【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第二幕 5 『千秋楽』

 さて、ブレゼンタムでの第5回公演は盛況のうちに千秋楽を迎えることとなった。

 

 この街は辺境近くとは言え人口規模はそこそこ多いし、東西南北に街道が伸びる交易都市でもあるから外から訪れる人も多い。

 だから、これまで何回か公演を行っているが、未だ客足は衰えていない。

 

 色々なところを旅するのも好きだけど、この街にも愛着が湧いてきてるし、以前侯爵閣下が仰っていたようにこの街に腰を落ち着けるのも良いのかも。

 父さんもそう思ってるかもしれない。

 

 

 

 

 

 そして、全ての演目が無事に終わり、今はメンバー一同が舞台上に上がって最後の挨拶をしている。

 喋るのは、座長である父さんや、ティダ兄やアネッサ姉さんなどの人気のあるメンバーで、私もその中に入ってる。

 

 

 何人か挨拶していき、やがてロゼッタさんから集音拡声の魔道具(マイク)を受け取ってハンナちゃんが前に出ると一際大きな歓声が上がる。

 おお、凄い人気だね!

 デビュー早々、順調な滑り出しでお姉ちゃんも嬉しいよ…(ホロリ)

 

 ハンナちゃんは大きな歓声にビクッとなって、少し緊張している様子。

 がんばれっ!

 

『え、え〜と…皆様、本日は私達の公演にお越し下さいまして、本当にありがとうございます!わ、私は今回が初めての出演で、拙いところがあったかもしれませんが、一生懸命演じさせていただきました!最後まで頑張れたのは、皆さんの暖かい声援があったからこそだと思っております!これからも応援よろしくお願いします!ありがとうございました!』

 

「「ハンナちゃ〜んっ!!!」」

「「がんばれ〜っ!!」」

 

 うんうん、素晴らしい挨拶だね。

 

 っと、次は私か。

 

 どぉっ!とハンナちゃんに負けないくらいの歓声が上った。

 ふふふ、まだまだ負けませんことよ!

 

『え〜、皆様。本日はご来演頂きましてありがとうございました。わが一座の公演はいかがでしたでしょうか?』

 

「「最高だったぞ〜!!」」

「「カティアちゃ〜んっ!!」」

 

『ありがとうございます!皆さんの声援が何よりの力となります!今回の公演は本日をもって終了となりますが、また皆様とお会いできる日を楽しみにしております。今日は本当にありがとうございました!』

 

「「カティア〜っ!!!」」

「「またやってくれよ〜っ!!」」

「結婚してくれ〜っ!!」

 

 …何か変なのが聞こえた。

 あ、ボコられてる…

 

 

 と、ともかく、千秋楽も無事に終えて、これで一段落したね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千秋楽の打ち上げが『金の麦穂亭』を貸し切って行われている。

 

 …何か最近やたらと打ち上げとかやってる気がするな。

 

 

 私はもちろんお酒は禁止です。

 ハンナちゃんと一緒にジュースです。

 ちぇっ…

 

 あとは、リィナや一座の他の年少組も一緒のテーブルだ。

 私は成人してるけど、一座の面々にしたら子供であることは変わらないからね。

 年少組リーダーって事らしい。

 

 

「ハンナちゃん、お疲れ様〜」

 

「カティアお姉ちゃんも、お疲れ様です〜」

 

「お姉ちゃんたち、お疲れさま〜」

 

 皆でコップをカツン、と打ち鳴らして乾杯する。

 

「いや〜、今回はなんと言ってもハンナちゃんだよね〜」

 

「うん、ハンナお姉ちゃん素敵だったよ〜」

 

「そ、そんなこと…カティアお姉ちゃんなんていつも素敵だし…」

 

「ふふ、ありがと。でも、やっぱり今回はハンナちゃんが一番輝いてたよ。今回がデビューとは思えなかったよ。シクスティンさんも今後が楽しみだって褒めてたよ」

 

「えへへ〜、ありがとう、お姉ちゃん。でも、すっごく緊張したけど、お客さんに喜んでもらえたのが嬉しいな」

 

