店に良く来るんですか?私は初めて入りました。前から気にはなってたんですが…ちょっと一人では入りづらかったんで楽しみです」

 

「俺も初めてだな。レイラとリーゼがよく来ているらしいんだが、なかなか美味しいと聞いてたし、あいつら好みならカティアにも合うかと思ってな」

 

 うんうん、気遣いのできる男って感じですな。

 うちの一座の男連中は見習ったほうが良いと思う。

 とにかく肉肉肉で味よりもボリューム優先の連中にこんなオシャレなお店に誘うなんて芸当は出来まい。

 

 席につくとすぐにやってきた給仕のお姉さんに、それぞれ注文してしばらくお喋りしながら料理を待つ。

 それほど待たずに料理がやってきた。

 湯気とともに美味しそうな匂いが立ち昇る。

 

「うわ~、美味しそう~!」

 

 私が頼んだのは野菜と魚介をふんだんに使った米料理で、前世で言うパエリアのような料理だ。

 お米はこの世界にも普通に存在する。

 和食っぽい料理もあるみたいなので【俺】としては嬉しい限りだ。

 

「ああ、こちらもなかなか美味そうだ」

 

 カイトさんが頼んだのは厚みのある塊肉をじっくり煮込んでたっぷりとソースがかかった肉料理をメインに、いくつかの小皿料理とパンがセットになったものだ。

 中々ボリュームがあって男性のニーズにもしっかり答えているようだ。

 

「いただきま~す!」

 

「ん?何だそれは?」

 

 おっと、思わず前世の習慣が。

 不思議そうにしてるカイトさんに説明する。

 

「えっと、食べ物って命を頂くって事でしょう?だから、有り難く感謝して食べます、て言う挨拶です。え~と、どこかの地域の風習だったと思います」

 

「ああ、流石に旅芸人だな。色々な地域のことを知ってそうだ。しかし、その挨拶の心掛けには感心するな。では俺も…『頂きます』」

 

 カイトさんも私の真似をして、食前の挨拶をしてから食べ始めた。私も一緒に食べ始める。

 

「ん~!おいし~!」

 

「ああ、こっちも美味いな」

 

 野菜と魚介の旨味がたっぷり染み込んだトマトベースの味が、良い香りとともに口いっぱいに広がる。

 お米も硬すぎず柔らかすぎず絶妙な炊き加減で食感も素晴らしい。

 味付けも濃すぎず、それぞれの素材の味が活きていて、それらが複雑に絡み合って調和している。

 …などと食レポしてしまうくらいに美味しい。

 

 その後は会話もそこそこにどんどん食べ進めていって、二人ともあっという間に食べ終わってしまった。

 

「あ~、美味しかった~!お腹もいっぱい!ご馳走様でした!」

 

「ああ、それは食後の挨拶か?『ご馳走様でした』」

 

 カイトさんは最後も私の真似をして食後の挨拶をしてくれた。

 

「ほんと、凄く美味しかったです。もっと早く来ればよかったな~」

 

「ふふ、誘ったかいがあったな。いい食べっぷりだったぞ」

 

「…それはあまり女の子に言う言葉じゃないですよ?」

 

 ジト目で睨んで突っ込む。

 全く、そんなにガツガツ食べてないよ。

 

「はは、すまんすまん。だがいいじゃないか、目の前で美味しそうに食べてるのを見たら、こっちも楽しくなるからな」

 

「ふふ、楽しんでもらえて何よりです」

 

 そんなふうに食後の会話を楽しんでいると…

 

「あ~!カイト!カティアちゃんとデートしてる~!」

 

 聞いたことのある声がして振り返ると、大通りを歩いてくるレイラさんを見つけた。

 他の『鳶』のメンバーも一緒だ。

 

 それにしても、デートだなんて…ただ一緒に食事をしてるだけじゃないか。

 大袈裟な…

 

「ああ、戻ってきたか」

 

「あ、皆さん!おかえりなさい!道中問題ありませんでしたか?」

 

「ただいま、カティアちゃん。ついでにカイトも。問題は無かったわよ。一度魔物に襲われたけど、アタシらだけで何とかなる相手だったし」

 

「魔物が出たのか。相手は?」

 

「ブラッドウルフだ。数匹程度だったから特に問題なかったな」

 

レダさんがそう答えたが…それはもしかして。

 

「それって、軍の野営地に向かう途中の、道に沿って森が続くところですか?」

 

