【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第三幕 8 『完全勝利』

 

ーー 遊撃部隊 ーー

 

 

「でりゃあーーーっ!!!」

 

 ダードレイはもう幾度となく大剣を振るっている。

 しかし、オーガエンペラーにいくらダメージを与えても瞬時に再生してしまうため、一見押しているように見えるがその実焦っているのはダードレイの方だ。

 

(ダメージを与えてねえ訳じゃねえ。だが、いくらなんでも再生にも限度があるだろうが、このままじゃ先に俺のほうが息があがっちまう。やはり、首を飛ばすのが一番だが…ヤツもそこだけはキッチリ守ってきやがる。せめて、もう一人…)

 

 と、内心焦り始めたところでカイトが加勢に入る。

 

「ダードさん!加勢します!」

 

「カイトか!!行けるのか!?」

 

「はい!!俺も切り札を使ってますから!!」

 

 チラッ、とカイトの方を見ると、その『切り札』が何であるかを瞬時に悟る。

 

(なるほど、やっぱり力を隠してたな。しかしこれで光明が見えた!)

 

「よし、二人で鬼退治と行くか!!首を狙うぞ!!」

 

「はい!!」

 

 

 カイトが駆けつけたことによって均衡が崩れ始める。

 並の者では加勢どころか邪魔になりかねなかったが、同等の力を持つ者がもう一人加わって連携し始めたのだ。

 当然の結果であろう。

 

 かつて、異界の魂に対峙した時の経験を活かして、二人は息の合った連携を見せ、徐々にオーガエンペラーを追い詰めていく。

 

 

 そして、遂にチャンスが訪れた!

 

 一瞬の隙を突いて、カイトがオーガの脇を駆け抜けざまに長剣を振るう!

 

「はあっ!!!」

 

 シュパッ!!

 

 カティアに作ってもらった剣はカイトの気をも纏って恐るべき切れ味を発揮し、いとも簡単にオーガの左腕を切り飛ばしてしまう。

 

 

「ふんっ!!!」

 

 ブォンッ!!ドシュッ!!

 

 さらにダードレイの重く鋭い一撃がもう片方の腕を切り飛ばす!

 

『ごがああぁぁぁーーーーっっ!!!!』

 

 両の腕を失ったオーガエンペラーはたまらず悲鳴を上げて天を仰いだ。

 

「「今だ!!!」」

 

 両腕の再生が追い付かず防御体勢が取れなくなった敵に向かって前後から二つの刃が振るわれる!!

 それは狙い違わず(オーガ)の首に吸い込まれていく!

 

 ガスッ!!

 

 ハサミのように前後から同時に食い込んだ刃は、その太い首を断ち切らんとするが、腕とは比べ物にならないくらいに硬く、半ばまで食い込んだところで勢いが衰える。

 

「くっ!!硬え!!」

 

「あともう少しです!!」

 

 その時、オーガの両腕が再生していくのが目に止まった。

 

(やべえ!!もう再生する!?このチャンスは逃せねえ!くそっ!!早くくたばっちまえ!!!)

 

 これが最後のチャンスとばかりに二人はありったけの力を剣に込める!

 

「「うおおおーーーーっっっ!!!」」

 

 ザシュッ!!!!

 

 裂帛の気合を込めて、遂に(オーガ)の首を断ち切った!!

 

 首を失ったオーガエンペラーはその切断面から大量の血飛沫を上げる。

 首を失ってなお、再生していた両腕をぶん、ぶん、と振り回すが、これまで猛威を奮っていた勢いは既にない。

 やがて最後のあがきも終わりを告げて、ゆっくりとその巨体が傾いていき…

 

 ズズンッ…!

 

 と地面を響かせて、ようやくその活動を停止した。

 

 

 

「ふぅ……流石にもう再生しねえよな?」

 

 ダードレイは、首を落としたと同時に[鬼神降臨]の効果時間が終わり、その反動によって耐え難い倦怠感に襲われながらも何とか立ったまま警戒を解かない。

 

「はぁ…はぁ……真っ当な生き物であれば…」

 

 カイトも既に(シギル)の発動は終わって、肩で息をしながら、ダードレイの隣に立ってオーガの死体を見つめる。

 

 後方に下がっていた面々も集まって来て、その段になってようやく警戒を解いた。

 

 

 

「ダード、大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃねえ…体が超だりぃ…」

 

 彼にしては珍しく弱音を吐くが、それだけ反動が大きいのだろう。

 ティダもそれは分かっており、ダードレイに肩を貸す。

 

「おじさま、お疲れ様でした!お陰で全員生き延びることができました」

 

「おう。俺だけじゃ危なかったがな。カイト、助かったぜ」

 

「いえ。ダードさんの力があってこそです」

 

「謙遜すんなって。…あれは他言無用って事だな?」

 

 カイトが(シギル)を隠していることは察しているが、念の為確認を取る。

 

「…ええ、皆さんにも了承頂いてます」

 

「だろうな。よくぞ決断してくれた。まあ、以前からレーヴェラントの関係者だとは思っていたが、まさかまんま王族絡みとはな」

 