「そう、その気持ちがあるなら今後も頑張れそうだね」

 

「うん、一座に入れてもらって本当に良かったと思う。みんな優しいし、家族みたいに思ってるよ」

 

「そうだね、私もハンナちゃんの事は妹みたいに思ってるよ」

 

「私も、お姉ちゃんが二人もいて嬉しいな」

 

 うんうん、仲良きことは美しきかな。

 

 

「ちぇ〜、いいなぁ、姉ちゃんたちは。俺も早く大人になりたいな〜」

 

 と、ちょっと不満げに話すのはアルベルトくん(9歳)だ。

 一座のメンバーを両親に持ち、早く舞台に上がりたい…と言うか、どちらかと言うと冒険者になりたいらしい。

 

「アルくんは冒険者になりたいんでしょ?」

 

「うん!やっぱ男は冒険だよな!とーちゃんやダードおじさんたちから色々教わってるんだぜ!スジがいいって褒められたんだ!」

 

 まあ、ある意味サラブレッドだもんね。

 …脳筋役者にならなきゃいいけど。

 

 

「リィナは?舞台に上がってみたいって思うの?」

 

「うん!私、カティアお姉ちゃんみたいに歌を歌いたいな!」

 

「お、嬉しいこと言ってくれるね。お母さんと一緒に演劇に出るのは?」

 

「それもやりたい!」

 

「そっか〜、リィナは頑張り屋さんだから、きっとなれると思うよ」

 

「そうそう、リィナがデビューしたら私なんかよりよっぽど人気が出ると思うわ」

 

「そんな事ないよ、ハンナお姉ちゃん。凄く素敵だったし、私、劇に出るならハンナお姉ちゃんみたいになりたいって思ったもん」

 

「そ、そぉ?えへへ〜、嬉しいな〜」

 

 この二人と一緒に舞台に上がる日が来るのが楽しみだね。

 …私は越えられない壁(シクスティン)があるんだけど。

 うう…リィナにも演劇デビュー抜かれるかも…

 

 

「ねえねえ、カティアお姉ちゃんって、何歳の時に舞台に上がったの?」

 

 と、ハンナちゃんが聞いてきた。

 

 え〜っと、確かあれは…

 

「おや、お前たち、随分と懐かしい話をしてるじゃないか」

 

「あ、ミディットばあちゃん!お疲れさま〜」

 

 会場の後片付けや何やらで遅れて来ることになってたばあちゃんがいつの間にか私達のテーブルまで来ていた。

 

「ああ、ありがとうよ、カティア。ハンナもお疲れさまだったねぇ」

 

「おばあちゃんもお疲れさま。ごめんなさい、手伝いもしないで」

 

「いいんだよいいんだよ、あたしゃあ裏方しか出来ないんだし、それが仕事なんだからねぇ。それよりも、カティアが初めて舞台に立ったのは何歳だって話だったかい?」

 

「あ、そうそう。カティアお姉ちゃんって私とそんなに歳も離れてないのに、凄いベテランって感じだから気になって…」

 

「そりゃあねぇ、年季が違うだろうさね。あれはもう…10年くらいにはなるかねぇ?」

 

「うん、そうだね。確か5歳ごろだったと思うし」

 

「5歳!?」

 

「ふぇ〜っ、お姉ちゃん凄い!」

 

「まじか!ねーちゃん、すげーっ!」

 

 皆驚くけど…

 そのころと今では一座の規模も大分違うしねぇ…

 

「あの頃はまだ、あんな大きいホール借り切って、なんてことも無かったし、ほんとに唯の旅芸人一座って感じだったし。子供が一生懸命歌ってるってだけでもウケたんだよ」

 

「はははっ!それは謙遜ってもんさね。確かにあんたの歌は今では神がかってすらいるけどねぇ。当時だってすでに完成の域にあったと、あたしゃあ思ってたよ」

 

「そんな、大袈裟な…」

 

「大袈裟な事はあるもんかい。うちの一座がここまで大きくなったのは、あんたの歌も要因のひとつさね」

 

