【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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幕間26 リナちゃんとメリアさんの(ry (3)

 

 

 森都の街中を行くエメリナ達一行。

 

 特に護衛などは付けてないが、それはエメリナの強い希望によるものだ。

 国の上層部としては難色を示していたものの、神であるエメリナの願いを無下に出来るわけもなく……

 そもそもが護衛など必要としない強者ばかりということもあり、渋々納得してもらった次第である。

 

 そして、顔を知られているであろうエメリナとメリエルだけでなく、全員が変装している。

 エメリナの魔法によって、髪や目の色のみならず顔の印象や体格などを幻術で偽装したのだ。

 

「幻術はパティエットが得意なんだけど、私でもこれくらいはね」

 

 との事だが、一人ひとりに違和感なく偽装を施すのは高度な技術が必要だ。

 それを難なくこなすのは、神の隔絶した力によるものだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても……本当に立派な街になったわね」

 

 感慨深げにメリアが呟く。

 彼女 (のオリジナル)が初代女王としてこの地をウィラー王国の王都と定めた時は、まだ人口は数えるほどで……都と言うには些か規模が小さすぎた。

 晩年にはそれなりに都市としての体裁は整ったものの、精々が地方都市レベルだったとメリアは記憶している。

 それから長い時を経て、森の都と呼ばれるに相応しい美しい都へと成長したのだ。

 

 

 建物は密集し路地も入り組んでいるが、主要な街路は他の大都市と比べても広く取られ、立派な街路樹が立ち並ぶ。

 

「大鐘楼から街を見下ろした時、結構街路が枝葉に遮られていたから、支援するのにも一苦労だったわ」

 

 ステラが先の戦闘を振り返って言う。

 弓の優位性を確保するために高所を押さえたのは良かったものの、中々に苦労したようだ。

 それでも、枝葉の間を縫って的確に援護射撃をした彼女の弓の腕前は相当なものだろう。

 

 

 

 

「あ、あそこが植物園だよ!」

 

 そう言って案内役のメリエルが指さした先には、緑豊かな森都にあって尚一層緑が濃くなっている場所があった。

 

 ウィラー国立植物園は広大な敷地の中に、屋外庭園とガラス張りの屋内庭園があり、多種多様な樹木・草花が所狭しと生い茂る。

 また、薬学の専門学校・研究所が併設されており、観光のみならず教育研究機関としての役割も持っている。

 

「薬はウィラーの特産品……重要な輸出品だからね。割と重要施設なんだよ。戦場がここまでこなくて良かった」

 

 大きな入場門(ゲート)から中に入りながらメリエルは説明する。

 本来は入場料を支払う必要があるが、彼女が関係者用の入場許可証を提示して一行はフリーパスとなっている。

 

 

「ここは元々メリア様の薬草園があった場所なんだけど……学校・研究所の方も、メリア様が遺された『古今東西薬物大全』を教本として立ち上げられた研究グループが発端となって設立されたんだよ」

 

「へぇ〜……メリア、凄いじゃない」

 

「……私そんな本書いたっけ?……あ、もしかしてずっとレシピを書き溜めてたノート?」

 

「あ、多分そうかと。写本して整理したものみたいです。原本は国宝として王城(うち)の宝物庫に収蔵されてます」

 

「こ、国宝かぁ……結構書き殴ってたから恥ずかしいわね。……変な事書いてなかったわよね」

 

 

 メリアのノートは、育ての親から教わったものや自身が生み出した薬のレシピを書き溜めたもの。

 彼女自身にとってはメモ書き程度の認識であっても、稀代の薬師たちの知識がギッシリと記されたそれの価値は計り知れないものだったはずだ。

 その原本ともなれば、国宝とされても全く不思議ではない。

 

 

 さて、一行は視界を埋め尽くす緑と、その所々を彩る花や果実が目にも鮮やかな野外庭園を進んでいく。

 様々な珍しい植物を、美しい花を、それらが放つ香りを楽しみながら。

 

 

「どうですか、エメリナ様?ここは私のお気に入りの場所なんです!!」

 

「うんうん、いいわね〜!凄く素敵だよ!神界にも作ろうかな」

 

 キョロキョロともの珍しげに見ていたエメリナは、メリエルの問に満面の笑顔で答えた。

 

 

「でも、メリエルちゃん?こんなに緑いっぱいだと……すぐ迷子になったんじゃないの?」

 

 メリエルの迷子の原因は、彼女のスキル『緑の支配者(プラントマスター)』の資質によるものだった。

 これ程植物が溢れる場所だと、さぞかし大変だったのでは……とカティアは思ったのだが。

 

「うん。だけど、森都はどこに行っても緑で溢れてるからね。別に迷子になるのはここだけの話じゃないよ。あの頃は毎日が冒険だったね!」

 

「そ、そう……」

 

 関係各位の苦労が偲ばれ、カティアたちは遠い目をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一行が屋外庭園に続いてやってきたのは、屋内庭園……ガラスをふんだんに使い、光に満ち溢れた大規模なアトリウムだ。

 

 

「これは……凄いね……」

 

「ええ、何て美しい空間なのかしら……」

 

 カティアとステラが感嘆の声を漏らす。

 エメリナとメリアも目を瞠って驚きをあらわにしていた。

 

 

「へへ〜、凄いでしょ!ウィラー自慢のアトリウムは。ここは主に暖かい地方の植物が集められてるんだ。珍しい花もたくさんあるよ!」

 

 メリエルの言う通り、屋外に比べると極彩色に溢れた様子は熱帯を思わせる。

 春先とは言えまだ肌寒い屋外に比べて初夏のような暖かさだ。

 

 

「これは素晴らしいわ。私の薬草園(ハーブガーデン)は気候の合わないものは育てられなかったからね。熱帯の植物は薬効が特別なものが多いのだけど、貴重だったのよね」

 

「あ、分かります。アクサレナとかでもあまり流通してないんですよね……」

 

 学園で化学クラブに所属するステラが、メリアの話に同調する。

 薬学との類似点も多いためか、二人は道中も話が弾んでいたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 そうして一行はアトリウムの中を散策し、その後も再び屋外庭園に出るなどして、暫くは植物園の中を見て回るのだった。

 

 

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