【本編完結】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!   作:O.T.I

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第十五幕 23 『全力/迷い』

 

ーー ウィラー王国 対グラナ戦線 ーー

 

 

 

「ふ……ふふ……ふははっ!ふははははっっ!!!」

 

 

 突如として、高らかな笑い声が響き渡る。

 

 緊迫した戦場にはあまりにも似つかわしく無いその声に、敵味方問わず多くの者が、ぎょっとしながらその出処を探して視線をめぐらす。

 

 そして、その先には……

 

 

「あぁ……ディザールさんのスイッチが入っちゃったみたいだよ、リルお姉ちゃん」

 

「……そ、そのようね」

 

 

 そう。

 

 笑い声の主は、何と武神ディザールであった。

 

 

 普段の落ち着きのある物腰からは想像もつかない、どこか狂気すら感じさせるそれに、姉妹神が引きっった表情となる。

 

 

 

「ふはははっっ!!強敵、結構!!相手にとって不足なし!!行くぞっ!!」

 

 

 ドンッッ!!!

 

 

 地面が爆ぜ、ディザールの姿が一瞬で掻き消える。

 

 

『グルゥアアァァーーーーッッ!!』

 

 

 ガキィンッッ!!

 

 

 そして次の瞬間、黒魔神竜の鋭い爪がディザールの斬撃を空中で受け止めていた。

 

 

「ほう!!これを受け止めるとは流石だ!!」

 

 

 これまで一太刀で尽く敵を斬り伏せてきたディザールだったが、始めて攻撃を防がれた事にむしろ歓喜の声を上げる。

 

 

「では、全力で行かせてもらおう!!」

 

 

 ディザールの身体が燐光を帯び始める。

 絶大な『氣』の力が集中し、周囲の大気が震える。

 

 そして、人知を超えた力を持つもの同士の壮絶な戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばいよ!!お姉ちゃん!!ディザールさん、本気だって!!」

 

 それを見たエメリナは、ワタワタと慌てふためく。

 

 

「お、落ち着きなさいリナ!!と、とにかく……」

 

 

 エメリールは自分自身も慌てながらも、なんとか妹を落ち着かせて……

 

 

『みんな!!ディザール達から離れなさい!!巻き添えを食らうわよ!!グラナ兵の者たちも!!もはや戦いの趨勢は決してるのです!!これ以上命を無駄にしてはなりません!!』

 

 

 [拡声]の魔法を用いて全軍に聞こえるように退避を促した。

 

 

 

 そうしている間もディザールと黒竜の戦いの余波が戦場に吹き荒れる。

 

 武神と黒竜の闘気が際限なく高まり、灼熱の暴風となって迸り、武神の振るう剣閃の衝撃波と黒竜のブレスが飛び交い……姉妹神は連合軍が安全圏に退避するまで全力で結界を張り続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その一方で……もう一つの、因縁の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エルネラ……どうして、あなたが……」

 

 未だ信じられないように、呆然としながら呟くエフィメラ。

 

 

「エルネラ様……まさか、このような……」

 

 グラナ皇族と面識のあるブレイグ将軍もエフィメラと同様に信じられないと言った様子だが、歴戦の武人である彼は既に戦闘態勢を取っているあたり流石と言えよう。

 

 そして、エルネラと面識は無いが互いの様子を見てある程度は事情を察した他の面々も、戦闘態勢は取りながらも複雑そうに事の推移を見守っていた。

 

 

「エフィメラ姉様、私は姉様を迎えに来たのです」

 

「迎えに……?」

 

「ええ……姉様も一緒に人類の変革を目指すために、黒き神にその身と魂を捧げましょう」

 

 穏やかな笑みを浮かべながら、エルネラは言う。

 無邪気とも言えるそれは、むしろ不気味ですらあり、エフィメラは背筋が凍るような感覚を覚えた。

 

 

「黒き神は邪神よ!!人類の変革など、黒神教が謳うまやかしに過ぎないわ!!目を覚ましなさい、エルネラ!!」

 

 

 既に魔族と成り果てたからには無駄と知りつつも、エフィメラはそう言わずにはいられない。

 

 

「……やはり、姉様はそう仰いますか。仕方ありません。ならば、力ずくでも連れて帰りましょう!!」

 

「エルネラ様!!させませんぞ!!」

 

 エルネラの戦意の高まりを受け、ブレイグ将軍がエフィメラを護るため前に立ちはだかる。

 

 

「ブレイグ将軍!!……くっ!やるしかないの……!?」

 

 そしてエフィメラは、まだ妹と戦う覚悟を決められずにいたが……

 

 

(しっかりしなさい!もうこうなっては戦うしか道は残されてないのよ!!迷いながら相手ができるほど甘くはないわ!!)

 

 

 何とか自らを叱咤し、曲がりなりにも戦闘態勢を取るのだった。

 

 

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