「えっ?…なぜそう思ったんです?」

 

 意外なダードレイの言葉に、なぜそう思ったのか気になって聞き返す。

 

「いや、あくまでも可能性の話だったんだが。お前の剣技に見覚えがあったのと、『鳶』のパーティー名からな」

 

「…ああ、なるほど。『鳶』はレーヴェラント王家の紋章に使われてたな」

 

 ティダの言葉にダードレイは頷く。

 

「そうだ。あと、剣技の方もな。あれはレーヴェラントの騎士が使う流派に似ていたんだ。それだけじゃ無ぇみてぇだが」

 

「…その通りです。俺の剣の師匠はレーヴェラントの騎士団の者です」

 

「やはりな。…まあ、これ以上の詮索はしねえ方が良いんだろ?」

 

「…はい、すみません。いつかお話出来ると思います」

 

「いいっていいって。俺らはただのしがない旅芸人だ。そんな話を聞いたってどうと言うもんでもねえ。…だが、まあ、カティアのやつには…な?」

 

「…はい。彼女にはいつか話をしたいです。ですが、今はまだ…」

 

「分かった。俺としちゃあアイツを悲しませなければそれでいい。ところで、ルシェーラ嬢ちゃんは知っていたのか?」

 

「はい。かつて我がブレーゼン侯爵家からレーヴェラントに嫁いだ者がおりまして。かの国とは縁があるのです」

 

「ああなるほど、そういう伝手か。…と、カイトのことはここまでだ」

 

 

「しかし、あの魔物…一体何だったんでしょう?」

 

 ルシェーラが疑問を呈する。

 

「わからねえ。自分でも言っていたが、特殊な魔物には違いねえが…」

 

「!おい、見てみろっ!!」

 

 と、ティダが何かに気づいてある一点を指差す。

 すると、そこにあった筈の魔物の死体が…

 

「なんだぁ?灰になっちまったぞ」

 

 そう、そこにあった筈の死体はボロボロに崩れて、あとには黒い灰が残るのみとなっていたのだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

「…あら〜?」

 

「どうやら、倒したみたいね」

 

 ここにいても分かるほどの強烈なプレッシャーがたった今途絶えたのだ。

 どうやら、敵大将の討伐に成功したらしい。

 

 …みんな、無事だよね?

 

 

 

 そして、プレッシャーが途絶えてしばらくしてからリファーナ様のもとに伝令がやって来て、大将の討伐が確認できたとの報告がされた。

 遊撃部隊も皆無事らしい。

 

 その報告にようやく私たちは胸をなでおろす。

 

 

「さて、では掃討戦に移りましょうか。当初の想定と違って、もう粗方倒しているけどね。カティアちゃん、私は本陣に戻って全軍に通達を出すからそこで歌は終わりにしてもらって良いわよ」

 

 

 おお…ようやくですか。

 長かった…

 

 

 

 そして、本陣に戻ったリファーナ様より通達がなされる。

 

『本陣より全軍に通達。敵大将の討伐を確認。これより掃討戦に移行する。なお、カティア殿の支援はこの通達をもって終了とする。各員注意するように』

 

 

 そして、通達を聞いた私はきりのいいところで歌うのをやめる。

 これで[絶唱]の発動は終了するが、突然効果が切れるわけではなく、だんだんと効果量が落ちてきてから元の状態に戻るはずだ。

 

 ようやく開放された私は、思わず地面に座り込む。

 自分で思ったよりも疲弊していたようだ。

 

 しかし、心地よい疲れでもある。

 やり切ったという達成感があったから。

 

 

「お疲れ様〜カティアちゃん。あなたのお陰で殆ど犠牲者は出ていないわ〜」

 

「お疲れ様ですカティアさん。本当に凄かったですよ!」

 

 姉さんとリーゼさんが労ってくれる。

 

「姉さんもリーゼさんもお疲れ様。開幕初撃でかなり削れたのも大きかったと思うよ」

 

「そうね〜、殆ど魔法耐性が無い相手で良かったわね〜」

 

 本当にね。

 ともかく、犠牲者も殆どいなかったって事だし、完全勝利と言って良いかな?

 いくら私の支援があったからと言って、皆が一生懸命頑張った結果だよね。

 

 

 さあ!皆で胸を張ってブレゼンタムへ凱旋しよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー ???? ーー

 

 

「…敗れたか。しかし、まさかこうも一方的にやられるとは」

 

 戦場を一望できる小高い丘の上にフードを目深に被った不審な人物が立って独り言を呟く。

 体型や声音からは男なのか女なのかすら分からない。

 

「今回はあくまで実験とは言え、態々このような辺境まで足を運んだというのに…不甲斐ない。だが、収穫が無かったわけではないな…あの小娘の支援が脅威であること。そして、まさかこんな所に(シギル)持ちがいたとは…」

 

 彼?彼女?は戦闘開始から終了までの様子を余さず見ていたようだ。

 

 

 やがて、大将を失った魔軍が殆ど殲滅されるのを見届けると、もはや興味を失ったように踵を返してその場を立ち去るのだった。

 

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