【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

382 / 664
第十一幕 39 『束の間の休息』

 

「はぁ〜……泳ぎたいなぁ……」

 

 ダンジョンの中とは思えない美しい光景に、私は思わずそう漏らす。

 

 燦々と照りつける太陽の日差しで気温は高いが、前世の日本の夏とは違ってジメジメしておらず過ごしやすい感じだ。

 泳いだらさぞかし気持ちいいだろうな…

 

 水着は無いけど、足先くらいは入っても良いかな?

 

 

 波打ち際までやって来て、海を眺めてみる。

 透明度が高い上に水深も浅いので、かなり遠くの海底まで見えた。

 

 視線を上げて見渡せば、どこまでもエメラルドグリーンの海が広がるのみ。

 波は穏やかで、陽の光を反射してキラキラと輝いている。

 

 

「この島以外には陸地は見えないね……」

 

「ですわね。ですが、さっきのミロンのヒント……最終的にはここを渡らないといけないのでしょうか?」

 

 そう。

 先程のミロンの口ぶりからすれば、次の階層に行くためにはこの海を渡ることを示唆しているように聞こえた。

 

 先ずは島を探索してからだが……また厄介な階層には違いないだろう。

 

 

「ま、考えても分からないね……今はしっかり休んでおかないと。でも、ケイトリンも言ってたけど、少しくらいは海を堪能してからでも良いかな?」

 

「ですわね。ここに自由に行き来できるようになったら素敵ですわね……」

 

 それは良いねぇ…

 今のところ魔物の気配もなく、これならリゾート感覚で楽しめそう。

 もしまた来る機会があるのなら水着は必携だ。

 

 

 

 

 

 

「ママ〜!!」

 

 ルシェーラとまったり海を眺めていたら、カイトと一緒に近くの探索をしていたミーティアが大声で私を呼んだ。

 取り敢えず近くまで行ってみる。

 

 

「なあに?どうしたの、ミーティア?」

 

「ママ!見て!お魚さんがいるの!」

 

「えっ!?」

 

 ここはあくまでもダンジョンの中だ。

 生き物といえばダンジョンが生み出した魔物くらいだと思うのだけど…

 

「お魚さんって…魔物じゃないの?」

 

「ううん、ちっちゃくてかわいいよ?ほら、あそこ!」

 

 と、ミーティアが指さしたところを見ると、確かに小魚が群れをなして泳いでいた。

 

 この近辺の海は島の砂浜から続く白い砂地の海底となっていると思ったのだが、よく見ると所々に岩礁やサンゴ礁があったり、そこに色とりどりの魚が泳いでいたりした。

 

「う〜ん……ますます南国リゾートって感じ…」

 

「ダンジョンの中に生態系が出来上がってるみたいだな」

 

「もう異界は何でもありだね…」

 

 

 

 

 そうして、靴を脱いで膝くらいまで水に浸かりながらミーティアと一緒に生き物観察に興じる。

 水温はやや温かく気持ちがいい。

 

「ママ!これはなに?」

 

 水中を観察していたミーティアが、見たこと無い生き物を見つけて質問してくる。

 

「ああ、それはウニ……というよりはガンガゼ?棘が鋭いから触らないようにね」

 

「は〜い!あ、パパ!こっちは!?」

 

「ヤドカリ……か?」

 

 いや、ヤドカリにしてはデカすぎでしょ。

 それはもはやヤシガニと言った方が……

 

 

 そんなふうに、ミーティアか興味津々でアレコレ質問してくるのに私とカイトで答えてあげる。

 

 う〜ん……まさかこんなところで情操教育みたいなことが出来るとは…

 

 

 しかし、ホントに豊かな生態系と言ってもいい感じ。

 ……食材確保も出来るかな?

 

 ある程度食料は持ってきてるけど元々日帰りの予定だったし、これからどれくらい時間がかかるかも分からない。

 現地調達できるなら……持ってきた食料に手を付けなくて済むなら、そうしたいところだ。

 

 

 なんて思っていると。

 

「よっしゃあっ!!フィッシュオーーン!!ッス!」

 

 そんな声が聞こえてきた。

 

 

「おお!ロウエンさん、やりますね!」

 

「大きいですわ!」

 

「夕飯が楽しみですね」

 

 

 あっちの方が何やら盛り上がっている。

 

 どうやら釣りをしているみたいなんだけど、釣り竿なんて何で持ってきてるの、ロウエンさん?

 

 

「こんな事もあろうかと、ッス」

 

「…そっすか」

 

 近付いて視線で問いかけるとそんな答えが返ってきた。

 

 

「ママ!すごい大きなお魚だよ!!美味しそうなの!」

 

「そ、そうだね……」

 

 確かに釣り上げられた魚は非常に大きく、食べ応えがありそうなんだけど……食べる気満々だね、ミーティアさんや。

 

「だけど、これって食べられるの…?何の種類?」

 

 見た目は普通の魚なんだけど、ダンジョンの魚と言うのがどうにも…

 

 体長は1メートルは優に超え、下手したらミーティアより大きいかも。

 よくこんなの釣り上げられたね。

 

 しかも、よくこんな浅瀬の海で…と思ったら、釣りをしていたところは水深が深い入江のようなところだった。

 そこだけ海の色が濃い青になっている。

 

 

 魚は丸々としていて脂が乗って確かに美味しそうではある。

 背中は青く腹は銀色に縞模様、鋭い形のヒレ……大きさは桁違いだけど、鰹に似ているような?

 ビチビチッ、と今も力強く跳ね回っている。

 

 

「大丈夫ッスよ。これはエンペラージャック、ッスね。イスパル近海で穫れる魚ッス」

 

「へぇ〜、そうなんだ……美味しい?」

 

「メチャメチャ美味いッス!カティアちゃんの好きな刺し身でもいけるッスよ」

 

 マジで!

 俄然やる気が出てきた!

 

「捌くのは任せて!」

 

 

 

 まぁ、現金なものである。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。