【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第十三幕 19 『知られざる英雄』

 

 たとえ敵国の皇女であっても、エフィが信頼の置ける人物であるということは、父様の言質を以て納得をしてもらった。

 これで一先ずは会議をスムーズに進めることが出来るようになるだろう。

 

 ……仮に、まだ疑念が残っている人がいたとしても、この場で異を唱える事は中々出来るものではないかも知れないけど。

 

 

 そう、思ったのだが……

 

 

 

「私も発言よろしいだろうか」

 

 円卓に座る代表者の一人が声を上げる。

 

 確かこの人は……シャスラハの全権大使、アルド大公だ。

 かなり年配の方で、恰幅が良く白髪に豊かな髭をたくわえる。

 一見して柔和な雰囲気だが眼光は鋭く、流石に一国の代表を務めるだけの雰囲気を感じる。

 

 発言の求めに父様が応じると、大公は新たな疑念を口にする。

 

 

「グラナの皇女であるエフィメラ殿が信の置ける人物であることは理解した。だが、この場にはもう一方、説明が必要な人物がいるのではないかね?」

 

 と言って、シェラさんの方を一瞥する。

 

 まぁ、彼女もグラナの皇女なのは同じなんだけど、それ以上に……

 

 今回の会談を調整するにあたっては、シェラさんの事は『黒神教と対立している魔族』と言う情報が共有されている。

 グラナの皇女であった事は特に知らせてはいないはずだけど、エフィと並ぶと血縁関係があることは何となく分かるかもしれない。

 しかし、大公が説明を求めているのは彼女が魔族である点についてだろう。

 

 

 すると、父様が私に目配せしてきた。

 ここは私の出番か。

 

 

「彼女の事については私から。……先ず、信頼が置ける人物である、という点についてはエフィメラ様と同様に私が保証いたします」

 

「……ふむ。しかし、エフィメラ皇女と違い、彼女は……『魔族』だ。件の『異界の魂』や黒神教との関わりも深い。カティア様の事を信用しないわけではないが……不安を抱くものも多かろう」

 

 

 その意見も尤もなものだろう。

 議場の多くの人の反応も、先のエフィより疑念の目を向ける者が多いように感じる。

 彼らを納得させ、不安を払拭するのは難しいかも知れない。

 

 だけど……

 

 

「大公閣下の……皆様の疑念は尤もだと思います。ですが、我々は……いえ、このカルヴァードの地に暮らす誰もが、彼女に感謝しなくてはならないと私は思います」

 

「……どう言う事かな?」

 

 

「何故なら。300年前に魔王を倒した勇者テオフィールとリディア。彼らとともに戦ったのが他でもないこのシェラさんなのですから」

 

 

 私が話した衝撃の事実に、会場から大きなどよめきが上がる。

 大公もそれには驚いて、しかし完全には納得できずに尚も言い募る。

 

「なんと……しかし、それを証明することは……」

 

「私は、勇者たちの戦いの旅の場面を何度か夢で見ました。おそらくは、テオフィールかリディアのどちらかの(シギル)に刻まれた記憶なのか、あるいは……ですが、それを証明することはできません。しかし」

 

 そこで私はある一点に視線を向ける。

 すると、そこに居た人物はそれを察して、一つ頷いてから立ち上がった。

 

「お話中失礼します。私はエメリール神殿総本山の巫女頭であるティセラと申します。只今カティア様が仰られたシェラ様に関する事は全て事実です。エメリール様の御神託です」

 

 

 こんな事もあろうかと、事前にリル姉さんにお願いしておいたのだ。

 流石に総本山の巫女に降ろされた神託を信じられないなど、口が裂けても言うことは出来ないだろう。

 

 

「シェラさんはこの世界の平和を守るため、そしてグラナとカルヴァードの諸国に友好関係が結ばれるように、ずっと……一人で頑張ってこられました。私は……いえ、今この時、この地で生きる私達こそ、その重荷を分かち合わなければならないのです」

 

 そう言い切ってからシェラさんを見ると、何だか驚いたような表情から嬉しそうに微笑んで……『ありがとう』と、声に出さずに呟いたのが分かった。

 

 そしてアルド大公も、目を瞑って少し考える様子を見せてから、シェラさんに向き直って……

 

 

「……なるほど、よく分かりました。シェラ様、無礼な発言、申し訳なかった。そして、今この時、この地に住まう者の一人として……知られざる英雄であるあなたに感謝申し上げる」

 

 そう、伝えるのだった。

 

 

 『知られざる英雄』か……まさにその通りだ。

 大公は良いことを言ってくれたね。

 

 

 大公の言葉を受けて、会場から拍手が上がった。

 疑念の目は敬意へと変わった。

 

 

 

 

 これが、彼女の『ねがい』を叶えるための第一歩となればいいな……そう、私は思うのだった。

 

 

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