「お〜〜っほっほっほっ!確かに!ワタクシのこの美貌と演技力と同じくらい、カティアの歌が素晴らしいことはワタクシも認めるところよ!」

 

「うわっ!ロゼッタおば(キッ!)…お姉さま、びっくりしたよ!」

 

「全く、声がデカイんだよアンタは!舞台じゃ無いんだよ、ここは!」

 

 いつの間にかロゼッタさんもこっちに来てた。

 あ、旦那(シクスティン)さんも一緒だった。

 ロゼッタさんのインパクトが強すぎるから、二人一緒にいると目立たないんだよね…

 

「ああ、お邪魔するよ。ハンナ、お疲れさま。今回は凄く良かったよ。今後も色々演技の幅を広げて頑張って行こうじゃないか」

 

「そうですわ!今回あなたは私のライバルとして相応しい力を示したのです!これからはお互い仲間として、ライバルとして切磋琢磨していくのですわ!」

 

 …ほんと、無駄にテンション高いのを除けば、いい人なのよねぇ…

 

「あ、ありがとうございます、シクスティンさん、ロゼッタおば「お姉さま!」…お姉さま。これからも頑張ります!」

 

 

 二人が言葉を掛けてきたのを皮切りに、次々に他の面々もハンナちゃんを労うためにやって来た。

 

 やっぱり、皆の愛されキャラだね。

 

 

 

 

 

 

「ところで、カティア」

 

「ん?なあに、ばあちゃん?」

 

「お前、付き合ってる男がいるんだって?」

 

「ぶふっ!?げほっ!ごほっ!…な、何を言ってるの?」

 

 飲んでる途中で変なこと言うから吹き出しちゃったよ!

 

 え?

 付き合ってるってなに?

 

「だ、だれがそんな事を…」

 

「アネッサ達がそんなような話をしてたんだけど…違うのかい?」

 

「ち、違うよ…私とカイトさんは別に付き合ってなんか…」

 

「ほう、カイトってぇのかい。…ふむ。付き合ってはいないけど、好いてるんだね」

 

 あ、思わずカイトさんの事を喋ってしまった…

 

「え?あ〜、いや…き、嫌いじゃないけど。えと、好きなのかな?あはは…」

 

「あ〜!お姉ちゃん、カイトさんてこの間のカッコいい人だよねぇ?あの人のこと好きなんだ〜」

 

 い、いや、まあ、そうかもだけど…

 

「ほぅ、リィナは知ってるのかい?」

 

「うん!一度だけあったけど、凄くカッコよくて優しそうな人だったよ!」

 

「ほうほう。うちの男どもよりは見込みがありそうなんかねぇ?…まあ、ともかくカティア?」

 

「は、はいっ!?」

 

 な、何か知らないけど、父さんたちを相手にするような迫力が…

 ブルブル…

 

「もしそいつと付き合おうっていうのなら、一度連れてきな。アタシがお前に相応しい男なのか見極めてやるさね」

 

「わ、私に相応しいって…そんな大層なものでは…」

 

「ふ、お前は自分のことが分かってないねぇ。ともかく、うちの大事な娘を変な男にやるわけには行かないからねぇ」

 

 …もしかして、厄介な人に目を付けられたのかしらん?

 

 

 

 

 

 

 

「おう、邪魔するぜ」

 

 からん〜、とドアベルの音を立てて誰かが入って来た。

 …ていうかこの声は…

 

「閣下!」

 

「よお、嬢ちゃん。公演お疲れさん。無事に終わって何よりだ」

 

「あ、ありがとうございます。…なぜこちらに?確か明日から王都に発たれるんでしたよね」

 

「まあ、先ずは差し入れだな。おう、おめぇら!うちの秘蔵の酒を持ってきてやったぞ!好きなだけかっくらいな!」

 

「はっ、流石侯爵サマ、太っ腹じゃねぇか。おう、お前ら、閣下に感謝していただくんだぞ!」

 

「「おお〜っ!!」」

 

「「閣下!あっざ〜っす!!」」

 

