【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第十四幕 4 『大樹の城にて』

 

 王樹の階段を登っていくと、下からも見えていた大扉の前に辿り着く。

 それは、森の木々や花々、動物や鳥たちが精緻に彫刻され、長い年月を経た風合いも滑らかな両開きの木扉だった。

 

 さしたる力も入れた様子もなくシェロさんが扉を開くと……その中にはダンスホールのような広大な空間が広がっていた。

 

 木の幹の中なのに壁面から天井かけて枝が張り出し、そこに吊るされた果実を模したようなランタンが暖かな光を放っている。

 葉や花々も生い茂り、お伽噺の妖精の家と言った感じだ。

 ……というか、さっき実際に会ったけど。

 

 

「うわぁ〜……なんてメルヘンチックな」

 

「木の中にこんな空間が……」

 

「中々のものでしょう?ちょっと乙女チックだけど。空間魔法がかかってるから、外から見た通りの広さじゃないのよ」

 

 空間魔法……拡張鞄どころのスケールじゃないね。

 

 

 ホールのような広々とした空間のその先には、いくつかの扉がある。

 シェロさんはそのうちの一つを開けて私達を中に案内してくれる。

 

 どうやらそこは応接室のようなものらしく、内装はホールと同じようにメルヘンな感じ。

 家具や調度品も木製のものが多く統一感が取れている。

 

 

「メリア様、私はお茶をご用意いたします。お客様、どうかごゆっくりお寛ぎくださいませ」

 

「ありがとう。よろしくね」

 

「「ありがとうございます」」

 

 

 そうして、メリアさんは私達はソファに腰掛け相対する。

 さて、これからどんな話が聞けるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、先ずは……これは私が興味があるから聞くんだけど。カティアさんは、ここが前世のゲームによく似た世界……という事は知っているのかしら?」

 

 メリアさんは先ずそんな話を切り出した。

 そう聞くという事は、リュートからゲームの事を聞いたか、彼女自身がゲームを知っていたかのどちらかだろう。

 

 

「え、ええ。私……前世の【俺】はそのゲーム、『カルヴァード戦記』は相当やり込んでいた方だと思います」

 

「なるほど。でも、それにしては……この『聖域』の事を知らなかったのは不思議ね。時が遡る事はない、と言う前提に立つならば……あなたは私よりも後に転生したはずなのだけど」

 

「……【俺】が知っている時点よりも後に、この聖域もゲームに実装されたと言う事ですか?」

 

「そうなるわね。私はやった事はないんだけど、前世の友人がハマっていたのよね……。私がやった事があるのはスピンオフ作品の方」

 

 

 スピンオフ……?

 世界観が同じ別のゲームという事?

 

「それもあなたの知ってる時点より後にリリースされたものだと思うのだけど……今から何百年も前のウィラーやデルフィアが舞台で、ジャンルもVRMMOではなかったわ」

 

「……それは、まさか?」

 

「そ。『ゲームの主人公に転生してしまった件』みたいな」

 

 うわ〜……

 何というか……凄く納得してしまった。

 彼女(の元となった人物)の人生は、まさに主人公って感じだから。

 

 

 それにしても……やはりメリアさんの言う通り、時系列がおかしい気がする。

 

 ……いや。

 【俺】が賢者リュート本人なら説明は付けられる。

 

 メリアさんとリュートは同じ時代に生きている事から、転生した時点も近かったのかも知れない。

 そしてリュートがこの世界で転生したのが【俺】で……何らかの理由で前世のある時点以降の記憶が欠落した……

 

 

「カティア。お前と賢者リュートの関係は、まだメリアさんに話していないんじゃないか?」

 

 

 あ、そう言えばそうだった。

 

「カティアさんとリュートの関係?」

 

「ええ、実は……」

 

 

 私はこれまでの経緯をメリアさんに説明する。

 リル姉さんに請われて転生した事から、賢者の塔でリュートの遺した記録に触れたこと。

 そして……そのリュートが前世の【俺】と酷似した姿だったことを。

 

 

 

「そんなことがあったの……。でも、リルさんが転生させたのが、この世界に来てからのリュートの魂だったなら辻褄は合いそうね。記憶に関しては謎だけど……」

 

 私の話を聞いて考えを整理するように呟きをもらすメリアさん。

 

 そして、少し考えてから……

 

 

「ま、ここで話しているよりは当事者に聞いたほうが早いか」

 

「「当事者……?」」

 

 訝しげに問い返す私達に、メリアさんはただ意味深な笑みを浮かべるだけだった。

 

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