【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う! 作:O.T.I
「こちらがお預かりしていた…
ギルド職員が持ってきてくれたのは、革に縁が金属で補強された、古めかしくも豪華な装丁の本だった。
雰囲気的には賢者の塔で見つけたものと似ている気がする。
「…では、見せていただきます」
一言断ってから本を手にする。
レティ以外はドロップした時に既に確認しているので、私が確認する様子を黙ってみている。
レティだけが興味深そうに私の後ろから覗き込む。
タイトルは……
『よく分かる!迷宮探索!ドキドキワクワク初めての探索編〜これであなたも今日から
……危うくズッコケそうになった。
お、【俺】ぇ〜〜っっ!!?
(……何なの?このふざけたタイトルは?)
覗き込んで一緒に見ていたレティが、そう囁いた。
(完全に同意なんだけど…何だかスミマセンとしか言えない)
(?…何でカティアが謝るの?)
(いやぁ…この『桧原琉斗』って、前世の【俺】だったり……)
(はぁっ!?…ど、どうゆうこと?)
「どうされました?カティアさん?何か分かりましたか?」
(おっと、皆に怪しまれるから…その話は後で)
(分かったよ。でも、ちゃんと教えてね!)
まあ、レティに話すのは良いだろう。
それよりも今は…
「あぁゴメン、ルシェーラ。ちょっと予想外のタイトルだったので驚いちゃって…」
予想の斜め上のはっちゃけ具合だよ。
「と言う事は……やっぱりこの本、読めるんですの!?」
話の流れ的にある程度は予想してはいたのだろうけど…それでも目を見開いて驚愕の声を上げるルシェーラ。
他のみんなも概ね似たような反応だ。
「う、うん、まぁ……アスティカントの賢者の塔で見つけた本と同じ文字なんだよ。…って言うか、どっちも賢者本人が書いたものみたいなんだだけど」
「賢者様の……」
驚きで絶句する面々。
まあ自然な反応だろう。
「ねえ、みんな……この本、私に貸してくれない?」
本は結構厚みがある。
なので、この場で全部読むには時間がかかりそうだから、そう聞いてみた。
「そうですわね、賢者様の書ということであれば、その価値は計り知れませんし私達では扱いかねますわ。国に寄贈した方が…」
「良いのかな?正直なところ、ギルドでも価値を計れないし値を付けることも出来ない。しかし、珍しい本を蒐集する好事家なら金に糸目は付けないと思うが…」
ギルド長がそう念押しをする。
そうだよねぇ…ドロップアイテムはあくまでも取得した者に所有権がある。
普通だったら換金して山分けだろう。
「私は構いませんわ。……多分、カティアさんにとって重要なものなのでしょう?」
何かを察したかのように、ルシェーラはそう言ってくれる。
「う、うん」
「でしたら、きっとこの世界にとっても重要なものなのでしょう……あ、私だけで決めてはいけませんわね。皆さんはどうです?」
「んー、もともと腕試し目的だし、私も別に良いわよ」
「私も」
「おなじく!」
「私なんて暇つぶしで混ぜてもらっただけだからねぇ…カティアちゃんの力になりたいし、もちろん構わないわ」
「俺っちたちは、助太刀が無かったら危なかったしなぁ…その上アレで大分稼げたしな。別に構わねぇぜ。なぁ、お前ら」
「うむ」
「ええ、もちろんです。でも、本の内容は気になるので、後で教えていただきたいとは思いますけど」
全員が了承の意を表明してくれた。
もう、みんなお人好しなんだから…
「ありがとう!みんな!もちろん内容が分かったら皆にも教えるよ!あ、でも…父様にも相談して、国で買い取れないか確認してみるよ」
国内のダンジョンで発見された貴重な書物なら、歴史的な価値も計り知れないし…確認するだけしてみよう。
こうして、私は賢者リュートの書に再び出会ったわけなのだが…
「ところで、その本のタイトルは何だったんですの?」
「え!?い、いや…ダンジョンに関する研究書…みたいなものかな?」
そう誤魔化しておいた。
まったく…一体どういう精神状態で書いたんだ?コレ…?
ほんとに【俺】と同一人物なのか…?
ちょっとその推測に自信が無くなってきたよ…