【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第十二幕 53 『狂気』

 

 ミーティアと調律師の、息をもつかせぬ空中戦が繰り広げられている。

 

 自由自在に飛翔する調律師に対して……ミーティアは空中に魔法による何らかの足場のようなものを作っているのだろうか?

 縦横無尽に跳躍を繰り返して攻撃を行っていた。

 

 先程まで調律師を狙って繰り出されていた学園教師陣や生徒たちの攻撃は、二人が入り乱れて戦うようになってからはパッタリと途絶えていた。

 狙いが絞れないだろうから仕方がないだろう。

 

 

 

 

「せいっ!!やぁっ!!ハァーーーッッ!!」

 

 ミーティアの滅魔の双剣が調律師の纏った闇の衣を引き裂く!!

 しかし紙一重と言うところで直撃は避けられていた。

 

 とは言え、調律師も余裕があるわけではないようで防戦一方、反撃出来ずにいる。

 どうやら彼女は魔法戦主体で、接近戦は不得手な様子。

 

 だが相手は魔族だ。

 身体能力自体は人間を遥かに凌駕するだろう。

 あそこまで追い詰めてるのも、ミーティアの実力があってこそだ。

 

 

「はっ!!せいやーーーっっ!!」

 

「くっ……鬱陶しい!![炎龍]!!」

 

 ミーティアの高速連撃の僅かな隙を見て[炎龍]を発動させる調律師。

 手数を補うための選択だろう。

 

 術者を護るように、ミーティアとの間に割って入った炎の龍。

 それで少し余裕が生まれた調律師は一旦距離を取って……

 

 どこからともなく剣を取り出した。

 

 装飾など無いシンプルな片手直剣だが、その刀身は漆黒に染まっている。

 

 

「私も剣の心得が無いわけではありませんよ。そして、この剣こそ……」

 

 そう言いながら彼女が剣を無造作に振るうと、黒い波動が衝撃波となってミーティアに襲いかかる!!

 

 

「!!」

 

 

 超高速で飛来したそれを既のところで回避。

 ……いや、完全には躱しきれなかったみたいで、二の腕が浅く斬り裂かれて血が滲み出る……

 

「「ミーティアっ!!」」

 

 思わず私とテオが悲鳴を上げる。

 

 おのれっ!!

 ウチの可愛い娘の玉の肌に傷をつけるとは!!

 許すまじ調律師!!

 でも動けない!!

 

 

 

「その剣は……」

 

「これは、かつてのアルマ王国に伝わっていた神器。『星剣イクスヴァリス』……。ふふ、私が長年所持してるためなのか、すっかり闇の力に染まりかつての面影はありませんけど。この剣は、かのエメリール神があまりの威力に恐れを抱いて一度も使用することが無かったと言われてます」

 

 

 いやぁ……剣の威力を恐れたと言うか……

 多分、まともに使えなかったんだろうなぁ……

 何せ、自分の足を斬りそうになるくらい運痴らしいから。

 

 だけど剣の威力自体は本物だ。

 軽く振っただけであの威力。

 

 

 そして、二人の戦いは剣と魔法を織り交ぜながら激しさを増す。

 

 一見して全くの互角なのだが……

 ミーティアの少女モードには時間制限があるはず。

 早期に決着をつけなければならないが……あと一手、どうにかならないものか?

 

 

 

 そう思ったとき。

 

 

 

「[符術・陰陽鬼退呪]!!」

 

 

 凛とした声と共に無数の御札のようなものが飛び交い……そのうちの一枚が私の背中に張り付いた。

 

 すると、立っている事すら困難なほどの倦怠感が、すー…と薄れていくではないか!

 

 

「これは……!」

 

 私だけでなく、他の皆も同様に力を取り戻し始めている様子。

 

 

「邪気を祓う東方の魔術です!!少し時間がかかってしまいましたが……皆さんこれで動けるはずです!!」

 

 エフィメラさんがそう説明してくれた。

 

 先程の巨人との戦いでも見せていたが、彼女はこの大陸では殆ど知られていない東方の魔術を使えるのか。

 

 何れにせよ、これなら………!!

 

「ミーティア!!俺たちも動けるようになった!!連携するぞっ!!」

 

「うん!!お父さん!!」

 

 

 力を取り戻した私達は、改めて調律師と対峙する。

 今度こそ、彼女を打倒するために。

 

 いかに調律師が強大な力を持とうとも……この場の皆の力を全てぶつければ必ずや打倒出来るはずだ!!

 

 

 

 しかし、再び立ち上がった私達を前にして、調律師は……観念したわけでは無いだろうが、俯いて何事かを呟く。

 そして、バッと顔を上げたとき、その表情は先程までとは一変していた。

 

「……グラナの子が私に牙を向きますか。姉さんと言い……何故、黒神教に仇なすのです!!?人類の進化を何故否定するのです!!?」

 

 

 最初は感情を感じさせなかった調律師だったが、今は怒りと憎しみで顔を歪め、半ばヒステリックに喚き散らす。

 

 彼女がシェラさんの妹ならば……彼女もグラナの皇族であるはず。

 あれは、同族に敵対された怒り……なのだろうか?

 

 

「もう、お止めください……ヴィリティニーア様。あんなものは進化などではございませんっ!!」

 

「黙れ黙れっ!!この、有象無象の虫けら共がっ!!」

 

 更に激昂する調律師。

 あれほど冷静で無感情だった彼女と同一人物とはとても思えない程だった。

 

 

 

「へっ!!あの澄まし顔も、随分化けの皮が剥がれてきたじゃねぇか!!もう大分余裕が無ぇだろ!!」

 

「うむ!!一気に畳み掛けるぞ!!」

 

「で、ですが……何だか闇の波動が……強くなってる気がしますわ!?」

 

 

 ルシェーラの言う通りだ。

 調律師の怒りに応じて黒い波動がどんどん濃くなり、漆黒の翼も更に大きく広がっていく。

 

 何だか……ヤバい感じがするよ!!?

 

 

「もはやこれまで。かくなる上は……我が身を黒神に捧げ、アクサレナを滅ぼすまで」

 

 再び、すとん…と無表情になった調律師は、そんな物騒な事を言う。

 黒い波動はますます勢いを増して行く。

 

 まさか……自爆する気か!?

 だが、正気を失ってる彼女ならやりかねない!!

 

 

 その場にいる者の全てが不吉なものを感じて、調律師が何かしようとするのを止めるため次々と攻撃を行うが、その尽くは漆黒の闇に阻まれる。

 

 

 そして、調律師は狂気の嗤いを浮かべて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「止めなさいっ!!!ヴィーっっ!!!」

 

 誰かの制止の声が響き渡った。

 

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