【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第十三幕 36 『神狼』

 

 先制でブレス攻撃を放ってきたキマイラは、それが防がれたと理解するやいなや四肢に力を込めて猛烈な勢いで飛び出してくる!

 

 大きく跳躍して後衛を直接狙ってこようとするが……

 

 

「させるかっ!!」

 

 頭上を飛び越えようとするキマイラに向かって、イスファハン王子が大上段から長剣を振るう!!

 

 

 ガキィッ!!

 

 

 その一撃はキマイラの前脚の爪で防がれるが、やつが後衛まで抜けようとするのは止められた。

 

 動きを止めたキマイラ、その好機を逃すまいとジークリンデ王女が大剣を首に叩き込もうとする!

 

 

「はぁーーーっっ!!」

 

 

 だが、キマイラは俊敏に身を翻してそれを躱す!

 

 しかしそれを読んでいたテオが更に肉薄して……いや、マズい!!

 

 

「テオ、避けてっ!!」

 

「っ!?」

 

 

 フォーーーッッ!!!

 

 

 キマイラの肩口から生えた山羊から、毒々しい色をしたブレスが放たれるが、既のところでテオは回避する。

 

「毒霧のブレスか!!厄介な……」

 

 

 キマイラは炎のブレスや強靭な身体から繰り出される鋭い爪や牙による物理攻撃も脅威だが、今の毒霧や尻尾の蛇による毒咬み付きといった搦め手も非常に厄介だ。

 最初に後衛を狙ってきたように知能も高く、高ランクに相応しい強さを持つ魔獣である。

 

 

 

 さて、初撃は双方に有効打が無く振り出しに戻る。

 

「ステラ、メリエルちゃん。援護できそう?」

 

「大丈夫よ。今の攻防で動きは把握したわ」

 

「私も!」

 

 私の問いかけに頼もしい答えが返ってくる。

 

 先程までの攻防はほんの前哨戦。

 前後衛の連携をしっかりとって戦えば勝利の道筋は見えてくるだろう。

 

 更に言えば……私達にはそれぞれ切り札がある。

 例えSランクが相手だとしても、早々遅れはとらないよ!

 

 

 

 

 

 ……と、気合を入れ直して戦闘再開!と思ったのだが。

 

 

『ぐるぅっ!?』

 

 

「?何だかキマイラの様子がおかしいよ?」

 

「何かに怯えているような……?」

 

 

 私達と対峙しながらも、どこか強者の余裕を感じさせ威風堂々といった雰囲気のキマイラだったのたが、突然落ち着きがなくなり……確かに何かに怯えるような仕草を見せ始めた。

 

 

「ねぇ、これってもしかして……」

 

「考えたくはないが……」

 

「……もっと強い魔物が?」

 

「……だな」

 

 皆思うところは同じようだ。

 

 キマイラ程の強力な魔獣が怯えるような事態は中々考えられない。

 あるとすれば、より強力な魔物の存在……それこそSランク相当の魔物が来ている可能性が。

 

 そう思って気配を探ると、確かにキマイラの奥の方から強烈なプレッシャーが近づいてくるのを感じる……!

 戦闘に集中するあまり、ここまで接近するのに気が付かなかったか……

 

 

「みんな気を付けて!!キマイラより強力な魔物かもしれないよ!!」

 

「マジか……流石に二体相手取るのはキツイな」

 

(シギル)の発動もしなければならないか」

 

「あまり消耗したくなかったが仕方ない」

 

 

『ぐるるるぅ……』

 

 キマイラはもはや怯えを隠さず、身体を縮こませる。

 まるで借りてきた猫のように大人しくなる。

 

 

 そして、キマイラの奥の森、闇の中から現れたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その巨躯は立ち上がれば優に3メートルは超すだろうか。

 その身体はキマイラよりは小さいものの、そこから放たれる圧倒的なプレッシャーが格の違いを見せつける。

 

 それは、夜光樹の光に照らされて白銀に光輝く、神々しいまでに美しい毛並みの狼だった。

 額の部分だけ毛色が異なり、金色の満月のようだった。

 

 

 ゆっくりと歩み寄ってくる様は正に王者の風格。

 キマイラなど可愛らしく感じられるほどだ。

 

 そして私達の目の前までやって来ると立ち止まり、チラ……と魔獣を一瞥する。

 

 すると、まるで『行け』とでも言われたかのようにキマイラは弾かれたようにビクッとなってから、脱兎のごとく逃げ出してしまった。

 

 

 

 そして、狼は私達に向き直る。

 その瞳は理性の光をたたえている。

 先程まで放たれていた大瀑布の如き強烈なプレッシャーは既に無く、凪いだ湖面のような静謐な雰囲気だ。

 

 

 もしかして……この狼が?

 

 

「……神狼」

 

 

 そして、私の推測を肯定するように、メリエルちゃんが呟くのだった。

 

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