【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第十一幕 20 『歌姫たちの舞台裏』

 素晴らしい舞台だった。

 アリシアさんも、私も…これ以上は無いくらいに全てを出し切った感がある。

 

 

 私達が歌い終わったあと、会場は水を打ったような静寂に包まれる。

 (しわぶ)き一つ聞こえてこない。

 まるで、その場の全員が息をするのすら忘れているかのようだ。

 

 

 どれほどの間そうしていたのか。

 誰か一人が拍手を始め、時が動き出す。

 それは瞬く間に伝播し、会場は先程の静けさを吹き飛ばすように万雷の拍手と歓声に包まれた。

 

 

 

「アリシアさん。皆に応えてあげて?」

 

「…えっ?あ……は、はいっ!!」

 

 暫し魂が抜けたかのように呆然としていた彼女にそう声をかけると、慌てて手を振って観客の声援に応える。

 

 唐突に現実に引き戻されて訳も分からず手を振るものの、どこか表情がぎこちないね。

 

「ほら、笑顔笑顔」

 

「は、はい〜っ!!」

 

 

 少しづつ慣れてきたのか、笑顔も自然なものとなってきた。

 

 

 

 

 

「どう?初めての舞台の感想は」

 

 歓声に応えながら、私はアリシアさんに聞く。

 

「そう…ですね。凄く感動しています。でも……まだ実感が湧かなくて……これは夢なんじゃないかって」

 

「ふふ、夢なんかじゃないよ。あなたの歌声に皆も感動してると思う。それこそ、夢のようなひとときだったんじゃないかな。この大歓声がその証拠だね」

 

 いつまでも鳴り止まない拍手と歓声は、今までで一番かもしれない。

 彼女とともに舞台に立てて良かった……私も凄く感動しているよ。

 そして、その感謝の気持を伝える。

 

「アリシアさん、ありがとう」

 

「え?」

 

「一緒に舞台に立ってくれて。とても嬉しかった。そして…とても楽しかった。半ば無理やり連れてきちゃって、もしかしたら迷惑だったかもしれないけど……」

 

「そ、そんなことないです!私こそカティアさんには感謝してます!……私、引っ込み思案で自分に自信がなかったから……誰かに後押ししてもらわないと前に進めなかったと思います。だから……こちらこそ、ありがとうございます!!こうしてカティアさんと、こんなにも綺羅びやかな舞台の上で一緒に歌えて良かったです」

 

「…そう、良かった。でも、これで終わりじゃないよ?あなたの舞台は、始まったばかりなんだから。ね?」

 

「…はいっ!!」

 

 そう、彼女は輝く笑顔で応えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の演目が全て終わったあと、舞台挨拶を行った。

 そこでアリシアさんを初めて紹介したんだけど、これで彼女は一躍有名人だね。

 

 そして舞台挨拶も終えて楽屋に戻ってきた私達を迎えたのは…

 

 

「お疲れ様〜!」

 

「感動しましたわ!!」

 

「本当に…涙が出ました」

 

「二人とも凄かったよ」

 

「サインして!!」

 

 レティたち、いつもの学園メンバーだった。

 

 

「あ、皆!来てくれたんだ!」

 

「ミディットさんが入れてくれたんだよ」

 

 レティたちは何回か来てくれてるからね。

 ばあちゃんもこうして気を利かせてくれるんだ。

 

「フリードさん達もいらしてたんですけど…男子禁制ということで入れてもらえませんでしたわ」

 

「あ〜……まぁ、そうだろうね」

 

 流石に友達でも、ここで着替えとか化粧とかするからね。

 男子はちょっと……

 

 

「それにしてもアリシアさんは、初めての舞台とは思えないくらいに堂々とされていて、ご立派で……思い出しただけで涙が出てしまうわ」

 

 ステラが感極まったように言う。

 

「そそそ、そんなことは!ずっと緊張しっぱなしでしたし!」

 

「全然そうは見えなかったけど。もうベテランみたいな感じでさ」

 

 シフィルは…観客席からはそう見えたんだね。

 実際歌姫モードに切り替えたあとも適度に緊張はあったと思うけど、それが逆に良い方向に作用したように私は思えた。

 そうやって緊張を飼いならすのがベテランのように見えたのかも。

 

 

 

「ねーねー。二人とも、サインちょうだい?」

 

 と言って、メリエルちゃんが色紙…のようなものを渡してくる。

 随分用意が良いね…

 

「サインって……そんなの欲しいの?メリエルちゃん」

 

「だって!今日の公演は絶対に伝説になるよ!皆に自慢できるよ!」

 

「そ、そお?ま、いいよ。サラサラサラ…っと。はい、アリシアさんも」

 

「え?あ、はい?え〜と…こ、ここに書くのかな……はい、これで良いですか?」

 

 まだそこまで一般的じゃないけど、こうやってサインをねだられたことは何回かある。

 王女と分かってハードルが上がったから最近はめっきり減ったんだけど…「家宝にします!」とか言われたりすると嬉しいよねぇ…

 アリシアさんから色紙 (のようなもの)を受け取ったメリエルちゃんも凄く嬉しそうだ。

 

 

「やったね!ウィラーの国宝にするよ!」

 

「レベルが違った!?」

 

「こ、国宝って…」

 

 大袈裟過ぎる…と思ったのだけど、前世でも有名人の手紙とかは博物館に収蔵されたりしてるもんなぁ…

 実際に未来でそうなってる可能性も…

 

 

「あー、メリエルだけズルい!」

 

「私も、アダレットの国宝に…」

 

 国宝はやめて。

 

 

「大丈夫!そう思って皆の分も用意してあるから!」

 

「「「お〜!」」」

 

 本当に準備が良いなぁ……

 

 

「ふふ〜ん…でも、アリシアちゃんのサイン第一号は私だもんね!」

 

「まあ、色々用意してくれたからそれは譲るわ」

 

「え、え〜と……」

 

 自分のサイン第一号と言われて、アリシアさんは何だか言いにくそうにしている。

 ちら、と見るのは入口の方。

 そこには、護衛騎士のケイトリンが…

 

 

「メリエル様、申し訳ありませんが……」

 

「え?ケイトリンさん?」

 

 今まで黙って見守っていたケイトリンが突然話しかけてきて驚くメリエルちゃん。

 そして、ケイトリンは…

 

「アリシアさんのサイン第一号は!先に私がいただきました!公演前に!」

 

 そう高らかに宣言した!

 

「な、何だってーーーっ!?」

 

 楽屋にメリエルちゃんの絶叫が木霊する!

 そして崩れ落ちる彼女はorz…

 

 

 

 

 

 

 …どーでもえーわ。

 

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