【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う! 作:O.T.I
『異界の魂』捜索が空振りに終ってから数日後、私は七番街にある『国立アクサレナ高等学園』に来ていた。
今日からいよいよ推薦入学希望者の試験が行われるのである。
全教科の試験を受けるとなると、一日3〜4教科で都合3日間はかかることになる。
『異界の魂』の事は非常に気になるが、今は暗部の情報を待つ以外に動けることはない。
リル姉さんにも会って話をするためエメリール神殿総本山を訪れたのだけど…都合がつかなかったのだろうか、神界に招かれることはなかった。
だから、今は気持ちを切り替えて試験に集中する。
アクサレナ高等学園…国内のみならず、周辺国では単に『学園』で通じる程の知名度を誇り、当然の事ながら入学希望者も非常に多い。
アスティカントの『学院』と比肩する難関校である。
幅広い知識と教養、技能を身に着けて、将来のリーダーとなる人材を排出することを目的とする『学園』。
専門性を突き詰めて、ある特定の分野に特化した人材を育成したり、研究を通じて新たな技術や理論を生み出すことを目的とした『学院』。
理念や目的は違えど、入学するのに困難を極めるのはどちらも同じだ。
七番街区の大部分を占める広大な敷地を持つ『学園』の正門は、それに見合うだけの立派で大きなもので、敷地をぐるりと囲む城壁のような塀と合わせてまるで城門の様にも見える。
「ホント、お城みたいだよ。流石は…と言ったところだねぇ」
「すみません、カティア様…我々は中に入れませんのでここで…」
「大丈夫だよ、オズマ。学園の警備は厳重だし、魔道具のセキュリティ装置もあるらしいから大丈夫だよ」
「カティア様、頑張って下さいね〜」
「ありがとうケイトリン。頑張るよ」
「では、また終わる頃にこちらでお待ちしております」
「うん。じゃあ、行ってきます!」
正門から中に入って、先ずはすぐ目の前にある守衛の詰所に向う。
「すみませ〜ん」
窓口のような所で、中の守衛さんに声をかける。
「何か御用で…ああ、受験の方ですか?」
「はい。恐れ入りますが、試験会場の場所を教えていただけますか?」
私がそう尋ねると、守衛さんは学園の地図を取り出して教えてくれた。
「今いる詰所がここで…試験会場はこの講義棟になりますね。棟の入口に案内してくれる人がいるはずなので、詳しくはそこでお聞きください。では、頑張ってくださいね」
「はい、ありがとうございます!」
講義棟は詰所からそれほど離れてはおらず、迷うことなく辿り着く事ができた。
…いや、さっき学園の地図を見せてもらったけど、本当に広いんだよ。
もし入学できたら、最初は迷ってしまいそうだな…と思ったんだ。
今日は休日なので学生の姿は見えず、学園内は閑散として…と言うか人っ子一人見当たらない。
と思ったのだが、守衛さんが言っていた通り講義棟の入口には男の人が立っていた。
案内してくれる人と言うので、当然学園の職員か先生かと思ったのだけど…随分若い、と言うか私と同年代に見える。
ここの学生がお手伝いしてるのかな?
だとすれば…もし合格したら、彼は私の先輩と言う事になる。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。受験生の子だよね……って、カティア様!?」
どうやら彼は私の事は知っているらしい。
そして、私が学園を受験することは知らなかったらしい。
「あ、あの…カティア様が受験されるのですか?」
「はい、そうです。…あの、もし私が入学することになれば、あなたは先輩と言う事ですよね?」
「せ、センパイ…そ、そうです!」
「では、気が早いかもしれませんが、よろしくお願いしますね、センパイ!(ニコ)」
「(ズキューンッ!)は、はい!よろしくお願いしますデス!」
何だか優しそうな人で良かったよ。
彼に案内されて試験会場となる講義室の一つに通される。
そこには何人かの…おそらく私と同じ受験生と思しき少年少女が席に着いており、試験官…多分ここの教師が教壇に立っていた。
「先生、受験生の方をお連れしました」
「ああ、ご苦労さん。まだ何人かいる筈だから、また案内頼むよ」
「はい。(…試験、頑張って下さいね)」
私を案内してくれた先輩は、そっと耳打ちして激励してくれてから出ていった。
う〜ん、いい人だなぁ…
エリート校のインテリとか、貴族の我儘おぼっちゃまとか…鼻持ちならないような人が多いイメージを持ってたけど、ふつーの学生さんって感じで安心したよ。
席はどこでもいいみたいなので、一番前の先生の目の前の席に座る。
面接とかは無かったはずだけど、『やる気あります!』アピールはしておかないとね!
試験官の先生は、黒髪黒目の取り立てて目立った特徴もない中年男性。
チラッと周りを見ていると、時間いっぱいまで参考書のようなものを開いて復習に余念がない人や、私のように特に何かやるでもなく静かに座っている人…それ以外にも、試験開始を待っている間の様子は人それぞれだ。
私と同じくらいの年齢の男女が10人ほど。
あともう何人か来るらしいけど、推薦入試と言う事で、それほど多くの人数はいないみたいだ。
その後、何人か受験生がやって来て、あともう少しで試験開始という時間になった。
「あと一人いるはずなんですが…遅いですね」
先生がそう呟く。
どうやらあと一人いるらしいけど…大丈夫かな?
もう試験開始まで数分だ。
そして、ついに時間となった。
「…しかたありませんね。時間厳守ですのでこのまま始め…」
「す、すみませ〜ん!!遅くなりました!!」
もう始めようとした、まさにその時…大声で待ったをかけるものが現れるのだった。
全力で走ってきたのであろう、ぜ〜は〜ぜ〜は〜、と息も絶え絶えなその人物は、小柄で小動物のような愛らしさのある女の子。
私よりも随分年下に見えるけど…この学園を受験するのだから、もしかしたら私と同じくらいなのかもしれない。
何とか試験開始に間に合ったその少女は、私の隣の席に座ってニッコリ笑いかけてきた。
そして先生に向き直って、遅れた理由を説明する。
「あ、お騒がせしてすみませんでした、ちょっと道に迷ってしまって…」
「…入口に案内の者がいたと思うのだが…」
「はい!途中までは一緒だったんですけど…私、極度の方向オンチでして。どういう訳か人と一緒に歩いていてもはぐれてしまうんです」
「……そうですか。ま、まぁギリギリ間に合いましたし、良しとしましょう」
先生は取り敢えずスルーしたが、それは方向オンチと言うレベルじゃないでしょ…
と、また入口の扉が開いて、私を案内してくれた先輩が姿を見せる。
「せ、先生!最後の受験生の子は……あ、いた」
どうやら案内中にはぐれたことに気が付いて、必死に探していたようだ。
「あ、すみません!何とか自力で辿り着けました!」
「そ、そうか…それなら良かった。じゃあ、頑張って…」
と、そそくさと出ていった。
…何だか気の毒だね。
何だかよく分からないトラブルもあったが、いよいよこれから試験開始となる。
さあ、今までの経験や勉強してきたこと…前世の【俺】の知識も総動員して、絶対合格するぞっ!