【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

592 / 664
第十四幕 44 『魔剣士』

 

「……あなたは、私達の味方なんですか?」

 

 

 占星術師フォルトゥナの最期を見届けた私達は、『魔剣士』と呼ばれた謎の人物と対峙する。

 

 今はまだ警戒を解くことは出来ず、みんな戦闘態勢のままだ。

 私も薙刀(リヴェラ)を構えながら、問い掛ける。

 

 

 

「待って、カティアさん。……彼の声、聞き覚えがあるわ」

 

「……え?」

 

 シェラさんも……?

 

 私とシェラさんが聞き覚えのある声……

 一体誰なの?

 

 

 

 すると、彼は目深に被っていたフードを取り払う。

 

 現れたのは、魔族特有の白銀の髪と金の瞳に彩られた、精悍な顔つき……

 

 何処かで……?

 

 ………

 ……

 …

 ああっ!?

 

 彼はっ!!

 もしかしてっ!?

 

 

「ロランっ!!?」

 

「おうよ。久しぶりだな、リシィ。逢いたかったぜ……」

 

 私が気が付いたのと同時に、シェラさんが驚きの声を上げ、彼はそれを肯定した。

 

 

 まさかの意外な人物の登場に、私とシェラさんは呆気にとられ、他の皆はわけが分からずに戸惑いの表情を見せる。

 

 

 

「生きて……たの……?」

 

「あぁ、見ての通りだ。……まぁ、人間辞めちまってるけどよ」

 

 

 300年前のテオフィールパーティーの一人、戦士ロラン。

 アグレアス侯爵家の先祖、ローランド=アグレアスその人だ。

 

 一体何故、彼がここに……?

 そして何故、魔族になっているのか?

 

 

「どういう事なの……?ロラン?」

 

「話せば長くなるが……その前に」

 

 

 そう言って彼は、シェラさんの前まで歩み寄り……

 そして、いきなり彼女を抱きしめた!!

 

 

「「「おおっ!!」」」

 

 シェラさん以外の女性陣から声が上がる。

 特にルシェーラの目の輝きと言ったら……

 

 

 

「なっ!?ちょ、ちょっと!?ロラン!!」

 

「リシィ……逢いたかった……もう、二度と……」

 

 慌てふためくシェラさん。

 ちょっと珍しいかも。

 

 そして、ロランは感慨深げに呟きを漏らす……

 目の端からは薄っすら涙が滲んでいるのが見えた。

 

 

 そっか……彼は、シェラさんを……

 夢で見たときは分からなかったけど、今の目の前の姿を見れば、その感情が何なのかは直ぐに分かる。

 

 

 そして、それを察したシェラさんは……

 

「もう……仕方がないわね……」

 

 ロランの背中に優しく腕を回す。

 

 そうして暫く二人はお互いを抱きしめ合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いものを見させて頂きましたわ」

 

 満足そうにルシェーラが言う。

 全くもって彼女の大好物なシーンだったね。

 

 

 

「恥ずかしい……」

 

「ははは!!恥ずかしい姿を見せちまったな」

 

 顔を赤らめて恥ずかしがるシェラさん。

 

 一方のロランさんは、その言葉ほどでは無い様子。

 随分と豪胆な人のようだ。

 

 

 

「シェラの知り合いと言う事は……もしかして、あなたは300年前に魔王と戦った……?」

 

 テオが疑問を口にする。

 私は夢で見てたから分かったけど、皆はこの状況は訳がわからないよね。

 

 

「ええ、その通りよ。彼はロラン……ローランド=アグレアスと言って、私達のパーティーの戦士だったの」

 

「アグレアス……?」

 

「アグレアス侯爵家のご先祖様だよ」

 

「まぁ、俺には子はいなかったから……今のアグレアス家は俺の兄の末裔って事になると思うがな」

 

 そのあたりの話は、みんな初耳だったようで驚きの表情だ。

 

 

 

 

「それで……ロランさんはシェラさんの恋人さんなの?」

 

 初対面の人にも物怖じしないメリエルちゃんが聞く。

 ルシェーラが『ナイスですわ!』という風に、満足そうに頷いてる。

 

 

「そうだ」

 

「ち、違うわよ!」

 

 肯定するロランさん、否定するシェラさん。

 

「シェラお姉ちゃん、お顔が真っ赤だよ〜」

 

 

 まぁ、何となく態度で分かるよ。

 ハッキリとそういう関係になっていなくても、お互いに想い合っているのは。

 シェラさんも満更ではなさそうだし。

 

 ……その様子を見たルシェーラが、「良いですわ〜、良いですわ〜、初々しいですわ〜」と、少々うるさい。

 

 

 

「そ、それよりも……ロラン!どういう事なの?説明して!」

 

 

「そうだな……まぁ、道すがら説明する。『黒き神の神殿』に向かうんだろ?」

 

「そう言えば、ここは何処なんです?占星術師に転移を妨害されて……何処に向かえば良いのか」

 

 

 今いるのは、赤茶けた不毛な大地。

 見渡す限りの荒野……

 

 以前に聖域のリュートに聞いた光景を彷彿とさせるが、向かうべき道を指し示すようなものは何も無いように思える。

 

 

「心配しなくても、それほど離れていない。俺が案内しよう」

 

 そう言ってロランさんは歩き始めようとするが……

 

 

「あ、ちょっと待って下さい」

 

「?」

 

 引き留める私の声に不思議そうな顔をする。

 

 

「せめて……彼女を弔おうと」

 

 

 そして、私は歌い始める。

 

 

 運命に翻弄されたという、哀れな彼女。

 

 肉体は滅び去り、その痕跡は既に無いけど。

 

 せめて……その魂が輪廻に帰り、いつの日か……

 

 

 そんな想いを込めて、鎮魂歌(レクイエム)を捧げる。

 

 すると、彼女が消え去った辺りから、微かな光が天に昇っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テオフィール様……」

 

 昇っていく光を眺めながら、ロランさんが小さく呟くのが聞こえた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。