【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う! 作:O.T.I
「う〜ん……美味しいわ!地上の食べ物は本当に久しぶりだわ〜」
料理に舌鼓を打ち、上機嫌でエメリナは言う。
心の底から楽しんでいる様子である。
「私も。この身体だと食事を取らなくて済むから……」
メリアがエメリナに同調して言う。
彼女は精霊に近しい存在であるため、普段は食事を必要とせず魔素によって身体を維持している。
食べる事自体は可能だが、人間のような食に対する欲求は無い。
ただ、人間の時の味覚は覚えているので、こうして美味しいものを美味しいと感じるのだ。
そして、その辺の感覚はエメリナも同様なのだろう。
植物園に行ったあと、一行はレストランで食事をとることにした。
次にどこに行くか……と言うのに対して、エメリナが『何か美味しいものが食べたい!』と希望したからだ。
ちょうど昼時という事もあったことから反対意見はなく、またもメリエルの案内でオススメの店にやってきたのだった。
「メリエル、このお店には良く来るの?」
「うん、お姉ちゃんとお忍びでね〜」
ステラの問に頷いて答えるメリエル。
彼女が案内したのは、植物園からそれ程離れていない南街区のメインストリートに面した店。
落ち着いた雰囲気で、客層もそこそこ上流向けと言った感じではあるが……王族御用達と言うほどの超高級店という訳でも無い。
ウィラーの特産である野菜や
実際、店内は女性客が多いが、森で狩った動物たちの肉料理などもあるので男性客やカップルもちらほらと見える。
「メリエナの体調はもう大丈夫なの?」
メリエナの話が出たので、エメリナは彼女の様子を聞いてみる。
この場にいる者たちは、戦いのあと直ぐにメリエナのお見舞いには行ってるが……まだ本調子ではなかったので、その後の様子が気になっていた。
「はい!少しずつ良くなってるので、もう少ししたら公務に復帰したいって言ってました」
「あら……病み上がりなんだから、もう少し休んでおけば良いのにねぇ。私は女王やってた頃は、そんなに真面目じゃなかったんだけど」
「メリアは手の抜きどころが上手いのよ。それにしても……私の力でパパッと治せれば良かったんだけどね。魂に関わる部分もあるから、ちょっと私の力だけじゃ無理」
「リル姉さんなら何とか出来た?」
「私とお姉ちゃん……二人いればね。ま、それは言ってもしょうがないので、時間をかけて療養してもらうしかないわね。リハビリもかねて少しずつ公務を始めるのは良いけど、無理はしないように言っておいてね」
「はい!」
お喋りに興じながら彼女たちは料理を楽しむ。
そして今度はステラが話題を振る。
「このお店もそうだけど、割とすぐに日常を取り戻せたみたい」
「『大森林結界』も解除されたから、人の往来ももとに戻りつつあるみたいだしね」
「アレが役に立つ日が来るとはね。何事も備えあれば憂いなし、ってことか」
カティアの言葉に、メリアがしみじみと言った風に返す。
秘術を施した本人……のコピーとしては、有事に備えて準備したものの、周辺国とは友好関係にあったので使う機会は早々訪れないだろうと考えていたらしい。
「そのお陰でウィラーを守ることが出来ました。本当にありがとうございます!」
「命がけで術を発動させたのはメリエナよ。メルド王は止めたらしいけど……あの娘の勇気ある決断には、私も感謝してるのよ」
「……はい、お姉ちゃんは凄い人です」
「ふふ……あなたもね。そして、カティアさんたちも……誰一人欠けても成し得なかった勝利だと思うわ」
メリアはまるで親が我が子を誇るような表情で言う。
……いや、実際にそう言う心境なのかもしれない。
「でも、最初からリナ姉さんを呼んでいた方が良かったかも?」
「いや、私は直接的な戦闘能力はあまりないから……。どちらにしても、カティアちゃん達の力は必要だったわよ」
それはエメリナの本心からの言葉だ。
神の力は強大だが、万能ではない。
彼女たちも人間同様に得手不得手がある。
「さて……皆食べ終わったみたいだし、次はどこに行く?」
料理を食べ終わったあとも暫く会話が弾んでいたが、そろそろ次に行こうかとエメリナが言う。
「あ……それじゃあ、私、ちょっと行きたいところがあるんだけど」
そう言ってメリエルが行きたいと言ったのは……意外な場所であった。