【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第十五幕 21 『再びの哀姉妹』

 

ーー ウィラー王国 対グラナ戦線 ーー

 

 

「……凄まじいですね、ディザール様のお力は。私などまだまだだと痛感しました」

 

「いやいやいや……流石にあれは、人間の到達できる領域の遥か先でしょう」

 

 遠目に、黒魔巨兵を次から次へと屠る武神ディザールの力を目にしたリュシアンはそんな呟きを漏らし、それを聞いたケイトリンがツッコミを入れる。

 黙ってはいるが、ケイトリンの言葉に頷いてるところを見ると、オズマも彼女と同意見なのだろう。

 

 

「何を言いますか。武の道に終わりなどありませんよ。そこに頂きが見えるのであれば、それを目指すのが真の武人です」

 

 あくまでも真面目に返すリュシアン。

 

 彼は副団長の立場となってからは、実戦から遠ざかっていたのだが……ここ最近の事件で戦う機会が多く、極めつけは今回の大戦。

 生来の武人気質が大いに刺激されたのだろう。

 

 世界の命運を分ける戦いであるという気負いは無く、むしろ生き生きとしている様子だ。

 

 

(う〜ん……やっぱりこの方はルシェーラ様とお似合いだよなぁ。似た者同士と言うか。ま、私も……今度こそあの方に選んでもらえるように、高みを目指さないとなんだけどね!)

 

 ケイトリンは内心で自らを鼓舞する。

 

 まずはしっかりとこの戦場を戦い抜いて……騎士としてカルヴァードの人々を護り、胸を張って主に再会するのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いの趨勢は決した。

 

 カルヴァード連合軍の誰もがそう思い始めていた。

 

 連合軍の兵たちに大きな力を与えていた姉妹神も、単騎で絶大な戦果を残した武神も……慢心とは無縁のはずの神々ですらそう思っていた。

 

 それは油断などではなかったはずだ。

 

 

 

 しかし……!

 

 

 

 

「……なんだ?急に空が暗く……?」

 

 最初に気がついたのは、エフィメラ隊で奮戦していたフリードだった。

 

 そして、その言葉を聞いていたユーグが、ふと空を見上げると……!

 

 

「馬鹿な……」

 

 

 俄に自分が見た光景が信じられずに、彼は呆然と呟きを漏らした。

 

 そして、多くの連合軍兵が、それに気が付く。

 

 

「ド、ドラゴンだっっ!!!!」

 

「なんてデカさだっ!!?」

 

「まさか……古龍だと言うのか!?」

 

 

 そう。

 

 戦場に大きな影を落として現れたのは、体長は優に30メートルは超えるであろう巨体を誇る(ドラゴン)

 

 陽の光を全く反射しないその漆黒は、まるで空にポッカリと大穴が空いているかのようだ。

 その威容に、連合軍もグラナ軍も戦いの手を止めて呆然と空を見上げた。

 

 

 そして、更に……何者かの声が響く。

 

 

 

『これまでの戦いなど前座に過ぎません。カルヴァード大陸を蹂躙する事など、この『黒魔神竜』一体がいれば事足りるのですから。人間ベースの黒魔巨兵と同じとは思わないことです』

 

 

 よくよく目を凝らせば、竜の頭の上に誰かが立っているではないか。

 

 その人物は、たなびく白銀の長髪に黄金の瞳……魔族の特徴を持った女性。

 その姿は……

 

 

「あれは……まさか『調律師』!?」

 

「いや……似ているが……」

 

 

 アクサレナでの調律師との戦いに参加していたらしき騎士から声が上がる。

 確かに、魔族の姿は『調律師』ヴィリティニーアとよく似ていたが、彼女よりも更に幼く見える。

 

 

 しかし……その正体に思い至り、戸惑い驚きの声を上げたのはエフィメラであった。

 

 

「そんな……まさか……彼女は……」

 

 

 髪や瞳の色は異なるが、その面影は記憶にあるそれと合致する。

 しかし、エフィメラはそれを信じる事ができない。

 

 ……いや、信じたくなかった。

 

 

 だが、当の本人からハッキリと現実を突きつけられる。

 

 

「お姉様、お久しぶりですわね。こうして再びお会いできて嬉しいです」

 

「やっぱり、あなたはエルネラなの!?」

 

「ええ、そうです。お姉様がパニシオンを出ていかれてから……私は黒神教の素晴らしさを知り、黒き神にこの身体と魂を捧げ、人類の変革を成し遂げるための使徒となったのです」

 

「そんな……!」

 

 

 かつての、リシェラネイアとヴィリティニーア姉妹の悲劇。

 

 それと同じことが、再び繰り返されようとしていた。

 

 

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