【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第一幕 プロローグ2 『転生』

 

『さて、それではこれからあなたの魂を送り出そうと思いますが……その前に、もう少し聞きたいことはありませんか?』

 

『それじゃあ……ゲームに似た世界だって事ですが、何が同じで、何が違うのかっていうのが気になりますね』

 

 俺がそう質問すると、エメリール様はゲームと世界の類似点に関する色々な事を教えてくれた。

 具体的には以下の点に類似性があるという。

 

 ・大きな歴史上の出来事

 ・地形や主要都市などの地理、地勢

 ・国家元首などの重要人物

 ・食事や娯楽、建築様式などの文化

 ・動植物、魔物の生態系

 

 

 そうか……魔物が居るんだっけ。

 

 

『後は、魔法やスキルと言ったものも同じといえば同じですかね。細かい違いを挙げるときりがありませんが……ゲームでは主に戦闘に用いるもののようですが、現実世界ではもっと生活に密着した魔法の使い方があったりします』

 

 魔法!やっぱり異世界に転生するなら魔法は使ってみたいよな。

 わくわくするな!

 あ、でも……

 

『魔法って、俺にも使えるものなんです?』

 

『使えるはずですよ。肉体が持つ記憶が共有されれば、元々使えていた魔法の使い方は分かるはずです。あと、あなたの魂を接合するためのインターフェイスの一部は、ゲームのシステムも参考にしてるので、仮初のあなたが覚えていた魔法やスキルなどの能力も、全てではありませんがある程度は使えるかもしれません』

 

 マジか!

 やり込んどいて良かった!

 でも、全てではないのか……

 ま、そこは贅沢言ってもしょうがないな。

 

『世界の事についてはこれくらいでよろしいでしょうか。その他の、一般的な知識や言語なども記憶が共有されれば分かるはずなので、その点で困ることは無いと思います』

 

『あ、そうか。ありがとうございます』

 

 あとは、なにか聞くことは……

 

『あ、そうだ。確かゲームにはエメリール様以外の神様もいたのですが、それも同じなんですか?』

 

『ええ、私以外にも神として祀られている者は実在しています。基本的に直接地上に干渉する事はないのですが、皆それぞれに世界や人々の事を気にかけてます』

 

 やっぱり他の神様もいるんだね。

 

 うーん、もう他に聞くことはないかな?

 現地の細かい知識なんかは記憶の共有で補えるってことみたいだし。

 もう、いいか。

 

『ありがとうございます。あとは、もう他に特に聞きたいことはありません』

 

『そうですか。では、私からもう少しだけ……。転生先で記憶が共有されるとは言え、意識はあなたが主体であなた自身の記憶も残ります。慣れるまでは戸惑うこともあるでしょう』

 

 少し心配そうに彼女は言う。

 でも、その辺は実際に転生してみないと分からない感覚だろう。

 

 

『また、今後魂の再生が上手く進んだとして……あなたの意識にも影響を与え、その変化に恐れを抱くかもしれません。だけど、そんな時はどうかありのままの自分を見つめて認めてあげてください。もとより人というのは状況次第で多かれ少なかれ変化するものなのです』

 

『……大丈夫ですよ。俺、元々そんなに思い悩む方じゃないですし、基本、楽観的なんで。でも、心配してくれてありがとうございます』

 

『ふふ、そうですか。確かに……あなたなら大丈夫かもしれませんね』

 

 

 案ずるより産むが易し、ってね。

 思いがけず命拾い(?)したんだから、大抵のことは受け入れるつもりだ。

 

 

『では、最後に。あなたには、今回の事態の原因を可能な範囲で調べてもらいたいと言いましたが……それはついでに過ぎません。私の願いはあくまでも、あなたが平穏無事に過ごせることなのです。ですから、あなたも気楽に転生先の生活を楽しんでもらいたいのです』

 

『調査はついででいいんですか?』

 

『はい。あなたが命の危険にさらされることは本意ではありません。ただ、ちょっとした手がかりであっても何か分かれば教えていただきたいとは思います。ですが…これからあなたの魂を送り出してしまうと、基本的に私と直接連絡を取ることはできなくなってしまいます』

 

『じゃあ、どうすれば?何か方法があるんですよね』

 

『はい。各地に私を祀っている神殿があるのですが、そこであれば交信する事ができます。私のことを思い浮かべて、話をしたいと念じていただければ会話できるようになります。私はある程度大まかには世界の様子を見ることが出来ますが、細やかな情報までは把握できません。ですので、何か分かりましたら神殿を訪れて頂き、教えて頂きたいのです』

 

『なるほど、分かりました』

 

