【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う! 作:O.T.I
「ママ!!」
「うん、分かってるよ」
私に縋りついて泣いていたミーティアが、顔を上げて私を呼ぶ。
その意図は分かっていた。
私も同じことを考えていたから。
私は、去りゆくヴィリティニーアの魂に想いを馳せながら、歌を歌う。
きっと、家族を愛する強い想いが……絆の力が、本来の彼女の魂を異界の魂から護っていたはず。
そう信じて、私は歌を歌う。
すると、
そしてそれは、人の形を取り始め……
『姉さん……』
「ヴィー……?」
現れたのは、黒目黒髪の、かつて私が夢に見たリシィ……シェラさんとよく似た少女。
調律師だった時の怜悧な表情とは真逆の、とても穏やかな笑みを浮かべていた。
この人が、本当のヴィリティニーアさん……か。
やっぱり、ずっと頑張っていたんだね……
『姉さん、ごめんなさい……そして、ありがとう』
「ヴィー……!私の方こそ……ごめんなさい!私が国を出ずに……あなたと一緒にいれば……!」
抑えていたものを全て吐き出すように、涙を流しながらシェラさんは声を絞り出す。
『ううん、姉さんのせいではないわ。私達は、お互いに国のためを思って行動しただけ』
「でも……でも……!!私は……あなたとの約束をっ!!」
『覚えているわ……いつか平和を取り戻して、また一緒に暮らそう……そう、約束したんだったわね』
「ごめんなさい……私は……」
『謝るのは私の方よ。ごめんなさい』
「ううん、私がしっかりしていれば……」
『……ふふ。もう、お互いに謝るのはやめましょうか?』
二人とも自分のせいだと言って謝罪を繰り返していたが、ヴィリティニーアさんが可笑しそうに笑みを零した。
「ヴィー……」
『もう、あの時の約束は果たせなくなってしまったけど……別の約束をしてくれる?』
「……どんな約束?」
『私の分まで生きて欲しい。平和を取り戻したら、姉さん自身の幸せを掴んで欲しい』
彼女は、夢想するように目を閉じて、穏やかな口調で願いを口にする。
『愛する人と結ばれて……可愛い子供を産んで……穏やかな人生を過ごして……そして、天寿を全うしたら』
「……」
『私に、話を聞かせてほしい』
「……ええ……約束するわ……」
涙が溢れて視界が霞む。
あぁ……私も泣いていたのか……
そして、姉妹は語りあう。
失われた時を取り戻すかのように。
誰もそこ割って入ることはできない。
だけど、誰もがきっと思ったことだろう……
ずっと……二人が一緒にいられれば良いのに……と。
しかし、時間は無情にも過ぎ去る。
いよいよ別れの時が来てしまった。
『……じゃあ、姉さん……そろそろ、私は逝くわ。今は、さようなら……でも、また逢いましょう。輪廻の先の未来で』
「……ええ、必ず。約束よ!」
二人は泣き笑いで別れを告げ、再会を誓う。
そして、ヴィリティニーアさんの魂は光に包まれて天に昇って行く。
「……さようなら、ヴィー。また、逢いましょう」
雲の切れ間から差し込む陽の光が、二人の約束を祝福しているかのようだった。