【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第二幕 8 『古代遺跡 第2階層』

 憎き黒い悪魔を殲滅して、気を取り直して第2階層の探索を開始する。

 

 …遺跡を破壊するような魔法は使わないようにとのお達しが出ました。

 って言うか怒られた。

 ゴメンナサイ…

 

 次出たら冷気系か雷撃系にします、て言ったけど却下された。

 

 でもでも、ホント頼みますよ!

 ヤツが出たら逃さず殲滅して下さいね!?

 

 

 と、一抹の不安を残しながらも第2階層を見て回る。

 

 第1階層と同じように、階段を降りたところから真っ直ぐ進めば第3階層に続く階段があるが、今回の目的は魔物の殲滅なのでくまなく探索する必要がある。

 

 第1階層と異なるのは、階段と階段を繋ぐメイン通りの他にも、碁盤目状にいくつもの通路がある点だ。

 

 そして、通路で区切られた区画のそれぞれに部屋があるので、それらも万遍なく見て回る必要がある。

 

 事前に聞いた情報によれば、この階層の広さは一辺が5百メートルほどの正方形となっているらしい。

 相当な広さになるので、この階層だけでもかなり時間がかかるだろう。

 

 とにかく、メイン通りに交差する通路を手前から順番に探索して全ての部屋を確認してまわるのだ。

 

 第1階層と異なり、部屋の扉は木製だったらしく、すっかり朽ち果てて残骸が散らばるのみとなっていた。

 

 

「しかし、これだけの広さの空間が神殿の地下にあるのは何でなんだろうな?」

 

「そうですね…居住空間、と言うよりは地下都市と言っても良いくらいの規模ですよね…」

 

 いくつか部屋を覗いてみたところ、朽ち果てた机や椅子、ベッドなどと思しき残骸や、水回りらしき遺構が確認できたので、おそらく居住スペースであったと思われる。

 一つ一つの部屋の大きさは私達5人が入っても狭く感じないくらいであり、ちょっと広めのワンルームマンションのような感じだ。

 

 そして、一層の広さや部屋数など、規模こそ違うものの【俺】の記憶にあるゲームでの光景とも一致する。

 やはり、ゲームで出てきた『ブレゼンタム東部遺跡』と同じものと考えて良いだろう。

 

 そうすると、この遺跡は第5階層までと言う事になる。

 第3階層まではこのような地下都市のような感じだったはずだ。

 

 

 

 

「しっ!…この部屋、何かいるッス」

 

 何らかの気配を感じたロウエンさんが警告する。

 

「あ…この感じ…」

 

「お、そう言えばリーゼちゃんは分かるんスね。そう、多分アンデッドッスね」

 

「そうですね。そこまで高位のものでは無いと思いますが」

 

 そう言えばリーゼさんやアネッサ姉さんはアンデッドのオーラみたいなものが分かるって言ってたっけ。

 霊感みたいなものかな…

 

 それを確かめるべく、そっと入り口から中を窺うと…

 

「ありゃ、ゴーストっスか。これはカティアちゃんかリーゼちゃんの出番スね」

 

 ロウエンさんの言うとおり、部屋の中には半透明の人影…低位の霊体系魔物、ゴーストが3体佇んでいた。

 

 脅威度はDランクだ。

 物理攻撃は効かないが、向こうの攻撃手段も念力のようなもので物を飛ばしてくるくらいなのでそれほど危険な相手ではない。

 

 魔物の定義は魔核を持つということだが、実体を持たない霊体系の魔物は例外だ。

 ただ、実体は伴わないものの魔核に相当する部分はあるらしい。

 これは特別に霊核と呼ばれている。

 

 霊体系には神聖武器以外の物理攻撃は効果がないが、魔法であれば霊核に攻撃を当てる事でダメージを与えられる。

 ただし、高位になればなるほど通常の魔法は効きにくくなるので、退魔系の魔法が必要になってくるのだ。

 

 

「待って下さいまし。あれなら私も対処できますわ」

 

「え?お嬢様、魔法も使えるんですか?」

 

「あ、いえ。私は魔法の素養は殆どありませんわ。ただ、このハルバードは神聖武器でもあるので…魔法は極力温存したほうがよろしいでしょう?」

 

「…まじっすか」

 

 思わずロウエンさんみたいになっちゃったよ。

 

