【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第十幕 32 『命』

 さて、私達の婚約パーティーは懸念された襲撃も無く無事に終了した。

 

 だが、招待客たちがいなくなってもパーティー会場には今もなお使用人たちが慌ただしく行き交い、後片付けに余念がない。

 

 そんな中……

 

 

 

 

 

「お義母さま、大丈夫ですか?」

 

 私達は会場に残って招待客が帰路につくのを見送っていたのだが、結局お義母さまも最後まで一緒だった。

 

 腰をさすってあげながら私が問いかけると、お義母さまは流石に先程よりは少し気怠そうに…だがしっかりと答えてくれる。

 

「…ああ、問題ないよ。だけど、やっぱり陣痛だったみたいだね。だんだん痛みが強くなって間隔も狭まってきたよ。これは今日中に生まれるかな?ねえ、先生?」

 

「そうですね……経過が順調なら、本日深夜くらいにはなりましょうか」

 

 そう、主治医の先生は答えた。

 連絡を受けて急ぎ会場まで駆けつけ待機していてくれたのは、かなり年配の女性のお医者様だ。

 聞けばラシェル様の出産の時も担当されていたというのだから、相当なベテランだろう。

 

 

 

「全く無茶をしおって。ほら、早く部屋に戻るぞ」

 

「はいはい、分かりましたって」

 

「いよいよなのね。どんな子が生まれるのかしら?楽しみね」

 

 そして、お義母はハンネス様とラシェル様に支えられて自室に向う事に。

 義兄さまたち、そして私とテオも一緒に付いていく。

 

 

 

「じゃあ母様、ミーティアのことお願いします。父さんもね」

 

「ええ。任せてちょうだい」

 

「しっかりな」

 

 もう結構遅い時間なので、普段だったら既にベッドの中で寝ているはずのミーティアは、やっぱりもう限界だったみたいで、今は父さんに背負われてすやすやと眠っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、慌ただしく時間は過ぎ去り…

 もう少しで日付が変わろうとする深夜に、お義母さまは無事に元気な女の子を出産したのだった。

 

 

 

 

 

「うわ〜…かわいいなぁ……ラシェル様、次私にもだっこさせてください」

 

「ええ。でも、もう少しだけ…」

 

「あはは、大人気だねぇ…」

 

 出産を無事終えたお義母様は、やや疲れた様子だが比較的元気な様子だった。

 時間もそれほどかからず、母子ともに至って健康。

 かなりの安産だったと言って良いだろう。

 

 

 元気な産声を上げて生まれた赤ちゃんは、今はラシェル様の腕に抱かれてすやすやと眠っている。

 

 ラシェル様、もういいでしよう?

 早く抱っこさせてください!

 

 

 出産の時はオロオロと落ち着かず、ついには部屋から叩き出された男連中も、今は何事もなく元気に生まれてきた赤ちゃんを見ながら幸せな時間を共有していた。

 

 

「よかったね、テオ。妹ちゃんだね」

 

「ああ。だが、この歳で兄になるとは思いもよらなかったよ」

 

「親子ほどに歳が離れてるもんね。でも、尚更かわいく感じるんじゃない?」

 

「ふふ…そうかもな」

 

 何だかんだ言っても、凄く嬉しそうなのが顔に出てるものね。

 

 

 

 

 

 そして、ラシェル様に代わって私も抱っこさせてもらう。

 

「あったかい…」

 

 小さいけど、確かな命の重さと暖かさを腕の中に感じる。

 生まれたばかりの無垢な魂は、幸せをみんなに分け与えてくれる。

 そして、もちろんこの子自身も幸せに育ってほしいと願わずにはいられない。

 

 

「お義母さま、名前は決まってるんですか?」

 

「いや、まだだよ。……そうだ、カティアちゃん決めてくれないかい?」

 

「ええ!?わ、私が…ですか?」

 

「おお、それは良いではないか。この日に生まれたのも何かの縁かもしれんしな」

 

 ハンネス様も乗り気だよ。

 

 思わずテオの顔を見ると、微笑んで頷いた。

 彼も同意ということらしい。

 

 でも、縁…か。

 確かにそれはあるのかもしれない。

 

「わ、分かりました。でも、今すぐには、ちょっと」

 

「ああ、大丈夫だよ。そんなに急がなくても」

 

「命名の儀は一週間以内に出来れば良い」

 

 ちょっとプレッシャーだけど、この子のためにも良い名前を考えてあげないとね。

 

 すやすや寝ている赤ちゃんを見ながら、そう思う。

 

 

「ふふ、気持ちよさそうに寝ている…かわいい。いつまででも見ていられるよ。……ああ、私も赤ちゃん欲しくなっちゃったな…」

 

「……」

 

「お?カティアちゃんもその気だし、テオは頑張んないとだね!」

 

「あらあら、婚姻の儀も計画しなければね」

 

「うむ。カティア姫が学園を卒業してから、と思ってたが、本人がその気なら…」

 

 

 …

 ……はっ!?

 

 い、今…とんでもないことを口走ってしまったのでは…?

 

「あ、あの、今のは言葉のアヤというか…確かに赤ちゃん可愛いけど私にはまだ早いというか…」

 

 しどろもどろに言い訳する。

 たぶん顔は真っ赤になってると思う。

 

 うう…テオの顔をまともに見れない…

 

 

「あはは!まぁ、あんたたちのペースで行けばいいさ。だけど、あんなこと言われてテオは我慢できるのかねぇ?」

 

「……」

 

 て、テオ?

 お願いだから何か言って……!

 

 

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