 まるっきりどこぞの野盗のノリだよ…

 

 

「で、本題は嬢ちゃんにだな」

 

「私に?あ、もしかして?」

 

 このタイミングで私に用事があるとしたら、一つしか思い当たらない。

 

「ああ、ルシェーラの件だ。面倒かけて悪ぃんだが、あいつの事よろしく頼まぁ」

 

「え、ええ、それは別に構わないんですけど…随分あっさりと許可を出されるんですね?」

 

 そう。

 あまり渋っている感じがしないんだよね。

 

「ん?あ〜、あいつも何か勘違いしてたみてぇだが、別に実戦経験を積むのは止めやしねえよ。うちは代々武名で鳴らしてるんだからな」

 

「あれ?でも、冒険者登録は止められてたって、スーリャさんに聞きましたけど?」

 

「そりゃあお前ぇ、あいつが冒険者登録なんかしたら好き勝手にどこぞの馬の骨とも知れん連中とパーティー組んで、ほいほい外に出てっちまうだろが。流石にそれは看過できんわ」

 

 …え?

 お嬢様ってそんな感じなの…?

 まるっきり閣下じゃないか。

 外見は閣下の要素ほぼ無いけど、中身はほぼ閣下と同じだな…

 

「その点、カイトとカティアなら安心して任せられるからな」

 

「信頼してくださるのは嬉しいのですが…心配ではないのですか?」

 

「別にそんな厄介な魔物討伐に行くつもりでもねぇんだろ?それに、あいつは実戦経験こそ無ぇが、腕は立つからな。そこまで心配はしてねぇよ」

 

 カイトさんと同じで、閣下も実力は認めてるのか。

 これは、お嬢様の力がどんなものなのか楽しみだね。

 

「そうですね、既に依頼は見繕ってあるんですけど、脅威度Cランク程度らしいです。東の方で最近発見された遺跡内部の魔物駆除っていう依頼です」

 

「あぁ、アレか」

 

「ご存知なんですか?」

 

「そりゃあな。遺跡ってなぁ基本的には国の管理下にあるもんだ。その依頼の発行元もウチだしな」

 

「あ、そうだったんですね」

 

 遺跡は国の管理下…そりゃそうか。

 その辺は前世と一緒だ。

 

「俺ぁ知っての通り明日から不在になるんだが、帰ってくる頃には調査の方も進んでそうだな」

 

 いや、ほんとに侯爵閣下の仕事は多岐に渡るんだねぇ…

 もちろん専門の担当もいるんだろうけど、しっかり状況を把握してるところがすごいと思うよ。

 

 

 

 

 

「じゃあ、俺は戻るぜ。俺も参加していきてぇとこだが、流石に明日から移動があるからな。…次にオメェらに会うのはしばらく先だな」

 

 用事を済ませた閣下は早々に帰るみたいだ。 

 ていうか、これくらいの用事なんか使用人使えばいいのに自分でやって来るんだから、やっぱりフットワークが軽い。

 

 …そっか、これで閣下とはしばらく会えないんだね。

 それも、ちょっと寂しいかも。

 

 そう思うくらいにはこの街にも愛着があるしね。

 

「おう、気を付けてな。お前が帰ってくる頃には俺らも別の街に移ってるかもしれんがな」

 

「何だ?もう決めたのか?」

 

「いや、そういうわけじゃ無いんだが…前にお前が言ってた通り、何処かに落ち着くのも良いかも知れねぇとも思うし、どうしたもんか悩んでるところだ」

 

「そうか。まあ、ウチに落ち着くんなら歓迎するぜ」

 

「まあ、考えておく」

 

「ああ、じゃあな」

 

 そう、別れを告げて閣下は帰っていった。

 

 

 この街から旅立つ、というのは最近あまり考えてなかったな…

 

 そうだよね、これまでもそうして来たんだし、それが普通だったんだもの。

 

 

 でも、そうなったら私は…

 

 

 

 カイトさん…

 

 

 

 

 

 その後も、みんな楽しくワイワイやっていたが、何だか私はしんみりとしてしまうのだった…

 

 

 

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