【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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幕間14 『暗雲』

 テオフィルスがレーヴェラントに帰郷して、はや一週間が経過した。

 もともとの予定では、二週間ほどこちらに滞在してから、アクサレナに戻る予定だった。

 

 

 だが、ここに来て問題が生じた。

 

 婚約の話ではない。

 そちらは滞りなく調整が進み、もうすぐ色よい返事を返せる見込みだ。

 

 

 では、問題とは……

 

 

 

 

 

 テオフィルスは緊急の会議に出席するため、大会議室へと向かっていた。

 出奔する前はまだ若輩の身だったため、このような会議に呼ばれることはなかったのだが…父王直々に出席するようにとの御達しがあったとの事だ。

 

 

 

 大会議室の扉は開け放れており、続々と国家重鎮たちが参集している。

 中にはテオフィルスが帰国していることを知らなかったらしく驚きの顔を向ける者もいた。

 

「テオフィルス、参じました」

 

「うむ。すまないな、急に呼び立てして」

 

「いえ、特に決まった予定はありませんでしたから」

 

 主に、かつて世話になった者たちと旧交を温めるくらいだったので問題はない。

 父王の隣には既に王太子アルノルトが着席しており、テオフィルスは彼の隣に座った。

 

「そういえば、アルフォンス兄さんは?俺が帰城してから一度もお会いしてませんが…」

 

 アルフォンスとは正妃の息子…第二王子の名だ。

 

「いまさらそれを聞くのか…」

 

「い、いえ…それはその…アルフォンス兄さんは、アレだから…」

 

「…まあな。アイツは存在感が薄いからな…私もたまに忘れそうになる」

 

 兄弟から忘れられる次兄とは一体…

 

「アイツは今、王都にはいない。そしてそれは、今日の議題にも関係する事だ」

 

 テオフィルスの疑問には、ハンネスが答える。

 

 今日の議題…

 テオフィルスは、出席するようにと打診された際に少しだけ聞いていたが、どうもグラナとの国境近辺がキナ臭い状況になってるらしい。

 次兄のアルフォンスは存在感は薄いが武勇に優れるため、将として赴任しているのだろうと彼は推測した。

 

 

 そうして会議の開始を待つこと暫し、出席者が全員揃ったらしく大会議室の扉が閉められる。

 さらに宮廷魔導師によって防音の結界が張られる。

 これからここで行われるのは、最高機密を扱う会議という事だ。

 

 

 

「よし、全員揃ったようだな。では会議を始める……その前に、まだ知らぬ者もいよう。我が息子テオフィルスが帰国しているのでな、今回の会議には出席してもらう事にした」

 

 議場の目がテオフィルスに集まったので、彼はそれに目礼で返す。

 そこで重鎮の一人が疑問を呈する。

 

「一つ、宜しいですかな、陛下?」

 

「申してみよ」

 

「テオフィルス殿下は病気療養中……と言うのは表向きの理由であることはこの場の者たちなら存じておりましょうが…その問題は解決したということでしょうか?」

 

 それは予想された質問だった。

 当然抱くべき疑問であろう。

 

 問われたハンネスは直接の回答はせずにテオフィルスへと目配せする。

 それを察した彼が質問に答える。

 

「根本的な解決はしておりません。依然、私に対して暗殺者が送り込まれる危険性は排除できておりません」

 

「…!では、何故…?」

 

「確証があるわけではありませんが…黒幕が何者であるのか、その正体が朧気ながら見えてきたのです。そしてそれは…おそらく向こうも察している。ならば、いま俺を狙うのはリスクがある」

 

「それは…随分あやふやなのでは?」

 

「そうですね…ですが、もし俺にまた暗殺者を差し向けてくるなら…」

 

 そこで彼は、ニヤリと普段は見せることのない凄みのある笑みを見せて言い放つ。

 

「それこそチャンスと言うもの。返り討ちにして一切合切情報を吐かせる」

 

 質問をした男はそれに圧倒されたかのように押し黙ってしまった。

 

 

(もしこの中に『繋がり』がある者がいるのならば、多少は牽制になるか?…まあ、だが、仮にそうでなくとも、今のテオフィルスを暗殺するのは至難だろう。それこそいま言ったように返り討ちにするチャンスだ。……しかし、なかなか良い経験を積んできたようだな。もう怯えて逃げるだけの子では無いか)

 

 息子の成長を目の当たりにし、目を細めて喜ぶハンネスであった。

 

 

 

 

 

 

「では、本題に入るぞ。もう既に承知のものもおろうが…グラナ国境付近に不穏な気配が漂っておる」

 

 十五年前の戦乱以降、グラナと国境を接するレーヴェラント王国は常に油断せず、特に国境付近の監視の目を緩めたことはなかった。

 

 

 

 そして…その監視の目は、グラナ側国境付近の町に集結する大規模な軍勢を捉えたのだった。

 

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