「ええ、そうよ。良くわかったわね?」

 

「あ~、やっぱり。昨日私達が通った時も襲われたんです。三十匹くらいの群れだったかな?大体は倒したんですけど、数匹逃げられてしまいまして。多分その残党だったのではないかと」

 

「うわっ…カイト抜きで三十はキツいわ…またカティアちゃん達に助けられたみたいね」

 

「本当だな。助かったぞ、ありがとうな」

 

「いえいえ、たまたまですよ。でもタイミングがよくて良かったです」

 

「ところで、リーゼは随分大人しいがどうしたんだ?」

 

「…ブツブツ」

 

「お、おい?」

 

「あ~、いま頭の中で論文考えてるみたいで、ずっとこんな調子ですよ」

 

「…昨日の神代魔法か?まだやってるのか…」

 

 ほんと、凄い集中力だね…

 熱中出来る事があるのは良い事だと思うんだけど、私は何でも程々が良いかな…

 

「ま、リーゼは放っておくとして…あんたたちは何してたの?デート?カティアちゃん随分オシャレしてるし。カイトはもうちょっと格好に気を遣いなさいよ」

 

「たまたま街中でばったり会っただけだ。折角だから、と、さっきまで訓練に付き合ってもらってたがな」

 

「…全く、色気のない話ねぇ…そうだ、カティアちゃん、コイツ凄かったでしょう?」

 

「はい!凄かったです!私の攻撃が全く通用しなくて、驚きました!」

 

 正直、私の攻撃力は冒険者の中でもトップクラスであるという自負がある。

 その攻撃を全部捌ききるのだから、やはりカイトさんは只者じゃなかった。

 

「いや、正直ギリギリだったぞ。剣も折られたしな」

 

「へえ、カイトの剣を折るとは…そんなヤツ見たことないな。凄いじゃないか」

 

「あ、いえ。私の剣も折られたので相打ちでしたよ。木剣じゃなかったら私の方が負けてたかも」

 

 ザイルさんが感心して褒めてくれたが、あれは引き分けだったので訂正しておく。

 

「相打ちでも大したものよ。コイツ、自分の剣は守りの剣だから、とか言いながら上級受けてないけど、それくらいの腕は普通にあるのよねぇ」

 

「あ、それは初めて会った時から何となく察してました。父さん達と同じような、なんていうか強者の雰囲気みたいなものを感じましたし」

 

「へえ~、アタシらは職業柄、気配には敏感な方だけど、そう言うのは分からないわねぇ…」

 

 私も何となくなので説明は難しいのだけどね。

 

「ああ、そうだ。今日の夕方な、『エーデルワイス』の皆と今回の打ち上げをする約束をしたんだが、大丈夫だよな?」

 

「あ、そうなの?アタシは大丈夫よ。それまで宿でお風呂入ってゆっくり休むことにするわ」

 

「俺も問題ない」

 

「僕もです」

 

「…ブツブツ」

 

「…ま、まあ、リーゼも連れて行くわよ」

 

 …苦労しますね、レイラさん…

 

「じゃあ、ちょっと早いが俺も宿に戻るか…」

 

 じゃあカイトさんとはここで一旦お別れか…

 

「何言ってるのよ、暇なら最後までカティアちゃんのエスコートしなさいよ。ほら、カティアちゃん寂しそうな顔してるじゃない」

 

 えっ!?

 いや、確かに少し寂しいと思ったけど、そんな顔に出るほどでは…

 でも、折角だからこの後も買い物に付き合ってもらおうかな。

 

「カイトさん、私このあと冒険者向けの魔法具店とか武器防具店を見てみようと思ってたんですが一緒にどうです?」

 

(あら、ワタワタしないのね?何か吹っ切れた感じ…でも、そのチョイスはどうなのよ…デートって感じじゃ無いわよねぇ…まあ、この朴念仁にはお似合いといえばそうなのかしら?)

 

 あれ?

 何だかレイラさんが残念なものを見るような目をしている気が…

 と思ったら妙に納得したように頷いてる?

