【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第三幕 7 『解放』

 

 ーー 遊撃部隊 ーー

 

 

 激闘が繰り広げられていた。

 

 変貌を遂げたオーガエンペラーと、ブレゼンタムでも上位の実力を持つ冒険者達の戦いは目まぐるしく攻防が入れ替わるも、お互いに決め手は無く膠着状態となっている。

 

 圧倒的なパワーとスピードで繰り出されるオーガエンペラーの攻撃は、掠めただけでも大ダメージ必至であるが、冒険者達はカティアの[絶唱]によって底上げされたステータスによって反応速度も向上しており、どうにか紙一重で避け続けることが出来ている。

 要所要所で放たれる敵の必殺技…[爆縮怒号烈気]も、的確にその兆候を読み取って直撃を避けている。

 

 

 そんな激しい攻防が続く中、ダードレイは切り札を切るべく精神を集中させていた。

 

「はぁーーっ……行くぜっ![鬼神降臨]!!」

 

 ダードレイの切り札、固有スキル[鬼神降臨]が発動する!

 すると、闘気が赤いオーラとなってダードレイの身体から吹き上がった!

 

 このスキルを発動すると、闘気を極限まで高めて練り上げる事によって爆発的に身体能力が引き上げられる。

 しかし、その一方で発動までに時間がかかること、発動後の効果時間が短いこと、そして何より、効果が終わった後の反動によって一時的に耐え難い倦怠感に襲われてしまう事など、弱点が多く使いどころが難しいスキルである。

 

 長年の経験によって、ここが勝負どころと踏んで賭けに出たのである。

 

「ティダ!みんな!待たせたな!後は任せろ!!」

 

 後列へと下がっていたダードレイはスキルの発動とともに一気に前に飛び出してオーガエンペラーへと突撃を敢行する。

 

「おじさまっ!?一人で相手する気ですの!?」

 

「ダードなら大丈夫だっ!!邪魔になるから一旦下がれ!!」

 

 ティダの叫びによって連携攻撃を行っていた面々は後方に退避。

 入れ替わってダードレイが敵に肉薄する!

 

「うおおおーーーっ!!!」

 

 ぶおんっ!!

 ザシュッ!!

 

 猛烈な勢いで振られた大剣が防御しようとしたオーガの左腕に吸い込まれ、そのまま腕を断ち切ってしまう!!

 

『ぐがあああーーっっ!!!』

 

 

「でりゃあーーーっ!!!」

 

 びゅんっ!!

 ガキィッ!!

 

 返す剣で首を切るべく振るわれた大剣は惜しくもオーガの戦斧に阻まれてしまう!!

 

『ぐるぁーーーっっ!!!』

 

 大剣を力ずくで弾き、その勢いのまま戦斧をダードレイに叩きつける!

 

 しかし、その戦斧の一撃を敢えて前進しながら紙一重で躱し、弾かれた大剣を強引に引き留め再び首を狙って振るう!

 

「もらった!!」

 

 ザンッ!!

 

 だが、首を刈り取るはずだった渾身の一撃は()()によって阻まれてしまった。

 

「!?馬鹿なっ!!もう再生したってぇのか!?」

 

 ダードレイは驚愕で目を見開く。

 

 変貌前も驚異的な再生スピードによって傷口が直ぐさま塞がっていた。

 しかし、切り飛ばされた腕がたちまち再生してしまうなど、明らかに異常だ。

 

 

 

 

「…まずいな」

 

 嵐のような凄まじい戦闘に割って入ることもできず、後方で戦況を見守っていたティダが思わず呟く。

 様子を見守りながらも、時々場違いな雑魚がやってくるのでやる事が無いわけではない。

 

「どうしたのだ?ダードレイ殿が押しているように見えるが…あんな切り札があるとは、流石は歴戦の勇者だ」

 

「確かに今はそう見えるな。だが、あと一歩が攻めきれない」

 

「…ですが、それも時間の問題なのでは?あの勢いなら何れは致命ダメージを与えられそうですわ。如何に驚異的な再生能力を持っていても、流石に首を落としてしまえば倒せるでしょう」

 

「その時間が問題なんですよ。ダードのあのスキルは効果時間が短い。恐らくあと数分もすれば効果が切れてしまう。そして、スキルの反動で立っているのもやっとと言うほどの虚脱感に襲われる」

 

「なっ!?ま、不味いじゃないですか!」

 

「だから、そう言ってるんです。せめてもう一人、あれと同等のことができるヤツがいれば…」

 

 そのティダの言葉に、カイトは遂に覚悟を決める。

 

「…俺も行きます」

 

「無茶だ。あそこに割って入ることすら出来んだろう?」

 

