【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う! 作:O.T.I
ーーーー 大講堂 ーーーー
「油断……しましたわね」
「まぁ、流石のカティアも……あの状況じゃねぇ……」
「カティアも人の子だったね〜」
「えへへ〜、これで2組もやり返せたよ」
大講堂でモニター越しにカティアとガエルの戦いを見ていたルシェーラたち。
その意外な結末に、彼女たちだけではなく他の生徒たちからも驚きの声が上がっていた。
カティアの動きは最も注目されていたので、大多数の者がその場面を目撃していた。
カティアと言う誰もが学園最強と考えていた人物が打倒される、
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「う、そ………」
呆然と一人の女子生徒が呟きを漏らした。
彼女は、私に向かって魔法の杖を突き出した体勢のまま固まっていた。
私は苦笑して、彼女に声をかけた。
「ほら、そんなところで固まってたら狙われるよ。
「え…?あわわわ……すみませんでした!!」
「何を謝ってるの?見事な攻撃だったよ」
いや〜……完全にしてやられたよ。
まさか伏兵が潜んでいたとも思わなかったし、あのタイミングで奇襲をかけてくるとも……
私もまだまだ未熟だと言う事を、痛感させられたね。
あの時……
ガエル君を撃破した……と思ったその瞬間、フローラさんが建物の陰から踊り出て、雷撃の魔法を放ってきたのだ。
ガエル君との戦いに集中していた私は、勝利を確信した瞬間、僅かに緊張を緩めてしまった。
その間隙を完全に突かれた形だ。
多分、戦闘中に攻撃されてたのなら、むしろその方が対処できていたかもしれない。
そして、隙を突いたとは言え、タイミングを完璧に捉えて素早く正確に魔法を撃ち込むのは、フローラさんの実力の高さによるものだ。
そこは素直に彼女を称賛したい。
それにしても……
「もしかして、作戦だったの?」
私はガエル君に向き直って問う。
事前の打ち合わせ無しにあんなことが出来るとは思えなかったのだ。
「ああ。あなたに一対一で勝てるとも思わなかったからな。彼女と早めに合流できたから。戦闘中だとあなたはおそらく反応するだろうから……俺が負ける瞬間を狙え、と」
なるほど。
ガエル君の指示だったのか。
唯の
「でも、一応は私の勝ち……って事で良いんだよね?」
戦う前に約束していたことだ。
彼に勝ったら、あの妙な気配と急激に力を増した理由を話してくれる……と。
フローラさんにはしてやられたが、彼との勝負は私の勝ちのはずだからね。
「ああ、もちろんだ。それに、これでお互いに話しやすくなったろう?」
「……はぁ、私はあなたの掌の上で踊らされてたのか……」
彼の言う通り、私も脱落したこの状況なら、一緒に戦闘区域外に出ることになるからね。
こうなったらじっくり話を聞かせてもらうことにするよ。
しかし、随分と彼の都合のいいように事態が展開したね。
……もしかして、何か仕組まれてた?
ま、それも聞けば良いか。
「じゃあ、フローラさん。頑張ってね。私を倒したんだから、絶対生き残ってよね?」
「が、頑張ります!!……でも、絶対生き残れと言われると、ちょっと……」
「ふふ、それは冗談だけど……でも、それくらいの気概でね」
「は、はいっ!!」
そして、私達はフローラさんに別れを告げて、手近な校舎の中へと入っていった。
「それで……どう言うことなの?あの力は一体……?」
戦闘区域外へと離脱した私は、早速ガエル君に問いただす。
あの力は確かに『異界の魂』に由来するものだと感じられた。
そして、今も彼からはあの独特な気配が微かに感じられる。
だが、彼は『異界の魂』に乗っ取られている訳ではない。
そして戦いの前に彼が言った通り、魔族でもなさそう。
気配を除けば、普段通りの彼と変わらないのだ。
「その話をする前に……実はあなたに会っていただきたい人がいる」
「?……今から?ここで?」
その私の疑問には直接答えず、彼は徐ろに懐から何かを取り出した。
その手に握られたのは、淡く金色の光を放つ拳大の宝玉。
「……それは?」
「これは『双転珠』と言う……
「!!まさか……そんなものを持ってるなんて……」
神代遺物の中でも伝説級のものだよ?
それこそ国や神殿の総本山とかの宝物庫に眠っているようなものだ。
そんなものを、一学生が持ってる訳がない。
一体、彼は何者なのか?
……どうする?
普通に考えれば、彼の素性が分からないままホイホイついてくのは得策ではないだろう。
だけど、虎穴に入らずんば……とも言うし。
私が逡巡して決めかねていると……
「信じてもらえぬかも知れないが……俺はあなたの敵ではない。安全は保証するし、話が終われば再びここに戻ってくることを約束しよう」
彼は淡々と言う。
だが、その様子は真摯で信頼が置けるように感じられた。
よし!
ここは自分自身の人を見る目を信じよう!
彼は信用できる。
今までそう思っていた。
今こうして相対していても、それは変わっていない。
「分かったよ。その人に会わせて」
「……ありがとう」
そして、彼は宝玉を床に置いて何事かを呟く。
すると宝玉は一際強い光を放ち、私達を飲み込んでいく。
その光が収まったとき、私達の姿は校舎内から消えるのだった。