 ま、まあ良いか、気にしないでおこう。

 

「冒険者向けの魔道具店?そんなものがあったのか?」

 

「あ、はい、このケープを買ったお店で聞いたんです。もともとこのケープもそのお店の人が作ったらしいですよ」

 

「ほう…そのケープのか。面白そうだな」

 

「でしょう?」

 

 カイトさんも興味を示してきた。そうでしょう、気になるよね。

 

「はいはい、ごゆっくりー。じゃあ私達は一旦帰るからね」

 

「ああ、じゃあまた後で、いつもの『金の麦穂亭』な」

 

「「「了解」」」

 

「…ブツブツ」

 

 …リーゼさんはいつまでその状態なんだろう…

 

 

 『鳶』の面々と別れ、私達もお店を出た。

 

 さて、服飾店のお姉さんに聞いた魔道具店の場所だが…

 以外にも商店が立ち並ぶ東西南地区ではなく、北地区にあるらしい。

 北地区にも商店が無い訳じゃないが、ほとんどは住宅地のはずだ。

 

「あ、侯爵邸だ。…あの閣下の邸宅とは思えない程立派ですよねぇ…」

 

「ふふ、閣下は貴族らしくない気さくな方だからな。だが、これでも最低限の貴族としての体面を保ってるだけで、普通は侯爵邸ともなればこれの倍は広かったりするぞ」

 

「へえ~、じゃあやっぱり閣下らしいってことですね」

 

「ああ、『広すぎて管理が面倒だ』とか『そんなに部屋数増やして何に使うんだ?』とか言っていたしな」

 

 う~ん、やっぱりカイトさんて、昔からの閣下の知り合いっぽいよね。

 それも、ただの冒険者と依頼人て関係じゃないと思う。

 でも、報告の時の会話から察するに余り詮索はして欲しくなさそうだったよね。

 まあ、親しくなれば教えてくれるかも知れないし、今はあまり触れないでおこう。

 

 侯爵邸も通り過ぎて北門の近くまで来た。

 お姉さんに教えてもらった場所は、たしかこの辺りのはずだ。

 

「あ、あそこかな?看板が出てる。え~と、『プルシア魔道具店』。間違いないですね」

 

「だいぶ外れにあるんだな。あまり商売っ気を感じない」

 

 そうだね…あのお姉さんの身内ならヘンな店じゃ無いと思うけど。

 とにかく中に入ってみよう。

 

 カランカラン~、とドアベルを鳴らしながらお店の中に入ると、大小様々な品物が所狭しと陳列された棚がずらりと並んでいた。

 店内はそれほど広くないが、きちんと整理されているので、取り扱う品物から受ける雑多な印象よりはすっきりしている。

 

「は~い、いらっしゃ~い!」

 

 ベルの音を聞きつけた店員らしきお姉さんが店の奥から現れた。

 服飾店のお姉さんの身内と言っていたが、確かに雰囲気は似ている。

 挨拶はこっちのお姉さんの方がより砕けた感じだ。

 

「あ!?そのケープ!そっか~、姉さんからうちの事を聞いたんだね?」

 

 お姉さんは私の方を見るなりそう言った。

 そうだよね、このお店で作った物ってことなんだから分かるよね。

 

「え?あ、はい。身内に魔道具店をされている方がいると聞いて…妹さんだったんですね」

 

「ええ、そうよ。わたしはプルシア。姉はユリシアっていうの。よろしくね」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。あ、私はカティアって言います」

 

「カティアちゃんね。あれ?カティア?どこかで…」

 

 ああ、お姉さんも公演見に来てくれたって言ってたし、多分プルシアさんも一緒だったんだろう。

 

「…もしかして、お姉さんと一緒に公演を見に来てくださいました?」

 

「公演?…ああ!ダードレイ一座の!そっか~、あの可愛い歌姫さん!…間近で見ると、ホント凄い美人さんねぇ~…」

 

「あ、いえ、そんな…あ、ありがとうございます…」

 

 正面からストレートに褒められると凄く照れる…顔が赤くなってそうだ。

 

「あら、照れちゃって、ホント可愛らしいわ~。で、そちらはカレシさん?」

 

「あ、いや、俺は…」

 

 ふふ、なんかプルシアさんのペースに巻き込まれてタジタジになってる。

 ちょっと珍しいかも。

 

「あ、この人は冒険者仲間で…カイトさんって言います。冒険者向けの魔道具店があるっていったら興味を持ってくれたみたいで」

 

「あら、そうなの?凄くお似合いのカップルと思ったんだけど。あ、ごめんなさいね、一人でベラベラ喋っっちゃって。私は奥のカウンターにいるから、ゆっくり見ていってね。魔道具の用途とかは棚に説明書きが貼ってあるからそれを見てちょうだい。分かりにくいやつとかあったら聞いてね」

 

 といって、プルシアさんは奥のカウンターに引っ込んで言った。

 …お似合いって言われちゃった。

 

「…なんか押しが強そうな人だな。じゃあ、店内見てみるか。何か面白そうなものはあるかな…」

 

 そう言ってカイトさんは品物を見始めた。

 私も見て回ろうっと。

 

 う~ん、これは何だろ?