「いえ。俺も切り札を切ることにします。みなさん、どうかこれから目にする事は他言無用に願います」

 

「!!カイト様、まさか!?」

 

 カイトの意図を察したルシェーラが驚愕の声を上げる。

 

「もはや出し惜しみはしていられん。アイツを何とかしなければ俺たちもただではすまない。いや、俺たちだけではない。ここで止められなければ、もう止められるやつもいないだろう。ダードさんを死なせるわけにもいかない。…カティアが悲しむ」

 

「…既に覚悟を決められてるのですね。ならば私が口出しすべき事ではありませんわね。どうかおじさまを助けてあげてください。…皆さん、カイト様も言われた通り、これからの事は他言無用に願います。これはブレーゼン侯爵家の意向でもあると思ってください」

 

 その言葉に全員が神妙に頷く。

 

 そして、カイトは前に進み出ながら、自らの切り札を切るべく、そのトリガを引いた。

 

 

「我が血の中に眠る古の力よ、今こそ目覚めて顕現せよ」

 

 すると、カイトの身体を淡い燐光が包み、やがてその光は彼の額に収束していきある形を作る。

 大きく羽ばたく鳥の翼を象ったような印。

 カティアの(シギル)も翼の様な形だったが、明らかに違う形である事が分かる。

 

「…それは、まさか…(シギル)…か!?」

 

「…ええ。レーヴェラントの血筋に宿るリヴェティアラ様の(シギル)です。その効果の一つは『解放』…己の潜在能力を一時的に極限まで引き出すというものです。これならダードさんと共闘してアイツを打倒できるはず」

 

 今もカティアの支援効果は続いている。

 その上に潜在能力の解放が行われている今のカイトは、[鬼神降臨]状態のダードをも凌駕する。

 

「…約束通り詮索はしない。…頼んだぞ!」

 

「はい。任せてください」

 

 そして、カイトはまるで暴風のような戦いの中に身を投じていく。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 はい、こちら絶唱マシーンと化しているカティアちゃんです。

 まだ終わらないのかな〜?

 

 …正直飽きてきた。

 ○時間耐久作業用BGMみたいなノリになって来たよ。

 延々と同じ歌を繰り返すのがこんなに苦痛だとは…

 

 違う歌を歌いたいな〜。

 だめかな?

 …だめだよね。

 いきなり支援の効果が変わったらそれで事故が起きかねないもんね…

 

 そんな私の心情を察したのか、姉さんが甲斐甲斐しく世話をしてくれます。

 要所で治癒魔法をかけてくれたり、お水を渡してくれたり…

 一応、曲の切れ間の僅かなタイミングで給水する事はできる。

 …私はマラソン選手かい?

 

 姉さん、今度は団扇で扇いでくれてます。

 風が心地よいねぇ…。

 って、その団扇何か書いてあるね?

 ナニナニ?

『カティアちゃん♡LOVE♡』…

 ちょっと!?

 それどこで手に入れたのさ!?

 

 

 

「…何だか大将を打ち取る前に、このまま押し切ってしまいそうですね」

 

「そうね〜、思った以上にカティアちゃんの歌の効果が凄かったみたいね〜」

 

 リーゼさんと姉さんがそんな話をしている。

 何度か戦況を確認してきてくれているが、数的優位性はもはや逆転して一方的な展開になりつつあるらしい。

 

 

 と、そこへ本陣で指揮をとっているはずのリファーナ様がやって来た。

 

「お疲れ様、カティアちゃん。もう少し頑張ってね」

 

 そう労ってくれるが、もちろん私は返事ができないので目で頷く。

 

「リファーナ様、こちらにいらしても大丈夫なのですか?」

 

「ええ、こうなるともはや勝敗は決したも同然でしょう。マーキスさんに任せてきたので問題ないわ。もちろんまだ厄介なのが残っているので油断は出来ないけどね」

 

 マーキスさんって夜会で会った人だ。

 …たしか文官じゃなかったっけ?

 まあ、ブレーゼン家の外戚らしいから驚きは無いけど。

 

 

「お嬢様たち、大丈夫でしょうか…」

 

「たしかに、あの物凄いプレッシャー。イレギュラーが発生したのは間違いなさそうだけど、彼らなら何とかしてくれることでしょう。増員を送るにもあのレベルだとかえって足手まといになりそうだし(…出来る事なら私が行きたいんだけど、流石に止められるわよね…はぁ、結局私の出番は無さそうだわ)」

 

 …なんか奥様の心の声が漏れたような?

 

 だが、まあ、父さんたちならきっと何とかしてくれるだろう。

 

 

 …だから、早く私の歌を終わらせて!

 

 

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