 確かゲームでもそこそこ大きな街なら神殿があったな。他の神を祀った神殿も。

 

『もちろん、それ以外の相談事や、ただ話がしたいだけでも来ていただいても構いませんよ。私もたまにはお話したいですし』

 

 うん、神様なのに本当に気さくで話しやすいし、また会えるのは純粋に嬉しいな。

 

『はい、これからもよろしくお願いします』

 

 

 

 

 

 

『さて……では、そろそろよろしいでしょうか』

 

『ええ、お願いします』

 

 いよいよ、異世界への旅立ちの時が来た。

 少し不安もあるが、ワクワク感の方が大きい。

 なにより、また自由に体を動かせるようになるのが嬉しい。

 

 新しい世界への期待を抱き待っていると、大きく強く、しかし優しげに輝いている光が目に留まる。

 

(……いつかまた、会える日が来る。だから俺はもう少し生きてみるよ)

 

 かつて失った家族に思いを馳せ、暫しの別れを告げる。

 

 徐々に意識が遠のいて行く。

 

(いつまでも、待ってるよ……)

 

 微かに、そんな声が聞こえた気がした。

 

 ……そして俺は新しい世界へと旅立つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー エメリールと???の会話 ーー

 

 

『……行ったか』

 

『あら、いらしていたのですか』

 

『ああ』

 

 鍛え上げられた肉体と精悍な顔つきをした男が、いつの間にかそこに居た。

 どうやらエメリールとは顔見知りらしく、親しげに言葉を交わす。

 

『覗き見は感心しませんよ?』

 

『……気づいていたのだろう?』

 

『ふふ、そうですね。……気になりますか?』

 

『何せお前の(シギル)を宿す者など、久しく見ていなかったからな。興味はある』

 

『ええ、とても大切な私の愛し子。でも、それがあの子の重荷になるのでは……と、少し考えてしまいます。今回の事態もそう』

 

 愛おしそうな、それでいて悲しそうな複雑な表情で答えるエメリールに対して、男は聞いた。

 

『原因については濁していたな?』

 

『どれも可能性の話で、確証が得られてないですから。いたずらに不安がらせるのもどうかと思いますし……』

 

『そうか。だが、そんなにやわな奴では無さそうだったがな。自分の置かれた状況に取り乱すことなく終始落ち着いていたように見える』

 

『そうですね、少し話しただけでしたが、好ましい方だったと思います』

 

 ふむ、と男は思案してから切り出した。

 

『私の方でも気にかけておこう。何なら【加護】を与えても良いかもしれん。私も全く無関係という訳では無いしな』

 

『……良いのですか?』

 

『ああ。もう少し見極めてから、だがな。お前の考える「可能性」によっては、望む望まざるに関わらず事に巻き込まれることもあるかも知れん。もしそうなったら力を持っておくに越したことはないだろう』

 

『……そうならない事を願ってはいますが……ありがとうございます』

 

『いや、事によったら世界全体の問題になるかもしれんのだ。私のみならず、他の神々にとっても無関係ではあるまい』

 

『……神々、か。地上の人々からいくら神として崇められたとしても、地上を離れてしまった私達にできる事はたかがしれたもの。先の大戦が終結し、ようやく落ち着いた頃合いだと言うのに……ままならないものです』

 

『可能性というだけで、まだそうなると決まったわけではないのだろう。それに、人々が自らの足で歩むために我々は地上から身を引いたのだ。であれば、多少の手助けはしても、なるべく自分たちの手で解決してもらわねばなるまい』

 

『わかってますよ。ただ、やはり多くの命が失われてしまうのは悲しいものです』

 

『……私とてかつては人の世に身を置いていたのだ。気持ちは分かるが、お前は優しすぎる。まあ、そこがお前の良いところでもあるがな。少なくとも、またかつての大戦のような事態がおこるのであれば、我々も出来るだけのことはするつもりだ。お前が一人で抱え込む必要はない。それは覚えておくことだ』

 

『ええ、ありがとうございます。頼りにしてますよ』

 

 そう言って、少し気が晴れたようにエメリールは微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

『ところで……かの者は誤解したのではないか?』

 

『……?なんの事です?』

 

『いや、転生先となるお前の愛し子についてだ。かの者は男だった』

 

『ええ、それが?』

 

『かの者が「主に」使っていた仮初の体もそうだ』

 

『……あっ!?』

 

『やはり気付いてなかったのか。まあ、大きな問題ではあるまいよ(本人以外にはな)』

 

『……もしかして、私やっちゃいました?』

 

(本当に女神というのに相応しい心根なのだが、相変わらずどこかしら抜けてるのだな)

 

 彼は心の中でそっと嘆息するのだった。

 

 

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