 見た目は魔核のような丸い石だが。

 なになに、『閃光石』?

 へえ、[閃光]の魔法が発動するのか。

 地面に叩きつけると発動…使い捨てなんだね。

 銀貨二枚。

 魔道具としてはお手頃価格だが、使い捨てとしたらそこそこ良いお値段かな。

 こういった使い捨てのものは他にもたくさん種類があるみたい。

 値段もだいたい同じだ。

 

 こっちは…『火炎筒』。

 [炎弾]の魔法が打ち出せるんだね。

 魔力フル充填で十発撃てて、連射もできる、と。

 銃みたいな感じだね。

 半金貨一枚。

 使い勝手の割に良心的な価格だと思う。

 

 ん~、ただこの辺は無詠唱で使えるからなぁ…

 私にはいらないかな。

 他には…

 

 お、これは…

 『結界の指輪』…[障壁]と[魔壁]を選択起動可能か。

 同時起動させるのは難しいのかな?

 結界系統って私は無詠唱で使えるものは少ないから、これはこれで便利そうだ。

 金貨一枚。

 

 『隠者のローブ』は私のケープと同じ服飾系の魔道具だね。

 [隠遁]が発動する、と、斥候向きだ。

 『鳶』パーティーには有用じゃないかな?

 これは金貨二枚。

 

 あ!これいいかも!

 なかなか凝ったデザインの髪留め。

 常時発動で、微弱な回復魔法と[清浄]の効果で髪や肌を綺麗に保つですって。

 『美容の髪留め』…そのまんまだな。

 女性冒険者にオススメかぁ…

 お値段は…金貨一枚。

 普通にアクセサリーとしてもオシャレだし、とりあえずキープかな。

 いろいろなデザインがあるうちの一つを手に取った。

 

 その後も一通り見て回る。

 もっと高額で効果もすごそうななものもあるが、今回はパス。折を見てカイトさんに声をかけた。

 

「カイトさんは何か良いものありました?」

 

「そうだな…いろいろ面白いものがあったが、俺としてはこれが気になるな」

 

 と手に持ってるものを見せてくれた。

 シンプルな銀の腕輪に見える。

 無骨なデザインなので男性向けっぽい。

 

「それはどういうものなんです?」

 

「『結界の腕輪』というらしい。[障壁]と[魔壁]を選択起動可能とのことだ」

 

 さっき私が見てたやつの腕輪版だね。

 それにしても…

 

「カイトさん、唯でさえ鉄壁なのに、これ以上防御力上げるつもりなんですか…」

 

「冒険者は命有っての物種だからな。備え過ぎということもないだろ」

 

「まあ、それもそうですけど。それ買うんですか?」

 

「ああ、そうしようと思う。カティアは?」

 

「私はこれです」

 

「髪留めか?どういう効果があるんだ」

 

「へへ~、髪とお肌を綺麗に保つんですって」

 

「…それこそお前には必要なさそうに見えるが…髪も肌も十分すぎるほど綺麗だと思うぞ」

 

 くっ、サラッと褒めて来るとは…

 前世の【俺】には到底出来ない芸当だよ…

 嬉しいけど。

 

「で、でもほら、何日もかかるような依頼だとやっぱり痛みますし、睡眠が不規則になったりしてお肌も荒れたりしますし。女子には必携の品ですよ!デザインも素敵だし」

 

「そうか。効果はともかく、お前の髪によく似合いそうではあるな」

 

「へへ~、そうでしょう?」

 

 カイトさんにも似合うって言われたし、コレ買っちゃおうか。

 …今日だけで金貨三枚の出費になるのには目を瞑る事にする。

 

 

「あら、決まったのかしら?」

 

 こちらの雰囲気を察したプルシアさんが声をかけてくる。

 

「はい!私はこれを…」

 

「ああ、それね。女性冒険者には結構人気で売れ筋なのよね~。デザインもいろいろあるけど…うん、あなたにはそれがよく似合いそうね。で、カレシさんは?」

 

 …カレシでは無いってば。

 でもカイトさんは特に気にした風でもなく、手にした腕輪を見せる。

 …そんなふうに思われたら迷惑じゃないのかな…?