 あ、リーゼさんが獲物を見つめる鷹の様な目で見てる。

 流石に大声を上げて詰め寄るような事はしないだけの分別はあるみたいで安心(?)したよ。

 

「そうだな…また頼めるか?」

 

「はい、お任せくださいな。霊核は確か頭部でしたわよね」

 

 そう言ってお嬢様は躊躇いなく軽い足取りで部屋に入っていく。

 

 こちらに気付いたゴースト達は、部屋に散乱している家具の残骸やら瓦礫やらを飛ばして攻撃してくるが、お嬢様はひょいひょい、と僅かに身体をずらすだけで造作も無く躱していき…

 

「せいっ!はあっ!」

 

 と、軽く一振りして2体同時に霊核を薙ぎ払い、返す槍でもう一体も仕留める。

 すると、あっけなくゴーストは霧散してしまった。

 

「お見事」

 

「…いまいち手応えがありませんわね」

 

「まあ、Dランクだしな。まだ序盤だからこんなもんだろ。だが、油断はするなよ」

 

「ええ、もちろんですわ」

 

 ホントにこの人、今日が初めての実戦なのかな…?

 ロックリザードの時も思ったけど、随分戦い慣れてる感じなんだよなぁ…

 奥様、どんな鍛え方してるんだろ?

 

 でも、ゴーストはDランクとは言え、倒す手段が限られるので調査隊の人からすれば厄介だっただろうね。

 

 因みに私が速攻で葬り去ったあの黒い悪魔はFランク…最低レベルだ。

 そんな奴らに上級攻撃魔法を使ったらそりゃ怒られるか…

 

 ともかく、まだ大した相手には遭遇しておらず、序盤戦というのはその通りだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 第2階層の探索を半分くらい消化したところで、そいつに遭遇した。

 

「今度はジャイアントスパイダーっスね。Cランクっス」

 

 通路の半分ほどを塞いでしまうくらいに巨大な蜘蛛の魔物だ。

 こちらを獲物と定めたらしく、あれ程の巨体にも関わらず音も立てずに素早く近づいてくる。

 

「ルシェーラ、今度は連携も試してみようか?」

 

「そうですわね。カイトさま、ターゲット取りはお願いしますわ」

 

「ああ、任せろ。カティアとリーゼは魔法で支援を頼む。ロウエンさんは後衛の守りを」

 

「「「了解!(ッス!)」」」

 

 カイトさんが皆に指示をすると、皆素早くそれぞれの配置に付く。

 

 カイトさんは最前列に飛び出し相手の注意を引く。

 お嬢様はその背後に控えて、隙を見て長柄武器のリーチを活かして攻撃。

 私とリーゼさんは連発が効く魔法で牽制。

 ロウエンさんは万が一後衛に攻撃が来ないように私達の守りだ。

 

 正直、私達からすればそこまでカッチリとフォーメーションを組む必要は無い相手だろうけど、今回はお嬢様の実戦訓練も兼ねてるから、連携の経験も重要だとカイトさんが判断したのだろう。

 

 

 もう目前まで迫った巨大蜘蛛は、鋭い爪が生える脚をカイトさんに向かって振り降ろす!

 

 ガキィッ!!

 

カイトさんは蜘蛛の攻撃を剣で反らしながら、私達後衛を庇うような位置取りをする。

 

「「[炎弾]!」」

 

 私とリーゼさんが同時に魔法を放ち、敵を牽制。

 そして脚が止まったところを、カイトさんの後から飛び出したルシェーラ様がハルバードを大きく振りかぶり…

 

「せぇーーいっ!!」

 

 ザシュッ!!

 

 大きく振るわれたハルバードによって、蜘蛛の脚はまとめて数本が切り飛ばされ、青い血液を撒き散らす。

 そして、バランスを崩した蜘蛛の頭部に向かって間髪入れずにカイトさんが剣を突き刺す!

 

 ズブッ!

