【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第十三幕 53 『森都防衛戦7 戦鬼』

 

 ……どうやら、一筋縄ではいかない相手がやって来たみたいだね。

 

 激しい戦いが繰り広げられている戦地にあって、ゆっくりとした足取りで現れた人物。

 赤髪黒目で立派な口髭を蓄えた壮年過ぎくらいの男性だ。

 全身鎧に、自身の身の丈ほどはある大剣を携える。

 鍛えられた大柄な身体は見るからに歴戦の叩き上げと言った感じで……その雰囲気から察するに、おそらく敵方の将か、それに近い人物かもしれない。

 

 彼の登場によって、誰もが……魔物ですらも戦いの手を止めた。

 

「ブレイグ将軍!!」

 

 グラナ兵士が声を上げる。

 そこには喜色が見え、かなり信頼されている事が分かった。

 

 ブレイグ将軍と呼ばれた男は視線を巡らせて、戦場の様子を観察する。

 

 

 私が参戦して以降は反転攻勢となった。

 周囲には多くの死傷者が倒れているが、その殆どはグラナ兵や魔物である。

 

 

「……なるほど。たかが小娘とは思えぬ力を持っているようだな」

 

「あなたがグラナの将軍?」

 

「いかにも。俺はグラナ帝国……この作戦における司令官だ」

 

 ……ちょっと間があったのは何だろう?

 

 

「私はイスパル王国第一王女、カティア=イスパル。古からの盟約により……いえ、大切な友人の祖国を守るため馳せ参じました」

 

「そうか……やはり貴殿が英雄王ユリウスの娘か」

 

 おや?

 何か、直接面識があるかのように聞こえるね。

 

 

「父様を知ってるの?」

 

「あぁ……15年前に何度も戦った相手だ。あれ程の武人と出会ったのは、あの時だけだな」

 

 懐かしそうに笑みすら浮かべて言うブレイグ将軍。

 

 ……なんだか、ここが戦場だと言うのを忘れてしまいそうになるくらい穏やかな会話だね。

 

 

「投降してもらえませんか?兵の殆どはまだ生きています。手当が早ければ助かる者もいるでしょう」

 

「ふっ……侵略者に対して、随分と甘いことを言いよるわ」

 

「……我々の敵はグラナ帝国ではなく、黒神教と考えてますから」

 

 この人は多分、グラナ帝国の中でもかなり地位のある軍人のように思える。

 そんな人が、何でこんなところまで来てるのかは分からないけど……彼が皇帝に近しい立場なら、何とか説得できないだろうか?

 

 

「なぜ、そんな風に考える?お前たちから見れば黒神教も我がグラナ帝国の一部だろうに」

 

 う〜ん……

 エフィの事、言っても良いのかな?

 

 調律師には知られたから、少なくとも黒神教には伝わってると思うのだけど。

 

 私が迷っていると……

 

 

「何れにせよ、引くことも投降することも出来ぬ。それに……お前は勘違いしている」

 

 

 ゾクッ!!

 

 突如としてブレイグ将軍の雰囲気が一変し、私の背筋を冷たいものが伝う。

 

 

「俺が、お前たち神の眷族さえ倒してしまえば!!我らの行く手を阻むものはいなくなる!!」

 

 ブレイグ将軍の身体から紅い闘気が噴き上がる!!

 

 まさか、あれは……!!?

 

 

「うぉーーーっっっ!!![鬼神降臨]!!」

 

 

 やっぱり!!

 うちの父さんや父様と同じスキルだ!!

 

 

 マズい!

 アレには生半可な力じゃ対抗できない!!

 

 そう判断した私は、常駐化していた(シギル)を即座に発動させる!!

 そして、鮮烈な青の光が私の身体を包み込む!

 

 リヴェラは薙刀形態へ!

 

 急ぎ臨戦態勢をとったろころで……

 

 

 ドンッッ!!

 

「でりゃあーーーっっ!!!」

 

 

 爆発的に加速したブレイグ将軍が襲いかかってきた!!

 全身鎧を纏っているのに、それを全く感じさせない猛烈なスピードだ!!

 

 大きく両手で振りかぶった大剣が、私を地面ごと叩き斬るとばかりに振り下ろされる!!

 

 

 

 ガァンッッッ!!!

 

 

「ぐっ……!!!」

 

 

 間一髪で大剣を受け止めるが……重いっっ!!

 

 まともに力で対抗しようとしても勝負にならないと判断した私は、薙刀の柄を滑らせるように大剣を反らしながら、ブレイグ将軍の死角に回り込む。

 

 

「はぁっ!!」

 

 

 ガンッ!!

 

 

 がら空きとなった脇腹に蹴りを叩き込むが……

 まるで大きな金属の塊を蹴ったかのような感触で、びくともしない!

 

 私は無理にそのまま攻撃はせず、蹴りの反動で一旦距離を取ることにした。

 

 

 

「あれを受け止めるとは……英雄王の娘と言うのは伊達ではないようだな。面白い!!再びこれほどの武人と相見えるとは……なかなかどうして、今回の任務も、捨てたものではない!!」

 

 

 喜色すら浮かべながら、ブレイグ将軍は言う。

 

 

 ……いやぁ、ここに来て父さんや父様クラスの相手と戦うのはキツイなぁ。

 

 でも……そんな場合じゃないのは分かってるけど、多分私も似たような顔をしてるかも。

 

 

 彼ほどの強者が認めてくれたんだ。

 

 武人同士、正々堂々と戦って……そして、勝つよ!!

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