 

「俺はこれを」

 

「うんうん、それもなかなかの売れ筋商品よ。前衛職にはもってこいよね」

 

「ああ。支援魔法をかけてもらう手間が省けるからな。その分攻撃に回ってもらったり、パーティーの戦力アップにも繋がる」

 

 ああ、なるほど。流石はリーダーだね。

 個人の装備もパーティーの事をちゃんと考えてチョイスするんだ。

 …何だか自分が小さな人間に思えるよ…

 わ、私はソロ活動が中心だから、と心の中で言い訳をしておく。

 

「どっちも金貨一枚ね。あ、そうだわ。お値段同じだし、折角だからお互いにプレゼントしたらど~お?」

 

「え?プレゼント?」

 

「そう。誰かに贈って貰ったもののほうが愛着が湧いて大事にしようって思うでしょ?」

 

「え、えっと、確かにそうですけど…」

 

 私が少し困ってチラッとカイトさんを見ると…

 

「ふふ、じゃあ、この髪留めは俺がプレゼントしよう。カティアはこの腕輪を俺に」

 

 そういって私の手から髪留めをひょい、と取り上げて自分が持っていた腕輪を渡してくる。

 

 …こういう事をサラッとやっちゃうんだよね。

 やっぱりタラシなんじゃないだろーか?

 まあ、嬉しいけど…

 

「はい、決まりね。ありがとうございま~す」

 

 と言うことで、お互いにプレゼントするために購入。

 別に自分で買うのと変わらないんだけど、まあ、気分は大事だよね。

 

 で、お互いに買ったものを渡すのだけど…

 プルシアさんがただ渡すんじゃなくて身に着けてあげなさい、なんて言うもんだから…

 

「えと、お願いします…」

 

 今まで身につけていた髪留めを外して、後ろを向く。

 カイトさんの手が私の髪を束ねて髪留めを着けてくれるんだけど…

 うう…何だか恥ずかしいなぁ…

 

「ああ…よし、これでいいか?」

 

「あ、ありがとうございます、大丈夫です」

 

 で、今度は私がカイトさんに…

 差し出された腕を取って腕輪を着けてあげる。

 

(逞しくて大きな手…私とこんなに大きさが違うんだ)

 

 自分との大きな違いに、また一つ自分が女であること自覚する。

 はたして、かつての【俺】の手はどんなだったのか。

 まだ数日しか経っていないというのに、はっきりと思い出せない事に少し戸惑う。

 でも、嫌な気分ではない。

 

 …と言うか、意識し始めると何だかドキドキしてきた。

 

「え、えと。これでいいかな…」

 

「ああ、ありがとう。大事に使おう」

 

「はい…私も…」

 

 うう、恥ずかしくて顔が見れない…

 

 

「また来てね~」

 

 プルシアさんの挨拶を背に私達は店を後にした。

 

 

 その後も街を巡り、いくつかのお店を一緒に見て回って日が暮れる前にカイトさんとは一旦別れた。

 

 

ーー 魔道具店店主プルシアの回想 ーー

 

 

 いや、あなたたち絶対デキてるでしょ?

 

 あの娘は冒険者仲間とか言っていたが、お互い惹かれ合っているのは初対面の私でも丸分かりだった。

 自分で煽っておいて何だが、先程まで目の前で繰り広げられた甘酸っぱい空気は正直勘弁してください、って思ってしまった。

 

 それにしても…あのふたり相当腕が立つわね…

 冒険者向けと銘打ってるだけあって、私は色んな冒険者を見てきた。

 だからなのか、上手く説明はできないけど何となく雰囲気で、ある程度その人の強さが分かる。

 

 その私から見て、今まで見て来た冒険者の中でも群を抜いてる…と思う。

 特に女の子、カティアちゃんは強いだけじゃなく、何か不思議な力を感じる。

 それが何なのかは分からないけど、きっと何か大きな事を成し遂げる、そんな予感がした。

 

 ふふ、見た目はただの恋する女の子にしか見えなかったけどね。

 いや、あれ程の美貌で人気の歌姫でもあるんだから、『ただの女の子』じゃないか。

 

 これからお得意さんになってくれたら嬉しいね。

 

 


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