 

 それが止めとなり巨大蜘蛛はビクン、と一度痙攣したあと沈黙した。

 

「よし。連携も問題なさそうだな」

 

「はい。初めてにしては上手く合わせられたと思いますわ」

 

 うん、飛び出すタイミングもバッチリだったと思う。

 攻撃力の高さは言わずもがな。

 

「もう十分冒険者としてやっていけそうですね」

 

「そう仰って頂くのはありがたいですけど、まだまだ経験が足りませんわ」

 

「そうだな。これまでの敵は経験が無くとも実力的には全く問題ない相手ばかりだ。不測の事態が起きたときこそ経験が活きてくるのだが…まあ、今回の案件的にそこまで求められるシチュエーションが発生するかは分からんな」

 

「まだ確認されてない階層がどうなってるのか、ですかね」

 

 【俺】の記憶にある遺跡と同じなら、そこまでの波乱は発生しないだろう。

 

 

 

 

 引き続き2階層を見て回る。

 

 その後も何度か接敵したが、何れも苦もなく撃退することができた。

 

 魔物としては、ジャイアントスパイダー、スライムの群れ、体長2メートルほどの大ムカデ、ゴースト、などなどだ。

 幸いな事に、あの黒いヤツはもう現れなかった。

 

 そうして、2階層を一通り見て回り、この階層の魔物は全て駆除し終わったと思われる。

 

 

「よし、2階層はもうこれくらいかな。次に進もうかと思うが…時間はどれほどだろうか?」

 

「そうッスね…大体15時〜16時くらいじゃないッスかね?」

 

「あ、でしたら少々お待ちを…」

 

 と言って、お嬢様が自分の鞄を探って取り出したのは、鎖がついた厚みのある円盤状のもの…懐中時計のようだ。

 

「え〜と、今は15時35分ですわ」

 

「おお…流石は侯爵家のご令嬢ッスね。そんな高価なものをお持ちとは」

 

 時計はこの世界にもあって、置き時計くらいなら裕福な庶民とかでも持っていたりするが、お嬢様の懐中時計のように精密な技術が必要になる小型のものは非常に高価であり、持っているのは大商人か貴族くらいだろう。

 

「今回の依頼は地下遺跡とお聞きましたので、正確な時間が分かったほうが良いと思ってお父様の書斎から拝借してきたのですわ」

 

 準備が良いのは流石なんだけど、話しぶりからすると閣下に無断なんだろうなぁ…

 

「その判断は正しいし助かるんだが…無断で借りてきたのか?」

 

「大丈夫です。今お父様は不在ですし、元に戻しておけば問題ありませんわ」

 

「…そうか」

 

 あ、カイトさん、深く突っ込むのはやめたらしい。

 それが賢明だね。

 

 

「よし。まだ時間もあるし、少し休憩したら第3階層に行こうか」

 

「そうですね。でも第3階層より先がある場合は野営が必要だと思うんですけど、場所はどうします?」

 

「そうだな…雨風の心配がないし安全確保した階層で野営する、でも良いんだが、ジョーンズさんが心配するから一旦地上に出た方が良いかも知れんな」

 

「まあ、進むも戻るも一直線ですからね。そうしましょうか」

 

「第3階層の魔物を駆除したら、下への階段を一時的にでも封鎖できないかな?せっかく安全確保したのに、下の階層から紛れ込んできても厄介だろう?」

 

「う〜ん、そうですねぇ…[土壁石壁]は周りに土砂が無いと使えないし…他の結界系魔法はそこまで長時間維持できないし…」

 

「あっ、それなら良いものがありますよ!」

 

 そう言ってリーゼさんが鞄から取り出したのは、複雑な紋様が描かれ、四隅に宝玉が埋め込まれた金属プレート。

 ギルド証よりひと回り大きいサイズだ。

 

「それは?」

 

「これは、『代行の魔符』と言います。持続維持したい魔法の行使を代行してくれるんです。宝玉に蓄積された魔力を用いるのですが、周囲の魔素も取り込んで魔力を回復させながらなので、かなりの時間維持できるはずです。この遺跡は魔素の濃度もかなり高いようですし」

 

「へえ〜、凄い便利じゃないですか!」

 

「ふふ、カティアさんに教えてもらった魔道具店で買ったんですよ。野営用に、と購入したんですけど」

 

「あ、プルシアさんのお店かぁ〜。そんなものがあったんだ…」

 

「新商品で発売したばかり、て言ってましたから、カティアさんが見たときには無かったのかも知れませんね」

 

 そっか〜、今度また見に行ってみようかな。

 

「リーゼ、助かる。では、第3階層に進むか」

 

 

 そうして、私達は第2階層の探索を終え、第3階層へ続く階段へと向かうのだった。

 

 

 

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